「代謝(メタボリズム)」とは、体内で起こる化学反応の事です。

 

 

 

そして、生体内の代謝には、大きく分けてつあります。

 

 

 

 

  • エネルギー源である「ATP」を作る代謝

 

  • 「ATP」を使って、「ATP」以外のものを作る代謝

 

 

 

 

細胞には、後者「ATP以外のもの」を作る任務があります。しかし、その活動に必要なエネルギーも自分で作らなければならないのです。

 

 

 

本記事では、前者の、エネルギー源であるATPを作る「エネルギー代謝」についてお話します。

 

 

 

 

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エネルギー物質ATP

 

 

まずは、「ATP」が何なのかについてご説明します。

 

 

日本名は、「アデノシン3リン酸」です。

 

 

 

 

「ATP(エーティーピー)」は、簡単に言うと、エネルギーを溜め込んで充電がMaxの電池のような状態です。

 

 

また、エネルギーを放出して空っぽの状態を「ADP(エーディーピー)」と言います。

 

 

 

ATPとADP

 

 

 

 

そして、充電するには、何段階もの化学反応が起きます。

 

 

 

この「ATP」のエネルギーが無ければ、生体は生きていくことができません。

 

 

 

当然、後者の「ATP以外のものを作る」代謝も行なわれません。

 

 

 

不足すると、慢性疾患の原因になり、無くなれば死にます。どの生物でもです。

 

 

 

その為、「ATP」を作ることが重要なのです。

 

 

 

そして、「ATP」の材料は、糖質、脂質、タンパク質です。

 

 

 

このうち、燃料としてあてになるのは糖質と、脂質です。タンパク質は体の主成分になりますが、燃料としてはイマイチで、あまりあてになりません。

 

 

 

「ATP」については以下の記事で説明しています。

 

 

ATP(アデノシン三リン酸)について分かりやすく説明してみた

 

 

 

 

ATPとミトコンドリア

 

 

 

自らの活動資金(エネルギー物質ATP)を捻出するのも、細胞の仕事です。

 

 

 

そのエネルギー物質ATPは、細胞の中の「ミトコンドリア」で作っています。

 

 

 

 

ミトコンドリア

 

(細胞の図)

 

 

 

「ミトコンドリア」とは、一言で言うとエネルギーを作る発電所です。

 

 

 

なので、エネルギーをたくさん必要とする細胞は「ミトコンドリア」をたくさん持っています。

 

 

 

ただし、「ミトコンドリア」は酸素を使って「ATP」を作り出しているので、酸素があることが発電の条件です。

 

 

 

 

酸素がない = ミトコンドリアでATPが作れない

 

 

 

 

 

「ATP」は酸素がないと作れないのか・・・

 

 

 

というと、そんなこともありません。酸素がなくても、「ATP」をつくることは可能です。

 

 

ただし、ミトコンドリア発電所に頼ることはできません。その場合、別の方法で「ATP」を作ります。

 

 

 

 

 

 

ミトコンドリアを使わずにATPを作る

 

 

ミトコンドリアというのは、酸素がないと発電できませんから、酸素が滞る場合は、こちらの発電所は利用できません。

 

 

そんな時でも、細胞の液体部分「細胞質基質(さいぼうしつ・きしつ)」で起こる発電なら、酸素がなくてもエネルギーを作り出すことができます。

 

 

 

細胞質基質の解糖系

 

 

 

この発電方法には、酸素がいらないので、嫌気的解糖(けんきてき・かいとう)という名前がつけられています。(別名:解糖系)

 

 

 

「嫌気的解糖」は、酸素を要求する「ミトコンドリア」に頼らなくてもいいというメリットもありますが、少しの「ATP」しか作り出せないデメリットがあります。

 

 

そして、「酸素が足りない時」というのは、以下のようなケースです。

 

 

 

  • 激しい運動をして酸素供給が間に合わない

 

 

  • 細胞内にミトコンドリアを持っていない細胞(例:赤血球)は、そもそもミトコンドリアに頼った発電自体ができない

 

 

 

・・・このような場合、酸素が必要ない嫌気的解糖によって「ATP」を作り出すことができます。ですが、この方法では作り出せる「ATP」が少ないので、エネルギー不足になります。

 

 

「ATP不足 = 不健康」なので、やはり酸素を使った「ミトコンドリア」でのATP発電の方が、たくさんの「ATP」を作りだすことができるので健康的です。

 

 

 

 

嫌気的解糖 = ATP少ない = 不健康

 

 

ミトコンドリアでの反応 = ATP多い = 健康

 

 

 

 

このように「材料である、糖質、脂質、たんぱく質を分解してATPを作る」反応を「呼吸」と言います。

 

 

 

 

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呼吸とは

 

 

ここで、「呼吸」の定義についてお話します。

 

 

 

一般的に使う「呼吸」という言葉は、「酸素を吸って、二酸化炭素を吐くこと」を意味します。

 

 

ですが、生物学で使う「呼吸」という言葉は、「細胞が有機物を分解して、その過程で生じるエネルギーを「ATP」に蓄えること」を意味します。

 

 

 

 

 

前者が肺で行なっている「外呼吸(ガス交換)」で、後者は「内呼吸(細胞呼吸)」です。「外呼吸」で吸収した酸素を使って、「内呼吸」で「ATP」を作ります。

 

 

本記事では、「内呼吸」について説明しています。

 

 

 

「ATP」にエネルギーをつめる = 内呼吸

 

 

 

 

好気呼吸と嫌気呼吸の違い

 

 

 

エネルギーを「ATP」に蓄える「内呼吸」には、パターンあります。

 

 

先程もチラっとでてきましたが、「呼吸に酸素がいるか、いらないか」です。

 

 

 

  • 酸素が必要な呼吸・・・好気呼吸(こうき・こきゅう)

 

  • 酸素が必要じゃない呼吸・・・嫌気呼吸(けんき・こきゅう)

 

 

 

 

前者の酸素が必要な「好気呼吸」は、動物や植物が行なっています。

 

 

後者の酸素が必要じゃない「嫌気呼吸」は、先程紹介した「嫌気的解糖」、酵母菌や植物等が行なう「アルコール発酵」や、乳酸菌が行なう「乳酸発酵」です。

 

 

 

先程の復習ですが、効率よく「ATP」が作れるのは、酸素を利用した“好気”の方です。

 

 

 

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糖質からATPを作る

 

 

「ATP」の材料になるのは「糖質」「脂質」「タンパク質」でした。

 

 

最初に、「糖質」の代謝について説明します。

 

 

「糖質からATPを作る」というのは、言い換えると、「ブドウ糖からATPを作る」です。

 

 

 

「糖質」というのは、単糖が集まって出来ています。ブドウ糖(英語:グルコース)は単糖の代表です。これが「ATP」の材料になるわけです。

 

 

 

ブドウ糖を分解して「ATP」を取り出すには、まず、「解糖系 かいとうけい」という名前の反応が起きます。

 

 

 

 

解糖系とは

 

 

「糖質」を食べると、消化器官でグルコース(ブドウ糖)に分解されます。

 

 

グルコースは小腸で吸収され、血液によって全身の細胞に届けられます。

 

 

すると、グルコースは、最初に細胞内の液体部分「細胞質基質 さいぼうしつきしつ」に到着します。

 

 

 

細胞質基質の解糖系

 

細胞(簡略化)

 

 

 

ここで行なわれる「解糖系」とは、先程説明した「嫌気的解糖系(けんきてきかいとう)」の事です。「嫌気的解糖」は、名前の通り酸素が必要ありません。

 

 

 

また、「解」「糖」という名前の通り、グルコース(糖質)が分解されます。

 

 

 

何段階か代謝があるのですが、最終的に「ピルビン酸」に変身します。

 

 

 

 

グルコース

 

 

(何段階か代謝)

 

 

ピルビン酸

 

 

 

 

で、その分解の過程で発生したエネルギーによって、「ATP」が2個と、「水素」が生じます。

 

 

 

解糖系について詳しく説明した記事が以下になります。

 

解糖系について分かりやすく説明してみた

 

 

 

 

で、グルコースは「ピルビン酸」になったわけですが、ここが分かれ道です。

 

 

 

ここから先、もし酸素がなければ、ミトコンドリア発電所で発電することはできません。「ピルビン酸」は「乳酸」になります。

 

 

ここまでだと「ATP」は2個です。つまり、

 

 

 

解糖系 = ATP2個

 

 

 

 

しかし、もし酸素があれば、ミトコンドリアで発電することができます。

 

 

 

 

嫌気的解糖か好気的解糖か

 

 

 

 

(追記)ちなみに、右が健康的なルート、左が不健康なルートです。左のルートに偏ると、乳酸の蓄積を招くので、癌が発生しやすくなります。癌が発生する過程は以下に書きましたので参考にして下さい。

 

癌細胞と癌家系について分かりやすく説明してみた

 

 

 

ここからは、解糖系でできた「ピルビン酸」が、ミトコンドリアのマトリックスの中に進んだ後のお話をします。

 

 

 

 

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ミトコンドリアのマトリックス(クエン酸回路)

 

 

「ピルビン酸」は、酸素がない状態だと、ミトコンドリアで発電する資格がないので「乳酸」になりますが、酸素があればミトコンドリアでもっと多くの「ATP」を作ることができます。

 

 

ミトコンドリアのマトリックスでは、「クエン酸回路 くえんさん・かいろ」という名前の反応が行なわれます。

 

 

 

ミトコンドリアのマトリックスに移動した「ピルビン酸」は、そのままでは「クエン酸回路」に参加することができません。

 

 

 

なので、まず、酵素の働きによって代謝されて「アセチルCoA(あせちるこ・えー)」という物質になります。

 

 

 

 

ピルビン酸

 

 

アセチルCoA

 

 

 

 

さらに、「アセチルCoA」は、マトリックスの中の「オキサロ酢酸」という物質と反応して、「クエン酸」になります。

 

 

 

ピルビン酸からアセチルCoA

 

 

 

そこから、さらに何回も姿を変えるのですが、ぐるっーと一周回って、最後は再び「オキサロ酢酸」になり、また「ピルビン酸から作られるアセチルCoA」と反応する...

 

 

 

と、何度もクルクルと繰り返し反応できるというわけです。

 

 

 

クエン酸回路(TCA回路)

 

 

 

だから「回路」、そして、一番最初に変わるのが「クエン酸」だから「クエン酸回路」です。別名は「TCA回路」です。

 

 

 

この過程で、2分子の「ATP」が生じますが、「水素」も生じます。

 

 

 

この「水素」が、次に続く反応経路で、「ATP」を作るために必要なのです。

 

 

 

 

「クエン酸回路」について詳しく知りたい方は以下の記事をお読み下さい。

 

 

クエン酸回路(TCA回路)について分かりやすく説明してみた

 

 

 

ここまで、「解糖系」→「(酸素あり)クエン酸回路」、と来ました。

 

 

次に続く反応経路の名前は「電子伝達系 でんしでんたつけい」です。

 

 

この反応が行なわれる場所は、ミトコンドリアの内膜です。

 

 

 

 

電子伝達系

 

 

「電子伝達系」は、好気呼吸の最終段階です。反応が起こる場所は、ミトコンドリアの内膜です。

 

 

「解糖系」と「クエン酸回路」で生じた水素は、ミトコンドリアの内膜に集まってきて、酸素と結びつきます。

 

 

 

そして、「ATP」34個と、水を合成します。

 

 

 

「ATP」34個・・・「電子伝達系」の「ATP」の合成は、「解糖系(ATP2個)」、「クエン酸回路(ATP2個)」と比べて圧倒的に多いのが分かると思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

ここまで、糖質の代謝を簡単にみてきました。次は「脂質」の代謝について説明します。

 

 

 

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脂質からATPを作る

 

 

脂質の代表が「中性脂肪」です。

 

 

中性脂肪は、「グリセロール」と、「脂肪酸が3個」が結合した構造をしています。

 

 

「グリセロール」と「脂肪酸」・・・この2つは、代謝経路が少し違います。前者は、解糖系の途中へ合流しますが、後者は少しずつ分解されて「アセチルCoA」になります。

 

 

 

 

  • グリセロール(グリセリンともいう)・・・解糖系の途中へ

 

 

  • 脂肪酸・・・分解されて(炭素鎖が2個ずつ切れて酸化されて)アセチルCoAに変身する

 

 

 

 

脂肪酸が分解されて「アセチルCoA」になることを「β酸化」と言います。

 

 

中性脂肪から「ATP」を作る場合は、グリセロールの代謝経路と、脂肪酸の代謝経路とを合わせたものになります。

 

 

 

 

脂質のエネルギー代謝の経路

 

 

 

脂質は、糖質やタンパク質に比べると、多くのATPを作ることができます。

 

 

「脂肪酸」は高エネルギーです。

 

 

『ケトン体が人類を救う 糖質制限でなぜ健康になるのか 著者:宗田哲男』より引用

 

 

通常は、細胞が必要なエネルギー(ATP)は、グルコースが解糖系からピルビン酸とアセチルCoAを経て、TCA回路(クエン酸回路)へと代謝され、さらに酸化的リン酸化によって産生されます。

 

 

このときに、グルコースからATPへと変換されるのは、1分子から2分子です。

 

 

一方、脂肪酸からエネルギーを産生する場合は、脂肪酸が分解(β酸化)されてアセチルCoAになり、このアセチルCoAがミトコンドリアのTCA回路で代謝されてATPを作り出します。

 

 

このときの脂肪酸酸化は、たとえば活性化されたパルミチン酸のβ酸化は、7サイクルくり返されるので、パルミチン酸からは8分子のアセチルCoAができて、それぞれ12分子のATPが生じますから、最終的には129分子という多くのATPが得られます。

 

 

これは、ブドウ糖の場合に比べてかなり大きなエネルギーになります(『ハーパー・生化学』原書27版訳本P157、丸善)。

 

 

(127p)

 

 

 

そして、「グリセロール」は、糖質以外の材料から糖質をつくる「糖新生 とうしんせい」というシステムによって「グルコース」に変換されます。

 

 

 

糖新生については以下の記事をご覧下さい。

 

糖新生の仕組みについて分かりやすく説明してみた

 

 

 

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タンパク質からATPを作る

 

 

「タンパク質」は、糖質や脂質にくらべて、エネルギーとしてあてになりませんが、「ATP」は作れます。

 

 

タンパク質は、アミノ酸が鎖になったものです。なので、まず、タンパク質はアミノ酸に分解されます。

 

 

 

タンパク質

 

 

アミノ酸

 

 

 

ところで、

 

 

糖質と脂質は「炭素」、「水素」、「酸素」からできています。

 

 

タンパク質は「炭素」、「水素」、「酸素」と「窒素」が含まれています。

 

 

ATPを作る時、この「窒素」である「アミノ基」は邪魔なので外されます。

 

 

 

で、「炭素」、「水素」、「酸素」から構成される分子に変換して、クエン酸回路に入るというわけです。

 

 

そして、クエン酸回路の入り方にはいくつかあります。

 

 

 

アセチルCoAになってから、クエン酸回路に入る方法や、

 

アセチルCoAにならずにクエン酸回路に入る方法です。

 

 

 

どのルートを辿るかは、アミノ酸の種類によって決まっています。

 

 

 

ちなみに、外された「アミノ基」は、そのままでは毒性のある「アンモニア」になります。これは体に悪いので、「尿素」に作り変えられ、最終的に尿中に排泄されます。

 

 

 

説明について

 

 

 

本記事では、全体の流れが掴めるように、細かい部分はかなり省略して説明してみました。

 

 

ここで書ききれなかった細かい部分は、今後、必要であれば、それぞれの記事のテーマに合わせて、深堀して説明していくつもりです。

 

 

 

(追記)エネルギー代謝の視点から見た健康

 

 

「糖質」、「脂質」、「タンパク質」のうち、「タンパク質」は体の主成分でエネルギー源としてはあてにならないので、「ATP」の主な材料は「糖質」と「脂質」になります。

 

 

脂質はエネルギーです。

 

 

一方、糖質は「解糖系→クエン酸回路→電子伝達系」と進めばエネルギーですが、「解糖系」だけだとエネルギーで「乳酸」を発生させます。

 

 

当然、健康に良いのは「脂質」です。

 

 

糖質の場合は、代謝が「解糖系に傾いて乳酸を発生させる」か、「ミトコンドリアまで進んで代謝し切る」かによって、健康状態が変わってきます。

 

 

乳酸はpH5程度の酸性です。その為、蓄積すると血液が酸性に傾き慢性疾患の原因になります。

 

 

糖質を摂られている方が健康の為に気をつけた方がいい事は、代謝を「解糖系」に傾けない事です。以下はその為の具体的な方法になります。

 

 

ベジタリアンや糖質を止められない人が、健康の為に摂っておきたい栄養素とは

 

 

 

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