以前に比べると、「脂質」の重要性が説かれるようになってきましたが、それでもいまだに「脂質」の摂取に抵抗を感じている人は少なくありません。
しかし、「脂質」は体の構成成分であると共に、良質なエネルギー源でもあるので、むやみに制限すると体調を崩す原因になります。
糖質をたっぷり食べている人は、脂質を食べなくても、糖質からエネルギーを確保できるので、カロリー的には問題ありません。
まだ、マシです。
問題は、糖質制限を実践しているのに脂質まで制限する人です。
特に、糖質を10g、5g...と、限りなく減らす「厳しい糖質制限」をしているのに脂質も制限する場合は、命に関わるので危険です。
一方、「緩い糖質制限」なら、多少糖質からエネルギーが得られるので、脂質を制限しても命に関わる程エネルギーが減る事はありません。フラフラになる程度です。
「糖質と脂質の両方を減らす事」が問題なのです。
理由は、生体が生きていく為に必要な「ATP(エーティーピー)」というエネルギー物質の材料が無くなり、作れなくなるからです。
「ATP」が減ると慢性疾患に、「ATP」が無くなると死にます。これはどの生物でも同じです。
私は2015年から1日10g以下の「スーパー糖質制限」を続けていますが、脂質をしっかり摂取しているので、ATP不足になることはありません。
しかしそれ以前、2008年に一度、「緩い糖質制限」を実践したことがありますが、この時は違いました。
当時は脂質の重要性が今ほど語られておらず、脂質は危険という情報ばかりでした。
その為、脂質まで制限してしまい、結果、エネルギー不足でフラフラになって糖質制限を止めました。
また、この時は胃の糖化が酷く、タンパク質消化酵素「ペプシン」不足もあり、タンパク質を食べると消化不良になっていたので、こちらもたくさん食べる事ができませんでした。
タンパク質が不足した事により、「糖新生(糖質以外の材料から糖質を合成するシステム)」も上手くいっていなかったと思います。
この状態ですね。
- 糖質・・・制限
- 脂質・・・避ける・たくさん食べられない
- タンパク質・・・たくさん食べられない
当時の私がやっていたのは、脂質やタンパク質をほとんど食べず、糖質を制限する...
糖質制限を実践しているつもりでしたが、実際はカロリー制限になっていました。
今に比べて、多少は糖質を摂っていたのですが、それでもカロリーは足りていなかったようです。
疲れてフラフラになりましたから...
この状態なので「糖質制限は危険だ」と思いました。
今は原因も解決策も危険性も分かるので、このようなミスはしません。ですが、この情報を知らなくて、脂質の摂取が足りない事で糖質制限が上手くいかない方は今も多いです。
なので、脂質を制限する事の問題点、エネルギー不足の危険性、その対策についてお話します。
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糖質を制限して脂質も制限する
まずは何故、糖質制限を実践中に脂質も一緒に制限してはいけないのか、その理由をお話します。
それは、先ほども説明したように、「ATP」を作ることができなくなるからです。
「ATP」の材料は以下の3つです。
- 糖質
- 脂質
- タンパク質
「タンパク質」は、主に体の材料になるので、実はエネルギー源としては、あまりあてになりません。後で説明しますが、燃料をこれだけに頼って生きていくのは不可能です。
燃料が無くなった時に、建物の木を崩して薪にするようなイメージに近いですね。
「脂質」は、細胞膜など身体の材料にもなりますが、それ以上に、エネルギー源として頼もしい存在です。
「糖質」は、体の材料にもなりますが、ほんとうに僅かなので、食事から摂取しなくても良いです。体の材料にはほぼならず、エネルギーとしての使い道しかありません。
一応、人間の構成成分を書いておきます。体の材料の割合です。
- 水・・・59%
- タンパク質・・・18%
- 脂質・・・17%
- 無機塩類・・・5%
- その他(核酸・糖質)・・・1%
で、エネルギーとしては、主に糖質か脂質を使うのですが、糖質は脂質に劣ります。
糖質 < 脂質
内訳はこうです。
(糖質の場合)
ブドウ糖1分子・・・(不完全燃焼 → ATP2分子)
ブドウ糖1分子・・・(完全燃焼 → ATP38分子)
(脂質の場合)
パルミチン酸(飽和脂肪酸)1分子の場合・・ATP129分子
このように、同じ1分子を代謝した場合、「糖質」は得られるATPが少なく、「脂質」は得られる「ATP」が多いです。
ただし、「糖質」はエネルギーに変換するスピードが早いので、手っ取り早くエネルギーを得たい時には向いています。しかし、くどいですが、糖質の害は受ける事になります。
「食べても食べてもお腹がすく、満足しない」...そう言って、甘い物やご飯やパンを大量に食べる人がいます。
エネルギー源を「糖質」に依存しているとこうなります。これは、一度に得られるエネルギーが少ないので、回転数で「ATP」を稼ぐ作戦なのです。「ATP」を体が必要としているのです。
一方、糖質制限をして「脂質」をしっかり摂取すると、エネルギー的に充実していくるので、過食したくなくなります。
『藤川徳美医師 facebook 2016年2月7日』より引用
どうしてお腹が空くのか-糖質摂取した3時間後に強烈な空腹感に襲われる理由-
糖質を摂取すると3時間後に“もうお腹ペコペコ、腹減ったー”という感じの強烈な空腹感に襲われます
糖質制限を継続している人はそのような絶えられない空腹感がなくなり、お腹が空かなくなります
あるとしても程良い心地よい空腹感のみです
では何故糖質摂取すると強烈な空腹感に襲われるのでしょうか?
胃が空っぽになるため?
夏井先生のブログに何度も登場している、肉を食べた後の胃内視鏡所見Vs.穀物を食べた後の胃内視鏡所見
肉を食べた1時間後にはすっかり消化され胃の中は空っぽになります
穀物を食べると3時間後にも胃の中に穀物が停留しています
この結果を見ると、胃が空っぽになるから空腹になるのではないですね
低血糖になるため?
糖質過剰摂取3時間後には、機能性低血糖を生じ易くなります
糖質制限継続者は機能性低血糖になりません
じゃあ血糖が下がるから空腹になるのが一見、正解のように思えます
しかし、糖尿病患者に当てはまるとこれは誤りである事がわかります
空腹時血糖120、食後200とコントロール不良の糖尿病患者では低血糖を生じません
低血糖ではないにも関わらず、”腹減った”と言いながら甘いものを間食しますよね
正解は、ATP不足になるため
糖質制限継続者は脂肪酸(ケトン体)からの好気性解糖(クエン酸回路+電子伝達系)で持続的に十分な量のATPが産生されます
胃の中が空っぽになっても強烈な空腹感はありません
糖質摂取を繰り返している人は、嫌気性解糖主導となります
そうなると、産生されるATPが極めて少なく、かつ短時間で切れてしまう
ATP不足になると脳がSOS指令を出し、強烈な空腹感が出現します
胃の中に内容物がたっぷりあっても、低血糖ではなくても、ATP不足なら強烈な空腹感が出現する!
ATP不足になると脳がSOSを発する...とあるように不足すると危険なのです。
では、次はATPが無くなるとどうなるかという具体的な話をします。
ATP不足は命の危険がある
糖質を制限して、高タンパク質にして、脂質を制限するとATP不足でフラフラになります。
高タンパク食と言えば、ボディービルダーです。
彼らは食事からのタンパク質だけでなく、とんでもない量のプロテインを毎日飲むようですが、それでも「糖質」も「脂質」も無くなると餓死の危険があります。
『精神科医こてつ名誉院長のブログ 糖質制限 超基礎編』より引用
タンパク質について、一部は糖新生されて燃料として使用されるが、生体を維持するための十分な燃料とはなり得ない。
以前紹介した、マッスル北村氏は、高タンパク食+断糖食+無脂肪食で「餓死」した。
つまり、体脂肪ゼロで無脂肪食ではATP不足となり、生命を維持できない。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%83%E3%82%B9%E3%83%AB%E5%8C%97%E6%9D%91
普通の人は、体調を崩したら「危険だ」と判断して止めるので心配はないですが、一応、ATP不足を無視して制限を継続するとどうなるのかも知っておいた方がよいです。
次は糖質制限中にATP不足にならない為の解決策についてお話します。
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解決策
解決策は簡単ですね。まずは以下をご覧下さい。
『ドクター江部の糖尿病徒然日記 「Low T3 syndrome(低T3症候群)」と糖質制限、カロリー制限、飢餓』より引用
自己暗示研究家さんが書評の中で懸念されている「全身倦怠感、筋力低下、痩せ過ぎ、生理不順、脱毛、生理が止まる、冷え、無気力、皮膚乾燥・・・」などの、甲状腺機能低下症のときに見られる症状が、糖質制限食実践中にもしあったとすれば、それは摂取エネルギー不足が原因と考えられます。
少なくとも高雄病院の糖尿病患者さんで、糖質制限食を実践中に「全身倦怠感、筋力低下、痩せ過ぎ、生理不順、脱毛、生理が止まる、冷え、無気力、皮膚乾燥・・・」などの訴えがあった方々を、栄養指導したところ、全員が摂取エネルギー不足でした。
例えば、男性で1200kcal/日とか女性では1000kcal/日とかです。
当然のことですが、糖質制限食の範疇で摂取エネルギーを増やして、厚生労働省のいう標準必要エネルギーを満たして貰うと、皆さん「全身倦怠感、筋力低下、痩せ過ぎ・・・」は速やかに改善しました。
単純な理屈です。
私もこれで1度失敗しているので、
糖質を制限したら脂質を摂取しましょう、くれぐれもただのカロリー制限にならないように
...と、何度も言っているのですが、脂質の量が足りていない人はたまにいます。
脂質の摂取量が少ない理由ですが、以下が多いです。
- 脂質をたくさん食べる事に抵抗がある
- 脂質を食べているつもりでも、必要量が足りていない
- 脂質の消化や代謝が上手くいかない
ただ摂取しろと言っても、これらの問題を解決しなければ実践できないので、解決策を提案します。
「脂質をたくさん食べる事に抵抗がある」に該当する方は、「脂質悪」の洗脳を解くのが先なので、以下の記事をお読み下さい。
- 「脂質を食べているつもりでも、必要量が足りていない」
- ...ですが、これは指摘されるまで気が付かないものです。
色んなパターンがありますが、一例を紹介します。
たまに、「肉は発癌性物質がある」という説が気になって、肉ではなく大豆製品中心の糖質制限をする人がいるのですが、この方法だと、脂質の摂取量が少なくなるので、やはりカロリー不足になる可能性が高いです。
「植物性の食品が安全だ」という考えが抜けきれないので、糖質制限+従来の常識 にアレンジしようとした結果です。
ですが、人間は動物です。
その為、アミノ酸組成と脂肪酸組成が近い、動物性の食品の方が利用しやすいのです。
従って、糖質制限も植物性の大豆等を中心にするより、動物性を中心にした方が効果が圧倒的です。
また、植物には「動物に食べられないようにする為の毒」が含まれているので、動物性を中心にすれば、それの摂取も防げます。
脂質の補い方
タンパク質が不足している場合は、プロテインを飲むと良いです。
脂質が不足している場合は、何を選択するべきかについてお話します。
肉、魚、卵にも脂質は含まれています。これらから十分摂取できて、代謝に問題がないなら問題ありません。
しかし、量を食べられない人の場合は不足するので、少し工夫が必要です。
例えば、私の場合は、糖質制限を始めてから、3年以上、脂質不足にならないように、食事とは別に夜寝る前にバターを食べるようにしました。
一時、100g摂取していましたが、それ以外は基本的に50g摂取しています。
「何故50gなのですか?」とよく聞かれるのですが、何度も増やしたり減らしたりして実験した結果、私の体にはこの量が1番合っていると判断したからです。
生理の日にちの間隔が安定します。
食事とは別に、最低「プロテイン30g」と「バター50g」を摂取すれば、生理がほぼ同じ日にきます。どちらかが減ると日にちがズレます。
あと、バターは美味しいので、嗜好品としても楽しんでいます。
また、生クリームを飲む事もあります。これは高いのでたまにですが...。
一方、調理に使う油は、あまり細かい事は気にしていません。
動物性の牛脂やラードも使いますが、植物性の油も普通に使います。
理由は私は香りの良い料理が好きだからです。
オリーブオイル、ゴマ油、マスタードオイルを健康の為ではなく、嗜好品として使っています。
このように、調理の油に関しては、自己管理が甘くてあまり偉そうな事が言えないので、もし健康の為に油にも徹底的に拘りたい方は、以下の記事を参考にして下さい。
藤川徳美医師 facebook 2015年11月3日 動物性脂肪、Vs、植物性脂肪
糖質制限をする場合、脂質の摂取は重要なのですが、たくさん摂取すると、問題が起きる事があります。
次はその点についてみていきます。
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脂質の摂取による消化不良
バターはオススメの脂質です。
ですが、糖質制限を始めたばかりで、胃が弱い人の場合、これを食べるのがキツイ人がいます。
具体的に言うと、バターを摂取すると、下痢をしたり調子が悪くなったりします。
脂質を摂取する事に抵抗がある理由に、「脂質の消化や代謝が上手くいかない」がありましたが、これはしんどいのでハードルが高いです。
でも解決できます。
このような人は長年のタンパク質不足により、脂質を分解する酵素「リパーゼ」が不足している可能性が高いので、脂質を上手く消化することができません。
タンパク質が不足する
↓
タンパク質でできている酵素「リパーゼ」が減る
↓
「脂質」が消化しずらくなる
また同じ理由で、タンパク質を消化する「ペプシン」という酵素が不足すれば、タンパク質を消化しずらくなります。
上の「リパーゼ」を「ペプシン」に、「脂質」を「タンパク質」に置き換えて読んでみて下さい。
「ペプシン」や「リパーゼ」が減ると、肉がムカついて食べられなくなります。
無理して食べると、未消化になり、「腸内環境の悪化」という別の問題も起きてきます。ただしこれは肉が悪いのではなく、消化する能力が劣るほど栄養不足であることが悪いのです。
解決策は、酵素の元であるタンパク質を不足させないようにすることです。なので、タンパク質不足を解消することを最優先させます。
これができなければ、タンパク質も脂質も食べられないので、スタートラインにも立てません。
消化不良の原因は、他にも以下のようなケースがあります。
消化に良い食品の嘘。慢性的に胃がもたれる人は糖質の過食を疑え!
肉を食べると胃が気持ち悪くなるが、野菜や穀物や甘い物はいくらでも食べられる理由とは
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脂質代謝が上手くいかない時
酵素「リパーゼ」が足りていて、脂質の消化は問題なかったとします。
ですが、まだ壁があります。
脂質は脂肪酸に分解されるのですが、これをミトコンドリアの中に運ぶのが「L-カルニチン」です。
ミトコンドリアは、細胞の中にあり、この中で多くのATPを作ります。その為、「発電所」に例えられます。
従って、「L-カルニチン」が不足すると、燃料の「脂肪酸」がミトコンドリアに運ばれないので、代謝ができません。
「L-カルニチン」は食品からでも摂取できますし、体内で合成する事もできます。
「L-カルニチン」は、不足しやすい栄養素の1つです。
『Fitness in Life 脂質代謝に欠かせないカルニチン』より引用
◆カルニチンは減る!?
ビタミンと違ってビタミン様物質のカルニチンは体内で生合成できます。
肝臓で、必須アミノ酸のリジンとメチオニンから合成され、血液を介して、筋肉に取り込まれます。
ただし、加齢とともにその合成力は低下します。20歳ごろからすでに減り始め、80歳では極めて低いレベルにまで落ち込むといわれています。
脂肪の燃焼に深く関わるカルニチン。中年太りの要因には、加齢によって体内のカルニチンが減っていくことも関係していると考えられています。
また、カルニチンが不足すると、慢性疲労症候群という、風邪などを契機に、激しい倦怠感や、脱力感を、半年以上、持続ないし繰り返す病気になると言われています。
不足すると困るので、次は対策をお話します。
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L-カルニチンが不足しやすい理由と対策
以下は糖質制限をしながら、不足しやすいカルニチンをサプリで摂取した効果です。
『前山美香氏 facebook 2018年3月4日』より引用
2年半前に糖質制限始めたと同時にアセチルLカルニチンを摂っている。
今は日に最低3gの摂取です。
数か月前までは1~2gでしたが、3g以上摂ってから全体的の体感と脳の機能が上っている感じです。
私はカロリー制限も菜食も長く来たので、何もかも不足、兎に角、動物性の栄養素が過不足で状況でしたので、こちらを読んで、アセチルLカルニチンが今も手放せないこと、Q10との関連性に納得しました。
脳も不全に気づいていなかった自分がオソロシイ。。いや、今も不足である。。
・食事性カルニチンの主な供給源は肉類と乳製品であり、穀類、果物、野菜にはほとんど含まれていません。
・長い脂質不足、栄養栄養不足の方は欠乏がある。
・アセチル-L-カルニチンは、血液脳関門を通過して脳内に到達しアセチルコリン量を増やします。
・アセチル-L-カルニチンはアルツハイマー病初期症状の改善に効果があることがことが報告されています。
不足する原因は、動物性食品の摂取が少ない...だけではありません。
「L-カルニチン」は体内で合成できると言いましたが、その材料が以下になります。1つでも不足すると「L-カルニチン」が不足します。
- 必須アミノ酸(リジン、メチオニン)
- ビタミン(ビタミンC、ナイアシン、ビタミンB6)
- ミネラル(還元型鉄イオン)
糖質制限を実践していてタンパク質をしっかり摂取している人なら、「必須アミノ酸」の不足は心配しなくてもいいでしょう。
問題は「ビタミン」と「ミネラル」です。
このブログでは、サプリの使用が効果的である事を何度も述べているので、現在では、コメントやメールをくださる読者さんも、サプリを飲まれている方がほとんどになりました。
しかし、サプリを使わずに食事だけにこだわる糖質制限実践者もいらっしゃるので、そのような方は注意が必要です。
以下の栄養素は、糖質制限をしていても不足します。
まず、「ビタミンC」ですが、これは調理法や限られた材料の問題から、糖質制限で不足しやすい栄養素の1つです。また、身体の多くの化学反応に関わっているので消費しやすいです。特にストレス時に多く消費します。
「ビタミンB6」、これはタンパク質をアミノ酸に分解する時に必要な栄養素です。従って、糖質制限のような高タンパク質食では減りやすいビタミンと言えます。
「ナイアシン」は、乳酸をエネルギーに変える時に必要な栄養素です。糖質を制限すると乳酸が蓄積しずらいですが、それでも摂取した方が良いです。何故なら、身体にはブドウ糖しか利用できない細胞がある為、糖質制限をしていても、必要な量だけ「糖新生」によってブドウ糖が作られているからです。ブドウ糖の代謝は0にはなりません。
「解糖系」に依存している細胞があるので、乳酸が生じます。そして、それをエネルギーとして利用している細胞があるので、その時できた乳酸を適切に処理する為にもナイアシン(「乳酸脱水素酵素」の補酵素の合成に必要)は不足させないようにしたい栄養素です。どんな食事法をしていてもです。
また、ナイアシンはアルコールの代謝に必要です。お酒を飲まれる方は減りますので、注意が必要です。
「鉄」は、生理がある女性は不足しやすいです。糖質制限で食事から動物性の「ヘム鉄」を摂取していても不足していました。
鉄の過剰摂取は危険という考えを改めます。鉄サプリを半年間飲んでみて思う事
鉄は非常に重要な栄養素です。私の経験上、1度フェリチン100を超えてしまえば、生理の前後失った量をサプリメントで補い、普段から動物性食品中心にしていれば、そんなにはフェリチンは減りません。生理のない人はよほどの事がない限り不足しません。
生理のある人で女性で、フェリチンが100以下の人は、油断すると減る可能性があるので注意した方がいいですが、それ以上であればそんなに心配する必要はないでしょう。
しかし、ビタミンC、ナイアシン、ビタミンB6は常に消費されているので、サプリを飲まずに糖質制限をされている方は不足しています。
私は1年半、サプリ無しの「スーパー糖質制限」を実践して、かなり体質が改善されました。
それだけでも十分効果があったので、その時はそれで満足していましたが、サプリを組み合わせた事で、それ以上の変化がいくつもありました。
私は基本的に3ヶ月ごとにサプリを1種類増やすのですが、
「糖質を食べていないからB郡はそんなに必要ではないだろう」と思っていたので、鉄 → ナイアシン → ビタミンC&ビタミンE → ビタミンB50コンプレックス...という順番にしました。
ビタミンB50コンプレックスをかなり後回しにしたのですが、これを飲み始めると以前よりさらに体調が良くなりました。
「必要ないだろう」と思っていても、足りていなかったという事は普通にあります。
サプリを飲む事で効果があるということは、それまで足りていなかったという事です。
糖質制限をしていても完璧ではありません。
なので、今ではサプリを止める気にはなれません。糖質制限をしている人もビタミンB50コンプレックスは摂取した方が良いと考えています。
どの栄養素でも、不足している場合はサプリで補うのが効率が良いと思います。もちろん「L-カルニチン」もです。
「L-カルニチン」を合成する為の補酵素の「確率的親和力」が低い人は、食品だけから栄養を摂取しようとすると厳しい...という一例も紹介しておきます。
『藤川徳美医師 facebook 2018年3月5日』より引用
高タンパク/低糖質食+プロテイン+メガビタミンでもケトン体が増えない30代男性。
ケトン体を何度測っても0.1。
カルニチン合成のための補酵素の確率的親和力が低くて、メガビタミンでもカルニチンが増えない様子。
そこで、アセチルLカルニチン500mg*2を追加したら、ケトン体0.5に上昇。
500mg*4に増量してみるよう伝えた。
ちにみに、「L-カルニチン」の合成は肝臓、腎臓、脳で行なわれます。カルニチンを合成できない心臓や骨格筋は、血液中のカルニチンを取り込んで利用しています。
ここまでは、ミトコンドリアの膜を通過する時に「L-カルニチン」が必要な「長鎖脂肪酸」の話です。
一方、「L-カルニチン」が必要ではないオイルもあります。それが「中鎖脂肪酸」です。
中鎖脂肪酸
バターは、長鎖、中鎖、短鎖のバランスが良いですが、主体は長鎖脂肪酸です。
なので、これを食べている人で、代謝に問題がある人は、「L-カルニチン」をサプリで摂取することで改善する可能性があります。
しかし、「L-カルニチン」のサプリって高いんですよね...。iHerbでも、1000mgが100錠入って、4500円くらいです。
一方、中鎖脂肪酸は、「L-カルニチン」と結合しなくてもミトコンドリアの膜を通過できます。
脂質代謝に慣れるまでの間、中鎖脂肪酸の摂取を増やせば、「L-カルニチン」をサプリで摂らなくてもいいかもしれません。
中鎖脂肪酸は、ケトン体を多く産生でき即効性があるというメリットがありますが、エネルギーの持続時間が短いというデメリットもあります。
次は、中鎖脂肪酸である「ココナッツオイル」や、それを精製した「MCTオイル」の違いについて説明します。
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ココナッツオイルとMCTオイルの違い
『アスリートのための最新栄養学(上)~三大栄養素編 / 著者:山本義徳』より引用
4.4 MCT(中鎖中性脂肪酸)
MCTとは中鎖中性脂肪酸のことです。
中鎖というのは炭素の数が中くらいということで、脂肪酸に含まれる炭素の数が8個のカプリル酸や10個のカプリン酸(オクタン酸)のことを、MCTと呼びます。
このように炭素数が少ないと消化吸収が早く、またミトコンドリアに運ばれるときにカルニチンを必要としないため、エネルギー化も早くなります。
なお炭素数が12個のラウリン酸はココナッツオイルに多く含まれ、このラウリン酸も中鎖脂肪に分類することがあります。
「カルニチン」を必要とするか否か」で言えば、ラウリン酸はカルニチンを必要としません。(※45)つまりこの意味ではココナッツオイルは中鎖脂肪に分類されるのです。
ココナッツオイルの約半分がラウリン酸で、10%程度がカプリル酸とカプリン酸、残りは長鎖脂肪酸です。
ココナッツオイルは味も良く、簡単に入手できますが、効果としては純粋なMCTのほうが高くなります。
MCTは長鎖脂肪酸(パルミチン酸)に比べて4倍速く酸化され、ケトン体生成量は10倍にもなります。(※46)
しかし、ココナッツオイルは摂取3時間後に血中ケトン体レベルが最大になるのに対し、MCTは摂取1.5時間後に最大レベルになります。(※47)
つまりココナッツオイルはMCTに比べ、それだけ吸収が遅いということになります。
(278~279p)
ココナッツオイルとMCTの違いです。
- ココナッツオイル・・・ケトン体レベルは摂取3時間後に最大になる(少し吸収が速い)
- MCTオイル・・・ケトン体レベルは摂取1.5時間後に最大になる(吸収が速い)
また、MCTは安全性が高くて、医療や介護現場で40年以上利用されてきたオイルでもあります。例えば以下のような状態の人です。
- 未熟児
- 腎臓病患者
- てんかん患者
- 消化器系の手術をした患者
- 低栄養状態の高齢者
このように、栄養失調で、エネルギー不足で、消化吸収能力が低い人に使われてきたので、普通の人も安心して利用できます。
ただ、吸収が速いのでお腹が緩くなることがあります。その場合は小分けにして摂取するとよいそうです。
中鎖脂肪酸は素早くエネルギーになるので、脂質代謝に慣れた後も、状況に応じて摂取するとよいです。
私は朝食を抜く場合は、空腹では出かけません。食事の変わりにプロテインと脂質を摂取します。
冷蔵庫に常にあるのはバターなので、たいていはこれをエネルギー源にしますが、ココナッツオイルがある時は、バターよりもココナッツオイルを食べます。
エネルギーに変わる速度が速いからです。ただ、急いでいる時に固まっているとイライラしますが...。
MCTは高くて量が少ないので買っていません。
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鉄は脂質代謝にも必要
脂質不足ではなくても、鉄不足があると、脂質代謝が上手くいきません。
鉄はミトコンドリアの内膜で起こるエネルギー代謝「電子伝達系 でんしでんたつけい」で必要なミネラルです。
この「電子伝達系」の反応によって、たくさんのATPが作られます。
エネルギー代謝は、以下の記事で詳しく説明しています。
エネルギー代謝の電子伝達系については、以下の記事で詳しく説明しています。
鉄が足りないと脂肪をエネルギーにすることができなくなるので、生理によって鉄が不足しやすい女性は要注意です。
鉄の過剰摂取は危険という考えを改めます。鉄サプリを半年間飲んでみて思う事
生理がない男性は、鉄不足になる事はあまりないのですが、「長期間、糖質ばかり食べて動物食品をほとんど食べてこなかった人」や、「何かの疾患が原因で継続的に出血がある人」はなる可能性があります。
脂質の量を減らす実験
ここまで、糖質制限をしている時に、脂質を減らして体調を崩してしまう原因や対策についてお話してきました。
私は脂質の重要性を十分分かっています。
しかし、今あえて減らしています。
私は糖質制限を始めてから基本的にバターを50g食べていたのですが、実は2018年8月終わりからバターを無し~10gで実験しています。
8月にイギリスの「マイプロテイン」というメーカーの安いプロテインを両親に買った事がキッカケです。量を買ったので消費する為に、私も少しもらって+30gを飲むことにしました。
マイプロテインをクレジットカードではなくVプリカを使って購入してみた
1日に30gを2回飲む事になりました。
そのちょっと前に、以下の記事を読んでいたので、プロテインを増やした事を機にバターの量を減らしてみる事にしました。
『精神科医こてつ名誉院長のブログ バターよりプロテインの方が良い』より引用
ココナッツオイルよりバターの方が断然良い…と3年前はバターを推奨していた。
光文社の本にも書いたけど、バターは良いエネルギー源となります。
しかし、長年のタンパク不足の人は、バターで胃がムカムカする、お腹が下り調子が悪くなる、と言います。
今は何と言ってもプロテインが一押しで、それでも足りなければバターを追加、と言うスタンス。
自分は昼はプロテイン60g(180cc)。
これで十分満腹なのだけど、その後バタースープを飲むと、ATPが急に合成されるのか体が急に熱くなり異常発汗。
自分の場合は、そこまでする必要なないと判断しています。
その根拠は、その後説明されました。
『藤川徳美医師 facebook 2018年9月30日』より引用
質的な栄養失調→ATP不足→精製糖質の過食(嫌気性解糖主導)。
以前、過食症には生クリーム、バターなどの動物性脂肪を推奨していた。
それも悪くないのだが、それより先にプロテインを投与した方が即効性があり効果も高い。
細胞内成分はタンパク質でできている。タンパク不足があるとミトコンドリア機能が低下している。
プロテインでミトコンドリア機能を回復させて、好気性代謝ができる状態にした後、脂肪酸燃料を投入した方が効率的。
つまり、エンジンをパワーアップ後に燃料を投入する。
当然、補酵素のB、C、電子伝達系のFeも必要。
必要な栄養は個人差がありますし、同じ人でも常に一定ではありません。
なので、今の私の体質で、タンパク質を増やして、バターを減らすとどうなるのか気になります。
脂質を摂取していてもフラフラになるケース
本記事で紹介したのは、糖質制限をしているつもりが、色んな理由でただのカロリー制限になってしまっていた...という単純な話でした。
なので解決策は、以下のように脂質の摂取の仕方を工夫する事に重点を置きました。
- 脂質の消化が悪い → 消化酵素(タンパク質)不足を解消させる
- 脂質の代謝が悪い → L-カルニチン、合成に必要な栄養素を摂取する
- 長鎖脂肪酸と中鎖脂肪酸を状況によって使い分ける
しかし、本記事で紹介した理由とは別に、糖質制限をして脂質もしっかり摂取しているのに、何故かエネルギー不足でフラフラになる事もあります。
これを「低T3症候群」というのですが、次回はこのお話になります。
糖質制限の副作用?抜け毛、冷え、だるい...低T3症候群になりやすい人の特徴とはへ続く
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