- 投稿 2016/11/14
- 歴史
健康の為に、「昔の日本人のようになりたい」と考える人がいます。
昔の日本人(特に江戸時代)を理想の姿として設定し、彼らの食事を真似、「日本人は昔の日本人が食べていた様に、米を食うべきだ」と主張する人すらいます。
でも、本当に「昔の日本人」は、理想的な食事をしていて、健康的で、パワフルだったのでしょうか?
前回は昔の人のパワフルさに焦点を当てて話たので、今回は、当時の人々の健康状態も見ていきたいと思います。
昔の日本人は、質素な食事なのに現代人より体力があった事は事実です
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「昔」という定義
「昔」といっても、時代によってかなり違いますから、どの時代の栄養状態に焦点を当てるかによって話の展開も変わってきます。
江戸時代か、明治か、大正か。
特に昭和は、戦前、戦中、戦後でかなり違います。戦中は食糧自体が不足していて、「習慣」が安定していないので問題外です。
食が「欧米化」する前と後で、日本人の食生活は大きく変わっていますが、
食が欧米化してからの、「初期の食事」と、「現代の食事」も変わっています。
以下に特徴をまとめました。
欧米化前
- 戦中以前の食 → 動物性食品雀の涙、糖質過多、有害物質たぶんほぼなし
欧米化後
- 戦後すぐの食 → 動物性食品少なめ、糖質過多、有害物質少なめ
- 現代の食 → 動物性食品普通、糖質超過多、有害物質過多
どのぐらいを「昔」とするか悩みましたが、ここでは特に体力が凄かった「江戸~明治の人」と、「現代人」の栄養状態を比較してみたいと思います。
江戸時代の人達の健康
まずは、多くの人が理想とする江戸時代の人達の健康状態からです。
「骨は嘘つかないだろう」と思ったので、以下を紹介します。
『【人類】日本史上最も小柄だった江戸を語る人骨1万体 鉄分不足・長屋の密集生活ストレス・伝染病―科博新宿分館、つくば市に移転準備中』より引用
江戸を語る人骨1万体 小柄な体・栄養失調・伝染病
写真:国立科学博物館が収集している人骨。刀傷が残る骨もある=東京都新宿区百人町、 渡辺延志撮影拡大国立科学博物館が収集している人骨。刀傷が残る骨もある=東京都 新宿区百人町、渡辺延志撮影
東京都内の開発で掘り出された人骨を、国立科学博物館(科博)が大量に保管している。 ざっと1万人分。江戸時代の骨がほとんどで、今よりも小柄で栄養状態も悪かった。時代劇のイメージとは違う江戸の人々の厳しい暮らしぶりが、浮かび上がってくる。
「この頭の骨は左の側面に鋭い刃物の傷が2本。日本刀で斬り殺されたのでしょうね」「青黒い シミがついたこちらの骨は、梅毒の痕跡ですよ」
新宿区百人町の科博新宿分館。人骨がびっしり並ぶ人類研究部の収蔵庫で、人類史研究グループ長の篠田謙一さんが説明する。
研究用に科博は20年ほど前から、開発業者などが持ち込む江戸時代の人骨を受け入れてきた。分館は来春までに茨城県つくば市に移転する予定で、荷造りを前に人骨の分類やクリーニングが続く。
骨は江戸の人々の暮らしぶりを伝えている。栄養状態が悪く、特に鉄分が不足していた。 現代なら死亡率の低い若い世代の骨が多いのも特徴で、伝染病がたびたび流行し、人が簡単に死んだことを物語るという。
江戸時代の成人の平均身長は男性が150センチ台半ばで、女性はそれよりも10センチほど低い。日本のすべての時代の中で最も小柄だった。栄養状態が悪いうえに狭い長屋などに密集して生活したストレスの影響と考えられるという。
「生活は厳しかった。スラムといった方がいい江戸の影の部分が骨には記録されています」と篠田さん。
朝日新聞 2011年12月17日23時5分
http://www.asahi.com/national/update/1217/TKY201112170155.html
一応、これは「江戸」に限った話なので、これを日本全国にあてはめて考えるわけにはいきませんが、参考にはなります。
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明治時代の人達の健康状態
明治時代、外国人の日本人のイメージは、「つり目」に「出っ歯」に「小柄」だったらしいです。そういう絵が多く残されているのですが、別に、悪気があってそう描いたわけではありません。本当にそういう日本人が多かったみたいです。
何故か?
子供の頃に飢餓を体験すると、つり目になり、出っ歯になり、小柄になるそうです。
明治、大正の日本人は、つり目で、出っ歯の人が多かったらしいので、日本人=つり目で出っ歯になったのだそうです。
つまり、その頃の日本人は、慢性的な栄養不足で、健康体ではなかったと考えられます。
『wikipedia ジョルジュ・フェルディナン・ビゴー』より引用
欧米における日本人描写のステレオタイプとなった「つり目で出っ歯」という姿はビゴーの風刺画にも登場するが、その点について清水勲は「当時の日本人は現在に比べて国民全体の栄養状態が悪く、小柄で出っ歯の人が多かった。
そうした日本人の姿が1867年のパリ万博で直に欧米人の目に触れたことと、ワーグマン、ビゴーなどの来日外国人の絵や当時の写真などの影響とによって広まり、欧米人の日本人観の一要因となったのではないか」といった意見を述べている
しかし、「栄養失調が、つり目で出っ歯になる」という根拠を探したのですが、見つからないので、決定的ではありません。
(追記)「出っ歯」というのは「不正咬合」の一種です。
骨格的な不正咬合の原因は、妊娠中の母親の「鉄不足」にあります。
母親に鉄が足りないと、子供は「鉄不足」で生まれてきてしまいます。すると、頭蓋骨の真ん中に「上顎骨 じょうがくこつ」という骨があるのですが、ここが上手く成長しません。
(矢印が上顎骨。口と鼻腔にかけての骨)
それにより、歯が並ぶスペースが足りなくて歯並びが悪くなる、鼻の通りが悪い等の問題が起きてきます。
母親に、「鉄」、そして、鉄の吸収に必要な「タンパク質」が足りていないと、このようなリスクが高くなります。ちなみに、江戸時代も鉄が不足していたと書かれていましたね。
子供の歯並びが悪くなる真の原因。骨格的な不正咬合の予防は母親にかかっている
「出っ歯」が多かったということは、昔の母親の栄養状態は良くなかったと言えます。
明治時代の人が、貧困で栄養失調だった事は事実だそうです。
『食と健康の総合サイト e840.net 栄養状態の推移(栄養の歴史)』より引用
明治時代における栄養摂取状況
武家中心の社会から、明治時代にかわり、食生活も大きく変化をした。今まで鳥獣肉類は積極的に食べていなかったが、肉食は文明開化のシンボルとしてもてはやされてきました。
しかし、これは一部の富裕層であり、大半を占める農民には、非常に困窮した生活であった。しかし、徐々にすすんだ社会構造の近代化は、国民の健康管理の実施や食生活の改善を要求された。
明治時代以前では、コメよりムギや雑穀を主食としてきたが一般庶民がコメを常食とするようになり、動物性食品の摂取量が徐々に増えてきた。当時の食生活は、動物性タンパク質が少なく体格も非常に小さいものであった事がわかっています。
さらに、ビタミン類が欠乏しており、ビタミンの欠乏症や伝染性疾患に弱く結核による死亡がおおかった。また、慢性的なビタミン不足にコメ食の普及により脚気が流行していたのも特徴であります。
文明開化によって、動物性食品が食べられるようになったとはいえ、一般家庭では満足な量ではありませんね。これを読む限りでは、抵抗力も弱そうです。
以上の記述から、昔の日本人(江戸~明治)は、小柄で栄養失調、病弱です。とても健康体とは言えないです。
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「欧米化した和食」を食べる現代人の栄養状態
戦後、昔ながらの和食オンリーから、動物性食品も習慣的に食べるように変わっていきました。そのおかげで感染症は減り、寿命も伸びていきました。
それ以前の「伝統的な和食」では、動物性食品が足りないので、栄養失調になります。人間は「動物食性(肉食)動物」なので、植物性の食品では健康になれません。本来の体の構造とは合わないからです。
しかし、「食の欧米化」に全く問題がないわけではありません。
先ほどもいった通り、人間は動物食性(肉食)動物なので、動物性の食品が「人間の消化器官の構造」には適しているのですが、困ったことに、そこに糖質を加えてしまうと、病気になったり、死亡率が上がったりします。
つまり、欧米化した和食(中タンパク質+中脂質+高糖質)ですね。
そのせいで、「動物性食品」は悪者にされていますが、犯人は「糖質」です。「動物性食品」単独だと問題になりません。
ただし、食が欧米化したことで、日本人が長寿になったのは事実です。感染症も減りました。そう考えると多少問題はあっても、「食が欧米化するまでの日本の食事」よりはマシといえます。
そして、冒頭でも言いましたが、同じ「欧米化」した食事でも、「戦後初期」と、「現代」の食事は違います。
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戦後初期と現代の食の違い
同じ欧米化した食事でも、戦後すぐの人たちと、現代の私達の食事は違うと言いましたが、もちろん栄養状態も、健康状態も違います。
欧米化した初期の頃は、まだ肉が高価だったので、庶民は頻繁に肉が買えませんでした(鯨の肉は食べていたそうですが...)。
それに、やはり、お菓子も今のように豊富ではないので、バクバク食べません。「甘いもの」といえば、芋や果物だったそうですが、現代のように甘く品種改良されていないので、糖度も少ないでしょう。また、土地の汚染は今よりマシだったので、野菜や果物にもミネラルやビタミンが豊富に含まれていたはずです。
「農薬」はあったでしょうか、「食品添加物」、「遺伝子組み換え食品」といった、体にダメージを与えるような物質も今ほど溢れていません。
「食品添加物」や「遺伝子組み換え食品」が体に影響を与えているという話は以下です。
草食系男子が増える原因は、価値観の変化でも女性の強さでもなく、生殖能力に影響を与える環境である
遺伝子組み換え食品から学んだ、学問に不毛な議論が発生する本当の理由
現代は、裕福なので、動物性食品が安く手に入ります。タンパク質、脂質は昔より充実しています。
しかし、好きな時に好きなだけ間食ができる便利な環境、ブランド志向から糖度を高く品種改良された野菜や果物、それによる糖質過多、土壌が悪くビタミン、ミネラルの欠乏・・・と、品質に問題があります。
そして、1970年代以降、テレビの料理番組によって、食材の栄養素を捨て去る調理法が家庭に普及したそうです。それによって、さらにビタミン・ミネラルが欠乏した料理を食べるようになりました。
現代は、体にダメージを与える物質のオンパレードで、手料理を食べていても、50種類の食品添加物を摂ってしまう環境です。
比べてみると、「戦後初期」も、「現代」もどちらも一長一短あります。
ですが、動物性食品の量は少なくても、有害物質が少ない分、欧米化して間もないころ(戦後初期)の食事の方がマシだったかもしれません。
栄養について、結論を言うと、
欧米化する前の食事を食べていた「江戸~明治の人達」と、欧米化した後の食事を食べている「現代人(戦後~現代)」を比べた場合、
栄養、健康面では現代人(欧米化後)の圧勝ではないでしょうか。
ただ、体力となると話は別です。
次にそれぞれの体力をみていきましょう。
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昔の人の体力
体力については、前回記事を書きましたので、ここにもう一度書きます。
- トップクラスの飛脚は一日で160~200kmほども走る。
- 飛脚の食べ物は、おむすび2つ、漬物数枚だった。ところが肉を食べさせたところ胃もたれして早く走れなかった。それを見た小泉八雲は「日本人の食事は完成されている」と悟った。
- お年寄りの女性でも、300キロの荷物を背負って山道を歩き、自分一人で荷物を背負って降ろすことができた。
- 江戸後期、弥助という有名な飛脚が、高崎・江戸間(往復二百余キロメートル)を一昼夜で往復できた。またある時、東京の江戸城~大阪を6日間で往復。
- 忍者や軍使は、3日間飲まず食わずで走り続けることができた。
- 日露戦争の日本陸軍のある師団か連隊は、まる3日間、飲まず食わずで闘った。
- 明治時代の日本、馬車が二十数日間、夜明けから暗くなるまで各地を走った。休憩は食事とトイレだけ。日本人の馬丁は、馬と同じ速度で並走し、トイレと粗末な食事を食べている以外の時間は馬の世話をしていた。
- 昔は咀嚼回数により顎が非常に発達していて歯並びがよく、その噛み合わせのおかげで力が出せた。
- 江戸時代までの日本人は、西洋式スポーツとは違う身のこなし方をしていた。「なんば歩き」という体に負担をかけない動き方をしていた。
これを読んで怯んだ方もおられるかもしれませんが、現代人もアスリートなら負けておりません。
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現代アスリートの体力
飛脚ぐらいなら、現代人でも体力自慢なら、太刀打ちできるのではないでしょうか。
現代には、以下のような超過酷なレースがあります。
『TJAR TJARとは?』より引用
トランスジャパンアルプスレースとは?
息を飲むような雄大な眺め、漆黒の闇に浮かぶ仲間の灯、
烈風に晒され追いつめられる自分、悲鳴をあげる身体、
絶望的な距離感、何度も折れそうになる自分の心、
目指すのはあの雲の彼方。
日本海/富山湾から太平洋/駿河湾までその距離およそ415Km。
北アルプスから中央アルプス、そして南アルプスを、
自身の足のみで8日間以内に踏破する
Trans Japan Alps Race
日本の大きさを感じ、アルプスの高さを感じ、自分の可能性を感じよう。
さらに、世界にはもっとキツいレースがあります。
以下の記事より、凄そうなものをピックアップしてみました。
『GoPro 最もタフなウルトラマラソン ベスト8』より引用
野生のウルトラマラソン
Jungle Marathon
距離:254km
登坂:なし
場所:ブラジル
注意:沼・蛇・蚊・ヒル・ワニ・泥など
タフネス指数:9
フルマラソンを1回こなすだけでも大変だが、このマラソンはジャングルの中でフルマラソン6回分を走る。ランナーたちはアナコンダやワニ、ピラニアなどが潜む川や沼など、厳しいジャングルの中を6ステージ、254kmを走ることになる。出場ランナーのひとりは、「それが魅力なんだ」とコメントしている。
ランナーたちはジャガーに追われ、猿の叫び声に起こされ、アリやハチに噛まれることになる。また、言い忘れたが、クモや蚊、サソリも潜んでいる。それでも挑戦したいという人は、今年10月に開催されるので、是非登録してもらいたい。
飛脚も、おそらく山道を走っていたでしょうから、野生動物と隣り合わせだったはずです。
しかし、現代人だって、鍛えればこのぐらいいけるということです。
「最高にハイ」なウルトラマラソン
La Ultra – The High
距離:333km
登坂:5000m x 3セクション
場所:ヒマラヤ(インド)
注意:高山病・酸欠・高山・暑さ・寒さ
タフネス指数:8
「標高」でヒマラヤに敵う場所はない。このワンステージ制のレースは「The High」の愛称で親しまれている。ランナーたちは333kmを72時間以内で走らなければならず、高山病にかかる可能性も高い(最悪の場合死に至る場合もある)。また、途中には5000mの登坂が3セクション待ち構えている(レースには222kmと111kmのショートコースも用意されている)。エクストリームなレースであるため、オーガナイザーは他のランナーとの競争は推奨していない。レース中に見られる絶景は汗を流し苦しむだけの価値がある(はず)。
移動能力に関して言えば、現代人も飛脚も負けていないですね。
ですが、これはあくまで毎日鍛えているアスリートの話です。昔の人が凄いのは、普通の人でも体力が半端なかった事です。
女性が300kgの米を背負って歩くのだけは、どう頑張っても真似出来そうにありません。
なんせ、これですからね。
女丁持と呼ばれる米俵を背中に担ぐ女性。
すごい方だと5俵(300kg)を背負う女性もいたそうです。
同じ人間とは思えません。
仮に、人に手伝ってもらって背負えたとしても、私ならこの状態から一歩も歩けない自信があります。
私は、車の運転はしないので、自転車か徒歩で生活しています。大きめのリュックサックもよく使います。昔の人程ではないにせよ、何かを背負って歩き回るのは慣れています。運動不足の人間ではありません。
そんな私ですが、300kgの米を背負うなど、想像がつきません。
糖質制限を始める前は、「米食い」でしたので、農家から30kgの米を買うこともありました。今よりも筋力が弱かったのもありますが、それを運ぶのは大変でした。階段などは特にです。
でも、100年、200年前まで、その10倍の重さの米を、普通の女性が背負って歩いていたわけです。
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両者の比較と矛盾
両者の特徴を簡潔にまとめます。
- 昔の人・・・現代人より不健康で病弱だけど 抜群の身体能力
- 現代人・・・昔の人より健康で長生きだけど しょぼい身体能力
です。以上のことから、
身体能力で勝っているのは昔の人
健康状態で勝っているのは現代人
と言えそうです。
これを聞いてえ?、と思いませんでした?
そう思った方、正常です。そうです、おかしいですよね。だって、これは
「粗悪な素材」で建てた建物が強度が強くて、
「質の良い素材」で立てた建物が強度が弱い。
・・・と言われているようなものです。普通に考えたら、
身体能力が抜群であれば、健康で長生きになるはずで、しょぼい身体能力だと、不健康で病弱なはずです。
身体能力で勝っているのは昔の人、健康状態で勝っているのは現代人
というのはおかしな話です。
小柄で栄養失調だったら、体力があるはずがありません。どうしてこういう事になるのでしょうか。
それは、昔の人のパワーの秘密が「食事」ではないからでしょう。
「食事」が凄かったからパワーがあったのではなく、不健康でも超人になれるような、「現代にはない別の環境」があったと思います。
確かに健康でないと、運動はできませんから、健康=運動能力と考えるのも分かります。
ですが、昔の人の体力のレベルは、あまりにも常識とかけ離れています。
従って、この件に関しては、私は、パワー(能力)と、健康は別々に考えています。
しかし、多くの人は、運動能力=健康と考えているからなのか、「超人なら健康に間違いない」と考えてしまうようです。ですが実際には、昔の人は、体力はあっても不健康でした。不健康になる食事をしていたからです。
「健康になりたい」と思った現代人が、「昔の人の食事が良い」と思って真似をすれば、例え体力がついたとしても、必ず不健康になります。
骨が示す通り、昔の人は体力があっても、体は不健康だっだのですから。
それに、例え現代の人が、「昔の人の食事」を真似しても、不健康になるだけで、あの体力は再現出来ないと思います。
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身体能力の秘密
これについては前回も書きました。
昔の日本人は、質素な食事なのに現代人より体力があった事は事実です
昔の人の異常な体力は、一般的に言われているように「食事」が原因ではないと言いました。
昔の人の体力が、もう少し現実的な凄さなら、食事が原因という可能性はありますが、
力の差がこの次元になってくると、
食べているものが米だろうが、肉だろうが、「それは関係ない」と判断せざるを得ません。食事どころか、現代人がドーピングをしても真似できないでしょう。
そもそも、「あの力の源」を、食にあると考える方がどうかしています。
「米を口にした事がない昔の外国人」が、「米スゲーッ!!」と、勘違いするならわかりますが、我々日本人は、常に米と共に生きてきたわけです。
米が魔法の食べ物ではない事は、我々が一番よく知っているはずです。
もし米が力の源なら、現代人も米を食べているのに、昔の人と力の差がこれほど開いているのは何故か・・・その理由を説明しなければなりません。理由を「米」にすると、辻褄が合わないのです。
食が欧米化しようが、どうなろうが、現代の日本人のほとんどは、米を食べているわけです。
「米」というと、「今は白米だけど、昔は雑穀だったから、栄養価が違うんだ。」等と思われるかもしれませんが、
ハッキリ言って、穀物は穀物です。
現代は土壌が劣化しています。しかし、多少質が違ったにせよ、それだけで、これほど違いが出ると考えるのは非科学的です。
今の時代でも、肉や脂があまり好きではない人で、「ご飯と、ご飯の共だけ食べている人」や、「体に気を使って雑穀米を食べている人」は、五万といます。
「ジャンクフードばかり好んで食べている人」もいるかもしれませんが、「食に拘っている人」も多いのです。
私は糖質制限歴は1年半ですが、米歴は30年以上です。米や野菜を食べ続けてきたからこそ、その食事では体力がつかない事を知っているわけです。
さらに言わしてもらうと、米を好む文化は日本だけではありません。
インド人も米が大好きです。しかもベジタリアンが多いです。
聞いた話では、韓国も日本に負けず劣らず米信仰の国だそうです。
米が異常な体力の源なら、アジア圏の人達はみんなスーパーマンです。
従って、私は「昔の人が現代人より体力があったのは、食事ではなく、当時の人の体の使い方、あるいは、当時の地球の環境、日本列島の環境が関係しているのではないか」と思いました。
世の中には、健康の為に昔の人の食事を真似する人がいますが、それによって、昔の人の体力まで再現したという話は聞いた事がありません。
せいぜい「健康になりました」止まりです。
食事で昔の人の身体能力を再現できないのは、昔の人の力の原因が、食事ではないからです。
で、もし地球の環境に原因があるなら、再現する事は、ほぼ不可能です。
前回、昔と今では「酸素濃度」が違う。それが原因ではないかと言いました。単にそれしか思いつかなかっただけなので、(地球規模の)環境の違いは、まだまだあると思います。
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飛脚の胃もたれ
以上のような理由から、今のところ私は「昔の人の異常な体力」は、「食事」とは関係ないと思っています。
良い食事をしていたからパワフルだったんじゃなくて、今よりも昔の地球の環境が良かったからだと思っています。だから粗末な食事で体がボロボロになっても、力だけは発揮できたんだと思います。
何故、「昔の人が粗末な食事で体がボロボロになっていた」と言えるのかと言うと、
「米を食べていた飛脚に、肉を与えたところ、胃もたれして早く走れなかった」
...という話がでてきたからです。
これは粗末な食事(つまり糖質)が原因で起こる胃の糖化です。具体的に言うと、人間が糖質を食べれば、体のタンパク質と余った糖が反応し、細胞が劣化します。
体が丈夫だから起きない・・・と思うかもしれませんが、これは化学反応なので起きます。当然、飛脚でもです。
胃もたれは肉のせいではありません。
糖質のせい。それに加えてタンパク質不足のせいです。
胃の糖化について、詳しくは以下の記事をお読み下さい。肉は胃がもたれるが、米は平気という謎について書きました。
消化に良い食品の嘘。慢性的に胃がもたれる人は糖質の過食を疑え!
肉を食べると胃が気持ち悪くなるが、野菜や穀物や甘い物はいくらでも食べられる理由とは
飛脚は身体能力があるので一見健康的に見えます。なので、
飛脚が走れるのは糖質のお陰
↓
糖質は素晴らしい
↓
糖質は日本人には毒ではない
と、結論づけてしまいたくなります。「身体能力」と「健康状態」を同じ物として捕らえていると、そういう発想になります。
しかし、「身体能力」と「健康状態」は関係ないのです。飛脚が身体能力に優れていたからといって、健康状態も優れているとは限らないのです。
いくら昔の人が身体能力に優れていたとしても、食べてはいけないものを食べれば体は劣化します。
また、糖化は胃だけに起こるのではありません。セルライト、痔、関節の音が鳴る、胃下垂・・・等、一見ただの老化に見えますが、実は「糖化」です。セルライトがいい例ですね。あれはただの脂肪ではありません。細胞が変性した脂肪です。
胃が糖化すると、飛脚のように「糖化の原因である糖質をいくら食べても胃もたれしないが、肉や脂を食べると気持ち悪くなる」という症状になります。酷くなると胃下垂です。
私は30年以上、胃の糖化で、ほとんど肉や脂が食べれなかったのですが、徹底した断糖肉食で、わずか数ヶ月で完治しました。
パワフルな昔の人も、「人間の体に合わない糖質」を食べる事で、現代人と同じように、糖の害を受けるのです。昔の人でもです。「日本人だから糖質が合う」という事はありません。日本人でも動物食性(肉食)動物ですから、植物性の食品を食べると問題が起こるのです。
昔の人vs現代人
まとめます。
- 彼らの「現代人にはない体の能力」は、「食事」ではなく、当時の地球の環境に起因している可能性がある。
- 極端に言ってしまえば、当時の地球に行けば、誰でも異常な力になれるのではないか。
- 能力と健康は別なので、彼らとて、糖質を食べる事で、現代人と同じように弱っていく。体格が悪い、病気や感染症が多いのもこれで説明がつく。
- 能力が凄いから健康だとは限らないし、健康だからといって能力が凄いとは限らない。
いくら昔の人の能力が凄いからといって、当時の人を真似る必要はありません。彼らは身体能力に優れていても、健康で長生きではないのですから。
江戸や明治の人より、身体能力では劣っていても、健康面では現代人が優れています。
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