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谷本議員らがノーマスクで強制降機! 釧路空港のエアドゥ機、「憲法違反を公然と行う航空各社への行政指導を国交省に求める」

 

 

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電子伝達系(呼吸鎖)について分かりやすく説明してみた②複合体Ⅲ~Ⅴ

 

電子伝達系の後半になります。前半は以下です。

 

 

電子伝達系(呼吸鎖)について分かりやすく説明してみた①複合体Ⅰ~Ⅱ

 

 

前半でも少しお話しましたが、「電子伝達系」の説明は情報源によってバラバラです。

 

 

簡単な生化学の本ではだいたい同じような説明になっていますが、さらに一歩踏み込んで調べようとすると、非常に複雑で、どの情報も言っている事が微妙に違います。そんなのネットだけだろ、と思われるかもしれませんが、本もです。

 

 

今回、調べた情報をまとめて、だいたいの流れを書きましたが、元ネタがそのような状態なので、私としても半信半疑です。

 

 

調べれば調べる程、納得のいかない事がでてくるので、何回書き直したか分かりません。

 

 

もっと時間をかけて調べて、完全に分かってから記事を公開しようと思っていたのですが、気が済むまで調べ始めると何時公開できるか分かりません。従って、今後修正するという前提で、現時点でまとめた事を公開することにしたのです。

 

 

なので、本記事の説明は、あくまで現在言われている説の1つだという感じで捕らえるようにして下さい。

 

 

それでは、続きの「複合体Ⅲ」から説明します。

 

 

 

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③ユビキノール:シトクロムcレクターゼ複合体(複合体Ⅲ)

 

 

「複合体Ⅰ」や「複合体Ⅱ」から離れた「ユビキノール」は、「ユビキノール:シトクロムcレクターゼ複合体(複合体Ⅲ)」に到着します。

 

 

ユビキノールは複合体Ⅲへ

 

 

「複合体Ⅲ」は、「複合体Ⅰ」や「複合体Ⅱ」から生じたユビキノールの電子を「シトクロムc」に伝達する役割と、

 

 

マトリックスの「H+」を、膜間腔に放出する役割があります。

 

 

構造はこのようになっています。

 

 

ユビキノール:シトクロムcレクターゼ複合体(複合体Ⅲ)

 

 

「シトクロムc」や「Fe-S(鉄硫黄クラスター)」については、前半でお話しました。

 

 

「QH2サイト」は、ユビキノールを受け入れる所、「Qサイト」はユビキノンやセミキノンを受け入れる所です(※セミキノンは後で説明します)。

 

 

「bL」「bH」は、ヘムタンパク質で、「シトクロムb」と言います。「bL」のことを「b562」、「bH」のことを「b566」と表記しているものもあります。

 

 

中には「bL」と「bH」は繋がった構造をしていて、酵素内を貫通している・・・と説明している情報もあるのですが、そのように書いていない情報が圧倒的だったので、「bL」「bH」と別々に描きました。

 

 

それでは、話を戻します。

 

 

この「複合体Ⅲ」での電子のやり取りは、2段階です。

 

 

まずはステップ1です。

 

 

複合体ⅠやⅡから来た「ユビキノール(QH2)」は、複合体Ⅲの「QH2サイト」に結合します。

 

 

 

ユビキノール(QH2)はQH2サイトに結合

 

 

「QH2サイト」や「Qサイト」の記載がなく、「QH2はシトクロムbに結合する」と書いてある情報もあります。

 

 

 

「ユビキノール(QH2)」は、電子(e+)を2つ、水素イオン(H+)2つを運んできたわけですが、「電子」の1つを「Fe-S」に、もう1つを「bL」に渡します。

 

 

 

そして、残った「水素イオン」2つは膜間腔に放り出されます。

 

 

電子をFe-SとbLに伝達し、水素イオンを膜間腔に放出

 

 

 

「QH2(ユビキノール)」は水素を失ったので、酸化型の「Q(ユビキノン)」になります。

 

 

その後、ユビキノンは、「Qサイト」へ移動します。

 

 

そして、「bL」に移動した電子は、「bH」を経て「Qサイト」に結合した「Q(ユビキノン)」に渡されます。

 

 

電子はシトクロムcとユビキノン(Q)へ渡される

 

 

「ユビキノール」から「Fe-S」に移動した電子は、「シトクロムc1」を経て、独立したヘムタンパク質である「シトクロムc(酸化型Fe3+)」に渡されます。

 

 

シトクロムcの酸化型(Fe3+)と還元型(Fe2+)

 

 

「シトクロムc」は、電子を受け取ることで「還元型(Fe2+)」となり、複合体Ⅲを去ります。

 

 

シトクロムcは複合体Ⅲを去り、ユビキノンはH+を取り込む

 

 

電子を1つもらった「Q(ユビキノン)」は、マトリックス側から「水素イオン(H+)」を取って「・Q-(セミキノン)」となります。

 

 

「ユビキノン」に2つの水素がつくと「ユビキノール」ですが、1つの水素がつくと「セミキノン(ユビセミキノン)」です。

 

 

ユビキノンとセミキノンとユビキノール

 

 

 

ここまでが「複合体Ⅲ」の第一段階です。まだ終わりではありません。

 

 

 

ここからはステップ2です。

 

 

次に、また別の「QH2」が「QH2サイト」に結合します。

 

 

複合体Ⅲステップ2

 

 

そして、ステップ1と同じように、「QH2」は電子を「Fe-S → シトクロムc1 → シトクロムc」と渡し、シトクロムcを還元型にします。

 

 

同じく「H+」は膜間腔に放り出されます。

 

 

そして、「ユビキノール(QH2)」は、「ユビキノン(Q)」になります

 

 

この説だと、ステップ2によって、酸化された「QH2サイト」にいる「ユビキノン」はこの後どうなるか不明です。

 

 

そして、もう1つの電子は「bL → bH → ステップ1によって生じたセミキノン」に渡されます。

 

 

電子を得た「セミキノン」は、マトリックスから「H+」を取り込み、還元型の「ユビキノール(QH2)」になって、複合体Ⅲを出て行きます。

 

 

これで「複合体Ⅲ」の流れは終わりです。

 

 

しかし、もう1つ別の説も紹介します。もちろん、どちらが正しいかは分かりません。こちらもステップ1と2に分けて説明します。

 

 

 

では、別の説のステップ1です。

 

 

まず最初に、「QH2」が「QH2サイト」に結合します。そして、電子(e-)を「Fe-S」と「bL」に1つずつ渡し、残った水素イオン(H+)を膜間腔に放り出します。

 

 

ここまでは同じで、違うのはここからです。

 

 

電子と水素イオンを渡した「ユビキノール」は還元型の「ユビキノン」になるのですが、「QHサイト」から「Qサイト」へ移動しません。

 

 

電子はシトクロムcとユビキノンへ、ユビキノンはH+を取り込む

 

 

そして、「bL」が受け取った電子は、「bH」を経て、別の「ユビキノン」に渡されます。

 

 

電子を受け取った「ユビキノン」は、マトリックスから「水素イオン(H+)」を1つ取り込んで「セミキノン」になります。

 

 

一方、「Fe-S」が受け取った電子は、「シトクロムc1」を経て、「シトクロムc」に渡されます。「シトクロムc」は還元型(Fe2+)になります。

 

 

シトクロムcとユビキノンは複合体Ⅲを離れ、セミキノンはとどまる

 

 

そして、「QH2サイト」にいた「ユビキノン」と、還元型になった「シトクロムc」は複合体Ⅲを去ります。

 

 

「セミキノン」は「Qサイト」に留まります。

 

 

 

ここからステップ2です。

 

 

別の「QH2」がやってきて、電子を「Fe-S」と、「bL」に渡し、水素イオンを膜間腔に放りだします。

 

 

QH2は電子を伝達し、水素イオンを膜間腔に放り出す

 

 

「Fe-S」に渡された電子は、「シトクロムc1」を経て、「シトクロムc」へ、

 

 

「bL」に渡された電子は、「bH」を経て、ステップ1で生じた「セミキノン」へ渡されます。

 

 

電子はシトクロムcとセミキノンへ、セミキノンはH+を取り込む

 

 

「セミキノン」はマトリックスから「水素イオン(H+)」を取り込んで「ユビキノール」になります。

 

 

ユビキノン、ユビキノール、シトクロムcは複合体Ⅲから離れる

 

 

還元型になった「シトクロムc(Fe2+)」と、

 

 

「QH2サイト」にいた「ユビキノン(Q)」と、「Qサイト」の「ユビキノール(QH2)」は、複合体Ⅲを離れます。

 

 

以上が複合体Ⅲの流れになりますが、このように情報がハッキリしないので大まかな流れだけ覚えるようにした方がよさそうです。

 

 

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④シトクロムcオキシターゼ複合体(複合体Ⅳ)

 

 

複合体Ⅲを離れた還元型の「シトクロムc」は、電子伝達系の最後である「シトクロムcオキシターゼ複合体(複合体Ⅳ)」に辿り着きます。

 

 

還元型のシトクロムcは複合体Ⅳへ

 

 

この複合体Ⅳは、シトクロムCから電子を預かって酸化型のシトクロムcにし、

 

 

電子を酸素(O2)に渡して、水素イオンも取り込み、水(H2O)を生成します。

 

 

「複合体Ⅳ」は、13個のサブユニットから構成されているとのことなのですが、酵素活性の機能的な中核となるのは「サブユニットⅠ」と「サブユニットⅡ」だそうで、調べてみると以下のようにサブユニットⅠ~Ⅲまでを描いている画像が多かったです。

 

 

複合体Ⅳのサブユニット

 

 

で、機能的な中核であるⅠとⅡは、このようになっています。

 

 

シトクロムcオキシターゼ複合体(複合体Ⅳ)

 

 

「サブユニットⅠ」に2つあるのは、「CuA」です。「Cu」は胴です。

 

 

「サブユニットⅡ」には、2種類のヘム、「ヘムa」「ヘムa3」

 

 

そして、「CuB」があります。

 

 

「ヘムa」は「Cyt a」、「ヘムa3」は「Cyt a3」と表記している情報もあります。

 

 

流れはこうです。

 

 

「シトクロムc」が「複合体Ⅳ」に到着すると、電子は「CuA」に移動します。その後、電子は「CuA」、「ヘムa」、「ヘムa3」、「CuB」と移動していきます。

 

 

 

電子はCuA、CuA、ヘムa、ヘムa3、CuBと移動する

 

 

電子を伝達した「シトクロムc」は酸化型の「Fe3+」に戻り、「複合体Ⅳ」を離れます。

その後、また還元型の「Fe2+」が電子をつれてやってきます。そして、同じように電子を伝達します。

 

 

酸化型のシトクロムcは去り、還元型のシトクロムcが来る

 

 

 

電子回分によって、「ヘムa3 (Fe3+)」と、「CuB (Cu2+)」が還元されます(※Feは鉄です)

 

 

ヘムa、ヘムa3、CuB

 

 

 

●(Fe3+) → 還元 → (Fe2+) 

●(Cu2+) → 還元 → (Cu+)

 

 

それによって、「酸素分子」が結合できるようになります。

 

Fe2+とCu+の間に酸素分子が結合する

 

 

 

すると、酸素はその電子を受け取ります。

 

 

酸素は電子をもらって還元される

 

「酸素分子」はさらに電子を2つ受け取り、マトリックスから水素イオンも取り込みます。

 

 

酸素分子は電子2つと水素イオン2つを受け取る

 

 

すると、結合もなくなります。ここまで「酸素分子」が手に入れたのはこれだけです。

 

 

酸素の結合が切れ、Fe-OH HO-Cuになる

 

 

そして、「水素イオン(H+)」を2つ取り込みます。

 

 

Fe-OH HO-Cuは水素イオン2つを取り込む

 

 

「O2」は、シトクロムcから「電子(e-)」つと、ミトコンドリアのマトリックスから、「水素イオン(H+)」つ受け取ったことになります。

 

 

酸素分子と電子4つと水素イオン4つ

 

 

それで、2分子のが生成されます。

 

 

水分子H2O

 

 

電子の伝達はこれで終了です。

 

 

「ミトコンドリアでの代謝には酸素が必要」と言われるのは、内膜の「電子伝達系」の最後で、電子の受け取り手である「酸素」が必要だからです。

 

 

で、この酸素が水分子になるまでの流れは、別の説もあります。一応紹介しておきます。

 

 

酸素が電子2つによって還元されるところまでは同じです。

 

 

酸素分子が電子によって還元される

 

 

3つめの電子が1つ取り込まれて、水素イオンも1つ取り込まれます。

 

 

電子1つと水素イオン1つを取り込む

 

 

そして、4つめの電子が1つ取り込まれて、水素イオンも1つ取り込まれます。その後結合が切れます。

 

 

電子1つと水素イオン1つを取り込み、結合が切れる

 

 

後は水素イオンを2つもらうので同じです。

 

 

細かい違いなので、「酸素に電子4つと、水素イオン4つが結びついて水分子になる」というところだけ覚えておくとよいでしょう。

 

 

ところで、水を生成する為に、マトリックスから「水素イオン(H+)」が4つ取り込まれたわけですが、

 

 

複合体Ⅳでは、これとは別に4つの「H+」が取り込まれ、膜間腔に放り出されます。

 

 

複合体Ⅳは水素イオンを膜間腔に放り出す

 

 

 

「電子」の伝達は終わりましたが、まだ膜間腔に放り出された「水素イオン(H+)」と、5つ目の複合体である「ATP合成酵素」が残っています。

 

 

 

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⑤ATP合成酵素(複合体Ⅴ)と酸化的リン酸化

 

 

「電子伝達系」の目的はATPを作ることです。

 

 

ここからは、内膜でどのようにして「ATP」が合成されるのか説明していきます。

 

 

複合体Ⅰ~Ⅳの間を電子が渡っていくエネルギーで汲み出された「水素イオン(H+)」は、やがて膜間腔の中で溢れ、マトリックス側より「H+」の濃度が濃くなります。

 

 

膜間腔の水素イオンの濃度が濃くなる

 

 

ここで思い出してほしいのが水力発電です。

 

 

水力発電は、ダムに溜めた水が流れる力でタービンを回して発電します。その仕組みと「ATP合成酵素」は良く似ていて、膜間腔に溜まった「H+」がマトリックスに流れる力を利用して、「ADP」と「リン酸」から「ATP」を作ります。

 

 

 

これを「酸化的リン酸化 さんかてきりんさんか」と言います。

 

 

ただし、基本的に内膜は「水素イオン(H+)」を通さないので、どこからでもマトリックスに戻れるわけではありません。

 

 

「H+」がマトリックスに戻る道が、5つ目の複合体「ATP合成酵素(複合体Ⅴ)」で、タービンに相当するものがついています。

 

 

従って、「世界最小のモーター」と言われています。

 

 

ATP合成酵素(複合体Ⅴ)

 

 

説明の為に、ポイントとなる部分だけデフォルメして描きましたが、厳密にはもっと入り組んでいて形も歪んでいます。

 

 

「ATP合成酵素」は、大きく「F0」と、「F1」に分けられています。

 

 

「a」の部分が「H+」をローターに導きます。

 

 

そして、「H+」が膜間腔から「F0」を通ってマトリックスへ移動すると、膜に埋まっている「ローター」と、その下の「軸」が回転します。

 

 

H+がマトリックスに移動

 

 

そして、マトリックス側にぶら下がって、「b」に固定されているのが「ATP」を合成するところです。

 

 

こちらが断面図です。正確に言うと、中心の軸は非対称になっています。

 

 

αとβの2種類のサブユニット

 

 

「α」と「β」の2種類のサブユニットが、3個ずつ交互に並んでいます。

 

 

この部分が立体構造を変えながら、「ADP」と「リン酸」から「ATP」を作ります。

 

 

ADPとリン酸からATPを作る

 

 

 

一方、マトリックスに戻った「水素イオン(H+)」は、再び膜間腔に放出されたり、水分子の生成の為に取り込まれたりします。

 

 

 

最後に

 

 

始めにお話した通り、「電子伝達系」については、私も迷いながら書いています。

 

 

説明の内容だけでなく、複合体の形まで人によって言うことが違うからです。

 

 

それに、複合体の説明ででてくる専門用語を調べている過程で、「まだ解明していない」という記述も何度か読みました。

 

 

そもそも、目に見えない世界なので、情報が食い違っていても、何が間違いで、何が正しいのか確認しようがありません。

 

 

確証がない事を書くのは嫌いなのですが、今後健康の事を語っていく上で外せない部分です。なので、迷っているところや、分からないところを含めてそのまま記事にしました。

 

 

間違っているところもあると思いますが、さすがに全て間違いということはないので、鵜呑みにせず、参考程度にとどめていただければと思います。

 

 

なお、記事全体としても気に入らないところが多いので、本記事は時々修正します。

 

 

 

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電子伝達系(呼吸鎖)について分かりやすく説明してみた①複合体Ⅰ~Ⅱ

 

「好気呼吸を行なう代謝」の最終段階の反応である「電子伝達系 でんしでんたつけい」の話になります。別名には、「呼吸鎖 こきゅうさ」や、今は教科書で使われなくなった「水素伝達系」があります。

 

 

「クエン酸回路」は、ミトコンドリアの「マトリックス」で反応が起きましたが、

 

 

「電子伝達系」の反応が行なわれる場所は、ミトコンドリアの「内膜」です。

 

 

「膜」は「リン脂質」という油成分でできています。

 

 

ミトコンドリアの外膜、内膜、膜間腔

 

 

「外膜」と「内膜」の間は、「膜間腔 まくかんくう」と言うのですが、ここも少し関係あります。

 

 

ちなみに、内膜のヒダ状のところは「クリステ」と言います。

 

 

では、内膜や膜間腔でどんなことが起こるのか・・・ですが、イメージとしてはこんな感じです。

 

 

 

①堤防で仕切った反対側(膜間腔)へ、ポンプで水を送る

 

 

②溜まった水が発電機のある通り道を通って元の場所(マトリックス)に向かって流れる

 

 

③発電機のタービンが回って発電する

 

 

 

②~③は「水力発電」と似ています。

 

 

そして、①では、特定の順番にそって電子が運ばれていくので、この反応のことを「電子伝達系」と呼ぶのです。

 

この「電子伝達系」では、馴染みのない物質がたくさん出てきます。なので、混乱することがないように、流れを説明する前に、物質の紹介をします。

 

 

 

 

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内膜に埋め込まれている複合体

 

 

まず、ミトコンドリアの内膜の構造についてお話します。

 

 

内膜には「タンパク質」が埋め込まれているのですが、それぞれⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ、Ⅴと番号がつけられています。

 

 

複合体Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ、Ⅴ

 

 

これらは「膜タンパク質」と言って、それぞれ以下のような名前がついています。

 

 

  • 複合体Ⅰ・・・NADH:ユビキノンレクターゼ複合体

 

  • 複合体Ⅱ・・・コハク酸デヒドロゲナーゼ複合体

 

  • 複合体Ⅲ・・・ユビキノール:シトクロムcレグターゼ複合体

 

  • 複合体Ⅳ・・・シトクロムcオキシターゼ複合体

 

  • 複合体Ⅴ・・・ATP合成酵素

 

 

 

複数のサブユニットからなる複雑な構造をしているので「複合体」と言われています。情報源によって「呼吸鎖複合体」とか、「酵素複合体」とか、「タンパク複合体」と表現されています。

 

 

このⅠ~Ⅳの「複合体」を、水素の持つ「電子(e-)」が移動していくわけです。

 

 

水素原子の陽子と電子

 

 

 

そして、一番最後の「複合体Ⅴ(ATP合成酵素)」は、分子サイズのモーターで、例えるなら水力発電のタービンです。ATPはこのモーターが回る時のエネルギーによって作られます。

 

そして、そのタービンを回すのが「水素イオン(H+)(陽子の事)」です。

 

 

「電子(e-)」と「水素イオン(H+)」という言葉がでてきたので、これについても簡単に説明します。

 

 

 

原子について

 

 

物質を分解していくと、「分子」になります。

 

その「分子」をさらに分解していくと、「原子」になります。

 

 

 

物質と分子と原子

 

 

水は分解していくと、「H2O」という「分子」になります。

 

水分子「H2O」を分解すると、水素(H)が2つ、酸素(O)が1つに分けられます。

 

その1つ1つが「原子」です。

 

以下が原子の構造です。「水素原子」と「ヘリウム」を例にします。

 

 

 

水素原子とヘリウム原子の構造

 

 

 

ここで、「電子(エレクトロン)」がでてきました。

 

原子の中心にあるのは、「陽子 (プロトン)」と「中性子 (ニュートロン)」です。そして、その周囲を衛星のように「電子」が回っているわけです。

 

 

ただし、「水素原子」は、「中性子」がない原子です。

 

 

「中性子」は電荷がゼロで、プラスでもマイナスでもない中性。

 

「陽子」はプラスで、「電子」がマイナスです。

 

 

日本人の感覚からすると、「陽」がプラスなら、マイナスは「陰」のはずですが、マイナスは「陰子」ではなく「電子」という名前がつけられています。先にマイナスの電子が発見されて、その後で「陽子」と「中性子」が発見されたから・・・という理由らしいですが、分かりにくいから名前を整備して欲しいですね。

 

 

ちなみに、「電子」の数と「陽子」の数は同じです。

 

 

  • 水素原子・・・電子1つ、陽子1つ

 

  • ヘリウム原子・・・電子2つ、陽子2つ

 

 

 

イオンとは

 

「原子」は電気的に中性です。

 

プラスの「陽子」と、マイナスの「電子」の数が同じだからです。

 

 

しかし、元々は電気的に中性でも、電子の数が変わって、マイナスかプラスの電荷をおびると、原子は「イオン」になります。

 

 

イオンには「陽イオン」と「陰イオン」があります。

 

 

 

陽イオン

 

 

 

陽イオン

 

 

元々は電気的に中性でも、何らかの原因で「電子(マイナス)」を失うとします。すると、「陽子(プラス)」の数が勝つので、原子は全体としてプラスの電気を帯びます。

 

これを「陽イオン」と言います。

 

 

「陽イオン」は、記号の右横に小さく「+」を書きます(※ちなみに、電子を2個失った場合は「2+」と書きます)

 

 

 

水素原子は、中性子がなく陽子(プロトン)が1つしかありません。従って、電子を失ってしまうと陽子だけになります。

 

その為「水素イオン(H+)」のことを「プロトン」と呼ぶことがあります。

 

 

 

陰イオン

 

 

「電子」は失うこともあれば、増えることもあります。

 

 

陰イオン

 

元々は電気的に中性でも、何らかの原因で「電子(マイナス)」を受け取るとします。すると、「電子(マイナス)」の数が勝つので、原子は全体としてマイナスの電気を帯びます。

 

これを「陰イオン」と言います。

 

 

「陰イオン」は、記号の右横に小さい「-」を書きます(※ちなみに、電子を2個受け取った場合は「2-」と書きます)

 

 

 

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「NADH」と「FADH2」

 

 

「電子伝達系」では、「酸化 さんか」と「還元 かんげん」という言葉が繰り返しでてくるので、意味を書いておきます。

 

 

酸化・・・水素を失う事、電子を失う事

 

還元・・・水素を得る事、電子を得る事

 

 

 

「解糖系」や「クエン酸回路」で生じた「NADH」や「FADH2」は、「電子伝達体」と言って、水素原子(の持つ電子)を預かって運ぶ働きがあります。

 

 

「NADH」と「FADH2」は還元型なので、水素(の持つ電子)を得た状態です。水素を得る前は、それぞれ、酸化型の「NAD+」、「FAD」でした。

 

 

NAD+とFADの酸化型と還元型

 

 

酸化型の「NAD+」は、2つの水素原子によって、還元型の「NADH(厳密には NADH + H+ のセット)」になり(分かりにくいので図にします)、

 

 

NAD+2H→NADH+H+

 

 

酸化型の「FAD」は、2つの水素原子によって、還元型の「FADH2」になります(※こちらは単純なので図にしません)

 

 

 

こうして「NADH」と「FADH2」の預かった水素は、「電子伝達系」でATPを合成する為に使われます。

 

 

電子伝達系では、「NADH」は「複合体Ⅰ」で、「FADH2」は「複合体Ⅱ」で利用されます。

 

 

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CoQとシトクロムC

 

 

「電子伝達系」では電子が「複合体」を移動していくわけですが、それ以外にも、電子の移動の「足場」となるものが存在します。

 

それが「CoQ」と、「シトクロムc」です。

 

 

CoQとシトクロムc

 

 

※ⅠとⅢの間には「Ⅱ」がありますが、分かりやすくする為にこの図では省略しました。

 

 

 

CoQ(ユビキノン)

 

 

「Q」と記したのは、「CoQ」です。「Co」は、「コエンザイム(補酵素)」と読みます。なので、「CoQ」は、「補酵素Q」です。

 

先ほど「内膜は油成分でできている」と言いましたが、「CoQ」は疎水性なので、膜の油の中を浮遊して動いています。

 

この「CoQ」は、「複合体Ⅰ → 複合体Ⅲ」「複合体Ⅱ → 複合体Ⅲ」と行き来し、電子を伝達します。

 

 

なお、「CoQ」には別名が多く、「補酵素Q」の他に、「コエンザイムQ10(キューテン)」、「ユビデカレノン」、「ビタミンQ」、「ユビキノン(UQ)」があります。

 

酸化型を「ユビキノン」、還元型を「ユビキノール」と言います。

 

なので、本記事では、「Q」を「ユビキノン」と言う事にします。

 

 

 

シトクロムC

 

 

「C」と記したのは、「シトクロムC(シトクロームC)」です。「Cyt c」等と表示されることもあります。

 

「シトクロムc」は、単独のタンパク質です。膜の中を泳いでいた「CoQ」と違って、水っぽい性質があり、内膜の膜間腔側に存在しています。

 

「シトクロームC」は、「複合体Ⅲ」から電子を受け取って、「複合体Ⅳ」に伝達します。

 

酸化型は「フェリシトクロムc」、還元型を「フェロシトクロムc」と言います。

 

 

なお、この他にも「シトクロム」という名前がついたものがいくつか出てくるので混乱しないようにして下さい。

 

 

一通り紹介が終わったので、ここから本題の「電子伝達系」についてお話します。

 

 

 

電子伝達系の流れ

 

 

まず、全体の流れを先に説明します。

 

 

「NADH」や「FADH2」が預かった水素(電子(e-)と水素イオン(H+))は、切り離されて、それぞれ別の使われ方をします。

 

 

「電子」の方は、膜に埋め込まれた複合体Ⅰ~Ⅳに向かってリレー(伝達)され、最後は水になります。

 

 

 

 

 

一方、「陽子(H+)」の方は、リレーで生じたエネルギーによってマトリックスから膜間腔へ移動します。

 

 

 

 

 

 

 

  • 電子(e-)   → Ⅰ~Ⅳを伝達

 

  • 陽子(H+) → 伝達する時のエネルギーで膜間腔へ

 

 

 

そして、膜間腔の「陽子(H+)」が、「複合体Ⅴ」を通ってマトリックスに移動する時のエネルギーで、ATPが合成されます。

 

 

 

 

 

 

シンプルに言うとこうなのですが、一つ一つを見ていくと細かくて面倒です。

 

 

まずは複合体Ⅰから説明します。

 

 

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①NADHデヒドロゲナーゼ複合体(複合体Ⅰ)とNADH

 

 

「複合体Ⅰ(NADHデヒドロゲナーゼ複合体)」を大雑把に図にするとこんな感じです。

 

 

複合体Ⅰ(NADHデヒドロゲナーゼ複合体)

 

 

この酵素の役割は、「NADH」を「NAD+」に還元し、「Q(ユビキノン)」を「QH2」に還元することです。そして、その時のエネルギーで「水素イオン(H+)」を膜間腔にくみ上げます。

 

流れはこうです。

 

 

「NADH」は、酵素である「複合体Ⅰ(NADHデヒドロゲナーゼ)」の中に入って、「FMN」に電子(e-)2つと、「H+」を渡します。

 

 

FMNの還元

 

 

「FMN(フラビンモノヌクレオチド)」とは、電子伝達系でNADHの電子を一番最初に受け取る「電子伝達体」です。ビタミンB2から合成される為、これが不足すると「FMN」も不足し、電子伝達系が上手く働かなくなります。

 

酸化型の「FMN」は、マトリックスから「H+」を1つとりこんで、還元型の「FMNH2」になります。

 

 

ここで注意です。実はこの過程にはいくつもの説があります。

 

 

例えば、「NADH」は複合体の中に入らずに、以下のように電子(e-)だけが複合体の中に入っていき、電子を「FMN」に渡す・・・とだけ説明しているものもあります。でも、この説だと、「じゃあどうやってH+を手に入れてFMNH2になるんだ」と言いたくなります。

 

 

FMNの還元

 

 

また、「NADHとH+が、「電子」と「H+」を2つずつFMNに渡す」という意見もありました。

 

 

情報源によって説明がバラバラで、私が説明したことも1つの説に過ぎません。私もどれが正解か分からないので、とりあえず辻褄が合うものを紹介していますが、信じていません。

 

 

従って、「電子が伝わっていく」という、どの情報にも共通している大まかな流れだけ頭に入れておいて下さい。

 

 

 

では話を先ほどの説に戻します。

 

 

電子を渡した「NADH」は、酸化型の「NAD+」となって、複合体Ⅰから出ます。

 

 

 

 

鉄硫黄クラスター

 

 

そして「FMNH2」は、電子(e-)を「Fe-S」に伝達します。

 

 

 

「Fe-S(鉄硫黄クラスター)」は、鉄と硫黄からなるクラスター(集合体)です。ここでは簡略化して描きましたが、「Fe-S」は7~8個存在していて、この間を電子が飛び移っていきます。

 

 

 

そして、電子は、「ユビキノン(Q)」にバトンタッチされます。ユビキノンは、電子2つを1つずつ受け取り、

 

 

 

ユビキノンの還元

 

 

 

さらに、マトリックスにある「H+」を2つ受け取って、「QH2」になります。分かりやすくするとこうです。

 

 

 

酸化型のユビキノンと還元型のユビキノール

 

 

 

そして、「QH2」は複合体Ⅰから離れて、複合体Ⅲに進みます。

 

 

さて、複合体Ⅰの中を電子が飛び移っていったわけですが、この時のエネルギーで、マトリックスにある「H+」が膜間腔にくみ上げられます。

 

 

 

プロトンポンプ

 

 

(NADH1分子の)2つの電子が移動すると、膜間腔に4つの「H+」が移動します。

 

 

「H+(プロトン)」をくみ上げるので、これを「プロトンポンプ」と言います。

 

 

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②コハク酸デヒドロゲナーゼ複合体(複合体Ⅱ)とFADH2

 

 

 

「NADH」は、「複合体Ⅰ」で電子を渡しました。

 

 

一方、「FADH2」は、「複合体Ⅱ」で電子を渡します。

 

 

複合体Ⅱは、「コハク酸デヒドロゲナーゼ複合体」という名前です。これは「クエン酸回路」でコハク酸をフマル酸へ変える時にでてきた酵素と同じものです。

 

クエン酸回路(TCA回路)について分かりやすく説明してみた

 

 

 

こちらの記事でも書きましたが、この酵素によって「コハク酸」が水素原子を2つ失って「フマル酸」になる時に、酸化型の「FAD」が、還元型の「FADH2」になりました。

 

 

今回の話は、その「FADH2」のその後です。

 

 

「複合体Ⅱ」も、人によって言う事が違うので曲者なのですが、とりあえず調べてポイントを整理した構造がこちらです。

 

 

 

複合体Ⅱ(コハク酸デヒドロゲナーゼ複合体)

 

 

このように、4つのサブユニットから構成されていて、AとBが親水性。CとDが疎水性です。「Sdh」というのは、「succinate dehydrogenase(コハク酸デヒドロゲナーゼ)」のことです。

 

 

詳しく見ると、「Sdh A」に「FAD」が結合していて、「Sdh B」には「Fe-S(鉄硫黄クラスター)」が含まれています。

 

 

CとDは小難しくてよく分からないのですが、この2つの間に「ヘム」が結合し、「Q(ユビキノン)」が還元されるようです。

 

 

しかし、4つのサブユニットに分けて説明されている情報がほとんどなく、たまに見つけても小難しい言い回しばかりで理解に苦しみます。なので、今分かる範囲で簡潔に説明します。

 

 

まず、「コハク酸 → フマル酸」の過程を思い出して下さい。

 

 

 

コハク酸とFAD

 

 

 

「コハク酸」は水素2つを失って、「フマル酸」になります。

 

 

 

フマル酸とFADH2

 

 

 

「FAD」は、水素によって「FADH2」に還元されます。

 

 

すると、すぐに「Fe-S(鉄硫黄クラスター)」に電子を渡します。と同時に「H+」をマトリックスへ戻します。

 

 

 

鉄硫黄クラスター

 

 

 

こうして「FADH2」は、「FAD」になります。

 

 

「Fe-S」は厳密には3種類あって、これらを電子が1つずつ移動します。そして、「ユビキノン(Q)」が受け取ります。

 

 

と同時に、マトリックスの「H+」を2つ取り込み、「ユビキノン(Q)」は、「ユビキノール(QH2)」になります。

 

 

 

ユビキノンの還元

 

 

「ユビキノール」は、「複合体Ⅲ」へ向かいます。

 

 

ところで、「複合体Ⅰ」は、電子が伝達するエネルギーによって「H+」を膜間腔に移動させる機能がありました。しかし、「複合体Ⅱ」にはその機能がありません。

 

 

そのため、電子伝達系の説明で「複合体Ⅱ」は省略される事が多いのです。

 

 

ちなみに、この流れを、4つのサブユニットに分けて説明している説ではこのような図になっています。

 

複合体Ⅱ(コハク酸デヒドロゲナーゼ複合体)

 

 

 

 

③ユビキノール:シトクロムcレクターゼ複合体(複合体Ⅲ)

 

 

「複合体Ⅰ」と「複合体Ⅱ」から離れた「ユビキノール」が行き着く先が「複合体Ⅲ」です。

 

 

ユビキノールと複合体Ⅲ

 

 

ただ、話が長くなるので、ここで一旦切ります。

 

 

次回、電子伝達系(呼吸鎖)について分かりやすく説明してみた②複合体Ⅲ~Ⅴで「複合体Ⅲ」以降を説明していきます。

 

 

 

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クエン酸回路(TCA回路)について分かりやすく説明してみた

 

本記事では、「クエン酸回路」の流れを、「解糖系」でできた「ピルビン酸」から説明していきます。

 

 

以下の記事をまだお読みでない方は、先にこちらから読むことをオススメします。

 

解糖系について分かりやすく説明してみた

 

 

「解糖系」によって、1分子の「グルコース」から、2分子の「ピルビン酸」が生じました。

 

 

グルコースからピルビン酸

 

 

 

「クエン酸回路」は、ミトコンドリアのマトリックスで起きるので、ピルビン酸は「細胞質基質」から「マトリックス」に移動します。

 

 

ミトコンドリアは、2重の膜で覆われていて、膜は「リン脂質」という油成分でできています。

 

 

そして、「外膜」には、膜を貫通している「ポーリン」と呼ばれる、タンパク質でできた「低分子物質の通路」があります。この通路は分子量5000以下の親水性の分子を通すので、ピルビン酸のような小さな物質は自由に通過できます。

 

 

しかし、「内膜」には「ポーリン」はありません。

 

 

なので、ピルビン酸は、膜に埋め込まれている「ピルビン酸トランスロカーゼ」というタンパク質によって、マトリックスに運ばれます。

 

 

この時、「水素イオン(H+)」も運ばれます。

 

 

 

ピルビン酸輸送

 

 

 

マトリックスで「クエン酸回路」の反応が起きるのですが、

 

その為にはまず、「ピルビン酸」が「アセチルCoA」に変換される必要があります。

 

 

 

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【序章】ピルビン酸 → アセチルCoA

 

 

「CoA こえー」って何だ?・・・という人の為に、先に「CoA」について解説しておきます。

 

 

「CoA」の正式名称は、「コエンザイム A / 和名:補酵素A」です。

 

 

「補酵素 ほこうそ」というのは、「酵素ではないけど、酵素の反応に協力しているサポート役」です。そして、「CoA」の「A」は、最初に発見されたという意味です。

 

 

以下が「CoA」の構造になります。

 

 

CoA(コエンザイムA)

 

 

本記事で使用する絵ですが、通常は、炭素(C)、酸素(O)、水素(H)、窒素(N)、硫黄(S)、リン(P)と書くのですが、英語よりも日本語の方が親しみやすいので漢字にしました。

 

ただし、リン(カタカナだと見栄えがイマイチ)は英語にしました。

 

 

「CoA」は高エネルギーで、様々な基質と結合します。これがくっつくと活性化されるので、その後の反応が進みやすくなります。

 

 

 

「〇〇〇 CoA」・・・という物質は多く、クエン酸回路でも「アセチルCoA」の他に「スクニシルCoA」が登場します。「CoAがついた化合物」は、不安定でエネルギーを放出しやすい状態です。

 

 

 

それでは話を戻します。

 

 

「クエン酸回路」を進めるには、まず「ピルビン酸」を「アセチルCoA」に変えなければなりません。

 

 

この反応の酵素は、「ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体(脱水素酵素)」です。

 

 

名前は「脱水素(水素が外れる)」ですが、「脱炭酸(二酸化炭素が外れる)」「CoAによる活性化」の反応も起こす、巨大で複雑な酵素です。だから「複合体」なのです。

 

 

そして、以下が反応が起きる前のそれぞれの状態です。NADの説明は解糖系の記事でお話しました。

 

 

ピルビン酸と酸化型NADとCoA

 

 

反応後、「ピルビン酸」、「CoA」、「酸化型NAD」は、こうなります。

 

 

二酸化炭素と還元型NADHとアセチルCoA

 

 

それぞれがどのように変化したのか、順に説明します。

 

 

「ピルビン酸」からは、炭素が個と、酸素が個外れます。つまり、二酸化炭素(CO2)です。普段私たちが吐いているはここで生じるわけです。

 

 

二酸化炭素(CO2)が取れることを「脱炭酸反応」と言います。

 

 

しかし、今回のように酸化(水素を失う)と同時に脱炭酸する場合は「酸化的脱炭酸反応」と言います。

 

 

そして、残った「ピルビン酸」はこうなりました。

 

 

アセチル基

 

 

これを「アセチル基」と言います。

 

 

これが、先ほど説明した運搬役の「CoA」とくっついて、「アセチルCoA」になります。

 

 

「CoA」の一番左にあった「水素」が外れて、硫黄の横に「アセチル基」がくっつきます。

 

アセチルCoA

 

 

ちなみに、この「アセチルCoA」が省略される時、何故かこのように硫黄(S)を外に出して書きます。

 

 

アセチルCoA省略

 

 

 

そして、酸化型だった「NAD」は、水素を受け取って還元型の「NADH」になります。

 

 

「NAD」と「NADH」については省略していることもあるので、後ほど説明します。

 

「ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体」についても省略している部分があるので、後で補足します。

 

 

「アセチル基」は、炭素は「クエン酸回路」で二酸化炭素になり、水素はNADやFADに預けた後、「電子伝達系」を経て水分子になるので、化学的に分解されます。

 

 

それでは、「アセチルCoA」になったので、ここからは「クエン酸回路」のスタートです。

 

 

 

①アセチルCoA → クエン酸

 

 

ここまでの流れを俯瞰でみます。「クエン酸回路」はこのような順番で進みます。

 

 

クエン酸回路

 

 

「クエン酸」から始まるから「クエン酸回路」です。回路という名前の通り、一周して終わりではなく、何度もくるくると回ります。

 

 

まず、「アセチルCoA」は、「オキサロ酢酸」と出会います。ここで出合った「オキサロ酢酸」は、前のクエン酸回路の反応でできた化合物です。

 

 

以下が、「アセチルCoA」と、「オキサロ酢酸」、そして「水分子」です。

 

 

 

アセチルCoAとオキサロ酢酸と水分子

 

 

「クエン酸シンターゼ」という酵素が、これらを基質にして、「クエン酸」と「CoA」を合成します。

 

 

 

クエン酸とCoA

 

 

「アセチルCoA」は、「アセチル基」が外れたことで「CoA」に戻ります。

 

「CoA」は、基質と結合してここまで運んできましたが、あくまでサポート役で、「クエン酸回路」に組み込まれるわけではないので退場します。

 

「クエン酸」だけが次の反応へ進みます。

 

 

クエン酸

 

 

 

 

②クエン酸 → (Cis-アコニット酸) → イソクエン酸

 

 

「クエン酸」から1つの酵素で、2段階の反応が起きます。なので、中間の「Cis-アコニット酸」は省略されることがあります。

 

 

酵素の名前は、「アコニット酸ヒドラターゼ(アコニターゼ)」です。

 

まず、「クエン酸」から「水分子」が出て「Cis-アコニット酸」になります。

 

 

Cis-アコニット酸

 

 

そして、その水分子が加わって、配置が変わる事で「イソクエン酸」になります。

 

 

イソクエン酸と水分子

 

 

イソクエン酸は次の反応に進みます。

 

 

 

③イソクエン酸 → (オキサロコハク酸) → α-ケトグルタル酸

 

 

この反応も「イソクエン酸脱水素酵素(デヒドロゲナーゼ)」という1つの酵素によって、2段階の反応が起きます。なので中間の「オキサロコハク酸」は省略されることがあります。

 

この反応では「脱水素」と「脱炭酸」が起きます。

 

反応前の状態がこちらです。

 

イソクエン酸と酸化型NAD

 

 

酸化型の「NAD」は、「イソクエン酸」の水素を奪って、還元型の「NADH」になります。

 

すると、不安定な「オキサロコハク酸」になります。

 

オキサロコハク酸とNADH

 

 

「オキサロコハク酸」は脱炭酸され、「α-ケトグルタル酸」と「二酸化炭素」が生じます。

 

 

 

α-ケトグルタル酸と二酸化炭素

 

 

「αーグルタル酸」は、「2-オキソグルタル酸」とも言います。

 

 

というわけで、「α-ケトグルタル酸」は次の反応に進みます。

 

 

 

④α-ケトグルタル酸 → スクニシルCoA

 

 

ここでは「ピルビン酸 → アセチルCoA」になった時と似たようなことが起きます。

 

以下が反応前の状態です。

 

 

α-ケトグルタル酸と酸化型NADとCoA

 

 

酵素「α-ケトグルタル酸(2-オキソグルタル酸)デヒドロゲナーゼ複合体」によって、「脱水素」と「脱炭酸」が起きます。

 

そして、高エネルギーな補酵素「CoA」がついて、「スクニシルCoA」となります。

 

 

スクニシルCoAと還元型のNADHと二酸化炭素

 

 

構造はこうなっています。

 

スクニシルCoA

 

 

これも長いので、以下のように省略されます。

 

スクニシルCoA省略

 

 

スクニシルCoAは次の反応に進みます。

 

 

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⑤スクニシルCoA → コハク酸

 

 

 

ここで、また新しい物質が出るので、反応の説明の前に先に紹介します。

 

名前は「GTP ジーティーピー」と言って、このような構造になっています。

 

 

GTP(グアノシン三リン酸)

 

 

「グアノシン・トリ・ホスフェート / 和名:グアノシンリン酸」と言い、リン酸基が3つ付いています。

 

 

名前も構造も「ATP」によく似ています。

 

「ATP」は、リン酸が3つくっついていて、リン酸が1つ外れる時にエネルギーが放出され、「ADP」になりますが、「GTP」も3つあるリン酸のうち1つが外れる時にエネルギーが放出されます。

 

こちらがエネルギーが放出された後の「GDP ジーディーピー」です。

 

 

GDP(グアノシン二リン酸)

 

「グアノシン・ジ・ホスフェート / 和名:グアノシンリン酸」と言い、リン酸基は2つです。

 

 

 

それでは話を戻します。

 

以下が反応前の状態です。

 

 

スクニシルCoAとGDPとリン酸

 

この反応で使われる酵素は「スクニシルCoAシンターゼ」です。

 

これによって、「スクニシルCoA」から「CoA」を外す時のエネルギーで、「GDP」と「リン酸」から「GTP」が合成されます。

 

出来上がった「GTP」は、高エネルギーの化合物です。

 

そして、「GTP」はリン酸が3つあるわけですが、このうちの1つを「ADP」に与えます。この時使われる酵素は「ヌクレオシド2リン酸キナーゼ」です。

 

 

GTPのリン酸をADPに

 

リン酸をあげたことで「GTP」は「GDP」になり、「ADP」は、リン酸3つの「ATP」になります。つまり、「ATP」が合成されたということです。

 

そして、「スクニシルCoA」は「コハク酸」になります。

 

コハク酸

 

 

「コハク酸」は次の反応に進みます。

 

 

 

⑥コハク酸 → フマル酸

 

 

ここで、また違う物質がでてきます。

 

「FAD エフエーディー」という補酵素です。構造は以下になります。

 

酸化型FAD

 

 

「フラビン・アデニン・ジヌクレオチド」と言い、「NAD」と同じで、水素(の持つ電子)の預かり役「電子伝達体」です。

 

 

酸化型の「NAD」は、水素を預かることで、還元型の「NADH」になりましたが、「FAD」も酸化型が水素を預かると、還元型の「FADH2」になります。

 

 

還元型FADH2

 

 

 

「FADH2」の「2」という数字については、最後に補足という形で説明します。

 

 

では、話を反応に戻します。

 

以下が反応前の「コハク酸」と酸化型の「FAD」です。

 

 

コハク酸と酸化型FAD

 

 

脱水素(酸化還元)酵素である「コハク酸デヒドロゲナーゼ複合体」によって、「コハク酸」は「FAD」に水素を渡します。

 

すると、「FAD」は還元型の「FADH2」になり、「コハク酸」は「フマル酸」になります。

 

 

 

フマル酸と還元型FADH2

 

 

こちらが構造になります。

 

 

フマル酸

 

 

 

「フマル酸」は次の反応に進みます。

 

なお、この反応で使われた酵素「コハク酸デヒドロゲナーゼ複合体」は、電子伝達系の「複合体Ⅱ(コハク酸デヒドロゲナーゼ複合体)」と同じものです。

 

 

 

 

⑦フマル酸 → リンゴ酸

 

 

この反応では、「フマル酸ヒドラターゼ(フマラーゼ)」という酵素が使われます。

 

「フマル酸」に水分子(H2O)が加わります。

 

 

フマル酸と水分子

 

 

すると、「リンゴ酸」になります。

 

 

リンゴ酸

 

 

「リンゴ酸」は次の反応に進みます。

 

 

 

⑧リンゴ酸 → オキサロ酢酸

 

 

「クエン酸回路」最後の反応です。

 

この反応で使われる酵素は「リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(脱水素酵素)」です。

 

以下が反応前の状態です。

 

リンゴ酸と酸化型NAD

 

 

「リンゴ酸」が酸化型の「NAD」に水素を預けると、「NAD」は「NADH」に、そして、「リンゴ酸」は「オキサロ酢酸」になりました。

 

 

オキサロ酢酸と還元型のNADH

 

 

以下が、「オキサロ酢酸」です。

 

 

オキサロ酢酸

 

 

これで「クエン酸回路」を一周したことになります。

こうしてできた「オキサロ酢酸」が、また次の「アセチルCoA」と反応するわけです。

 

 

 

ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体について補足

 

 

「ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体」は、「複合体」とついているように、3つの酵素(E1、E2、E3)が集まった複雑な構造をしています。以下が1~3の酵素の名前です。

 

 

 

  • E1・・・ピルビン酸デヒドロゲナーゼ

 

  • E2・・・ジヒドロリポイルトランスアセチラーゼ

 

  • E3・・・ジヒドロリポイルデヒドロゲナーゼ

 

 

 

そして、複数の補酵素が必要です。

 

 

アセチル基を受け取る「CoA」、水素原子を受け取る「NAD」の他にも、「FAD」、「チアミン2リン酸」、「α-リポ酸」が、酵素のサポートをします。

 

 

栄養の話になるのですが、

 

 

「CoA」の合成には、「ビタミンB5(パントテン酸」が、

 

 

「NAD」の合成には、「ビタミンB3(ナイアシン)」が、

 

 

「FAD」の合成には、「ビタミンB2(リボフラビン)」が、

 

 

「チアミン2リン酸(チアミンピロリン酸)」の合成には、「ビタミンB1(チアミン)」が、

 

 

 

それぞれ必要になってきます。

 

 

E1の「ピルビン酸デヒドロゲナーゼ」の補酵素「チアミン2リン酸」は、「ビタミンB1」の活性型です。

 

 

「ピルビン酸」→「アセチルCoA」に変える為に必要な補酵素は1つではありませんが、「ビタミンB1」が強調されるのは、複合体の中の最初の反応に必要だからでしょう。

 

でも、他の補酵素も必要です。

 

従って、この代謝を止めないためにも、ビタミンB群のサプリを飲むといいわけです。

 

例えばこれ。

 

 

ビタミンB群のサプリメント

 

 

B群が足りなくなるとどんな不具合が起きるのか、沢山のB群が必要な体質については以下の記事に書きました。

 

 

ベジタリアンや糖質を止められない人が、健康の為に摂っておきたい栄養素とは

 

癌細胞と癌家系について分かりやすく説明してみた

 

 

そして、「α-リポ酸」は、ビタミン様物質(ビタミンに似た有機化合物)です。

 

 

話がそれましたが、「ピルビン酸」を「アセチルCoA」に変えるには、厳密には3つの酵素と、5つの補酵素が必要ということになります。

 

 

具体的にどういう流れでそうなるのか調べたのですが、人によって説明が食い違っていたり、それ以前に、私でも理解できる文章で書かれたものが見つからなかったので、分かり次第書き加えたいと思います。

 

 

また、「④α-ケトグルタル酸 → スクニシルCoA」で働く酵素、「α-ケトグルタル酸(2-オキソグルタル酸)デヒドロゲナーゼ複合体」も、3つの酵素から構成される複合体で、やはり5つの補酵素が必要になります。

 

 

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NADとFADについて

 

 

電子伝達体の「NAD」と「FAD」についての補足になります。

 

 

ここまでは省略していたのですが、酸化型の「NAD」は、正確には「NAD」の右上に「+」と書きます。このプラスは、「プラスの電荷を帯びている」という意味です。

 

「NAD」の相手、「イソクエン酸」を例に説明します。

 

 

「イソクエン酸」は、水素が8ですが、このうちの2つが外れます。

 

 

 

イソクエン酸とNAD+

 

 

 

この外れた「水素原子」の構造はこのようになっています。

 

 

 

水素原子

 

 

プラスの電気を帯びた「陽子(プロトン)」の周囲を、マイナスの電気を帯びた「電子(エレクトロン)」が衛星のように回っています。

 

 

ちなみに、水素原子には「中性子」はありません。

 

 

「陽子」が1個と「電子」が1個のペア・・・これが「水素原子」です。

 

従って、「基質から水素が2個外れる」ということは、

 

 

電子2つと陽子2つ

 

 

プラスの「陽子」が2つ、マイナスの「電子」が2つ外れるということになります。

 

で、「NAD+」の方は、プラスの電気を帯びています。「窒素+」のところです。

 

 

NAD+

 

 

「NAD+」は、「電子(-)」つと、「陽子(+)」つを受け取ります。水素原子がくっついて、「窒素+」が「電子(-)」によって還元されます。

 

還元型に変わると、電気的に中性になります。

 

ですが、1つ「陽子(+)」が余ります。

 

 

NADH+H+

 

 

この「電子を失った水素」の事を「H+」、「水素イオン」、「プロトン」等と言います。

 

 

従って、「還元型のNADH」は、厳密には「NADH + H+」のセットということになります(※「H+」は遊離します)

 

 

調べていると、情報源によって、酸化型は「NAD」と書かれていたり、「NAD+」と書かれていたり、また還元型は、「NADH」と書かれていたり、「NADH2」と書かれていたり、統一感がありません。「+」の意味、「2」の意味も、説明が回りくどくて何が言いたいのか分かりにくいものがほとんどで、納得するのに時間がかかりました。一番分かりやすかったのは以下の本です。

 

 

『イラスト 基礎からわかる生化学―構造・酵素・代謝 / 著者:坂本 順司』より引用

 

ナイアシンは分子中でアミドの形で存在しており、このニコチンアミド環がまさに酸化還元のおこる場所である。

 

酸化型では正電気を帯びており、電子(e-)2つと水素イオン(H+)1つを受け取って還元型に変わると、電気的に中性となる。

 

(中略)

 

酸化還元反応でNADやNADPの相手となる有機酸などの基質は、多くの場合2つの水素原子、いいかえると2つの e- と2つの H+ を解離・結合する。したがって両者が反応すると H+ が1つ遊離(逆反応の場合は吸収)される

 

(167p~168p)

 

 

そして、「FAD」について説明します。

 

 

酸化型の「NAD+」は、「電子(-)」つと、「陽子(+)」つを受け取るのですが、

 

酸化型の「FAD」は、「電子(-)」つと、「陽子(+)」つを受け取ります。なので、「NAD」のように陽子は余りません。

 

 

「コハク酸」で説明します。

 

 

コハク酸とFAD

 

 

 

コハク酸の「水素原子」が2つ外れるので、「電子」2つ、「陽子」2つが外れるということになります。

 

 

一方、酸化型の「FAD」は、「電子」2つと、「陽子」2つを受け取るので、「水素原子が2つ結合した」ことになります。

 

 

FADH2

 

 

従って、「FADH2」となります。

 

 

フラビンもナイアシン誘導体と同様、2電子酸化還元をおこなう補酵素である。ただしNADやNADPとは違い、2つの e- と同時に H+ も2つ授受するので、H+ が遊離・吸収されることはない

 

(169p~170P)

 

 

 

クエン酸回路のおさらい

 

 

クエン酸回路によって生じたものをまとめます。

 

 

【序章】ピルビン酸 → アセチルCoA

 

二酸化炭素(CO2)

 

①アセチルCoA → クエン酸

 

 

②クエン酸 → (Cis-アコニット酸) → イソクエン酸

 

 

③イソクエン酸 → (オキサロコハク酸) → α-ケトグルタル酸

 

NADH

 

二酸化炭素(CO2)

 

 

④α-ケトグルタル酸 → スクニシルCoA

 

NADH

 

二酸化炭素(CO2)

 

⑤スクニシルCoA → コハク酸

 

ATP

 

⑥コハク酸 → フマル酸

 

FADH2

 

⑦フマル酸 → リンゴ酸

 

 

⑧リンゴ酸 → オキサロ酢酸

 

NADH

 

 

 

そして、本記事に使用した絵は、以下の動画を参考にしました。分かりやすいアニメーションなのでオススメです。

 

 

 

 

こちらも合わせて見て下さい。

 

 

 

 

次は「電子伝達系」についてお話します。

 

 

電子伝達系(呼吸鎖)について分かりやすく説明してみた①複合体Ⅰ~Ⅱへ続く

 

 

 

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解糖系について分かりやすく説明してみた

 

以前、エネルギー代謝の「解糖系」、「クエン酸回路」、「電子伝達系」、それによって産生される「ATP」について記事にしたのですが、内容は全体に軽く触れる程度でした。

 

なので、「解糖系」、「クエン酸回路」、「電子伝達系」を小分けにして、以前より細かく説明していきます。本記事は、そのうちの「解糖系」について取り上げます

 

 

先に簡略化した以下の記事をお読みいただいた方が、今回の話がスムーズに理解できると思います。

 

ATP(アデノシン三リン酸)について分かりやすく説明してみた

 

 

エネルギー代謝について分かりやすく説明してみた

 

 

 

そして、この記事の説明に使っている絵ですが、

 

 

普通は原子を、C(炭素)、O(酸素)、H(水素)、N(窒素)・・・と、アルファベットで書くのですが、私は英語だとピンとこないので漢字にしました。ただし、カタカナだとしっくりこなかったので、リンだけは「P」にしました。

 

 

化学が得意な人には邪道な表記で申し訳ないのですが、大目に見ていただけると嬉しいです。

 

それでは本題に入ります。

 

 

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解糖系とは

 

「解糖系」とは、糖を分解する経路の事で、10段階の反応からなります。糖は「ブドウ糖(グルコース)」のことです。これまでは、

 

 

グルコース

(何段階か反応)

ピルビン酸

 

 

・・・と、かなり省略して説明していましたが、今回はこの間の説明になります。

 

 

「解糖系」で得られるのは、エネルギー物質「ATP」が2分子と、電子伝達体の「NADH」が2分子です。

 

 

 

ATP・・・2分子

 

NADH・・・2分子

 

 

そして、「グルコース」1分子から、「ピルビン酸」は2分子できます。

 

なので出発点は「グルコース」です。

 

 

①グルコース → グルコース6リン酸

 

以下がグルコースの構造です。

 

 

グルコース

 

 

まず、「グルコース」が、リン酸基を付けられる「リン酸化」という反応によって、「グルコース-6-リン酸」になります。

 

ただし、

 

解糖系の目的は「ATP」を得る為ですが、その為にはまず一番最初に「ATP」を1分子使います。

 

「ATP」を作る為に、「ATP」を使うわけです。世間ではこれを「投資」と言います。

 

そして、こちらがエネルギー物質「ATP」の構造です。

 

ATP(アデノシン三リン酸)

 

「アデノシン・トリ・ホスフェート / 和名:アデノシンリン酸」という名前の通り、リン酸基が3つ付いています。

 

 

「3があるなら他の数字もあるのか」と思われるでしょうが、当然あります。「トリ(3)」と、「ジ(2)」と、「モノ(1)」です。

 

 

 

リン酸1つ・・・AMP

 

リン酸2つ・・・ADP

 

リン酸3つ・・・ATP

 

 

今回登場するのは「ATP」と「ADP」です。前者が「エネルギーが蓄えられている状態」で、後者が「エネルギーを放出した状態」です。

 

以下の、「1と2の間」、「2と3の間」のところは、「高エネルギーリン酸結合」と言います。

 

 

ATPの高エネルギーリン酸結合

 

 

「ATP⇔ADP」の場合、3と2の間が結合する(ADPをATPに変換する)とエネルギーが蓄えられ、結合部分が外れる(ATPがADPに変換される)とエネルギーが放出される仕組みになっています。

 

生体はこのエネルギーを利用して生命活動を行なっているのです。

 

 

ATP(3) ⇔ ADP(2)

 

 

ちなみに、ATPに蓄えられたエネルギーの使用期限は短いので、合成されても、すぐに消費されます。そして再びエネルギーが蓄えられます。

 

 

それでは、話を「グルコース」に戻します。

 

「解糖系」では、まずこのATPの「リン酸基」が外れて、「グルコース」に付けられます。

 

グルコースとATP

 

 

すると、エネルギーを放出した「ATP」は、「ADP」となり、「グルコース」は「グルコース-6-リン酸」になります。

 

 

グルコース-6-リン酸

 

 

「グルコース」にはなかったリン酸がくっついています。

 

そして、この反応に使われる酵素は「ヘキソナーゼ」と言います。へきそ(hexo-)とは「6」のことで、六炭糖を指します。

 

「ヘキソナーゼ」のように、基質(元の物質)から何かを切り離して、それを別の基質にくっつける酵素のことを「転移酵素」と言います。

 

 

ただし、酸素と水素は別で、これらを転移させる酵素は「酸化還元酵素」と言います。

 

 

そして、「グルコース-6リン酸」は、次の反応へと進みます。

 

 

 

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②グルコース6リン酸 → フルクトース6リン酸

 

次に「異性化」という反応が起きます。「異性化反応」では、原子の種類や数は減ったり増えたりせずに、場所だけ変わります。

 

この反応で使われる酵素は、「グルコース-6-リン酸イソメラーゼ(異性化酵素)」です。

 

 

「グルコース-6-リン酸」は、「フルクトース-6-リン酸」に変化します。

 

 

フルクトース-6-リン酸

 

「グルコース-6-リン酸」も、C6 H13 O9 P。

 

「フルクトース-6-リン酸」も、C6 H13 O9 P なので、数は変わっていません。

 

「フルクトース-6-リン酸」は次の反応へ進みます。

 

 

 

③フルクトース6リン酸 → フルクトース1.6-ビスリン酸

 

 

次は再び「リン酸化」が起きます。つまり、投資をしなければいけないので、ここでもまたATPを使います。

 

フルクトース-6-リン酸とATP

 

 

この反応の酵素は、「ホスホフルクトキナーゼ」です。

 

これにより、「ATP」は「ADP」となり、「フルクトース-6-リン酸」は「フルクトース-1,6-ビスリン酸」になります。

 

 

フルクトース-1,6-ビスリン酸

 

 

リン酸を2つ手に入れました。

 

「フルクトース-1,6-ビスリン酸」は次の反応に進みます。

 

 

④フルクトース1.6-ビスリン酸 → ジヒドロキシアセトンリン酸 & グリセルアルデヒド三リン酸

 

これまで足したり入れ替えたりしてきましたが、次の反応は開裂です。これにより6炭糖が3炭糖に割れます。

 

この反応で使われるのは、水を加えることなく切断する「脱離酵素」で、「アルドラーゼ」と言います。大雑把ですが、だいたいこの辺りから真っ二つです。

 

 

フルクトース-1、6-ビスリン酸のアルドラーゼによる開裂

 

 

そうしてできたのがこちらの2つです。ただ割れただけでなく、配置も少し変わっています。

 

 

グリセルアルデヒド-3-リン酸とジヒドロキシアセトンリン酸

 

 

この2つは、原子の数や種類は同じですが、配置が違います。

 

「グリセルアルデヒド-3-リン酸」は次へ進むことができるのですが、「ジヒドロキシアセトンリン酸」はこの状態だと進めません。

 

 

なので、「ジヒドロキシアセトンリン酸」は、もう一度反応して「グリセルアルデヒド-3-リン酸」になります。

 

それが、次の反応です。

 

 

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⑤グリセルアルデヒド-3-リン酸 → ジヒドロキシアセトンリン酸

 

「ジヒドロキシアセトンリン酸」を「グリセルアルデヒド-3-リン酸」に変える酵素は、「トリオースリン酸イソメラーゼ」です。これによって異性化が起きます。

 

 

 

  • グルセルアルデヒド-3-リン酸

 

  • ジヒドロキシアセトンリン酸 → グリセルアルデヒド-3-リン酸

 

 

こうして、2つの「グリセルアルデヒド-3-リン酸」が生成されました。

 

 

2つのグリセルアルデヒド-3-リン酸

 

 

この反応によって2分子になってしまったので、これ以降は、グルコース1分子あたりの中間代謝物は2倍になります。

 

1分子だけ描きますが、後で計算する時に2倍にします。

 

というわけで「グリセルアルデヒド-3-リン酸」は、次の反応に進みます。

 

 

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⑥グリセルアルデヒド3リン酸 → 1.3-ビスホスホグリセリン酸

 

 

ここでは、新たな物質が登場するのでちょっとややこしくなります。その名は「NAD えぬえーでぃー」です。

 

 

酸化型NAD

 

 

正式名は、「ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド(NAD)」です。「脱水素酵素」の補酵素(サポート役)になります。

 

この「NAD」には、水素(のもつ電子)を預かる働きがあります。

 

 

このような化合物の事を「電子伝達体 でんしでんたつたい」と言います。

 

 

上のイラストは、「酸化型」といって水素を預かる前の状態です。

 

 

「酸化 さんか」とは、「電子を失う事」、「水素を失う事」です。

 

逆に、「電子を得る事」、「水素と化合する事」を「還元 かんげん」と言います。

 

 

そして、「酸化型」があるということは、「還元型」もあるということです。それが「NADH」です。

 

 

還元型NADH

 

 

「NADH」は還元型なので、水素(電子)を預かった状態です。どこかに水素がついていますので探してみて下さい。

 

 

実は「NAD → NADH」は、説明を省略している部分があります。詳しいことは「クエン酸回路」の記事でお話します。

 

 

それでは、話を「グリセルアルデヒド-3-リン酸」に戻します。

 

「グリセルアルデヒド-3-リン酸」を「1,3-ビスホスホグリセリン酸」にするには、「脱水素」と「リン酸化」という2つの反応が同時に起きます。

 

ここで使われる酵素は、「グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ」です。

 

 

「脱水素」を行なう酵素を「脱水素酵素」というのですが、英語だと「デヒドロゲナーゼ(de-hydrogen-ase)」です。

 

“hydrogen”は水素、“de”は外す、脱するという意味です。

 

 

そして、「リン酸化」も起きるので、パーツである「リン酸(Pi)」も必要です。

 

 

リン酸

 

 

流れは、

 

 

グリセルアルデヒド-3-リン酸とリン酸とNAD

 

 

「グリセルアルデヒド-3-リン酸」から水素が外れ、「NAD(酸化型)」に預けられます。

 

同時に、どこから表れたのか不明ですが、「リン酸」が「グリセルアルデヒド-3-リン酸」にくっつきます。

 

すると、「NAD」は「NADH(還元型)」となり、

 

 

1,3-ビスホスホグリセリン酸とNADH

 

 

「グリセルアルデヒド-3-リン酸」は「1,3-ビスホスホグリセリン酸」になります。

 

 

1,3-ビスホスホグリセリン酸

 

 

リン酸が2つになった「1.3-ビスホスホグリセリン酸」は次の反応に進みます。

 

 

 

⑦1.3-ビスホスホグリセリン酸 → 3ホスホグリセリン酸

 

ここでは「ホスホグリセリン酸キナーゼ」という転移酵素を使います。

 

「1.3-ビスホスホグリセリン酸」は、2つあるリン酸のうちの1つを「ADP」にあげます。

 

「ATP」の説明をした時に少しお話しましたが、こちらが「ADP」の構造になります。

 

ADP(アデノシン二リン酸)

 

「アデノシン・ジ・ホスフェート / 和名:アデノシンリン酸)」と読み、“Di(ジ)”というのは、数字の2です。

 

リン酸が2つあるということを表しています。

 

これに、更にリン酸が1つ加わると、「アデノシン・トリ・ホスフェート / 和名:アデノシンリン酸」、つまり「ATP」になるわけです。

 

もう一度言いますが、「ADP」から「ATP」になることで「高エネルギーリン酸結合」の部分にエネルギーが蓄えられます。

 

では話を戻します。

 

「ADP」は「1.3-ビスホスホグリセリン酸」からリン酸を1つもらいます。

 

1,3-ビスホスホグリセリン酸とADP

 

 

これで「ATP」が1つできました。

 

 

3-ホスホグリセリン酸とATP

 

一方、リン酸を譲った「1.3-ビスホスホグリセリン酸」は、「3-ホスホグリセリン酸」になりました。

 

 

3-ホスホグリセリン酸

 

 

「3-ホスホグリセリン酸」は次の反応に進みます。

 

 

⑧3ホスホグリセリン酸 → 2ホスホグリセリン酸

 

次は異性化です。原子の数や種類は変わらず、配置が変わります。

 

ここで使われる酵素は「ホスホグリセリン酸ムターゼ」です。それにより、「3-ホスホグリセリン酸」は「2-ホスホグリセリン酸」になります。

 

 

2-ホスホグリセリン酸

 

 

「2-ホスホグリセリン酸」は次の反応に進みます。

 

 

⑨2ホスホグリセリン酸 → ホスホエノールピルビン酸

 

この反応では、除去付加酵素の「エノラーゼ」が使われます。これによって「2-ホスホグリセリン酸」の脱水が起きます。

 

酸素1、水素2(つまり水分子)が脱離します。

 

その結果、「ホスホエノールピルビン酸」になります。

 

ホスホエノールピルビン酸と水分子

 

 

「ホスホエノールピルビン酸」は次の反応に進みます。

 

 

⑩ホスホエノールピルビン酸 → ピルビン酸

 

「ホスホエネールピルビン酸」にはリン酸がついています。これを「ADP」にあげて「ATP」を合成します。

 

使われるのは転移酵素の「ピルビン酸キナーゼ」です。

 

 

ホスホエノールピルビン酸とADP

 

 

「ADP」は、リン酸をもらって「ATP」になり、

 

 

ピルビン酸とATP

 

 

「ホスホエノールピルビン酸」は、リン酸を外したことで「ピルビン酸」になりました。

 

ピルビン酸

 

 

 

解糖系によって得られたもの

 

「解糖系」の流れを振り返ります。

 

2倍で計算しています。

 

1分子の「グルコース」から、10段階の反応を経て、2分子の「ピルビン酸」になり、

 

 

グルコースからピルビン酸

 

 

「グリセルアルデヒド3リン酸」から「1.3-ビスホスホグリセリン酸」になる反応で、水素(の持つ電子)を預かった「NADH」が2分子できました。

 

 

NADH2分子

 

 

この水素は、ミトコンドリアの内膜で起こる「電子伝達系」で使われます。

 

そして、目的の「ATP」は、「1.3-ビスホスホグリセリン酸 → 3ホスホグリセリン酸」の反応で分子、「ホスホエノールピルビン酸 → ピルビン酸」の反応で分子得られたので、合計分子ということになります。

 

 

しかし、最初に2分子投資しているので、それを引くと、「解糖系」で得られるATPは2分子ということになります。

 

 

ATP2分子

 

 

本記事の絵は、主に以下の動画を参考にしました。英語は分からないのですが、非常に丁寧に描かれていて感動しました。

 

動画の方が分かりやすいので、見る事をオススメします。

 

 

 

 

 

クエン酸回路(TCA回路)について分かりやすく説明してみたへ続く

 

 

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「脳のエネルギー源はブドウ糖なので糖質をしっかり摂りましょう」と言う人が語らない話

 

脳の細胞は大きくわけるとつのタイプがあります。「ニューロン」と「グリア細胞」です。

 

 

この2つは、特徴やエネルギー代謝が異なります。

 

 

「ニューロン(別名:神経細胞)」とは、思考する細胞です。

 

一方「グリア細胞(別名:神経膠細胞)」は、「ニューロン」の補助役で、思考しない細胞です。

 

 

 

  • ニューロン・・・思考する

 

  • グリア細胞・・・思考しない、ニューロンの補助

 

 

 

この2つの細胞は数でいったら、「グリア細胞」が圧倒的に多いです。その数、「ニューロン」の十倍~数十倍です。

 

 

10倍という説があったり、50倍という説があります。

 

 

 

というわけで、この2つの細胞がどのようにしてエネルギー代謝を行なっているのか、また、脳にはブドウ糖がどのくらい必要なのか詳しく解説していきます。

 

 

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エネルギー源が違う「ニューロン」と「グリア細胞」

 

 

いきなりですが、結論です。

 

 

思考を司る「ニューロン」のエネルギー源は、「ケトン体」と、グリア細胞のエネルギー代謝で生じた「乳酸」です。

 

 

一方、思考を司らない「グリア細胞」のエネルギー源は、「ブドウ糖」になります。

 

 

  • 「ニューロン」・・・ケトン体、乳酸

 

  • 「グリア細胞」・・・ブドウ糖

 

 

この事実だけを見たら、「脳細胞の大多数を占めるグリア細胞のエネルギー源がブドウ糖だから、脳のエネルギー源はブドウ糖と言えるな」・・・と考えられなくもないです。

 

 

しかし、「思考する細胞」と「思考しない細胞」では、どちらが脳と言えるのか・・・と考えたら、やはり思考する方です。

 

 

例えば、アシスタントの助けがないと作業が完了できなかったとしても、アシスタントの数が多かったとしても、漫画の作者(作品の脳)は、アシスタントではなく「漫画家」です。

 

 

アシスタントは漫画の作者、漫画の顔ではありません。

 

 

同じように、「グリア細胞」の助けが必要であっても、脳の主役は、やはり思考する「ニューロン」だと言えます。

 

 

そのように考えると、思考する「ニューロン」のエネルギー源はブドウ糖ではないのですから、やはり「脳のエネルギー源はブドウ糖だ」というのは、誤解を与える意見であると言わざるを得ません。

 

 

 

ここから、「ニューロン」と「グリア細胞」の違いについて説明します。

 

 

ニューロンの特徴

 

 

まずは「ニューロン(神経細胞)」の簡単な紹介をします。

 

 

 

ニューロン

 

 

放射線状に広がった突起を「樹状突起 じゅじょうとっき」といって、情報の入力部分になります。

 

 

そして、長く伸びた軸の先端が出力部分になります。

 

 

この細胞がいくつも連続して情報のバケツリレーをしているというわけです。

 

 

このような感じで。

 

 

 

ニューロン

 

 

情報の流れは、

 

 

「樹状突起」→「軸索」→「軸索の末端」 → 「隣のニューロン」 ・・・の連続です。

 

 

そして、「ニューロン」と「ニューロン」の連結部分を「シナプス」と言います。

 

 

 

シナプス

 

 

 

「シナプス」は繋がっていません。

 

 

電気信号が先端までくると、そこから「神経伝達物質」という化学物質が分泌されて、次の「ニューロン」に伝わる仕組みになっています。

 

 

 

シナプスと神経伝達物質

 

 

 

特徴を把握したので、次は「ニューロン」のエネルギー代謝に焦点を当てます。

 

 

 

ニューロンのエネルギー代謝

 

 

「ニューロン」は、ミトコンドリアの多い細胞です。

 

 

ニューロン

 

 

ミトコンドリアとは細胞内にある発電所のようなものです。

 

 

ミトコンドリアでは「クエン酸回路」、そして「電子伝達系」という反応によってエネルギー物質「ATP」を作ります。

 

 

ATP、解糖系、クエン酸回路、電子伝達系については以下の記事で説明しています。

 

 

ATP(アデノシン三リン酸)について分かりやすく説明してみた

 

エネルギー代謝について分かりやすく説明してみた

 

 

 

エネルギーの材料は、脂肪酸から生成された「ケトン体」や、「グリア細胞で発生した乳酸」になります。

 

 

「ニューロン」には、「ブドウ糖」を材料とするエネルギー代謝である「解糖系」はほぼないそうです。

 

 

 

ミトコンドリアのエネルギー代謝

 

 

 

ミトコンドリアでの代謝に依存しているので、ニューロンのエネルギー代謝は「高エネルギー」ということになります。

 

 

「ニューロン」のように、ミトコンドリア主体の細胞は、生涯にわたって細胞分裂をしないのが特徴です。

 

 

 

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グリア細胞の特徴(中枢神経系)

 

 

神経には「中枢神経系(脳と脊髄からなる神経)」と、「末梢神経系(脳と脊髄以外の神経)」があります。

 

で、中枢神経に存在する「グリア細胞」は種類あるのですが、それぞれ、どんな細胞なのか簡単に紹介します。

 

 

上衣細胞

 

 

まずは「上衣細胞 じょういさいぼう」です。

 

 

上衣細胞

 

 

この細胞は、脳室の壁を構成しています。

 

 

「脳室」は、嗅脳室、側脳室、第三脳室、中脳水道、第四脳室、脊髄中心管です。

 

 

 

アストロサイト

 

 

次は「アストロサイト」です。

 

 

 

アストロサイト

 

 

 

この「アストロサイト」の機能は複数あります。近年、研究が進んで新たな機能が発見されているようですが、メインの機能がこちらです。

 

 

 

  • 構造面でニューロンのネットワークを支える

 

  • 物質輸送を介し、アストロサイト周辺の条件を調節する

 

  • 毛細血管の周囲を取り囲んで「血液脳関門 」を形成する

 

 

このうちの、「血液脳関門 けつえきのうかんもん」について説明します。

 

 

通常の毛細血管の「内皮細胞 ないひさいぼう」には隙間があるので、様々な物質が血管の内外を自由に出入りできます。

 

しかし、脳の毛細血管の「内皮細胞」はちょっと違っていて、有害物質が入らないように関所のような機能があります。それが「血液脳関門」で、英語名は響きがよく「lood-rain arrier ブラッド-ブレインバリア」と言います。

 

「アストロサイト」の足の突起は、BBBの外側を構成しています。こんな感じで。

 

 

 

アストロサイトと血液脳関門

 

 

この関門を通過できるのは「酸素」、「ブドウ糖」、「ケトン体」、「一部のアミノ酸やビタミン」、「アルコール」等、「分子量が小さい物質」や、「脂溶性で細胞膜を通過できる物質」です。

 

 

 

以前、「水素水を飲んだら頭痛が消えた」という話をしたことがあります。「水素」は物質の中で一番小さい分子なので、「血液脳関門」を通過することができるので、それで効果があったのでしょう。

 

目と脳は密接に関係している。慢性的な頭痛の原因と、それが改善した理由とは

 

 

 

 

ミクログリア

 

 

次は「ミクログリア」です。

 

 

ミクログリア

 

 

「ミクログリア」は小型の細胞で、ニューロン、アストロサイト、血管内皮細胞などに接しています。

 

中枢系の免疫が担当です。また、神経細胞が死んだ時に死骸を食べて処理する機能もあります。

 

 

 

オリゴデンドロサイト

 

 

次は「オリゴデンドロサイト」です。

 

 

オリゴデンドロサイト

 

 

「オリゴデンドロサイト」は、「ニューロン」の軸索に巻きついていて、電気信号を効率よく伝える為の「絶縁体(※電気を伝えない物体)」の役割を果たしています。

 

 

 

グリア細胞の特徴(末梢神経系)

 

 

ここまで、中枢神経系の4種類の「グリア細胞」を紹介しましたが、補足で、末梢神経系の「グリア細胞」も紹介しておきます。

 

 

 

シュワン細胞

 

 

「シュワン細胞」は、軸索に巻きついています。

 

 

シュワン細胞

 

 

 

衛星細胞

 

 

「衛星細胞」というのもあります。

 

 

 

衛星細胞

 

 

 

 

では、ここからは「グリア細胞」のエネルギー代謝の説明に入っていきます。

 

 

 

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グリア細胞のエネルギー代謝

 

 

思考をしない「グリア細胞」は、エネルギー産生の99%を「解糖系」に依存しています(※つまり、エネルギー源をブドウ糖に依存しているということです)。ミトコンドリアに依存している「ニューロン」と逆ですね。

 

 

 

解糖系のエネルギー代謝

 

 

 

「グリア細胞」に必要なブドウ糖は、毎時3~4gです。

 

 

「ニューロン」と「グリア細胞」の違いをまとめます。

 

 

 

  • 「ニューロン」・・・ケトン体、乳酸(ミトコンドリア)

 

  • 「グリア細胞」・・・ブドウ糖(解糖系)

 

 

 

ここで注目していただきたいのが、ブドウ糖(グルコース)をエネルギー源とする解糖系に依存する「グリア細胞」は、乳酸が発生するということです。

 

 

 

 

グリア細胞の解糖系で生じた乳酸

 

 

「ニューロン」のエネルギー源は、「ケトン体」と「解糖系で発生した乳酸」でした。ケトン体が足りなくなった時に、乳酸をエネルギー源として利用するのです。

 

 

「グリア細胞」で発生した乳酸は、「乳酸トランスポーター」によって「ニューロン」に運ばれます。そして、乳酸はピルビン酸に変換され、酸素と共にミトコンドリアに取り込まれてエネルギーを産生します。

 

 

 

グリア細胞で発生した乳酸

 

 

乳酸トランスポーターがニューロンに運ぶ

 

 

乳酸はピルビン酸に変換される

 

 

ピルビン酸はミトコンドリアに取り込まれる

 

 

エネルギー産生

 

 

 

「ブドウ糖(グルコース)の代謝によって生じた乳酸をエネルギー源にしているのだから、「ニューロン」もブドウ糖が必要じゃないか」・・・と、思われた人もいるかもしれません。

 

 

しかし、これだけで「糖質の摂取は必要なんだ」と結論付けるのは早いです。

 

 

「グリア細胞」のブドウ糖も、「糖新生(肝臓や腎臓で、糖質以外の材料から糖質を作るシステム)」でまかなうことができるからです。

 

 

 

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グリア細胞に必要な糖質量

 

 

体は肝臓や腎臓で、糖質以外の材料からブドウ糖(グルコース)を合成することができます。

 

 

肝臓と腎臓

 

 

その合成経路については以下の記事で説明しました

 

 

糖新生の仕組みについて分かりやすく説明してみた

 

 

 

どのぐらいの量が合成できるのかというと、毎時g~10g(小さじ1~2)です。

 

 

『Cafe すてきに活ききる 旬(ときめき)亭 糖新生、低血糖 萩原敦』より引用

 

 

飢餓時だけに「糖新生」が、特別に起きるわけではない。

 

 

わかりやすく言えば、糖質を食って血糖値が上昇している時は、糖新生は抑制されるが、それ以外の空腹時や睡眠時は、肝臓と腎臓でグルコースを毎時6~10g程度、血液中に24時間供給している。

 

 

もし、あなたがしっかりとした糖質制限をしているなら、食事中も食後も糖新生は継続しているのである。

 

 

脳のグリア細胞の解糖系では、過酷な頭脳労働時は毎時4gぼーっとしている時は、2~3g、睡眠中は2g程度のグルコースの消費がある。

 

 

赤血球は、安静時(事務仕事程度)では、毎時2g程度消費されている。

 

 

血糖値の標準値を100とすると、体重50キロのヒトで、血中に4gのグルコース量で飽和していることになる。

 

 

この初期血糖値の4gと糖新生による追加グルコース6~10g(中間値8をとる)を加算すると、4+8=12 12-(4+2)=6gということで、単純計算でも、血糖値が相当、上昇することになる。

 

 

これを抑制するのが、持続的に分泌されている「インスリン基礎分泌」である。

 

 

はっきり言って、「糖新生」のグルコース合成の量と「インスリン基礎分泌」の量の均衡が、空腹時血糖値や睡眠時の血糖値を、定めているのである。

 

 

したがって、生涯に渡って、糖質ゼロで、食生活を営んでも、糖新生とインスリン基礎分泌の均衡が保たれれば、低血糖にも高血糖にもならないのであり、血糖値の恒常性を完全に維持できるのである。

 

 

グリア細胞や赤血球には(ブドウ糖)グルコースが必要ですが、食事から摂らなくても十分足りることがお分かりいただけると思います。

 

 

  • 基礎血糖(血液4~5リットルに対し、4~5g)

 

  • 絶食時、糖質制限時、糖新生で合成されるグルコース(毎時6~8g)

 

  • 脳のグリア細胞のグルコース消費量(毎時2~4g)

 

  • 赤血球のグルコース消費量(毎時2g程度)

 

 

 

消費の量よりも、糖新生で作られる量の方が多いのです。

 

 

以前、糖新生まできちんと説明せず、「グリア細胞はケトン体が利用できないから砂糖を摂った方が良い」・・・という意見を見たので油断なりません。

 

 

一応、糖質を過剰に摂る事で、脳にどんな影響があるのか紹介しておきます。

 

 

 

脳腫瘍の原因

 

 

糖新生で必要な糖質量がまかなえるということは既に説明しました。では、「脳にはブドウ糖が必要である」を真に受けて糖質を食べるとどうなるか、リスクについてお話します。

 

注意すべきなのは、「乳酸の蓄積」「糖化」です。

 

乳酸を処理するシステムは体に備わっていますが、過剰になれば、やはり、どの細胞も同じ末路を辿ります。

 

 

詳しくは以下の癌の記事で説明したのですが、

 

癌細胞と癌家系について分かりやすく説明してみた

 

【注意】癌の本質を理解していないと症状が悪化する治療法を選択します

 

 

人間の血液は、pH7.35~7.45に保たれているのが正常です。

 

 

数値が小さくなると酸性になるのですが、pH7.3以下になると機能低下になり、pH7.1以下になると死の危険があります。

 

 

で、問題の「乳酸」ですが、酸とつくように pH 程度の酸性物質です。これが蓄積すると、血液のpHが酸性に傾いていきます。それによってミトコンドリアが機能不全になり、場合によっては細胞が癌化します。

 

 

癌細胞は正常細胞の何倍もブドウ糖を取り込む細胞です。従って、癌は酸性に傾いた体を救うために過剰な糖(乳酸)を処理していると考えられます。

 

 

それは脳の細胞も同じことです。

 

 

糖質の過剰供給で乳酸が発生し、「グリア細胞」が癌化したのが脳腫瘍です。

 

 

解糖系がほぼなく乳酸が発生しない「ニューロン」は癌化しません。

 

 

また、「ニューロン」はほとんど細胞分裂しませんが、「グリア細胞」には分裂、増殖能力があります。

 

 

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アルツハイマーと認知症

 

 

「乳酸」の蓄積も体に不具合をもたらしますが、「糖化」の症状もあなどれません。

 

 

「糖化反応」とは、「余った糖」と「体のタンパク質」が結びついて体温で暖められ、タンパク質が変性する現象のことです。それによって生じた物質が「AGE/AGEs」です。

 

 

「健常な老人」と「アルツハイマー病の患者」の前頭葉を比べると、アルツハイマー病の患者には3倍以上のAGEsが蓄積しているそうです。

 

 

参考:抗糖化コラム アルツハイマー病とAGEs

 

 

このAGEsは、周囲の細胞を攻撃する性質があります。従って、蓄積量が3倍というのはキツイです。

 

AGE(終末糖化産物)について分かりやすく説明してみた

 

 

ちなみに、アルツハイマー病は、「3型の糖尿病」と言われています。

 

 

 

また、「脳血管性認知症」の原因も糖化が関係しています。

 

 

ニューロンの軸索は、「絶縁体」の役目をするカバーで覆われています。「オリゴデンドロサイト」や「シュワン細胞」です。これらを「髄鞘 ずいしょう」、「ミエリン鞘」と言うのですが、認知症の患者さんはこれが薄くなっているそうです。

 

 

『Wikipedia 髄鞘』より引用

 

 

神経科学において髄鞘 (ずいしょう、myelin sheath) は、脊椎動物の多くのニューロンの軸索の周りに存在する絶縁性のリン脂質の層を指す。 ミエリン鞘とも言う。

 

 

コレステロールの豊富な絶縁性の髄鞘で軸索が覆われることにより神経パルスの電導を高速にする機能がある。

 

 

髄鞘はグリア細胞の一種であるシュワン細胞とオリゴデンドロサイト (乏突起または稀突起グリア細胞、en:oligodendrocyte) からなっている。 シュワン細胞は末梢神経系の神経に髄鞘を形成し、一方オリゴデンドロサイトは中枢神経系の神経での髄鞘を形成している。

 

 

髄鞘が薄くなる原因は、「動脈硬化による血流不足で、酸素と栄養が十分に届かないこと」、「ミエリン鞘の糖化」が考えられています。

 

 

 

ちなみに、糖質は動脈硬化の原因にもなります。

 

 

動脈硬化は悪玉コレステロールではなく、動脈壁の劣化が原因だった

 

 

 

 

脳とブドウ糖

 

 

「脳のエネルギー源はブドウ糖」・・・というお決まりのセリフは、情報を小出しにしていて肝心なところが抜け落ちているので、フェアではありません。

 

 

正しくは「脳の「思考をしないグリア細胞」は、エネルギー源をブドウ糖に依存しているが、そのブドウ糖は糖新生で供給できる」です。

 

 

糖質の過剰摂取はリスクがあるので、忘れないようにして下さい。

 

 

 

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糖質は依存性が強いだけでなく、過剰に摂取すると害になります。

 

 

しかし、そうはいっても「ブドウ糖」は人体にとって必要な栄養素です。その必要な血中のブドウ糖濃度は、全血液約5ℓに対して5gです。

 

 

 

わずかな量ですが、体には「ブドウ糖に依存している細胞」があるので、この一定のブドウ糖がないと生きていけません。

 

 

 

しかし、食事から糖質(ブドウ糖)が全く入ってこないとどうでしょうか。例えば、睡眠等の絶食時、糖質を制限する食事を実践している時等です。

 

 

 

糖が体に入ってこないので血糖値が低下しそうな気がします。

 

 

 

しかし、問題ありません。

 

 

生命維持に必要な最低限の血糖値が維持できないのは非常に危険なので、体には血糖を維持するためのシステムが備わっています。それが「グリコーゲン分解」と「糖新生」です。

 

 

 

  • グリコーゲン分解

 

  • 糖新生

 

 

 

「グリコーゲン」は、ブドウ糖が複雑に繋がった構造をしており、肝臓や筋肉に貯蔵しています。これを分解してブドウ糖にできるのですが、容量が少ないので早く枯渇してしまいます。

 

 

しかし、そうなっても、肝臓や腎臓で、「糖質以外の材料」から糖質(ブドウ糖)を新たに作りだすシステム、「糖新生」があるので安心です。

 

 

肝臓と腎臓

 

 

糖質の摂取が途絶え、さらにグリコーゲンが枯渇しても、「糖新生」によって合成できるので、生きていく為に必要な血液中のブドウ糖の濃度は維持できます。

 

 

ただし、良い面ばかりではありません。

 

 

優れた「糖新生」の機能ですが、場合によっては高血糖になってしまう事があります。

 

 

糖質制限をしていても起こりうる現象なので注意が必要です。

 

 

本記事では、糖新生の働きと、それはどのような場合に起こるのかについてお話します。

 

 

ちなみに、体内でどのような材料から、どうやってブドウ糖を作るのか・・・という代謝経路の話は、以下の記事で説明しましたので参考にして下さい。

 

 

糖新生の仕組みについて分かりやすく説明してみた

 

 

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糖新生を必要としている細胞

 

 

生体は生きていくために、エネルギー物質「ATP」を作り出し、これを使って生命活動を行なっています。

 

ATP(アデノシン三リン酸)について分かりやすく説明してみた

 

 

「ATP」がないと何もできませんし、無くなるとどの生物も死にます。

 

 

その「ATP」の元となる材料は、糖質(ブドウ糖)、脂質(脂肪酸)、ケトン体(脂肪酸を分解してできた物質)、タンパク質(アミノ酸)です。

 

 

多くの細胞は、これらの材料を燃料にできるのですが、そうではない細胞も存在します。

 

 

冒頭で「体にはブドウ糖に依存している細胞がある」と言いましたが、それが以下です。

 

 

ブドウ糖しか利用できない癌細胞と赤血球とグリア細胞

 

 

 

これらの細胞は、どれもエネルギー代謝が「解糖系」なので、ブドウ糖が必要です。言いかえると、「糖新生」のシステムが必要ということになります。

 

 

 

 

ではここで、それぞれの細胞について、簡単に解説しておきます。

 

 

赤血球

 

赤血球は、全身の細胞に酸素を届ける仕事をしています。赤血球の細胞内には、発電所である「ミトコンドリア」が存在しません。

 

従って、「ミトコンドリア」でのエネルギー代謝ではなく、細胞質基質での「解糖系」という発電方法でエネルギーを得ています。「解糖系」のエネルギー源は「ブドウ糖」です。

 

では、何故赤血球には「ミトコンドリア」がないのか・・・ですが、「ミトコンドリア」は酸素を要求するので、もし赤血球に「ミトコンドリア」があれば、配達用の酸素を運ぶ途中で消費してしまうかもしれません。ない方が都合がいいと考えられます。

 

 

 

 

 

グリア細胞

 

グリア細胞は、神経を構成する「ニューロン」以外の細胞です。

 

脳の細胞は大きく分けて、思考をする「ニューロン」と、思考をしない「グリア細胞」の2つのタイプがあります。両者は特徴やエネルギー代謝が異なります。

 

「グリア細胞」の方は、エネルギー産生の99%を「解糖系」に依存しています。つまり、エネルギー源をブドウ糖に依存しているということです。

 

一方、「ニューロン」は、「ミトコンドリア」の多い細胞で、「ブドウ糖」を材料とする「解糖系」はほぼないそうです。脂肪酸から生成された「ケトン体」や「グリア細胞で発生した乳酸」をエネルギー源にしています。

 

 

 

  • 「ニューロン」・・・ケトン体、乳酸(ミトコンドリア)

 

  • 「グリア細胞」・・・ブドウ糖(解糖系)

 

 

 

「グリア細胞」について、詳しくは以下の記事で話しています。

 

「脳のエネルギー源はブドウ糖なので糖質をしっかり摂りましょう」と言う人が語らない話

 

 

 

癌細胞

 

 

癌細胞は、正常細胞の何倍もブドウ糖を取り込む細胞です。一見悪者に見えますが、実は、糖質の過剰摂取によって発生した「乳酸」によって酸性化した体を助ける為に役立っています。

 

 

癌細胞は「ミトコンドリア」が機能不全になっているので、解糖系によるエネルギー産生に依存(つまり、ブドウ糖に依存)しています。これは過剰になったブドウ糖(乳酸)を処理する為の機能だと考えると辻褄が合います。

 

 

 

 

 

 

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糖新生の仕組み

 

 

「グリコーゲン」に蓄えられたブドウ糖の量はたいしたことないので、絶食状態が続くと「糖新生」のシステムに切り替わります。

 

 

①食事からのブドウ糖の供給が途絶える

 

 

②血糖値が下がってくる

 

 

③グリコーゲンをブドウ糖に分解して供給

 

 

④グリコーゲンが枯渇

 

 

⑤糖新生でブドウ糖を合成

 

 

 

食事からの糖が途絶える状況・・・というのは、「絶食時」そして、「糖質制限」などです。

 

 

絶食が続いて糖が足りなくなった時に、「糖新生」の材料に使われるのは、自らの筋肉を分解した「糖原性アミノ酸」です(※絶食ですから食事からのアミノ酸供給はありません)

 

 

糖質制限をしている人の場合は、食事からタンパク質を多く摂取するので、これを分解してできた「糖原性アミノ酸」を材料に「糖新生」が行なわれます。しかし、睡眠時等これらが入ってこない時は、自らの筋肉を分解した「糖原性アミノ酸」を「糖新生」の材料にします。

 

私のように糖質量1日10g以下の厳しい糖質制限をしても大丈夫なのは、「糖新生」があるおかげです。注意することは、タンパク質の摂取量が減ると筋肉の減る量が増えるので、タンパク質を不足させないようにすることです。

 

 

この「糖新生」は腎臓でも行なわれているのですが、主に肝臓が行なっています。その為「肝硬変」の方は、「糖新生」の機能が落ちているので糖質制限はしてはダメなのです。

 

 

ちなみに、糖新生の材料は「糖原性アミノ酸」の他、「グリセロール」、「乳酸」等があります。

 

 

 

糖新生によって合成される糖質量

 

 

「糖新生」は、誰の体内でも日常的に起こっている現象です。糖質を控えている人や、飢餓の時の専売特許ではありません。普通に糖質が多い食事をしている人でも空腹時には起こっています。

 

 

『Cafe すてきに活ききる 旬(ときめき)亭  糖新生、低血糖 萩原敦』より引用

 

「糖新生」という言葉の説明を権威の医学書等で閲覧すると、まず、「飢餓時・・」という言葉が冒頭に登場する。

 

これで、まず騙される。これは権威の騙しの常套手段である。一発目で、読み手を嘘の屁理屈に誘導する。頼みは権威だけである。飢餓時だけに「糖新生」が、特別に起きるわけではない。

 

わかりやすく言えば、糖質を食って血糖値が上昇している時は、糖新生は抑制されるが、それ以外の空腹時や睡眠時は、肝臓と腎臓でグルコースを毎時6~10g程度、血液中に24時間供給している。

 

もし、あなたがしっかりとした糖質制限をしているなら、食事中も食後も糖新生は継続しているのである。

 

脳のグリア細胞の解糖系では、過酷な頭脳労働時は毎時4gぼーっとしている時は、2~3g、睡眠中は2g程度のグルコースの消費がある。

 

赤血球は、安静時(事務仕事程度)では、毎時2g程度消費されている。

 

血糖値の標準値を100とすると、体重50キロのヒトで、血中に4gのグルコース量で飽和していることになる。

 

この初期血糖値の4gと糖新生による追加グルコース6~10g(中間値8をとる)を加算すると、4+8=12 12-(4+2)=6gということで、単純計算でも、血糖値が相当、上昇することになる。

 

 

これを抑制するのが、持続的に分泌されている「インスリン基礎分泌」である。

 

はっきり言って、「糖新生」のグルコース合成の量と「インスリン基礎分泌」の量の均衡が、空腹時血糖値や睡眠時の血糖値を、定めているのである。

 

したがって、生涯に渡って、糖質ゼロで、食生活を営んでも、糖新生とインスリン基礎分泌の均衡が保たれれば、低血糖にも高血糖にもならないのであり、血糖値の恒常性を完全に維持できるのである。

 

血糖値の恒常性を破壊し、乱すのが、糖質の摂取による、血糖値の乱高下に他ならない。これが高血糖、高インスリンを呼び、糖尿病、がん、動脈硬化等、万病の温床になるのである。

 

たとえば、糖尿病になると、インスリン基礎分泌も衰える。

 

糖新生は、ほとんどの場合衰えないから、空腹時の血糖値が、400とか、500とかになる。

 

ようするに「糖新生」は、マイペースで、グルコースを忠実にコツコツ合成し続けるのである。

 

何度も書いているが、インスリンを分泌する膵臓のランゲルハンス島β細胞は、肝臓の10分の1の抗酸化能力しかない、稼働させればさせる程、インスリンは枯渇する。

 

ヒトにとって、本当の恐怖は、インスリン基礎分泌が衰え、空腹時に、血糖値が400とか500とか、になることである。

 

くどいが、ヒトは、低血糖等になるような状態にならなように万全の態勢を整えているのである。

 

まさに、健康であれば、低血糖になんかならないのである。低血糖対策は、ヒトの人体においては完全無欠の体制なのである。
例外的に低血糖になるのは、

 

①糖質を摂取し過ぎて、インスリンがタイムリーに分泌されなくなり、機能性低血糖のような血糖値がある程度下がってから、インスリン追加分泌が始まったりするようなとき。

 

②糖尿病の治療を、 糖質制限で行わず、糖質をわざわざ摂取して、血糖値を上昇させ、インスリン等を用いて、過度に血糖値を下げ過ぎてしまった時。

 

健康なヒトが、普通の生活をしている中で、低血糖が起きることはない。糖質制限をしたり、昼食にありつけなかったくらいで、低血糖になるようなことは絶対にないのである。

 

ここが重要である。

 

ここを知らないと、「糖質制限は低血糖になる!」「糖質制限は危険である!」という単純な嘘に簡単に騙されるのである。

 

 

ポイントとなる数値をまとめます。

 

 

 

  • 人間の血液は4~5ℓ、それ含まれるグルコースは4~5

 

  • 空腹時、糖質制限中、「糖新生」で供給されるグルコースは、毎時6~10

 

  • 中枢神経(脳)の「グリア細胞」は、毎時3~4gのグルコースを消費

 

  • 赤血球は毎時gのグルコースを消費

 

 

 

消費する量に対して、「糖新生」によって作られる量の方が多いことがわかります。糖質を食べなくてもこの状態です。もし「インスリン」が無かったり、機能していなかったら簡単に血糖値は上がってしまいます。

 

 

 

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血糖値の調節

 

「インスリン」とは、上がった血糖値を下げる作用のあるホルモンです。

 

 

常に分泌され、一定の量が保たれているのを「基礎分泌」

 

血糖値が上がった時に、下げるために追加で分泌されるのが「追加分泌」です。

 

分泌のボリュームを図で表すとこんな感じです。

 

 

 

 

「基礎分泌」は生命維持に必要ですが、「追加分泌」は高いほど有害で病気のリスクが増えます。健康維持の為には「追加分泌」を出さない生活が良いのです。

 

 

一方、血糖値が下がってきた時に、「グリコーゲン分解」と「糖新生」を促進させるホルモンが「グルカゴン」です。

 

 

「インスリン」は上がった血糖値を下げる作用がありますが、「グルカゴン」は下がった血糖値を上げる作用があります。

 

血糖値を下げるインスリンと血糖値を上げるグルカゴン

 

 

 

ちなみに、血糖値を上げるホルモンは「グルカゴン」を含めて全部で5種類ありますが、血糖値を下げるホルモンは「インスリン」だけです。

 

 

 

血糖を上げるホルモン

 

  • グルカゴン(膵臓のランゲルハンス島・a細胞)

 

  • 甲状腺ホルモン(甲状腺)

 

  • 成長ホルモン(脳下垂体)

 

  • アドレナリン(副腎髄質)

 

  • コルチゾール(副腎皮質)

 

 

血糖値を下げるホルモン

 

  • インスリン(膵臓のランゲルハンス島・β細胞)

 

 

 

 

血糖値を上げる仕組みがに対して、血糖値を下げる仕組みがです。

 

体は、血糖値を上げるのは得意だけど、血糖値を下げるのは得意ではないということです。

 

夏井睦医師が、アクセルが5つあるのに、ブレーキが1つしかない車だと表現されていますが、正にその通りで、誰がどうみてもアンバランスです。

 

 

5つあれば、どれか1つ壊れてもなんとかなりますが、1つしかない場合、壊れた時困るわけです。

 

体がこのようなシステムになっているということは、ブレーキは酷使する前提で作られていないと考えられます。

 

 

 

 

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グルカゴンとインスリンとは

 

 

「グリコーゲン分解」と「糖新生」を促進させる「グルカゴン」は、血糖値を下げる「インスリン」と同じ膵臓のランゲルハンス島で作られています。

 

 

膵臓のランゲルハンス島

 

 

こちらが「ランゲルハンス島」の拡大図です。インスリンは「β細胞」で作られますが、グルカゴンは「α細胞」から作られます。

 

 

ランゲルハンス島のβ細胞とα細胞

 

 

 

「糖新生」を促進させ血糖値を上げる「グルカゴン」の効力と、血糖値を下げる「インスリン」の効力

 

 

この2つのバランスが崩れなければいいわけです。分かりやすくする為に、単純に考えてみます。

 

「グルカゴン」の分泌と、「インスリン」の分泌が同量なら血糖値は安定しますが、

 

 

 

 

「グルカゴン」の分泌が「インスリン」の分泌より上回れば血糖値は上昇します。

 

 

 

 

反対に、「グルカゴン」の分泌より「インスリン」の分泌の方が上回れば血糖値は下がります。

 

 

 

というわけで、ここで話を「糖新生」に戻します。

 

 

 

 

タンパク質の摂取で高血糖になる原因

 

 

糖質制限をしているのに血糖値を測ったら数値が高くてがっかりした・・・という話を時々目にするので、糖質制限をしているのに血糖値が上がる理由についてお話します。

 

 

考えられるのが、タンパク質摂取によって起こった「糖新生」です。

 

 

栄養素には直接血糖値を上昇させるものと、糖新生によって間接的に血糖値が上昇するものがあります。前者は「糖質」で、後者は「タンパク質」です。

 

 

「タンパク質」は直接的には血糖値を上げませんが、「糖新生」の材料になります。「糖新生」で、ブドウ糖が合成されてしまうと、場合によっては高血糖になるので注意が必要です。

 

 

残念ですが、「糖新生」によって血糖値が上がりすぎると、食事から糖質を摂っているのと変わらないことになります。

 

 

では、どんな時に「糖新生」が過剰になってしまうのかですが、「糖新生」によって血糖値が上がるケースは様々なので、「糖尿病のケース」か、「糖尿病じゃないケース」に分けて説明します。

 

 

まずは糖尿病の人のケースから説明します。こちらは「インスリン」と「グルカゴン」が関係しています。

 

 

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糖尿病が原因で、「糖新生」で血糖値が高くなるケース

 

 

「インスリン」は、「糖新生」を抑制する働きがあります。

 

糖尿病には「β細胞が壊れてインスリンが分泌されなくなってしまった1型」と、

 

「インスリンの分泌が少なくなったり、体がインスリンにあまり反応しなくなってしまった2型」があります。

 

 

・・・このように、糖尿病は「インスリン」が正常に分泌されない状態です。それが原因で以下のようになります。

 

 

1型糖尿病

 

内因性(自分の体で作られた)インスリンが0の人は、当然ながらインスリンは分泌できません。従って、このタイプの人が「タンパク質」を摂取すると、グルカゴンだけが分泌されます。

 

抑える作用がないので、血糖値は上昇します。

 

 

 

2型糖尿病

 

内因性(自分の体で作られた)インスリンが不足したり効きが悪い場合も、やはり抑える作用が弱いので、グルカゴンの分泌量が勝ってしまい、血糖値が上昇します。

 

 

また、糖尿病予備軍の人もタンパク質摂取による「糖新生」で血糖値が上昇します。

 

 

 

血糖値を下げるインスリンと、血糖値を上げるグルカゴンのバランスがとれている健康な人は、タンパク質を摂取しても血糖値の変化はほとんどありません。

 

 

 

 

 

糖質制限中に起こる暁現象

 

 

糖尿病の場合、厳しい糖質制限をしても血糖値が下がらない事があります。

 

 

『ドクター江部の糖尿病徒然日記 糖毒、糖新生、暁現象、糖質制限食、薬物療法。』より引用

 

1ヶ月間のスーパー糖質制限食実践でも血糖値が下がらないなら、糖毒状態に陥っている可能性があります。

 

① 高血糖の持続→膵臓のランゲルハンス島のβ細胞にダメージ→インスリン分泌低下
② 高血糖の持続→筋肉細胞レベルでのインスリン抵抗性増大

 

高血糖があると①と②が体内で生じます。

インスリン分泌低下と抵抗性増大が生じれば、ますます高血糖となります。

 

≪高血糖の持続→インスリン分泌低下とインスリン抵抗性増大→高血糖の持続→≫

 

この悪循環パターンを、臨床的には「糖毒」 と呼びます。

 

一日の血糖値の日内変動が、常に180~200mg/dlを超えていると糖毒状態となります。

 

なぜ、高血糖自体がインスリン分泌を低下させるのか、インスリン抵抗性を増大させるのか、最先端の研究で調べられてはいるのですが、はっきり言ってまだよくわからないのが現状です。

 

糖尿病の罹病歴が4~5年くらいなら、「スーパー糖質制限食」で食後高血糖がリアルタイムに改善し、さらに早朝空腹時血糖値も改善し糖毒状態が解除されることがほとんどです。

 

しかし、10年近い糖尿病歴があると、「スーパー糖質制限食」で食後高血糖はリアルタイムに改善したとしても、一日を通して、180~200mg/dlを切ってこない状況になります。

 

こうなるとなかなか糖毒も解除されないし、早朝空腹時血糖値も、180~200mg/dlを切れない状態が持続します。

 

1回の食事の糖質量が、10~20g以下の糖質制限食でも、早朝空腹時血糖値が198~200mg以上あるのは、夜中の糖新生が過剰になっていると考えられます。

 

糖尿病がない人は、夜中に肝臓が糖新生を開始してもインスリンがリアルタイムに反応して、糖新生を制御します。

 

しかし糖尿人においては、インスリン作用が不足しているため糖新生を制御できません。

 

2型糖尿人において、眠前11時頃の血糖値が100mg/dlくらいでも朝起きて測定すると、夜中に何にも食べていないのに、120~130mg/dlになることがあり、これを暁現象と呼びます。

 

 

「糖新生」自体は悪いことではありません。必要な機能です。

 

しかし、糖尿病等、なんらかの原因で過剰になってしまう事が問題なのです。

 

 

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その他が原因で「糖新生」で血糖値が高くなるケース

 

 

糖尿病じゃなくても、「糖新生」が過剰に起こってしまうケースがあります。例えば以下のようなケースです。

 

 

  • カテコールアミンのですぎ

 

  • 交感神経の優位(良くない感情)

 

 

「カテコールアミン」とは、ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンの総称のことです。

 

 

これは私のようにスーパー糖質制限を行なっていて、糖尿病ではない人も注意が必要です。

 

 

『藤川徳美医師 Facebook 2015年7月20日』より引用

 

食事で糖質を摂らなくても、糖新生によってグルコースが作られます

 

低血糖になるとグルカゴンが分泌され、糖新生が行われます

 

興奮ホルモンであるアドレナリン分泌、ストレスホルモンであるコルチゾール(ステロイド)分泌も糖新生を促します

 

アドレナリン、コルチゾールは元々、ライオンや熊に襲われそうになった時などに分泌されるようになっているのだと思う
怒り、恨み、不安、恐怖、などのネガティブな感情は糖新生を促すということになる

 

糖新生はかなり個体差が大きいと考えられる

 

子供の頃の母子分離、虐待を受けるとネガティブ感情を惹起しやすくするため、糖新生反応を生じやすくなり、後々の精神病やガンの原因となり得る

 

逆に、笑いはがんを防ぐと言われている
常に穏やかでゆったりとした気持ちで過ごすことは過剰な糖新生を抑えるはず

 

 

また、睡眠不足も「糖新生」に影響を与えるようです。

 

 

『藤川徳美医師 Facebook 2015年11月12日』より引用

 

睡眠不足では交感神経が持続的に刺激された状態となります

 

交感神経が刺激されるとアドレナリン、コルチゾールが持続的に分泌されます

 

そうなると、血管が収縮して血圧が上がります

 

糖新生が亢進し血糖値を上昇させます

 

つまり、睡眠不足が改善すれば降圧薬は止めることもできるし、糖尿病薬も減らせるという理屈になります

 

 

このように、何をしたら血糖値が上がるのかを知っておくのも、糖質制限を上手く行なう為に必要です。

 

 

 

 

 

糖質制限中、糖新生で高血糖にならないように気をつけたいこと

 

 

タンパク質は体の材料です。従って、体の悪い部分を修復させる為には、タンパク質の摂取が不可欠になります。

 

 

しかし、修復の為にと思って摂取したタンパク質が「糖新生」にばかり使われてしまうこともあるわけです。・・・それは嫌ですよね。

 

 

糖質制限をしているのに、何故か血糖値が上がったり、太ったり、だるくなったり、眠たくなったり・・・と、糖質を取っている時と変わらない症状になったら、タンパク質による「糖新生」が起こっている可能性があります。

 

 

これが糖質制限に挫折する原因にもなるのですが、このような知識を知っているか知っていないかで全く違います。

 

 

回復の為に摂取した大量のタンパク質を、目的どおり修復に使う為に、私は以下の事に気をつけています。

 

 

 

  • 脂質の摂取

 

  • 一度に沢山食べるのではなく小分けにして数回で食べる

 

  • プロテインであれば1度に30g以上を摂らない

 

 

 

 

1度にたくさん食べない・・・というのは、なんとなく理解できると思います。

 

では、脂質の摂取が「糖新生」とどう関係があるのかというと、

 

 

『新井 圭輔医師 facebook 2016年4月4日』より引用

 

 

『暁現象を抑える』---世紀の大発見かもしれない。

暁現象が観測される糖尿病患者さんたちの最近の早朝空腹時血糖が抑えられている

How? 『寝る前にバターを食べるそうである』

 

 

バター効果? 理論的には説明できそうです。糖新生は、本質的には、余剰タンパク摂取分をエネルギー源である脂肪に変換するためのものと私は信じています。

 

 

糖新生を促進する因子は、アミノ酸余剰量 生体には基本的にフィードバックシステムが働きます。最終産物である脂肪濃度の上昇率が糖新生に対して抑制的に働くことは十分に想定可能です。バターを摂取すると、血中中性脂肪濃度の増加率が上昇して、濃度も高くなれば、糖新生に対して負のフィードバックが働くことが考えられます。これは、世紀の大発見かもしれません。

 

糖新生の最終産物が糖ではなく、脂質であることが、脂質でフィードバックがかかると言う事実をもたらすのです。これはすごく興味深い知見です。

 

糖新生の本質が、余剰のタンパク摂取分をエネルギー源である脂質として蓄えるための仕組みというのは、現状では定説ではなく、私が唱える仮説です。しかしその仮説が真実である可能性を高めたのが、『脂質による糖新生の抑制』と言う観測事実なのです。とても意義深いものです。

 

 

私はスーパー糖質制限を始めた時から夜食にバターを摂っているので、「脂質による糖新生の抑制」には、なるほどと思ってしまいます。

 

 

そして、他の対策に、薬もあるのでちょっと紹介しておきます。

 

 

 

糖新生を抑える薬、メトホルミン

 

 

癌治療に糖質制限を取り入れる場合は、「メトホルミン」という糖尿病治療薬が使用されます。これは「糖新生」を抑える薬なので、タンパク質がブドウ糖に変換されません。

 

 

ブドウ糖は癌を育てるので、治療には、徹底した糖質制限に、点滴はブドウ糖がない「イントラリポス」、そして「メトホルミン」を使う・・・というわけです。

 

 

癌細胞と癌家系について分かりやすく説明してみた

 

 

 

最後に

 

 

「糖新生」は必要な機能ですが、過剰になって高血糖になれば、当然体に悪影響が出ます。

 

 

なので、そうなる原因と解決策は一通り頭に入れておいた方がいいと思います。

 

 

 

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栄養には、体内で「合成できるもの」と、「合成できないもの」があります。

 

そして、「体内で合成できないので、外から補わないといけない栄養素」のことを「必須〇〇〇」と呼びます。

 

必須脂肪酸がある「脂質」と、必須アミノ酸がある「タンパク質」は、常に食事で補う必要があります。

 

 

一方、「糖質」には必須糖質というのはありません。糖質は体内で合成することができるので、わざわざ食事から摂る必要はないのです。

 

 

糖質以外の物質から、糖質を合成する事を「糖新生 とうしんせい」と言います。

 

 

この「糖新生」が行なわれる場所は、主に「肝臓」、そして「腎臓」です。

 

 

本記事ではその合成が「どのように」行なわれているのか、シンプルに解説します。

 

 

 

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糖新生と解糖系

 

 

「糖新生」の流れを乱暴に言ってしまうと、エネルギー代謝の「解糖系」の逆行です。

 

 

分からない方の為に、「解糖系 かいとうけい」について簡単に説明します(※ご存じの方は飛ばして下さい)

 

 

「解糖系」とは、グルコース(ブドウ糖)を分解して、ATP(身体で使えるエネルギー)を産生する化学反応のことです。

 

 

ブドウ糖(グルコース)は、細胞の「細胞質基質 さいぼうしつきしつ」に到着します。

 

 

 

細胞質基質の解糖系

 

 

 

 

ここで以下のような反応が起き、エネルギー物質「ATP」が2個作られます。これが「解糖系」です。

 

 

 

 

グルコース

 

 

(何段階か反応)

 

 

ピルビン酸

 

 

 

以下の記事で細かく説明しています。

 

解糖系について分かりやすく説明してみた

 

 

で、「ピルビン酸」まで分解された後どうなるかというと、2パターンあります。

 

 

  • ミトコンドリアでの代謝をせず、「乳酸」を発生させる。

 

  • ミトコンドリアのマトリックスの中に入って「クエン酸回路」という反応が起き、次にミトコンドリアの内膜に進み「電子伝達系」という反応で、さらに多くの「ATP」を産生する。

 

 

その流れを図にするとこんな感じです。

 

 

嫌気的解糖と好気的解糖

 

 

 

右に進んだ場合、ミトコンドリアのマトリックス内の「クエン酸回路」では、このような順番で反応していきます。この部分は後で「糖新生」の説明でも登場するので、覚えておいて下さい。

 

 

 

クエン酸回路(TCA回路)

 

 

 

この「クエン酸回路」の後、ミトコンドリアの内膜で「電子伝達系」という反応が起きるのですが、本記事の趣旨からそれるので今回は説明しません。

 

 

ちなみに、ミトコンドリアの「マトリックス」と「内膜」の場所が以下になります。

 

 

 

解糖系とクエン酸回路と電子伝達系

 

 

 

それでは、「解糖系」と「クエン酸回路」の流れを頭に入れたうえで、本記事の本題である「糖新生」について説明していきます。

 

 

この説明は簡略化しているので、詳しくは以下の記事を参考にして下さい。

 

 

エネルギー代謝について分かりやすく説明してみた

 

 

また、エネルギー代謝で産生される「ATP」に関してはこちらをどうぞ。

 

 

ATP(アデノシン三リン酸)について分かりやすく説明してみた

 

 

 

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糖新生の流れ

 

 

さて、冒頭で、糖新生とは「解糖系」の逆行であると言ったので、もう一度エネルギー代謝の「解糖系」の部分に注目します。

 

 

便宜上、「解糖系」を以下のように簡単に説明することが多いのですが、実はこれ、かなり省略しています。

 

 

 

グルコース

 

 

(何段階か反応)

 

 

ピルビン酸

 

 

 

(何段階か反応)・・・の部分を省略せずに全部書くとこうなります。

 

 

 

グルコースからピルビン酸の代謝

 

 

 

※④から⑤の部分が分かりにくいので説明します。

 

 

「フルクトース-1.6-リン酸」は、「グリセルアルデヒド-3-リン酸」と、「ジヒドロキシアセトンリン酸」という2つの物質に変化します(※この変化に使われる酵素は「アルドラーゼ」です)。

 

 

このうち「ジヒドロキシアセトンリン酸」は、そのままの状態では次の反応に進めないので、「グリセルアルデヒド-3-リン酸」になります(※この変化に使われる酵素は「ホスホトリオースイソメラーゼ」です)。

 

 

こうして「グリセルアルデヒド-3-リン酸」は次の反応へ進みます。

 

 

「糖新生」は解糖系の逆行ではあるのですが、実は、この矢印の逆向きにそのまま進むことはできません

 

 

というのも、このようになっているからです。

 

 

 

糖新生の不可逆的な所

 

 

 

 

 

 

 

 

⑩のピルビン酸から、①のグルコースに向かって遡りたいところですが、上の図を見てもらったら分かるように、逆に進めない所が3ヶ所あります。

 

 

⑩から⑨の道、④から③の道、②から①の道です。

 

 

 

 

⑩~⑨:「ピルビン酸」  →  「ホスホエノールピルビン酸」

 

④~③:「フルクトース-1,6-ビスリン酸」  → 「フルクトース-6-リン酸」

 

②~①:「グルコース-6-リン酸」  →  「グルコース」

 

 

 

でも大丈夫です。

 

 

この3ヶ所は、「行き道とは別の方法」で進みます。

 

 

というわけで、次からは、目的地である「グルコース」になるまでの「糖新生」の基本的な流れについて解説します。

 

 

くどいですが、「糖新生」が行なわれるのは、肝臓(と腎臓)です。

 

 

 

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「ピルビン酸」からクエン酸回路を経由して「ホスホエノールピルビン酸」へ

 

 

まず、最初の⑩→⑨の反応です。

 

 

 

ピルビン酸からホスホエノールピルビン酸

 

 

 

進もうにも、いきなりこの状態ですから、⑨の「ホスホエノールピルビン酸」に行く為に、少々遠回りをします。

 

 

どうするのかというと、「クエン酸回路」を経由させるのです。

 

 

 

ピルビン酸とピルビン酸カルボキシラーゼ

 

 

 

図を解説すると、

 

 

1:「ピルビン酸」はまずミトコンドリアの中に入ります。

 

 

2:「ピルビン酸」は、「オキサロ酢酸」に変換されます。この変換の為に使われる酵素は「ピルビン酸カルボキシラーゼ」です。

 

 

3:次に「オキサロ酢酸」は「リンゴ酸」に変換されます。この変換の為に使われる酵素は「リンゴ酸デヒドロゲナーゼ」です。

 

 

4:「リンゴ酸」はミトコンドリアの外に出ます。

 

 

「オキサロ酢酸」は、ミトコンドリアの膜を通過する事ができませんが、「リンゴ酸」はミトコンドリアの膜を通過する事ができます。

 

 

 

オキサロ酢酸からホスホエノールピルビン酸

 

 

 

5:ミトコンドリアから脱出した「リンゴ酸」は、細胞質基質で、再び「オキサロ酢酸」に戻ります。この反応に使われる酵素も「リンゴ酸デヒドロゲナーゼ」です。

 

 

6:そして「オキサロ酢酸」は、⑨の「ホスホエノールピルビン酸」へと変換されます。この反応に使われる酵素は、「ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ」です。

 

 

この⑩→⑨の変化が一番ややこしいです。

 

以降の反応からはもう少しシンプルになります。

 

 

⑨→⑩の「解糖系」の時は、「ピルビン酸キナーゼ」という酵素で反応が進みます。

 

 

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ホスホエノールピルビン酸からグルコースまでの反応

 

 

もう2か所「一方通行」の所がありますが、それ以外のところは「解糖系」の逆向きに反応していきます。

 

 

「ホスホエノールピルビン酸」以降の流れを順番に解説していきます。

 

 

まずは、⑨→⑧の反応です。

 

 

⑨ホスホエノールピルビン酸 → ⑧2-ホスホグリセリン酸

 

 

⑧2-ホスホグリセリン酸

 

 

⑨ホスホエノールピルビン酸

 

 

⑨→⑧に変える酵素は、「エノラーゼ(別名:ホスホピルビン酸ヒドラターゼ)」です

 

 

⑧→⑨の「解糖系」の時の酵素も同じ「エノラーゼ」です

 

 

次は⑧→⑦の反応です。

 

 

 

⑧2-ホスホグリセリン酸 → ⑦3-ホスホグリセリン酸

 

 

⑦3-ホスホグリセリン酸

 

 

⑧2-ホスホグリセリン酸

 

 

 

⑧→⑦に変える酵素は、ホスホグリセリン酸ムターゼです。

 

 

⑦→⑧の「解糖系」の時の酵素も同じ「ホスホグリセリン酸ムターゼ」です。

 

 

次は⑦→⑥の反応です。

 

 

⑦3-ホスホグリセリン酸 → ⑥1,3-ビスホスホグリセリン酸

 

 

⑥1,3-ビスホスホグリセリン酸

 

 

⑦3-ホスホグリセリン酸

 

 

 

⑦→⑥に変える酵素は「ホスホグリセリン酸キナーゼ」です。

 

 

⑥→⑦の「解糖系」の時の酵素も同じ「ホスホグリセリン酸キナーゼ」です。

 

 

次は⑥→⑤の反応です。

 

 

⑥1,3-ビスホスホグリセリン酸 → ⑤グリセルアルデヒド-3-リン酸

 

 

 

 

 

 

⑥→⑤に変える酵素は「グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ」です。

 

 

⑤→⑥の「解糖系」の時の酵素も同じ「グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ」です。

 

 

「グリセルアルデヒド-3-リン酸」 → 「ジヒドロキシアセトンリン酸」の酵素は、「解糖系」の時と同じ「ホスホトリオースイソメラーゼ」です。

 

 

次は⑤→④の反応です。

 

 

 

⑤グリセルアルデヒド-3-リン酸、ジヒドロキシアセトンリン酸 → ④フルクトース-1,6-ビスリン酸

 

 

 

 

 

⑤→④に変える酵素は「アルドラーゼ」です。

 

 

④→⑤の「解糖系」の時の酵素も同じ「アルドラーゼ」です。

 

 

次は④→③です。

 

 

 

④フルクトース-1,6-ビスリン酸 → ③フルクトース-6-リン酸

 

 

④→③は、2つ目の「一方通行」地点です。

 

 

しかし、⑩→⑨の時のように複雑ではなく、いたってシンプルです。

 

ここでは、行き(解糖系)とは違う酵素を使うことによってクリアします。

 

 

 

③フルクトース-6-リン酸

 

 

④フルクトース-1,6-ビスリン酸

 

 

 

③→④の「解糖系」の時は、「ホスホフルクトキナーゼ」という酵素で反応が起きますが、

 

④→③の「糖新生」の時は、「フルクトース-1.6-ビスホスファターゼ」という酵素で反応が起きます。

 

 

 

次は③→②の反応です。ここは、「解糖系」と「糖新生」の酵素が同じです。

 

 

 

③フルクトース-6-リン酸 → ②グルコース-6-リン酸

 

 

②グルコース-6-リン酸

 

 

③フルクトース-6-リン酸

 

 

③→②に変える酵素は、「グルコース-6-リン酸イソメラーゼ」です。

 

 

③→②の「解糖系」の時の酵素も同じ「グルコース-6-リン酸イソメラーゼ」です。

 

 

②→①は、最後の「一方通行」地点です。

 

 

 

②グルコース-6-リン酸 → ①グルコース

 

 

こちらもシンプルで、先ほどと同じように行き(解糖系)とは違う酵素を使ってクリアします。

 

 

 

①グルコース

 

 

②グルコース-6-リン酸

 

 

 

①→②の「解糖系」の時は、「ヘキソナーゼ」という酵素で反応が起きますが、

 

②→①の「糖新生」の時は、「グルコース-6-ホスファターゼ」という酵素で反応が起きます。

 

 

ちなみに、「糖新生」が行なわれる「肝臓」と「腎臓」は、この「グルコース-6-ホスファターゼ」の活性が強いです。

 

 

 

 

 

これで⑩の「ピルビン酸」から、目的の①の「グルコース」まで辿り着けたことになります。

 

 

ここまでの流れが頭に入ったところで、次は「糖新生」に使われる材料が、それぞれどのようにして合成されていくのか、材料別にお話します。

 

 

 

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糖新生の材料

 

 

wikipediaによると、糖新生の材料は、

 

 

『Wikipedia 糖新生』より引用

 

 

糖新生(とうしんせい、gluconeogenesis)とは、飢餓状態に陥った動物が、グルカゴンの分泌をシグナルとして、ピルビン酸、乳酸、糖原性アミノ酸、プロピオン酸、グリセロールなどの糖質以外の物質から、グルコースを生産する手段・経路である。

 

 

ピルビン酸、乳酸、糖原性アミノ酸、プロピオン酸、グリセロールなど・・・とあるので、材料は他にもたくさんあるのかもしれません。

 

 

ただし、メインとなるのはタンパク質を分解した「アミノ酸」です。食事から得られる場合はそれを使い、足りない場合は筋肉を分解して取り出します。

 

 

体内に蓄えられた中性脂肪から得られる「グリセロール」、そして、嫌気的解糖で生じた「乳酸」も糖新生の材料として有名です。

 

 

ここでは、この3つについて解説していきます。

 

 

  • アミノ酸(のうち糖原性アミノ酸)

 

  • グリセロール

 

  • 乳酸

 

 

 

これらの材料は、いずれも、血液中に放出された後、肝臓に運ばれて「糖新生」が行なわれます。

 

 

 

まず、「糖原性アミノ酸」から解説していきます。

 

 

 

糖原性アミノ酸を材料にグルコースを合成する

 

 

アミノ酸は全部で20種類あります。

 

その中で「グルコース(糖質)を合成することができるアミノ酸」が18種類あります。

 

これを「糖原性(とうげんせい)アミノ酸 」と呼びます。

 

その名前がこちらです。

 

 

  • アスパラギン

 

  • アスパラギン酸

 

  • アラニン

 

  • アルギニン

 

  • イソロイシン

 

  • グリシン

 

  • グルタミン

 

  • グルタミン酸

 

  • システイン

 

  • スレオニン(トレオニン)

 

  • セリン

 

  • チロシン

 

  • トリプトファン

 

  • バリン

 

  • ヒスチジン

 

  • フェニルアラニン

 

  • プロリン

 

  • メチオニン

 

 

これに「リシン」、「ロイシン」を加えると全部で20種類になります。

 

 

血流に乗って肝臓に到着した「糖原性アミノ酸」は、「ピルビン酸」、「α – ケトグルタル酸」、「スクシニルCoA」、「フマル酸」、「オキサロ酢酸」のつのうちのどれかに変化します。

 

 

そして、それぞれの地点からグルコースに向かって進みます。

 

 

 

糖原性アミノ酸を材料にした糖新生の経路

 

 

 

  • トリプトファン、アラニン、スレオニン、グリシン、セリン、システインの場合は、「ピルビン酸」から先ほど説明した流れで反応が進みます。

 

 

  • アルギニン、プロリン、ヒスチジン、グルタミン、グルタミン酸の場合は、「クエン酸回路」の「α-ケトグルタル酸」に合流し、「リンゴ酸」まで進み、ミトコンドリアの外に出て続きの反応が進みます。

 

 

  • メチオニン、イソロイシン、スレオニン、バリンの場合は、「クエン酸回路」の「スクニシルCoA」に合流し、「リンゴ酸」まで進み、ミトコンドリアの外に出て続きの反応が進みます。

 

 

私が持っている本ではスレオニンは「スクニシルCoA」に合流するとなっていますが、Wikipediaでは「ピルビン酸」となっています。

 

『Wikipedia 糖原性アミノ酸』

 

 

  • フェニルアラニン、チロシンの場合は、「クエン酸回路」の「フマル酸」に合流し、「リンゴ酸」まで進み、ミトコンドリアの外に出て続きの反応が進みます。

 

 

  • アスパラギン酸とアスパラギンの場合は、「クエン酸回路」の「オキサロ酢酸」になるので、「リンゴ酸」に進み、ミトコンドリアの外に出て続きの反応が進みます。

 

 

次は「グリセロール」について解説します。

 

 

 

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グリセロールを材料にグルコースを合成する

 

 

中性脂肪を分解すると、「脂肪酸」と「グリセロール」が生成されます。

 

このうち「糖新生」の材料にできるのは「グリセロール」です。「脂肪酸」は糖新生を行なう為のエネルギー源にはなりますが、糖新生の材料にはなりません。

 

 

 

 

 

 

さて、材料の「グリセロール(別名:グリセリン)」ですが、以下のような流れでグルコースが合成されます。

 

 

 

グリセロールを材料にした糖新生の経路

 

 

肝臓に運ばれた「グリセロール」は、まず「グリセロール-3-リン酸」に変化します。この変化に必要な酵素の名前は「グリセロールキナーゼ」です。

 

そして、「グリセロール-3-リン酸」から「ジヒドロキシアセトンリン酸」に変化した後は、最初に説明した流れでグルコースへと変わっていきます。

 

 

次は「乳酸」です。

 

 

 

 

 

 

乳酸を材料にグルコースを合成する

 

 

「乳酸」とは、「ピルビン酸」から生じた物質です。

 

 

 

「乳酸」は処理できる量であれば問題ないのですが、pH5程度の酸性物質なので、蓄積すると体質が酸性に傾くので、癌等の原因になります。

 

 

余命わずかの末期癌患者が退院できたのは病院での栄養療法のおかげだった!

 

 

「乳酸」は血液にのって肝臓に運ばれた後、「ピルビン酸」に変換されます。この変換に使われるのは「乳酸脱水素酵素」です。

 

 

 

「ピルビン酸」から先は同じ流れです。

 

 

 

乳酸を材料にした糖新生の経路

 

 

 

糖新生に使われるATP

 

脂肪酸のところで少しお話しましたが、糖新生を行なうためには、材料だけではなくエネルギーも必要です。

 

グルコース1分子を合成するために必要な「ATP(エネルギー物質)」の量は、どの地点からスタートするかによって変わってきます。

 

 

ピルビン酸から・・・6分子のATP

 

クエン酸回路から・・・4分子のATP

 

グリセロールから・・・2分子のATP

 

 

 

糖質制限をしているのに血糖値が高いのは、糖新生が原因かもしれませんへ続く

 

 

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私はこれまで集めた情報や経験から、「糖質の摂取は控えた方が健康的だ」と思っています。

 

 

なので、これまでは「糖質がどのように体にダメージを与えるのか」・・・その具体例をお話してきました。

 

 

ただ、考えてみたら、具体的に「どのくらいだとセーフで、どのくらいから過剰になるのか」について詳しく書いた事はありませんでした。

 

 

従って、糖質をどのくらい控えた方が良いのか気になられている方は多いと思います。

 

 

一応、糖質制限にはいくつかパターンがあります。

 

 

 

 

  • 山田悟医師の緩い糖質制限

 

 ・1食糖質20~40g

 

 

 

  • 江部康二医師の糖質制限

 

 ・プチ糖質制限(1日糖質120~170g)
 

 ・スタンダード糖質制限(1日80~120g)
 

 ・スーパー糖質制限(1日30~60g)

 

 

  • 釜池豊秋医師の糖質ゼロ食

 

 ・1日1食、糖質5g以下

 

 

 

 

どれを選ぶかは、その人その人によります。

 

 

私がしているのは、糖質量1日10g以下の糖質制限なので、この中だと「スーパー糖質制限」に近いかなと思っています。

 

 

何故私が一日10g以下にしようと思ったかというと、2008年に一度、主食を抜いただけの緩い糖質制限に失敗したからです。失敗の原因が糖質の減らし具合を緩めにした事にあったので、2回目は厳しくしようと思いました。

 

 

 

緩い糖質制限に相当する「中途半端に糖質を減らして、高タンパク、高脂質」で病気になる人が増える・・・という話も無視できません。

 

 

【脂質+タンパク質】は良くて【糖質+脂質+タンパク質】が良くない理由

 

 

 

癌や難病の治療の場合は、徹底的に糖質を制限することを要求されるように、より効果を出したいのであれば、糖質量は少ない方が良いです。

 

 

ですが、何も疾患がなくて、そこそこ健康を維持したいのであれば、緩い糖質制限でも問題ないかもしれません。

 

 

また、前回私が紹介した以下の方法と組み合わせれば効果が上がるでしょう。

 

ベジタリアンや糖質を止められない人が、健康の為に摂っておきたい栄養素とは

 

 

また、体質的に、いきなり厳しい糖質制限ができない人もいるので、その場合、緩い糖質制限から始めて、少しずつ糖質量を減らして体を慣らしていく・・・という方法もあります。

 

 

 

・・・このように、様々なケースを知った上で、「自分に合った糖質の減らし具合(摂り具合)」を決めるといいのですが、この言い方だと曖昧ですね。

 

 

なので、もっと判断基準になるように、具体的に、人間の体にはどのくらいの糖質が必要で、どのぐらいの量から害になるのか・・・についてお話します。

 

 

 

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糖質が少しは必要な理由とは

 

 

過去に何度も言っているので、ご存じの方にはくどくて申し訳ないのですが、

 

糖質は過剰に摂ると害になりますが、「全く必要はない」わけではありません。

 

 

糖質は少しは必要です。

 

 

ただし、ここでいう「必要」というのは、世の中にいる「糖質は必要だ」と言って、糖質を食べるように勧めているマジョリティの人達とは意味合いが違います。

 

 

私の場合は、必要の量が極めて少ないですし、その上「必要だからあえて摂らなくて良い、それ以上摂ったら過剰摂取になる」という間逆の意見です。

 

 

このように、マジョリティの人達が考える「必要な糖質量」と、私のような糖質制限をしているマイノリティの考える「必要な糖質量」は違います。

 

 

基準が違うのだから、「少し」の感じ方も違うことになります。

 

 

なので、糖質制限をしている私の視点から、「必要な糖質量」と、「少し」の概念と根拠をハッキリさせておきます。

 

 

まず「人体に糖質が必要な理由」から説明します。

 

 

『低糖質ダイエットは危険なのか?中年おやじドクターの実践検証結果報告 糖質は大事な栄養素だからこそ、食べる必要はないのです。』より引用

 

 

糖質って、脳のエネルギーとしてとても重要な栄養成分です。それはまちがいありません。

 

ケトン体がいくら代替してくれるといっても、ケトン体が脳をサポートできるのは目いっぱい頑張って30%程度だと言われます。

 

 

geturinさんにご指摘いただきましたが、30%程度というのは3日程度の絶食時の話で、40日間の絶食時には(つまり筋肉を使い尽くして筋肉を用いた糖新生ができなくなった状態では)70%近くまでケトン体が利用されるという計算になるようです。この話で言いたかったこととは関係のない話なのですが、正確ではない記載をしてご迷惑をおかけしました。

 

 

残りはやはり、血中のブドウ糖が必要なのです。

 

 

ブドウ糖が一定濃度存在しないと、脳はうまく機能しませんし、ミトコンドリアを失った赤血球などは全く機能しません。血糖値が一定以上ないと、脳細胞も働かないし、赤血球も死んでしまいます。

 

 

さて、そんなに大事な糖質ですから「毎食50~60%の糖質を食べないと脳が働かなくなってしまいます、命にかかわります!」と、京都大学の某先生なんかは筋肉を誇示しながら世界一受けたい授業で熱弁しておられましたね。

 

 

んじゃあ、農耕文明が起こる以前の人類は果実の実る秋以外は脳が働かなくてぼーっとしてたでありますかあ?笑っちゃいますよねえ。

 

 

逆なんですよ。脳や赤血球にとってとても大事な栄養成分だからこそ、われわれは食べ続けなくても大丈夫なんです。食事から糖質を摂取しなくても、ほかに食べたたんぱく質や脂肪を使って糖質を生み出せるように、我々の体は設定されています。

 

 

大事な栄養素は、そのほとんどを我々が自分自身の体の中で作る仕組みになっているのです。糖質は、肝臓や腎臓での糖新生というプロセスで作るのです。

 

 

「ケトン体」とは、「脂肪酸」を分解してできた物質で、エネルギー源になります。

 

 

 

ポイントはここです。

 

 

>ブドウ糖が一定濃度存在しないと、脳はうまく機能しませんし、ミトコンドリアを失った赤血球などは全く機能しません。血糖値が一定以上ないと、脳細胞も働かないし、赤血球も死んでしまいます。

 

 

このように、「一定以上の血糖値」が必要なので、糖質が必要というわけです。

 

 

では、その「一定」について掘り下げて考えてみたいので、少し、血糖値の話にお付き合い下さい。

 

 

 

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血糖値とは

 

 

食事で「糖質」を摂ると、消化酵素の働きによって、「ブドウ糖」にまで分解されます。

 

 

糖質

 

 

ブドウ糖

 

 

「ブドウ糖」は小腸で吸収されることで血液の中に取り込まれます。

 

 

すると、血液の中にブドウ糖が入るのですが、その「ブドウ糖の濃度」の事を「血糖 けっとう」と言います。

 

 

「血糖値」は、それを数値化したもので、「100cc(1dl)の血液の中に、どのくらいブドウ糖が含まれているか」を表しています。

 

 

 

ただし、冒頭でもお話したように、体は血糖値を「一定の濃度」に保っているので、食事をしなくても(糖質を食べなくても)、常に血中にブドウ糖は存在しています。

 

 

 

その必要なブドウ糖は、「糖新生」というシステムで作ることができます。

 

糖質制限をしているのに血糖値が高いのは、糖新生が原因かもしれません

 

 

 

次は、血糖値の基準についてお話します。

 

 

 

 

 

 

血糖値の基準はバラバラ

 

 

「血液中にブドウ糖がどのくらい含まれているのか」、血糖値の基準についてお話します。

 

 

私は糖質制限をしていますが、糖尿病患者ではないので、血糖値についてはかなりアバウトに覚えていました。

 

 

しかし、今回記事を書くにあたり正確な数値を書かないといけないので、改めて調べてみると、(大した差ではありませんが)人によって言う事がバラバラなのです。

 

 

 

その原因は、学会ごとに基準が違うからでした。

 

 

『血糖値ナビ 血糖値の正常値の一覧表|血糖値異常の体への影響』より引用

 

血糖値の判断基準は学会ごとに違う

 

血糖値の判断基準は機関によって違いますので、血糖値に関する主要な2つの機関(日本糖尿病学会、日本人間ドック学会)が定める基準をご紹介します。要注意ラインの区分には違いがありますが、空腹時血糖値が126mg/dLを越えると異常(糖尿病)と判断される点では共通しています。

 

人間ドック学会の方が少し厳格な数値となっていますがこれは「異常を発見するための検査」で使う基準値である事も関係していると思われます。

 

 

こちらの記事を参考に、数値を確かめてみました。

 

 

単位は、㎎/dL(ミリグラム・パー・デシリットル)です。「1dl(100cc)中に、何gのブドウ糖が含まれているか」という意味です。

 

 

 

まず、よく使われる「日本糖尿病学会」の基準です。

 

 

日本糖尿病学会の場合

 

 

参考:一般社団法人 日本糖尿病学会 糖尿病治療ガイド2016-2017(抜粋)

 

 

 

  • 正常値・・・・空腹時(100未満)、食後(140未満)

 

  • 正常高値・・・空腹時(110未満)、食後(140未満)

 

  • 境界型・・・・空腹時(110~126未満)、食後(140~200未満)

 

  • 糖尿病・・・・空腹時(126以上)、食後200以上

 

 

 

「境界型」というのは、正常にも、糖尿病にも属さない「糖尿病予備軍」の事です。

 

 

 

続いて、「日本人間ドッグ学会」です。こちらの方がシンプルです。

 

 

 

日本人間ドック学会の場合

 

 

参考:公益社団法人 日本人間ドッグ学会 血液検査

 

 

 

  • 基準範囲・・・(99以下)

 

  • 要注意・・・(100~125)

 

  • 異常・・・(126以上)

 

 

 

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基準が違う理由

 

 

基準値が異なる理由ですが、以下のように説明されていました。

 

 

 

『血糖値ナビ 血糖値の正常値の一覧表|血糖値異常の体への影響』より引用

 

糖尿病学会と人間ドック学会の基準値は違う?

 

糖尿病学会というのは、糖尿病の研究のために創設された団体であり「研究結果を臨床に還元」する事が目的となっています。こちらで出している数値は治療研究の中から設置された数値と言えます。

 

一方、人間ドック学会が出した報告は過去に人間ドックを受診した人のデータを元に肥満度や生活習慣や検診結果の数値から「健康と思われる人」のデータを抽出し、そのグループの数値の「分布範囲」から基準値を割り出しています。つまり「健康と思われる人の数値があるのはこの範囲である」事を示していますが「この範囲であれば健康である」と保障するものではありません。

 

健康診断で用いられる基準値と、実際の診断で用いられる基準は完全に同一ではありませんので検査の数字が問題無くても体調がおかしいと感じる事があれば医師に相談し、必要があれば追加の検査を受ける事も必要です。

 

 

また、血糖値の基準について探してみると、こんな意見もありました。

 

 

『All About 血糖値の正常値って、どの位のこと?』より引用

 

血糖値の「正常値」って?

 

初めて自己血糖測定をすると、あまりの変動の大きさに驚きます。

 

そこで血糖測定器の取扱説明書で正常値を調べてみると、なんとどこにも書いてありません。

 

なぜ低過ぎる、正常、高過ぎるを教えてくれないの?

 

耐糖能障害のない健康な人では、食後45~60分に血糖がピークになりますが、140mg/dlを超えることはあまりありません。そして、2~3時間後に食前値に戻ります。

 

日本糖尿病学会の血糖コントロール指標では、合併症予防の観点からHbA1cの目標値を7%未満にすると食前血糖値を140mg/dl未満、食後2時間血糖値180mg/dl未満をおおよその目安にしてます。

 

一般の病院の血液検査では食前(空腹時)のみに正常値(基準値)を70~110mg/dl未満に設定しているようですが、検査施設によって数値は変わることもあります。

 

以前は日本糖尿病学会の空腹時血糖値は80~110mg/dl未満が「優」の評価、100~130mg/dl未満を「良」と評していました。血糖管理目標は患者によって異なるのでこの区分けがなくなりましたが参考になると思います。

 

70mg/dl未満は低血糖のゾーンになります。

 

以上のことから、空腹時血糖値80~110mg/dl未満、食後2時間血糖値80~140mg/dl未満が正常値と考えられますね。食事療法と運動療法だけの人はこのベストスコアが目標値です。

 

 

基準が違うので、どれを参考にしていいか迷うところですが、

 

これらの情報を元に、「人間の血液に含まれるブドウ糖の量」について考えていきたいと思います。

 

 

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血液中に必要な糖質量は5g

 

 

「〇〇mg/dl」・・・等という数値を言われても、ピンと来ない方も大勢いると思います。血糖値を測る習慣がない人にとっては、あまり意識しない数字や単位だからです。

 

 

そこで、「血液中のブドウ糖濃度」がどのくらいだと好ましいのか、「血糖値以外の表現」で語られている記事を2つ紹介します。

 

 

『ケトン体が人類を救う 糖質制限でなぜ健康になるのか / 著者:宗田哲男』より引用

 

 

全血液中の糖質はティースプーン1杯

 

アメリカのデューク大学生活習慣医学クリニックの患者教育で教えられていることをご紹介しましょう。

 

ここでは、「スプーン1杯の砂糖」で教育です。

 

カロリーなんでどこにも出てきません。カロリー神話の国=日本の糖尿病教育では考えられないことです。

 

糖質制限は、今ではアメリカもイギリスも認め、スウェーデンでは国を挙げて取り組み始めています。

 

デューク大学のウェストマン准教授のクリニックの壁には、ティースプーン1杯の砂糖の写真が飾られており、その横には以下の文言が書かれています。

 

 

〇正常な全血液中の血糖値はスプーン1杯未満

 

〇健康な空腹時血糖値の上限は100mg/dl

 

〇ヒトの全血量はおよそ5ℓ

 

〇ティースプーン1杯で砂糖5g

 

 

さあ、計算しましょう・・・・・・

 

 

〇100mg/dl=1000mg/L → 5ℓの血中には5000mgの砂糖=ティースプーン1杯の砂糖

 

 

ウェストマン准教授は、たとえ1日20gに糖質を制限しても、なお体内血液中の4倍量に相当することを、つね日ごろから患者に教えているといいます。

 

「これは自分の血糖値と体内の全血量を知っていれば簡単に計算できますが、意外と認識されていない人体の科学です。通常のコカ・コーラ1本には、ティースプーン7杯分の砂糖が含まれています。毎日コカ・コーラを2ℓ飲んでインスリンを使用している患者がこれを知り、糖質を制限したところ、インスリンを打つ必要がなくなったという経験がありました。思慮深い患者にとってはこうした知識が最高の教育になる可能性があります」

 

同准教授は毎月患者が自由参加できるサポート会を開催し、糖質制限による食事療法の継続に尽力しています。我々も見習いたいものですね!

 

1日に糖質が170g必要と言っている日本糖尿病学会幹部がいますが、だいぶ違いますね。(メディカルトリビューン紙より)

 

(266p)

 

 

血糖値が一定以上ないと、脳細胞も働かず、赤血球も死ぬとのことでしたが、これを読むと、その量はごく僅かだという事が分かります。

 

ティースプーン1杯程度あれば十分なのです。

 

 

『ウェブ一丁目図書館 ブドウ糖は脳の唯一の栄養ではない!ケトン体こそ脳の主要エネルギーだ。』より引用

 

 

糖質過剰は血管にダメージを与える

 

ところで人間の血液中にはブドウ糖が含まれていますが、その量はどの程度かご存知でしょうか?

 

毎年、定期健診を受けている方なら血糖値の基準値を見たことがあるはずです。でも、その基準値が一体何を意味しているのかなんて、ほとんどの人が意識していないでしょう。おそらく多くの人が、単に基準値の範囲内だったから問題なしと、さらっと読み流し、その意味を考えていないと思います。

 

血糖値は、80~100mg/dlの範囲内に保たれているのが正常です。

 

この基準値は、血液1デシリットル(dl)当たり血糖(ブドウ糖)が80~100ミリグラム(mg)に維持されていなければならないということです。

 

1dlを100グラムとした場合、血液100グラムに対して血糖は0.08~0.10グラムが正常値となります。

 

つまり、血液の0.08%~0.10%しか糖質が含まれていないのです。

 

人間の血液の総量は4~5リットル程度です。

 

仮に5リットルとした場合、一人の人間の血液の中にはわずか5グラム程度しか糖質は含まれていないのです。

 

高血糖は体全体の細胞のダメージとなるため、これだけ低いレベルで維持されなければならないんですね。

 

茶碗一杯のご飯には55グラムの糖質が含まれています。実に血糖の10倍程度の量です。これを10分や20で食べ終わったら、多量の糖質が血管内に流れ込み危険な状況になることは容易に想像できるでしょう。

 

そのため、大量の糖質が血管内に入ってきたとき、すい臓からインスリンが追加分泌されて、血糖を血管の外に出します。そして、血管の外に出た血糖は、一部は筋肉にグリコーゲンとして貯蔵されますが、多くは脂肪細胞に取り込まれ中性脂肪に変わってしまいます。

 

糖質をたくさん摂取すると太ると言われているのは、こういうことなのです。

 

 

最初に言ったように、「少し」は人によって感じ方が違います。

 

 

「少ししか食べていない」

 

 

・・・と言いながら、茶碗にしっかりご飯をついでいる人は多いのですが、これを読むと、「少し」だと思っていた量が、実は全然少しじゃなかった事が分かると思います。

 

 

 

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血糖値120以上で免疫力が下がる

 

さて、ここで再び「血糖値」の話に戻します。

 

 

血糖値は下がりすぎたらダメですが、上がりすぎてもダメです。

 

 

高血糖は血管を傷つけますし、上がりすぎた血糖値を下げる為に、「インスリン」というホルモンが大量に分泌されるのですが、それによって「低血糖」になる場合があるからです。

 

 

しかも、それだけでなく、免疫力を下げてしまうのです。

 

 

血液は液体の部分の「血しょう」と、固形の「血球」に分けられます。

 

で、「血球」には、「白血球 はっけっきゅう」、「赤血球 せっけっきゅう」、「血小板 けっしょうばん」があります。

 

 

血球

 

 

免疫機能は「白血球」のお仕事になります。

 

 

白血球の種類

 

 

 

そして、ビタミンCで有名な「ライナス・ポーリング」博士が言うには、

 

 

血糖値が120を超えると、白血球の免疫力の75%が失われ、それが100%に戻るまでに5~7時間かかる。

 

 

・・・のだそうです。

 

残念ながら和訳にはなっていないそうですが、英語で検索すると沢山ヒットするそうなので英語の得意な方は調べてみて下さい。

 

 

一応、他の方が日本語で説明された記事を調べてみると、

 

白血球等の免疫系はブドウ糖に弱く、高血糖の環境だと活力を失ってしまうのだそうです。

 

それが120という数値なのです。

 

 

『横ちゃんのきまま日記 血糖値の上昇が免疫力の低下を招く』より引用

 

 

【糖は免疫システムを下げる】

 

これは何十年も前から知られて来たことです。 1970年代にはもう、研究者の間で、白血球が病原菌や細菌を貪食するためにビタミンCを必要としていることが分かりました。

 

白血球は、その周りと比べて50倍ものビタミンCを必要とするので、それを溜め込まなくてはならないのです。

 

「食細胞指数」と呼ばれるものがありますが、それは、特定のマクロファージ(大食細胞)やリンパ球がどのぐらい早く病原菌や細菌、ウイルス、がん細胞を食べてしまうか、ということを表す指標です。

 

1970年代に、白血球が大量のビタミンCを必要とすること、それは一般的な風邪と闘うために必要だということをライナス・ポーリング博士が発見しました。

 

グルコースとビタミンCが、似たような生化学的構造を持っていることは知っていますが、では糖レベルが上がるとどうなるでしょうか? それらは、お互いに細胞に入ろうと拮抗するのです。(競合阻害的)

 

ということは、血中に糖がたくさんあると、それだけ細胞に入れるビタミンCも少なくなるということです。

 

血糖値が120では、食細胞指数が75%も下がってしまいます。

 

ですから、砂糖と食べると、免疫システムがどれだけ下がるかを考えてみてください。

 

ここで我々は病気というものの根幹に少しだけ迫ることが出来ます。 どんな病気についてかは関係ないのです、普通の風邪であろうが、心血管疾患、ガン、骨粗鬆症であろうが、病気の始まりというのは、いつも細胞レベル、分子レベルで起こってくるということ、その場合、インスリンが病気の直接の原因になっているか、それに近いものである。

 

 

さらにこのようなことも書かれていました。

 

『横ちゃんのきまま日記 血糖値の上昇が免疫力の低下を招く』より引用

 

萩原 敦さんのFBより転載

 

~血糖値の上昇が免疫力の低下を招く~
 (血糖値の数値から客観的な免疫力評価の数値を探る)

 

 

英語圏の文献で、我々の免疫力の客観的な評価をする場合に、lymphocytic index(リンパ球指数)とかphagocytic index(食細胞指数)なる指標を用い、血糖値の上昇値と関連付けて、記述されていることをよく見かける。

 

この「食細胞指数」や「リンパ球指数」という言葉自体、我が国ではあまり一般的ではないようです。

 

 

(中略)

 

 

たとえば、

 

「血糖値が120を超えると食細胞指数的な免疫力の評価をすると、約75%の免疫力がダウンする。」

 

この説は、ライナス・ポーリング博士が、はじめて世に知らしめた説だそうです。

 

ポーリング博士も研究に値する人物です。後日、改めて、彼についての言及もします。

 

つい先ごろ、比嘉さんという方のFBで、高血糖の赤血球を映像にして投稿されていましたが、その内容は、ひじょうに素晴らしいもので、血糖値が上昇すると、赤血球同士がくっついて、「連携を組み」、血管の中で、あろうことか、「血流をせき止め」、「血流を立ち往生」させることを示していました。

 

 

となると、免疫力の要である「白血球(食細胞やリンパ球他)」も「赤血球の通せん坊」にあい、免疫力を発揮できなくなる云々と述べていました。

 

 

この血糖値120と言う数値が、血流を悪化させる「赤血球通せん坊」作戦が、効果を発揮し、顕著になる数値(ボーダーライン)なんだろうと思います。

 

 

血糖値を120以上に上げたくないですが、ここでちょっと、血糖値の基準値を思い出して下さい。

 

 

 

「日本糖尿病学会」の正常値は、空腹時(100未満)、食後(140未満)

 

「日本人間ドック学会」の基準範囲は、(99以下)

 

 

 

「日本糖尿病学会」では、「糖尿病」という視点で考えられているので、食後血糖値が140未満までは正常とのことですが、「免疫機能」の面から考えるとアウトです。

 

 

このブログでは、「ご飯を中心におかずを食べる」日本人の食事スタイルは、糖質過多になると何度もお話してきましたが、おそらく日本人の多くは食事の度に血糖値が120を越えていると考えられます。

 

 

和食は素材の味を生かした料理だという嘘と、日本人が不健康な白米を止められないワケ

 

 

血糖値が120を超えると、白血球の免疫力の75%が失われ、それが100%に戻るまでに、5~7時間かかるのだとしたら、毎食ご飯を食べる人は、1日のほとんどの時間を、本来の免疫力の25%で乗り切っている・・・ということになります。

 

 

そのような食生活では、当然、感染症にも弱くなります。

 

インフルエンザ等の感染症の予防は食事が重要です。免疫力を弱らせる食品とは

 

 

そうならない為にも、血糖値を上げないように気をつけた方が良いのです。

 

というわけで、次は血糖値が上がる原因について簡単にお話します。

 

 

 

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血糖値が上がる原因

 

血糖値が上がる大きな原因は、ご存じの通り食事です。

 

ですが、それだけではありません。ネットで「血糖値が上がる原因」を調べるとこれだけ出てきます。

 

 

  • ストレス

 

 

  • 睡眠不足

 

  • 運動不足

 

  • 肥満

 

  • アルコール

 

  • 飲酒

 

  • 感染症にかかる

 

  • 遺伝

 

  • 加齢

 

  • 炎症

 

  • 疲労

 

 

「癌の原因」を彷彿とさせるぐらい、見ての通りなんでもありです。探したら原因がまだまだ出てきそうです。

 

ここまで多岐にわたると、「どうせ、何をしていても血糖値は上がるんだから食事なんて気をつけても意味ないでしょ」・・・と諦める人がでてきそうですね。

 

しかし、血糖値が上がる原因として、「食事から摂る糖質」の影響が大きい事には変わりありません。

 

食事に気をつける事に意味はあるのです。

 

 

 

糖質はどのくらい血糖値を上げるのか

 

 

血糖値が上がる原因は複数ありましたが、その中でも特に注意したいのが食事、それも「糖質を多く含む食材」です。

 

 

では、具体的にどのぐらいの糖質で血糖値が上がるのか・・・というと、それは、その人の健康状態によって違います。

 

 

 

 

□ 健康な人・・・・・・糖質1g で血糖値は1mg/dl 上昇する

 

□ 1型糖尿病患者・・・糖質1g で血糖値は 5mg/dl 上昇する

 

□ 2型糖尿病患者・・・糖質1g で血糖値は 3mg/dl 上昇する

 

 

 

このように、同じ「糖質1g」でも、上がる血糖値は、糖尿病の有る無しによって変わってきます。

 

例えば、ご飯茶碗一杯は約150gです。このうち糖質が55.3g含まれています。

 

 

これを計算すると、ご飯1杯食べると

 

 

 

 

  • 健康な人・・55.3mg上昇する

 

 

  • 1型糖尿病患者・・・276.5mg上昇する

 

 

  • 2型糖尿病患者・・・165.9mg上昇する

 

 

 

 

・・・ということになります。

 

 

 

血糖値が上がると何が悪いのかというと、先ほどお話した「免疫機能の低下」の他に、「追加インスリン」の影響があります。

 

 

 

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β細胞から分泌されるインスリンの働き

 

 

「インスリン」は、上がった血糖値を下げる唯一のホルモンです。

 

作られる場所は、膵臓の「ランゲルハンス島」にある「β(ベータ)細胞」です。

 

 

「膵臓 すいぞう」は、胃の後ろにあります。

 

 

膵臓のランゲルハンス島

 

 

「ランゲルハンス島」は、膵臓の中に島状に存在しています。

 

この島は小さな細胞が集まっているのですが、拡大するとこんな感じです。

 

 

ランゲルハンス島のα細胞とβ細胞

 

 

 

ランゲルハンス島の、「α(アルファ)細胞」、「β(ベータ)細胞」、「δ(デルタ)細胞」は、以下のような働きがあります。 ここでは太字にした「インスリン」に注目します。

 

 

 

 

  • α細胞でグルカゴンを分泌・・・血糖値を上げる働き

 

 

 

  • β細胞でインスリンを分泌・・・血糖値を下げる働き

 

 

 

  • δ細胞でソフトスタチン・・・「インスリン」や「グルカゴン」の分泌を抑える働きがある

 

 

 

 

「インスリン」は多機能で、「糖質」の代謝だけでなく、「脂質」や「タンパク質」の代謝にも関わっています。

 

 

そのうち、ここで押えておきたい働きはこちらです。

 

 

 

 

  • 血液中のブドウ糖を細胞に取り込ませる → エネルギーとして活用される

 

 

  • 一部のブドウ糖は、グリコーゲン(貯蔵用で容量は少ない)に変換されて肝臓や筋肉にストックする

 

  • 余分なブドウ糖を脂肪組織に取り込ませる(つまり太る

 

 

 

要するに、血液中の糖を細胞内に取り込ませる事によって血糖値を下げている・・・というわけです。

 

 

なので、「インスリン」がないと、糖は血液中に余ることになります。その結果、高血糖になります。

 

 

 

 

 

 

インスリンの分泌量と糖尿病について

 

「インスリン」は、基本的に少しずつ一定量が一日中出ています。これを「基礎分泌(ベーサル)」と言います。

 

この「基礎分泌」によって、血液中のブドウ糖の量が常に一定に保たれている・・・というわけです。

 

 

「インスリン」は生きていく為に必要なホルモンです。

 

 

従って、「基礎分泌」がないと死にます。

 

 

そして、「インスリン」は、食事をして血糖値が上がった時には、大量に分泌されます。これを「追加分泌(ボーラス)」と言います。

 

このように、「インスリン」は、常に出ている「基礎分泌」と、食後に出る「追加分泌」とに分けられます。

 

 

インスリンの基礎分泌と追加分泌

 

 

 

ちなみに、「糖尿病」はインスリンに問題が起きて高血糖になる病気です。タイプは以下のように分けられます。

 

 

 

1型の糖尿病(患者の10%)

 

何らかの原因によって、膵臓のβ細胞が壊れてしまうことで、ほぼインスリンが分泌されなくなってしまった状態です

 

元が壊れているので「基礎分泌」も「追加分泌」もどちらも不足しています。

 

その為、体の外から「インスリン」を補給することが必須です。

 

 

 

2型の糖尿病(患者の90%)

 

2型糖尿病は、最初は「追加分泌」に問題が生じますが、病気が進行すると「基礎分泌」も障害を受けます。

 

 

「インスリンの分泌が少なくなる」、あるいは「体がインスリンにあまり反応しなくなる」状態です。

 

 

 

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インスリンのメリットとデメリット

 

 

「インスリン」は、適正量が出て作用されないと体にとって大問題なのですが、実は副作用もあります。多すぎると有害なのです。

 

インスリンは「肥満ホルモン」と揶揄されたりします。

 

インスリンには余分なブドウ糖を脂肪組織に取り込ませる働きがあるので、血糖値が上がって「追加インスリン」が出る程太ります。

 

 

ただし、私のように糖質をいくら食べても全く太らないタイプの人間もいます。

 

糖質を過剰摂取していた時代に検査をしなかったので断定はできませんが、太らなかった原因はインスリンに問題があった可能性大です。

 

 

本当は怖いいくら甘い物を食べても太らない体質と、後で払う肥満以上の大きな代償

 

 

 

しかし、こんなのは序の口です。こちらをご覧下さい。

 

『ドクター江部の糖尿病徒然日記 インスリンの功罪。』より引用

 

 

 

1)
基礎分泌インスリンは、ヒトの生命維持に必要不可欠です。

 

2)
スーパー糖質制限食でも、基礎分泌の2~3倍レベルのインスリンは分泌されますし、 追加分泌インスリンも必要不可欠です。

 

3)
インスリン注射で、1型糖尿病患者の命が助かるようになり、近年、寿命が延びてきました。

 

4)
過剰なインスリンは、酸化ストレスとなり、がん、老化、動脈硬化、糖尿病合併症、アルツハイマー病などのリスクとなります。

 

 

こんばんは。今回はインスリンの功罪について考察してみます。

 

インスリンには、24時間継続して少量出続けている基礎分泌と、糖質を摂取して血糖値が上昇したときに出る追加分泌の2種類があります。

 

タンパク質摂取でも少量のインスリンが追加分泌されますが、脂質摂取では、インスリンは追加分泌されません。

 

これでまず解るのは、食物を摂取していないときでも、人体の代謝には、少量のインスリンが必須ということですね。このインスリンの基礎分泌がなくなったら、人体の代謝全体が崩壊していきます。つまり、基礎分泌のインスリンがないと、全身の高度な代謝失調が生じ、生命の危険があります。

 

例えば「運動をしたらインスリン非依存的に血糖値がさがる」といっても、インスリン基礎分泌が確保されているのが前提のお話です。

 

もし、基礎インスリンが不足している状態で運動すれば、運動で血糖値はかえって上昇します。

 

また、肝臓で行っている糖新生も、基礎インスリンが分泌されていなければ制御不能となり、空腹時血糖値が300mg/dl~400mg/dl、或いはこれ以上にもなります。

 

また、糖質を食べて血糖値が上昇したとき、追加分泌のインスリンがでなければ、高血糖が持続します。高血糖の持続は糖毒といわれ、膵臓のβ細胞を傷害し、インスリン抵抗性を悪化させます。

 

(中略)

 

このようにインスリンは、生命の維持に必須の重要なホルモンであることが確認できました。

 

また近年、1型糖尿病患者の寿命は延びています。

 

以下、糖尿病ネットワークから一部抜粋。
http://www.dm-net.co.jp/calendar/2016/024725.php

 

1975年に米国で行われた調査では1型糖尿病患者の寿命は、健康人に比べて27年短いとされていました。

 

スコットランドのダンディー大学が2万4,691人の1型糖尿病患者を対象に行った調査では、20代前半の糖尿病患者の予想される平均余命は、健康な人に比べ男性で11.1年、女性で12.9年短いという結果になりました(2015年1月報告)。

 

このようにインスリンの使用法や種類が改善されたことで、1型糖尿病患者の寿命はかなり改善されてきています。インスリン注射が、おおいに役に立っているわけです。

 

一方で過剰なインスリンの害にはエビデンスがあります。

 

たとえ基準値内でも、インスリンの血中濃度が高いほど、アルツハイマー病、がん、肥満、高血圧などのリスクとなります。

 

また、高インスリン血症は、酸化ストレスを増加させます。酸化ストレスは、老化・癌・動脈硬化・その他多くの疾患の元凶とされていて、パーキンソン病、狭心症、心筋梗塞、アルツハイマー病などにも酸化ストレスの関与の可能性があります。

 

ロッテルダム研究によれば、インスリン使用中の糖尿人ではアルツハイマー病の相対危険度は4.3倍です。

 

Rotterdam研究(Neurology1999:53:1937-1942)
「高齢者糖尿病における、脳血管性痴呆(VD)の相対危険度は2.0倍。
アルツハイマー型痴呆(AD)の相対危険度は1.9倍。
インスリン使用者の相対危険度は4.3倍」

 

インスリン注射をしている糖尿人は、メトグルコで治療している糖尿人に比べてガンのリスクが1.9倍というカナダの研究もあります。

 

2005年の第65回米国糖尿病学会、
カナダのSamantha博士等が、10309名の糖尿病患者の研究成果を報告、
その後論文化。コホート研究。
 「メトフォルミン(インスリン分泌を促進させない薬)を使用しているグループに比べて、インスリンを注射しているグループは、癌死亡率が1.9倍高まる。SU剤(インスリン分泌促進剤)を内服しているグループは癌死亡率が1.3倍高まる。」 
Diabetes Care February 2006 vol. 29 no. 2 254-258

 

このようにインスリンの弊害を見てみると、インスリンは血糖コントロールができている限り少なければ少ないほど、身体には好ましいことがわかります。

 

別の言い方をすれば、農耕開始後、精製炭水化物開始後、特に第二次大戦後に世界の食糧事情が良くなってからの糖質の頻回・過剰摂取が、インスリンの頻回・過剰分泌を招き、様々な生活習慣病の元凶となった構造が見えてきます。

 

 

 

こちらの記事は、インスリンの良い面も悪い面も伝えていてフェアかなと思います。

 

 

 

>たとえ基準値内でも、インスリンの血中濃度が高いほど、アルツハイマー病、がん、肥満、高血圧などのリスクとなります。

 

 

・・・の「癌」について補足です。

 

記事の冒頭で糖質制限のパターンをいくつか紹介しました。

 

 

どの糖質量を選択するのかは、その人の体質や何を目標にするかによって様々ですが、もし癌の治療をする場合は、追加インスリンを出さない糖質量がポイントになります。

 

それがどのくらいの量なのかというと、5g以下だそうです。

 

 

『facebook 藤川徳美医師 2015年1月10日』より引用

 

釜池先生によると、10gの糖質負荷にて追加インスリンは出るが、5gの糖質負荷では追加インスリンは出ない、すなわち追加インスリンを出さない5g以下が本来のヒトの食事だそうです

 

 

インスリンは血糖コントロールができている限り、少ないほど健康には良いのです。

 

 

 

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人間の体に必要な糖質量を分かりやすく説明

 

ここまでを整理します。

 

人間に糖質は必要ですが、その量は僅かです。

 

人間の血液は4~5ℓ。

 

その全血液に含まれている糖質量は、小さじ1杯程度(5g)です。

 

血糖値を上げるのは主に食事、糖質です。血糖値を測定するのが面倒な人は以下を参考にして下さい。

 

 

 

  • 健康な人・・・・・・・糖質1g で 1mg/dl 上昇

 

 

 

  • 1型糖尿病患者・・・糖質1g で5mg/dl 上昇

 

 

 

  • 2型糖尿病患者・・・糖質1g で3mg/dl 上昇

 

 

 

ちなみに、ご飯茶碗一杯は約150gで、糖質は55.3g含まれてているので、ご飯を1杯食べるとこうなります。

 

 

 

  • 健康な人・・・・・・55.3mg上昇

 

  • 1型糖尿病患者・・・276.5mg上昇

 

  • 2型糖尿病患者・・・165.9mg上昇

 

 

 

免疫系はブドウ糖に弱いので、血糖値が120mg/dl以上になると、免疫力の75%が低下します。

 

そして、高血糖になると、それを下げる為に「インスリン」が追加されるのですが、その量が多ければ多い程、慢性疾患になるリスクが増えます。

 

「追加インスリン」を出さない糖質量はg以下です。

 

 

以上のような、体の中で起こる現象を元に、食べている糖質が多いか少ないかを判断すると良いのではないでしょうか。

 

 

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今回は、「糖質が止められない人」や、「ベジタリアンの人」等、糖質を制限できない人が健康になる為に、最低限気をつけた方が良い事についてお話します。

 

このように言うと、

 

 

なんだお前、普段と言ってる事違うじゃん

 

 

・・・と、思う方もいるかもしれません。

 

 

何故なら、私はこのブログで常に「糖質を控える事が重要だ」と主張しているからです。

 

 

しかし、考えが変わったわけではありません。

 

 

私は今も、糖質の毒性を隠しながら、理由をつけては「糖質は摂った方が良いです、大丈夫です」・・・等と誘導する説が大嫌いです。「後でチャラになるだろう」という免罪符的な考えを生むことで、糖質の毒性をナメてしまうようになるからです。

 

 

しかし、様々な事情で糖質を止められない人が多い以上、1人でも多くの人救う為には、「糖質を止めなくても、そこそこ健康になる情報」も必要な知識であると感じたので、あえて記事にしておくことにしました。

 

 

強調しておきますが、「糖質を摂っても大丈夫」という意味ではありません。

 

 

誤解を防ぐ為に、まず、本記事を書くに至った経緯についてお話します。

 

 

 

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読者の方とのやり取り

 

 

最近、読者の方からメールを頂く事が増えたのですが、そのほとんどは、体が弱いから具体的にどうしたらいいか?という相談、私の記事を読んで実行したら体が元気になった!という体験談です。

 

 

このように、自分の元に体験談が集まってくることによって、「野菜中心」や「バランスの良い食事」をしていて体が弱い、体調を崩した方は考えている以上に多いんだな...と改めて実感しています。

 

 

真面目にバランスの良い食事をしていました、ベジタリアンをしていました、ローフーディストをしていました、マクロビオティックをしていました・・・。でも、体の調子が優れないんです

 

 

・・・といった感じです。

 

自分も通ってきた道なので、私に分かる事であれば、状況に応じて、出来る限り知っている知識を伝えるようにはしています。

 

 

元々食事にこだわっている真面目な方が多いので、みなさん行動が早いです。

 

 

私は実生活でも周囲の人から健康の相談をされる事があるのですが、相談してくるわりに、こちらがどんなに一生懸命説明しても、なかなか実行に移してくれないのが普通です。

 

 

 

 

そのような状況だったので、読者の方から「試しました!」といった体験が聞けると私も嬉しいです。

 

 

そして、理に適った事を真面目にやるからなのか、改善も早いです。変化はその人の体調や体質、実践した内容によって様々ですが、特に以下のケースはダントツに多いです。

 

 

 

  • 糖質を控えたら、少し前までお肉が食べられなかったのに食べられるようになった

 

  • 鉄不足を改善させたら体が暖かくなった

 

 

 

体験したみなさんは「こんなに簡単な事で変わるのか」と驚かれます。そして、この「簡単」、「再現性がある」・・・というのがポイントです。

 

 

世の中には様々な健康法がありますが、どんな健康法であれ、一部の人は成功していたりするものです。

 

しかし、100人中、1人2人が成功するような健康法は、私は基本的にオススメしていません。

 

 

例え1人の輝かしい成功者がいたとしても、その後ろに脱落者が99人いるなら、それはやはり「難しい方法である」と言わざるを得ません。再現性が低いので、万人受けはしないのです。

 

 

では何故、真面目に実践しているのに、ほとんどの人がいい結果を出すのが難しいのか・・・というと、やはり「その方法が理に適っていない、無理な事をするから」・・・と考えられます。だから、努力のわりに結果が出ないのです。

 

 

逆に、簡単に成果がでるという事は、「その方法が理に適っていて、無理が無いから」・・・と考えられるわけです。

 

 

「野菜中心」や「バランスの良い食事」や「マクロビオティック」に関する理論は、私がこのブログで紹介している情報より覚えることが多かったり、細かい計算を強いられたりと複雑です。

 

「長年それらを真面目に実行してきたのに結果が良くなかった人」は、それらよりシンプルな「質的な栄養失調(糖質過多・タンパク質不足・脂肪酸不足・ビタミン不足・ミネラル不足」の改善をすると、同じ努力で大きな変化が現れるので、驚かれるのだと思います。

 

 

そんな感じで、私も読者の方とやりとりをしていたわけですが、そんな中で、アドバイスが難しいタイプの方もおられます。

 

 

それは、健康が目的ではない、思想の為にベジタリアンをされている方です。

 

 

 

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ベジタリアンの健康維持は可能なのか

 

 

健康の為にベジタリアンをされているのであれば、「それは人間の体には合わないから止めた方がいいですよ」とハッキリ言えますが、このケースはそういうわけにはいきません。

 

 

私は当初、このブログは健康目的の情報を発信するブログなので、「思想の為に食事制限をされている方は興味ないだろうな」と思っていたのですが、今まで、まだ数人ですが、このような方からも、体調が優れないという趣旨のメールを頂きました。

 

 

目的が違うので、私が何か言ってもいいのかな...、と躊躇します。私の発想と噛み合わないからです。

 

 

私は基本的に、「先にマイナスの要素を排除してから、プラスに事を展開させる方が効率が良い」と考えています。

 

 

例えば、穴の開いたバケツがあった場合、「先に水を入れるのではなく、先に穴を塞いでから水を入れた方が効率がいい」と考えます。

 

 

ここで言う「穴」とは「糖質」の事です。

 

 

糖質は、体のタンパク質を変性させたり、せっかく摂ったビタミンやミネラルを消費してしまうので、体にとっては負債のようなものなのです。だから、これを排除した状態で、同時に必要な栄養素を補っていった方が良いのです。

 

 

それは理論だけでなく、自身の体験から、そういう結論になりました。

 

 

だから、「ベジタリアン(糖質過多)を止めない状態で、健康を維持する方法はないか」と相談を受けた場合、私のスタンスとは違うのでアドバイスは難しいです。

 

 

目的が違う相手に、「健康の為だから~」と語るのは悪いし、かといって、私の性格上、害になると分かっている糖質を口先で「摂っても大丈夫ですよ」とは言えないからです。

 

 

なので、私は「糖質を制限した状態より効果は劣りますが、全く方法がないわけではありません」・・・と、解決策をお伝えするようにしています。

 

 

これから先も、思想の為に食事制限をされている方から同じようなお問い合わせをいただく事があるかもしれません。従って、「糖質を摂っている人は何をしたらいいのか」を記事にしておく必要があると感じました。

 

 

世の中に「糖質を摂りながら行なう健康法」は五万とありますが、そうしたものは大抵「糖質の害」を弱小に扱っています。

 

糖質の危険性を分かった上で、それでどうするのか・・・という視点で述べられた健康法は少ないかもしれません。

 

 

なんでもそうですが、同じ行動でも、「危険だ」という認識の元に行なうのと、「危険だ」という認識がない状態で行なうのは全く違います。

 

 

「糖質を摂りながら健康になる方法」を、糖質の危険性を決して過小評価しない私が書くことで、役に立つケースもあるかもしれません。

 

 

そして、一応言っておきますと、この方法は思想とか関係なく、「糖質をどうしても制限できない人」の為にも有効です。

 

 

また、自身は糖質に気をつけているけど、家族が糖質ばかり食べていて心配だという人は少なくないでしょう。この場合にも使えます。

 

 

そして、糖質制限をしている人も「長期の旅行」等、「糖質を食べる環境に置かれた場合」の対処法として知っておいて損はありません。

 

 

以上のような理由から、「特殊な疾患がない場合は、糖質を制限することが大事だ」と考えている私としては不本意ですが、例外的に、「糖質を食べながら健康を維持するのに必要な事」についてお話します。

 

 

 

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摂った糖質を使い切る

 

 

糖質を摂りながら健康になる為には、摂った糖質を使い切る、つまり完全燃焼させる必要があります。

 

 

細かい説明は後でしますので、まずはこちらをお読み下さい。

 

 

『藤川徳美医師 facebook 2015年4月15日』より引用

 

 

グルコースを完全燃焼させれば病気にならない

 

グルコース→ピルビン酸→アセチルCoAと完全燃焼できれば乳酸もできず病気になりません

 

乳酸はディーゼル車から出る煤と同じ燃えかすで絶対溜めてはいけません

 

きんさんぎんさんは普通に食事をしても完全燃焼できてたのでしょう

 

しかし、がん家系、糖尿病家系、など体質的な弱点を持つ人の方が多いのも事実です

 

それは、遺伝子が違うということで説明できます

 

※グルコースとは「ブドウ糖」の事です。

 

 

これはエネルギーを作り出す時の話なのですが、このように、糖質を完全に代謝しきれば健康に生きることができ、不完全だと不健康になるのです。

 

 

では、「代謝しきる」とは具体的にどういう事なのか、難しい言葉を使わずに順番に説明していきます。

 

 

ポイントは以下の3つです。

 

 

  • グルコース → ピルビン酸 → アセチルCoAと完全燃焼

 

  • 乳酸

 

  • 体質的な弱点

 

 

 

 

糖質の代謝

 

 

生体は「ATP(エーティーピー)」という名前のエネルギー物質を利用して、呼吸をしたり、運動したり、体に必要なものを作ったりしています。

 

 

「ATP」はエネルギー物質なので、不足すれば慢性疾患になり、無くなれば死にます。どの生物もです。

 

 

生きていく為には、エネルギー源である「ATP」を作り続けなければならないわけですが、その為の代謝を「エネルギー代謝」と呼びます。

 

エネルギー代謝について分かりやすく説明してみた

 

 

そして、材料となるのは「糖質」「脂質」「タンパク質」です。

 

 

「糖質を摂りながら健康を維持する」・・・というテーマなので、ここからは糖質からATPを作る流れについて説明します。

 

 

エネルギーの材料である「脂質」は、分解されて「脂肪酸」となりますが、これは糖質の過剰摂取をしている場合は燃えないという特徴があります。

 

 

従って、「脂肪酸」をエネルギーの材料として利用する場合は、糖質を制限することが求められます。

 

 

一方、「タンパク質」は主に体の成分になる為、エネルギーとしてはあまりあてになりません。

 

 

 

まず、糖質は、ブドウ糖(グルコース)に分解されます。

 

 

 

糖質

 

 

ブドウ糖(グルコース)

 

 

 

このブドウ糖が「ATP」の材料になります。

 

 

しかし、ブドウ糖がいきなり「ATP」に変身するわけではありません。変化する為には何段階も化学反応が起きます。

 

 

これらの反応が行なわれる場所は、細胞の中です。

 

 

 

細胞の中のミトコンドリア

 

 

 

細胞の中には、発電所の機能をもつ「ミトコンドリア」があります。

 

 

ここでも材料から「ATP」を作るわけですが、ブドウ糖(グルコース)の場合は、先にミトコンドリアの外(細胞質基質)で何段階か反応が起きます。

 

 

 

細胞質基質の解糖系

 

 

 

「細胞質基質 さいぼうしつきしつ」という場所で、「ブドウ糖」は「ピルビン酸」という物質にまで分解されます。

 

 

 

ブドウ糖

 

 

(何段階か代謝)

 

 

ピルビン酸

 

 

 

「ブドウ糖」を「ピルビン酸」にまで分解する反応ルートの事を「解糖系 かいとうけい」と呼びます。

 

 

これにより、1分子のブドウ糖から「ATP」が個作られます。

 

 

ちょっと少ないです。

 

 

さらに多くの「ATP」を得ようと思ったら、発電所である「ミトコンドリア」を利用する必要があります。

 

 

細胞質基質では「解糖系」という反応でしたが、

 

 

ミトコンドリアの中では、マトリックスで「クエン酸回路」という反応、その次に内膜で「電子伝達系 でんしでんたつけい」という反応が起きます。

 

 

 

 

解糖系とクエン酸回路と電子伝達系

 

 

 

「完全燃焼する」とは、解糖系で終わるのではなく、

 

 

 

解糖系 → クエン酸回路 → 電子伝達系

 

 

・・・と進むことです。これだと同じ1分子のブドウ糖からでも、合計38個のATPを作ることができます。

 

 

 

しかし、これには条件があります。

 

 

 

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ピルビン酸の行方

 

 

ブドウ糖から分解された「ピルビン酸」ですが、必ず「ミトコンドリア」に進めるわけではありません。以下の「左のルート」ように、「ミトコンドリア」を利用できない場合もあるのです。

 

 

細胞質基質とミトコンドリア

 

 

ミトコンドリアに入れない場合、「ピルビン酸」は乳酸となります。

 

 

そして、「ディーゼル車から出る煤と同じ燃えかす」である乳酸は、慢性疾患の元なので蓄積させてはいけないのです。

 

 

 

 

乳酸を良いと捕らえるか、悪いと捕らえるかで見解は変わってきます。

 

 

近年「乳酸は疲労物質ではなかった」とか、場合によっては、有益であるかのようにイメージ工作がされています。

 

 

しかし、乳酸は「酸性」なので、蓄積すると血液が酸性化します。酸性になると細胞のミトコンドリアの機能障害を招くので良いわけがありません。

 

 

その結果、正常細胞が癌細胞になるのです。

 

 

癌細胞と癌家系について分かりやすく説明してみた

 

 

【注意】癌の本質を理解していないと症状が悪化する治療法を選択します

 

 

乳酸を良いものであるかのように語る社会的な背景については以下の記事でお話しています。

 

 

余命わずかの末期癌患者が退院できたのは病院での栄養療法のおかげだった!

 

 

 

 

ここからが、同じように糖質を食べても「病気になりやすい人」と「病気になりにくい人」の違いなので、注意して読んで下さい。

 

 

 

 

ビタミンB1

 

 

ミトコンドリアは発電所としての性能は良いですが、利用するには条件があります。

 

 

それは「ビタミンB1」です。

 

 

もしこれが不足していると、「ミトコンドリア」での代謝はできません。先ほど言った「ピルビン酸から乳酸が生じるルート」行きになってしまいます。

 

 

では、何故「ビタミンB1」が必要なのかをご説明します。

 

 

まず、先ほどの図の「ミトコンドリア」の部分を分かりやすくしてみましたので、こちらを見て下さい。

 

 

嫌気的解糖と好気的解糖

 

「アセチルCoA(コエー)」というのがありますね。

 

 

「アセチルCoA」が「好気性解糖(クエン酸回路+電子伝達系)」の入口となっています。

 

 

ピルビン酸がミトコンドリアの「クエン酸回路」に入る為には、まずピルビン酸が「アセチルCoA」に変換されなければならないのですが、もし「ビタミンB1」が不足しているとそれが上手くいかないのです。

 

 

もっと細かい事を言うと、

 

 

元の物質「ピルビン酸」に、「ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体」という酵素と、酵素のサポート役である「ビタミンB1」がピッタリと合わさって、生成物である「アセチルCoA」ができるのです。

 

 

 

ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体とビタミンB1

 

 

 

ここでもし、ビタミンB1が足りないと、3者がそろわないので、「アセチルCoA」にはなりません。

 

 

そして、「アセチルCoA」にならなければ、ピルビン酸は「乳酸」に代謝されます。これを「嫌気性解糖 けんきせいかいとう」と言います。

 

 

では、そうならない為に、「ビタミンB1」はどれぐらい必要なのか・・・というと、

 

 

人によって違います。

 

 

 

その理由は「酵素の形の違い」にあります。

 

 

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体質の違いは確率的親和力の違い

 

 

体質の違いを決める、酵素の形についてお話します。

 

 

元の物質である「基質 きしつ」と、「酵素 こうそ」が結合することで化学反応が起こり、新しく「生成物 せいせいぶつ」ができます。

 

 

 

基質と酵素

 

 

 

しかし、中には単独では力を発揮できない「酵素」もあり、その場合はサポート役である「補酵素 ほこうそ」が必要になります。

 

 

 

基質と酵素と補酵素

 

 

「酵素」と「補酵素」がセットになることで反応が起こる場合、「補酵素」が不足すると反応が上手くいきません。

 

 

そして、「ピルビン酸デヒドロゲナーゼ」は、単独ではなく、補酵素である「ビタミンB1」の力が必要な酵素です。なので、円滑に反応を進める為には「酵素と補酵素がピッタリ合うかどうか」が重要になってきます。

 

 

問題はその相性を決める酵素の形です。

 

 

 

「酵素」はタンパク質です。DNAに基づいてできている為、形は人によって異なります。

 

 

 

「酵素の形が悪い人」と「酵素の形が良い人」がいるのですが、先天的に決まっている為、変えることができません。

 

 

そして、この酵素の形の良し悪しによって、補酵素とくっつく確率に差がでます。

 

 

例えば、2回に1回の確率でくっつく人、10回に1回の確率でくっつく人、100回に1回の確率でくっつく人・・・。

 

 

このように「酵素」と「補酵素」が出会って結合する力、確率の事を「確率的親和力 かくりつてき・しんわりょく」と言います。

 

 

「確率的親和力」は、検査などでは調べられないそうです。

 

 

当然、少ない回数でくっつく「確率的親和力」の高い人の方が、代謝がスムーズにいくので、体質的に有利です。

 

 

一方「確率的親和力」が低く、結合の確率が悪ければ、その分反応できず代謝が上手くいかないので体質的に不利です。

 

 

このケースに当てはめると、酵素である「ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体」の形が悪い人は、補酵素である「ビタミンB1」と結合しにくい為、「ピルビン酸をアセチルCoAに変える能力」が先天的に低い・・・ということになります。

 

 

このような人は「酵素の形が良い人」に比べて、「ミトコンドリア」が利用できないので、グルコースを完全燃焼できず、乳酸が溜まりやすく、それによって体質が酸性化しやすい人だと言えます。

 

 

つまり、体質が酸性化する事で生じる疾患にかかりやすいのです。

 

 

そして、問題は「乳酸」だけではありません。

 

 

ミトコンドリアで代謝ができない場合、「少ないATP」で生きなければならず、疲れやすく、低体温になります。

 

 

 

このように、同じようにグルコースを摂っても、「好気性解糖」であれば完全燃焼でき健康でいられますが、反対に「嫌気性解糖」に傾くと非常に不健康です。

 

 

だから、そうなりやすい「確率的親和力」の低い人は注意が必要なのです。

 

 

「嫌気性解糖」に傾けないようにするには、補酵素である「ビタミンB1」のが大切です。

 

 

 

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補酵素の量を増やす

 

 

先天的に決まっている酵素の形のせいで、同じように「ビタミンB1」を摂っていても、「確率的親和力の高いAさん」は代謝が上手くいき、「確率的親和力の低いBさん」は代謝が滞る・・・という事態が起きます。

 

 

その場合、「酵素と補酵素の結合の回数」を上げる方法は、出会いの確率を増やすことです。

 

 

「酵素」の形は変えられませんが、「補酵素 ほこうそ」はビタミンです。こちらの量を増やしてやることで、結合の確率を上げ、代謝をスムーズにすることが可能です。

 

 

その結果、「確率的親和力」の低い人でも、「ピルビン酸」が「アセチルCoA」に変わりやすくなり、ミトコンドリアの「クエン酸回路」→「電子伝達系」へと進むことができる・・・つまり、完全燃焼できるというわけです。乳酸も発生しないので健康的です。

 

 

「ビタミンB1」の摂り方ですが、毎日継続することを考えたら、ビタミンB群のサプリメントが手軽です。

 

 

私は糖質制限をしていて1日の糖質量は10g以下なので、今のところ「B群」は飲んでいませんが、身内は糖質制限をしていないので、予防の為に以下のサプリメントを飲ませています。

 

 

 

ビタミンB-50コンプレックス

 

 

「ビタミンB50コンプレックス」と言います。

 

 

同じような商品は色々ありますが、私は「iHerb(アイハーブ)」という海外のサイトで 「Source Naturals社」のものを購入しています。

 

 

 

 

 

ちなみに、100錠入って約1000円です。

 

 

安いので、糖質を食べていて体の調子が悪い知人にあげた事もあります。

 

 

何故、サプリメントが良いのかというと、毎日続ける事が重要だからです。その為には安くて手軽である必要があります。「ある一つの成分を摂るために食品を一品増やす」というのは、やってみると手間でお金もかかります。

 

 

そのわりに、食品に含まれるビタミンやミネラルは少ないので、サプリメントに比べると効果が弱いです。

 

「食べ物だけで健康を保つ」と、「食事法と栄養補助食品を組み合わせる」ではどちらが優れているか

 

 

ここで思い出していただきたいのですが、「ビタミンB1」を摂る主な目的は、「酵素と補酵素が結合する確率を上げる事」でした。そして、その確率の低さの度合いによって、「ビタミンB1」の量を増やす必要がありました。

 

 

なので、食品に含まれるちょっとの量では足りないのです。

 

 

『藤川徳美医師 facebook 2017年3月26日』より引用

 

 

ビタミンの要求量は先天的に決まっている。

 

確率的親和力が低い代謝酵素を持っている場合、高用量のビタミンがないと代謝が進まない。

 

高用量のビタミンがないと代謝が進まない人=ビタミン依存症。

 

ビタミンの必要量は、加齢により増え、心理状態によって増え、ストレスにより増える。

 

長期間のビタミン不足や栄養失調により、治療においてはきわめて高用量のビタミンが必要となる。

 

つまり、ビタミン依存症が後天的に起こる。

 

ビタミン依存症では通常の100~1000倍の量のビタミンが必要となる。

 

ビタミン依存症は、先天的な部分も大きいのは確かだが、加齢、食事内容、服薬、疾病の合併によっても引き起こされる。

 

第二次大戦中捕虜収容所にて栄養失調となった兵士は、その治療のためにはきわめて高用量のナイアシン投与が必要であった。

 

慢性的なナイアシン不足(ペラグラ)はビタミンB3(ナイアシン)依存症を引き起こす。

 

ビタミン、ミネラルの最低必要量、

 

B1 25mg

 

B2 25mg

 

B3 300mg

 

B6 25mg

 

葉酸 2000mcg

 

B12 500mcg

 

C 2000mg

 

D3 1500IU

 

E 200IU

 

Zn 25mg

 

Mg 500mg

 

セレン 200mcg

 

クロム 200mcg

 

 

上記を食事だけで摂取するのは無理。
すなわち、サプリメントが必要。

 

 

はい、「ビタミンB1」は25mg必要です。

 

 

食品の中で「ビタミンB1」が多いのは「豚ヒレ肉」ですが、100gあたり0.98mgです。

 

 

ほど遠いですね。

 

 

もし「欲しい栄養素を、目的とする量」まで補おうと思ったら、食品を「フードファイター」のように大量に食べなくてはなりません。それは現実的ではないです。

 

 

飲む量を正確に測れる事、手軽な事、効果がハッキリ感じやすい事がサプリメントの良いところです。

 

 

もちろん、高くて続けられない・・・等というのは論外です。

 

 

海外のサプリメントは質がよくて安いものがあるので、そちらを利用すれば負担が少ないです。

 

 

さて、肝心の中身ですが、内容量はこちらです。

 

 

 

 

 

英語なので、

 

『iHerb』より引用

 

チアミン(ビタミンB-1)             50 mg 3,333%

 

リボフラビン(ビタミンB-2)           50 mg 2,941%

 

ナイアシンアミド                  50 mg 250%

 

ビタミンB-6(ピリドキシンHClとして)       50 mg 2,500%

 

葉酸(葉酸として)                 800 mcg 200%

 

ビタミンB-12(シアノコバラミンとして)      50 mcg 833%

 

ビオチン                      50 mcg 17%

 

パントテン酸(D-パントテン酸カルシウムとして) 100 mg 1,000%

 

コリン(コリン酒石酸塩として)          50 mg

 

イノシトール                   50 mg

 

PABA(パラアミノ安息香酸として)         30 mg

 

 

どれも量が充実しています。

 

 

ちなみに、「ビタミンB群」は全部で種類あります。

 

 

B1、B2、ナイアシン、パントテン酸、B6、ビオチン、葉酸、B12です(色んな名前がつけられていて混乱します)

 

 

B群はこれらが連携、協力し合って働いているので、合わせて摂るのが理想的です。

 

 

サプリメントで栄養素を摂った方が良いのは、こういった理由もあります。

 

 

飲む量ですが、基本は1日1錠なので、健康維持目的である身内にはそのようにさせています。

 

 

しかし、癌の方や、精神病の方は1日6錠だそうです(その場合少しずつ増やしていくそうです)。

 

 

この量は試した事がありませんが、知識として知っておいて損はないでしょう。

 

 

 

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ビタミンの過剰摂取の心配について

 

 

サプリメントの話をすると、過剰摂取の心配をされるかもしれません。なので、ビタミンの過剰摂取について説明しておきます。

 

 

現在、「ビタミン」として正式に認められているのはこちらです。

 

 

『ビタミン Wikipedia』を参考に書きます。

 

 

水溶性ビタミン

 

 

  • ビタミンB群

 

・ビタミンB1(チアミン)

 

・ビタミンB2(リボフラビン。ビタミンGともいう。)

 

・ビタミンB3(ナイアシン。ビタミンPPともいう。)

 

・ビタミンB5( パントテン酸)

 

・ビタミンB6(ピリドキサール、ピリドキサミン、ピリドキシン)

 

・ビタミンB7(ビオチン。ビタミンBw、ビタミンHともいう。)

 

・ビタミンB9(葉酸。ビタミンBc、ビタミンMともいう。)

 

・ビタミンB12(シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン)

 

 

 

  • ビタミンC(アスコルビン酸)

 

 

 

脂溶性ビタミン

 

 

  • ビタミンA(レチノールなど)

 

 

  • ビタミンD( エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール)

 

 

  • ビタミンE(トコフェロール、トコトリエノール)

 

 

  • ビタミンK(フィロキノン、メナキノンの2つのナフトキノン誘導体)

 

 

 

この名前の数を見ただけでうんざりする人もいるでしょう。なので、ポイントだけ押さえます。

 

 

ビタミンは「水溶性」と、「脂溶性」に分けられているのですが、水溶性のビタミンが9種類、脂溶性ビタミンが4種類で、合計13種類になります。

 

 

「水溶性のビタミン」は、摂りすぎても尿とともに排泄されます。従って、過剰摂取の心配はありません。ですが、こちらは調理で栄養が失われてしまうことも多く、排出されやすい為、体に蓄えることが難しいので、頻繁に補わないと不足してしまいます。

 

 

「ビタミンB群」はこの「水溶性」に属します。

 

 

一方、「脂溶性のビタミン」は脂にとける為、体内に蓄積されます。排泄されにくい性質なので、過剰症や中毒の恐れがあります。

 

 

だから、注意するべきなのは、脂溶性ビタミンのD,A,K,Eです。「ビタミンだけ(DAKE)」・・・と覚えたら忘れないでしょう。

 

 

 

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補酵素と補因子

 

 

ミトコンドリア(好気性解糖(クエン酸回路+電子伝達系)の入口に、補酵素である「ビタミンB1」が必要だ・・・という事はお分かりいただけたかと思います。

 

 

先ほどは、理論を理解してもらう為に、あえてシンプルに語りましたが、実は「ピルビン酸」を「アセチルCoA」に変える為に必要な補酵素は、「ビタミンB1」一つではありません。

 

 

有名な「ビタミンB1」を含めてこれだけあります。

 

 

 

  • ビタミンB1

 

  • ビタミンB2

 

  • ビタミンB3(ナイアシン)

 

  • ビタミンB5(パントテン酸)

 

  • アルファリポ酸

 

 

 

詳しくは以下の記事で説明しています。

 

クエン酸回路(TCA回路)について分かりやすく説明してみた

 

 

 

見てもらったら分かりますが、ほぼ「ビタミンB群」です。だから、「ビタミンB50コンプレックス」を飲むのが効率が良いのです。

 

 

 

そして入口は、B1を始めとしたB群ですが、その後の反応にも、それぞれ「補酵素」や「補因子」が必要です。

 

 

ビタミンは「補酵素」、ミネラルは「補因子 ほいんし」と呼ぶそうです。

 

 

「クエン酸回路」の補酵素は、「ビタミンB群」。補因子は、「鉄」、「マグネシウム」です。

 

 

そして、エネルギー代謝の出口である「電子伝達系」には、補因子である「鉄」が必要です。

 

 

クエン酸回路と電子伝達系の補酵素

 

 

 

必要な「補酵素」や「補因子」がなければ上手く反応しない・・・という理屈は同じです。

 

で、特に注目すべきなのは、出口で必要な「鉄」です。

 

 

 

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電子伝達系に必要な鉄

 

 

このブログでは、度々「鉄」の重要性を訴えてきましたが、やはりここでも「鉄」が必要なのです。

 

もし、鉄不足の状態だと「電子伝達系」の機能が低下するので、「ATP」不足になります。

 

 

『うつ・パニックは「鉄」不足が原因だった / 著者:藤川徳美』より引用

 

 

基本的に、糖質を摂っていて血中にグルコースがある状態だと、脂肪酸は燃えにくくなります。しかし、糖質制限を始めてグルコースが減ると、脂肪酸が燃えるようになりますから、太りにくくなります。

 

 

ですから、脂肪酸を材料とした回路がうまく回ればよいのですが、クエン酸回路や電子伝達系を回すためには、やはり、鉄、ビタミンB群やマグネシウムなどが必須ですから、それらが足りないとうまく回路が回りません。

 

 

何より、ミトコンドリアにおけるエネルギー代謝の最終段階である電子伝達系においては、酸化還元反応という部分において、これを媒介する鉄の働きが欠かせないことです。

 

 

これは、グルコース(ブドウ糖)を材料とする代謝の場合も、脂肪酸由来の場合も同じです。

 

 

ここで鉄がないと、ATPができないのです。

 

 

電子伝達系では、多くのシトクロム系の鉄タンパク質が関与して、電子の授受を行います。

 

 

鉄はほぼすべての生物に必須な元素ですが、とくにミトコンドリアの働きを活性化するためには不可欠です。十分な鉄が、ミトコンドリアに運ばれなくてはならないのです。

 

 

(130p~131p)

 

 

 

 

 

これは糖質制限をしていて、脂肪酸を材料に「ATP」を作っている人にも当てはまる事です。

 

 

従って、どんな人も鉄不足では「ATP」不足になります。

 

 

そして、鉄不足になりやすいのは15~50代の女性です。原因は生理です。

 

 

 

私は糖質制限をしていて、卵や赤身の肉をたくさん食べているので「鉄は足りている」と思っていました。しかし、今年の1月に貯蔵鉄である「フェリチン」を測ってみると、49でした。

 

フェリチンは最低50ないと「鉄不足」、理想は100なので、これでは少ないです。

 

 

生理がある日本人女性の多くはフェリチン30以下です。

 

 

ちなみに、海外では妊娠するにあたってこれぐらいのフェリチンがないといけないという基準があるそうで、フェリチン40以下では妊娠が許可されない国もあるそうです。

 

 

生理がある女性は、毎月鉄を失うので、積極的に鉄を摂らないと不足します。

 

 

閉経後の女性や男性は鉄不足の人は少ないです。

 

 

フェリチンについては以下の記事に書いています。

 

フェリチンと鉄不足について分かりやすく説明してみた

 

 

 

私は鉄をしっかり摂っていると思っていましたが、それでも食事だけでは足りませんでした。それだけ生理での鉄の損失は大きいのです。

 

 

それが、鉄のサプリメントを飲み始めたところ、一気に元気になりました。以下が私が飲んでいる鉄のサプリメントです。

 

 

 

Nowアイアン

 

 

野菜中心でバランスを心がけていた食事からスーパー糖質制限に変えた時も、様々な体調不良が改善し、全く疲れを感じないほど体力がつきましたが、鉄を飲み始めたことで、さらに体が楽に動かせるようになりました。

 

 

藤川医師は鉄不足の女性がフェリチン50を越えると別人のように元気になると述べられていますが、本当にその通りです。

 

 

食事や運動の量は変えていないので、筋肉量は変わっていませんが、同じ体格なのに鉄があるとないとではパワーがまるで違います。

 

 

このように言うと「気のせい」と言われるのですが、実際に私の記事を読まれた女性から「鉄を飲み始めて元気になった、体温が上がった」とメールを頂くことが増えています。

 

 

糖質制限をやっておられる方だけではなく、ベジタリアンの方や、バランスの良い食生活をしている方からもそのような報告があったので、どんな食事をしていても、鉄不足の人は、それを解消することで、体に変化がハッキリと表れるようです。

 

 

 

鉄はタンパク質と一緒に吸収されるので、タンパク質をしっかり摂ると、さらに効果が上がります。

 

鉄の効果について、詳しくは以下の記事で述べています。

 

 

鉄の過剰摂取は危険という考えを改めます。鉄サプリを半年間飲んでみて思う事

 

 

 

「元気になった」、「体温が上がった」・・・ということは、ATPがしっかりと作られているからでしょう。

 

 

つまり、「好気性解糖」ができている・・・ということです。

 

 

というわけなので、グルコースを完全燃焼する為には、ビタミンB1だけでなく、鉄不足にならないようにする事も大切です(※もちろん他の補酵素、補因子も大切です)

 

 

繰り返しますが、これは糖質制限をしている人にも言えることです。

 

 

 

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タンパク質不足の解消も必要

 

 

どうしても糖質が止められない人は、「ATP不足対策」、「乳酸の蓄積対策」を忘れないようにして下さい。

 

 

食事だけでは歯が立たないので、サプリを利用して代謝をスムーズにし、できるだけブドウ糖(グルコース)を完全燃焼させるように意識すると良いです。

 

 

そして、もう一つ大事なことがあります。それは、タンパク質を不足させない事です。

 

 

タンパク質は体の材料なので、これが不足していたら弱い体になります。当然、回復力も低下します。タンパク質不足の状態では、どんな健康法も役に立ちません。

 

 

生体はアミノ酸からタンパク質を作っています。作っては壊し・・・の繰り返しで成り立っています。その為、アミノ酸も古くなり変形します。

 

 

通常、このような痛んだアミノ酸は破棄されますが、タンパク質不足の人は材料がないので、この古いアミノ酸を使い回します。これが問題なのです。

 

 

変形したアミノ酸からできたタンパク質は、免疫機能からすると「非自己」に見えるのです。

 

 

つまり、「敵」ですから、そうなれば、自分自身を攻撃する「自己免疫疾患」の原因になります。

 

 

使い回しにはリスクがあります。なのでタンパク質は常に補充し続けることが大切です。

 

 

そして、「タンパク質が足りているかどうか」の目安ですが、血液検査の項目に「尿素窒素(BUN)」というのがあります。

 

 

BUNが10mg/dL以下の人は、タンパク質不足です。理想は15mg/dLです。

 

 

タンパク質が不足している人は、プロテインで補うのも一つの手です。

 

 

 

 

 

糖質を摂る人に覚えておいて欲しいこと

 

 

今回は糖質を止められない方に向けて、「糖質を止めないで健康を維持する方法」についてお話ししました。これを実行すれば、ダメージはある程度抑えられると思います。

 

 

しかし、もし「癌」や「膠原病 こうげんびょう」になった場合は、これだけでは通用しないと思って下さい。やはり糖質を減らした方が効果的です。

 

 

 

これらの難病を糖質制限で治療する場合は、食事から得る糖質を極限までそぎ落とします。

 

 

以下の記事でも書きましたが、癌治療にいたっては「ブドウ糖」の点滴ではなく、「イントラリポス」というブドウ糖0点滴をするそうです。

 

【注意】癌の本質を理解していないと症状が悪化する治療法を選択します

 

 

何故そこまでするのかというと、糖質を減らした方が効果があるからに他なりません。つまり、基本的に糖質は毒性が強いものなのです。

 

 

 

糖質制限を行なってはいけない疾患(例えば、腎臓病 クローン病、糖尿病腎症、糖原病、活動性膵炎、肝硬変、長鎖脂肪酸代謝異常症...等)を抱えていないのであれば、どんな健康法を行なうにしても「体にダメージを与える糖質」を制限した方が効率が良いのです。

 

 

 

サプリメントは効果がありますが、批判が多いです。その為、サプリメントを使いたくないと考える人もいます。

 

そんな方は1度以下の記事を読んでみて下さい。

 

サプリメント肯定派が批判される理由は正当なのか検証してみた

 

 

 

 

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動脈硬化の改善・予防についてお話します。

 

 

気をつけなければいけないのは「血管の劣化」と「LDLコレステロール」です。

 

 

どちらが重要かというと、もちろん「血管の劣化」です。

 

 

動脈硬化は血管の症状ですから。

 

 

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動脈の構造

 

 

動脈の構造を簡単に説明します。

 

まずはビジュアルから入りましょう。

 

 

 

 

 

血液の通り道である動脈は、内側から「内膜」、「中膜」、「外膜」と3層構造になっています。

 

 

この動脈を違う角度から見てみます。

 

 

 

 

動脈硬化に関係が深いのは、「内膜」と、「中膜の内側半分」になります。

 

 

ちなみに、「動脈」は心臓から全身に血液を送る血管で、「静脈」は送り出された血液が心臓に戻る血管です。

 

血管の構造は基本的には同じですが、「動脈」の場合は、心臓(ポンプ)からの圧力に耐えられるよう、「静脈」よりも中膜の筋肉が厚く、弾力もあります。

 

一方、「毛細血管」は基本的に「内膜」の一層でできています。

 

 

 

 

動脈硬化の特徴と種類

 

 

動脈硬化の特徴は以下です。

 

 

  • 血管の“しなやかに伸び、力強く復元する”という機能が失われる

 

  • 動脈壁に「病的な成分」が発生している状態

 

 

 

前者が「血管機能的な特徴」で、後者が「病理組織学的に見た特徴」になります。

 

そして、動脈硬化には種類があります。

 

 

 

①アテローム性動脈硬化(粥状動脈硬化)

 

②細動脈硬化

 

③中膜石灰化硬化(メンケベルグ硬化)

 

 

 

それぞれを簡単に説明していきます。

 

 

 

①アテローム性動脈硬化

 

 

一般的に言う「動脈硬化」とは、「アテローム性動脈硬化」のことを指しています。

 

「アテローム」とは、「動脈に蓄積したかたまり」のことで、脂質、カルシウム、様々な線維性結合組織を含んだ細胞の死骸から構成されています。

 

「心筋梗塞」や、「脳梗塞」の原因になります。

 

 

 

②細動脈硬化

 

 

「細動脈硬化 さい・どうみゃくこうか」は、「老化」や「高血圧」により、脳、腎臓、目等の細い血管の弾力性がなくなり硬くなる症状です。

 

 

 

③中膜石灰化硬化

 

 

「中膜石灰化硬化 ちゅうまく・せっかいか・こうか」は、中膜にカルシウムが溜まって「石灰化」することで起こります。硬くなる為、血管壁が破れやすくなります。

 

「大動脈」、「下肢の動脈」、「頚部の動脈」に起こりやすいです。

 

 

 

 

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内膜と中膜の構造

 

 

動脈硬化に関係があるのは「内膜」と、「中膜の内側半分」でしたね。

 

というわけなので、「内膜」と「中膜」の構造の図をご覧下さい。

 

 

 

 

 

 

「内膜」と「中膜」を隔てているのが「内弾性板 ないだんせいばん」です。

 

次は、その下の「中膜」の構造になります。

 

 

 

 

 

 

次は動脈硬化の過程を説明します。

 

 

 

 

 

動脈硬化になるまで

 

 

 

細かい事は後で説明しますが、動脈硬化になる過程を簡単に言うとこうです。

 

 

 

①エラスチン、コラーゲン、ゼリー状、にわか状のタンパク成分が破壊され形が崩れ、量が減少する

 

 

②変性したコラーゲンが増え、病的なゼリー状、にわか状の成分は塊状に増える

 

 

③病的なタンパク質の増加によって細胞が膨れ、萎縮、消失する

 

 

④血管壁に大量のコレステロールやカルシウムが集まる

 

 

⑤アテロームや石灰化が形成される

 

 

⑥動脈は本来持っている機能を失う

 

 

 

よく、④の「コレステロール」や「カルシウム」が問題視されますが、一番の問題は①~③です。

 

 

この過程がなければ④以降は起こりようがありません。

 

 

何故そう言い切れるのかというと、血管の内膜には、タンパク成分でできた膜があるからです。

 

 

 

『日本人よコレステロールを恐れるな / 著者:長谷川元治』より引用

 

 

 

 

さっきの図は、この図を元に分かりやすく描いたものです。

 

内膜の「内皮細胞」の上に、「タンパク膜」が描かれています。

 

この膜は、必要な栄養分を取り入れ、老廃物を排出する「栄養呼吸」と、有害な成分をシャットアウトする「バリア機能」を持っています。

 

この機能が正常なら、コレステロールは動脈壁に入ることができないので問題ありません。つまり④以降は起こらないというわけです。

 

 

だから、動脈硬化の改善・予防で重要なのは、「膜が傷付かないようにする事」と「膜の修復」です。

 

 

物事の道理から考えれば、これらは、「コレステロールの心配」をするより大事なことです。

 

 

 

 

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血管の為にすべき事

 

 

「血管が何によって劣化するのか」を把握し、その原因を取り除く事が、動脈硬化の一番の改善法であり、予防法です。

 

血管の劣化は「炎症」「変性」によって起こります。

 

 

「炎症」と「変性」の原因は色々考えられますが、多くの人に最も当てはまるのは「糖質」です。

 

一応、他にも、「ストレス」、「タバコ」、「極度の肥満」、「老化」、「トランス脂肪酸」・・・等、色々なものが原因の候補として挙がっていますが、どれも万人に満遍なく当てはまるものではありません。

 

1日3食、主食を食べている人は多いですから、原因はぶっちぎりで糖質の可能性が高いです。

 

「自分は糖質はほとんど食べていない」・・・と言う人以外は、まず「糖質」を疑った方がいいです。

 

糖質が炎症を起こす理由については以下の記事で詳しく述べています。

 

炎症と自己免疫疾患について分かりやすく説明してみた

 

 

また、糖質は、タンパク質と結びつくと「糖化反応」が起きます。簡単に言うと細胞が劣化するわけです。

 

 

「糖化」とはタンパク質の変性です。「タンパク膜」、「コラーゲン」、「エラスチン」・・・等はタンパク質なので、糖質によって変性します。

 

 

 

 

 

血管が痛まない為に必要なのは、炎症や変性の原因である「糖質」を減らす事、

 

そして、痛んだ血管を修復させる為に必要なのは、十分な「タンパク質」を摂る事です。

 

 

 

 

既に血管が痛んでいる人が気をつけること

 

 

例え動脈硬化の根本的な原因が「血管のタンパク成分の膜の損傷」だったとしても、すでにタンパク膜が壊れている人は、「コレステロール対策」もした方が良いでしょう。

 

内皮細胞の上にあるバリア機能が壊れれば、有害な成分をシャットアウトできません。

 

そして、内皮細胞が壊れた・・・と仮定した場合、特に警戒しなければいけないのは、

 

「sdLDLコレステロール」です。

 

これは、「悪玉コレステロール」と言われています。

 

 

色んな名前があってややこしいので、ここで「コレステロール」について整理しておきます。

 

 

 

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コレステロール

 

 

コレステロールは「脂」です。

 

 

なので、単体で「水分」である血液の中を流れているわけではありません。

 

 

こちらがコレステロールの構造になります。

 

 

 

 

 

 

脂であるコレステロールは、親水性の物質に覆われています。

 

 

これを「リポタンパク」と言うのですが、普段「コレステロール」と言っているのは、この「リポタンパク」のことです。

 

 

この「リポタンパク」は、比率サイズ合成される場所の違いで呼び名が変わります。

 

 

よく耳にする「善玉コレステロール」と、「悪玉コレステロール」は比率やサイズが違いますが、同じ「リポタンパク」です。

 

 

そして、この二つは役割が違います。

 

人間が生きていく上で必要なコレステロールを、必要としている場所に運ぶのが「悪玉コレステロール」。宅配屋と考えて下さい。

 

古いコレステロールを回収しているのが「善玉コレステロール」です。こちらは回収屋です。

 

 

  • LDL(悪玉)コレステロール = 配達屋

 

  • HDL(善玉)コレステロール = 回収屋

 

 

 

 

LDLコレステロールは悪いのか

 

 

近年、「コレステロールを下げるのは間違いだった」という説が浸透してきていますが、それでも「悪玉コレステロールは下げた方が良い」・・・と言われています。

 

何故、必要としている場所に運ぶ「LDLコレステロール」が悪者なのか、その理由についてお話します。

 

実は「LDLコレステロール」は2種類あります。

 

 

 

  • 通常サイズのLDLコレステロール

 

  • 小型サイズのLDLコレステロール

 

 

 

悪いのは「小型LDLコレステロール(sdLDLコレステロール)」です。

 

以下が、「小型LDLコレステロール」の特徴と、良くない理由です。

 

 

 

  • 滞在時間が長い → 血管壁と接触する機会が多い

 

  • サイズが小さい → 血管壁に侵入しやすく、侵入した先で酸化される

 

  • 抗酸化物質が乏しい → 活性酸素に対する防御力が弱いので酸化しやすい

 

 

 

悪いのは、「小型だから...」というよりも、「酸化しやすい」からです。

 

酸化されたLDLコレステロールは、周囲の細胞に対して毒性を持つので、片づける必要があります。

 

これが血管内皮が厚くなって、動脈硬化が進行する始まりです。

 

 

 

 

酸化した後のLDLコレステロール

 

 

酸化すると何故良くないのか、その説明になります。

 

以下は「内皮細胞」が傷つけられた後の流れです。先に紹介した動脈硬化の流れの④~⑤の部分にあたります。

 

 

 

傷ついた「内皮細胞」の隙間から、LDL(悪玉)コレステロールが内膜の内側に入り込んでいく

 

 

内皮細胞の内側に入り込んだLDLは、活性酸素によって酸化される

 

 

有害な酸化LDLを排除する為、単球(白血球の一種)も内膜の内側へ入っていく

 

 

「内皮細胞」の間から内膜へと入り込んだ単球は、「マクロファージ」の姿に変身して掃除を行なう

 

 

「マクロファージ」は、次々と酸化LDLを食べていくので大きくなる(これを泡沫細胞という)

 

 

泡沫細胞(ほうまつさいぼう)が蓄積すると、アテロームになる

 

 

アテロームができると、血管壁が厚くなって、血管内部は狭くなる

 

 

 

白血球は体の中のお巡りさんで、単球(たんきゅう)はその一種です。

 

 

 

 

 

「単球」は「マクロファージ」になります。

 

 

 

 

「マクロファージ」は、壊れた細胞や、バクテリアを食べるようにプログラムされていて、「酸化LDLコレステロール」もこの対象になります。

 

 

 

 

「泡沫細胞」が蓄積すると、「アテローム性のプラーク」ができあがります。

盛り上がると、血管の中が狭くなります。

 

 

 

 

 

 

・・・このような流れになるので、酸化しやすい「小型LDLコレステロール」を下げる事が、動脈硬化対策になっている・・・というわけです。

 

 

ただし、この話は、内皮細胞の隙間から血液中の小型LDLコレステロールが内膜の中に侵入する事が始まりです。

 

実際には内皮細胞の直上に「タンパク膜」が存在しているので、通常は内皮細胞は血液と直接触れることはありません。

 

 

 

 

動脈が正常、あるいは、動脈硬化の初期の状態では、血液中にある「小型LDLコレステロール」や「単球」はシャットアウトされているので、内皮細胞の中に入り込むことは不可能です。

 

中に入らなければ、小型LDLは酸化されないので、「酸化コレステロール」は存在しない事になり、そこから先の話も始まりません。

 

 

一方、動脈硬化が進行し、タンパク膜が壊れている場合は、「小型LDLコレステロール」予防は必須になります。

 

膜がなかったら「LDL」も「単球」も内皮細胞の中へ入っていくからです。

 

 

 

 

 

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LDLコレステロールの対処法

 

 

 

世間一般では、コレステロールの対策に薬が使われていますが、ろくな話を聞きません。

 

 

なので、私が注目しているのは「ビタミン」です。

 

 

『藤川徳美医師 Facebook 2017年5月10日』より引用

 

18、心臓血管疾患
Abram Hoffer:Orthomolecular Medicine For Everyone、より

 

(中略)

 

動脈硬化、

 

動脈硬化は、1)砂糖代謝症候群(精製糖質過剰摂取)である、2)血管壁に傷がつき、炎症が起こる、3)血管内膜の自己修復機能が低下して起こる。

 

血中コレステロール値と冠動脈疾患との直接の関連は乏しい。

 

酸化されたLDLだけが、炎症過程と関連する。

 

動脈硬化は、インスリン過多、ホモシステイン値、リポプロテイン(a)値、CRP、歯周病などの炎症、トランス脂肪酸摂取量と関連する。

 

家族性高コレステロール血症患者では、LDLレセプターが欠如しているので、LDLが適切に代謝されず、酸化LDLが増加する。

 

コレステロール代謝抑制剤であるナイアシン投与群では、高コレステロール患者群においてコレステロール値を47%低下させ、HDLを上昇させた。

 

つまり、ナイアシンは動脈硬化を予防し、動脈硬化を治療させる。

 

8500人の10年間の経過で、他の高脂血症治療薬投与群に比べ、ナイアシン投与群は、11%死亡率を減少させ、2年間寿命を延長させた。つまり、ナイアシンが動脈硬化治療の第一選択薬である。

 

ナイアシン用量は1000~2000mg。

 

予防においては、ナイアシン、C、E、B6、Zn、が必要。

 

治療においては、ナイアシン3~6gで中性脂肪とLDLを低下させ、HDLを増加させることが最も有効である。

 

Cを最低3gを数ヶ月投与することで、プラーク部位からコレステロールを引きはがすことができる。

 

B6は最低100mg、グルコン酸亜鉛は50~100mg、Eは最低800IU、多分セレンも有効。

 

 

動脈硬化予防に特に効果的なのは「ナイアシン」です。別名「ビタミンB3」と言います。

 

 

「ビタミンC」も良い働きをします。

 

 

ただし、ここで一つ注意が..

 

ビタミンやミネラルをたくさん取る為に、多くの人は「野菜や果物で満たそう」・・・と考えると思います。

 

 

しかし、私はその方法はオススメしません。

 

 

理由は、動脈硬化の原因になる「糖質」が、野菜や果物に多く含まれているからです。必要なビタミン・ミネラルを満たす程これらを食べると、結果的にとんでもない量の糖質を摂ってしまうことになるので、かえって不健康になる可能性があります。

 

 

過去、健康の為に野菜や果物をたくさん摂っていたのにも関わらす、糖質の害が大きく、体が弱かったです。

 

野菜や果物は健康的というイメージの盲点。ビタミン・ミネラルに注目しすぎる事で気付かれない糖質の害

 

ローフーディストやベジタリアンの真実。肉を避け野菜や果物を多く食べる人に見られる肌の特徴と、健康上の問題

 

 

 

以下の記事でも書きましたが、現代の野菜や果物は品種改良されており、原種より糖度が増しているので、糖化によるリスクは大きいです。

 

「食べ物だけで健康を保つ」と、「食事法と栄養補助食品を組み合わせる」ではどちらが優れているか

 

 

 

その為、私はビタミンやミネラルは、必要な栄養素をピンポイントで摂取できるサプリメントが安全で効率が良いと考えています。

 

 

 

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石灰化

 

 

動脈硬化が進行すると、組織が「石灰化」します。

 

 

「タンパク膜」の質が悪くなって動脈壁が栄養不足に陥ると、「エラスチン」や「コラーゲン」の新陳代謝は低下します。

 

 

作り替えが行なわれなくなるので、壊れて量が減っていきます。

 

 

すると、台風で決壊した堤防を「砂袋」を使って応急処置をするように、組織は「カルシウム」を代用品にして、「エラスチン」や「コラーゲン」があった隙間を埋めようとします。

 

 

これを放っておくのは良くありません。

 

 

で、この改善も「ビタミン」が有効的だそうです。こちらは「ビタミンE1」です。

 

 

『藤川徳美医師 Facebook 2017年2月12日』より引用

 

 

基礎から学ぶビタミンE-8.動脈硬化、脳梗塞とビタミンE1(d-αートコフェロール)

 

三石巌:全業績7、ビタミンEのすべて、より

 

さて、動脈硬化の正体は何であろうか。それとコレステロールとは、いかなる関係にあるのであろうか。コレステロール以外にも、なんらかの因子が存在するのであろうか。

 

カルシウムといえば、それが骨や歯に集中的に沈着している元素である。

 

これがよその部分に沈着するのは正常でない。ところが、硬化した動脈壁には、しばしばカルシウムが沈着している。

 

これがまた、ビタミンE1によって追い出されるのだ。

 

ついでにいえば、老人の腎臓には、とかくカルシウムの沈着がみられるが、これもまたビタミンE1によって追い出すことが知られている。

 

動脈に沈着したカルシウムは、硬化の主因ではなくても、大局から見て、それは好ましからざる変性といわざるをえない。

 

老化の指標として過酸化脂質ないしリポフスチンをとることが許され、しかもなお、カルシウムの沈着が過酸化脂質、リポフスチンの沈着量に比例するという事実があったとするなら、動脈壁や腎臓のカルシウムが、何らかの形でこれらの老化物質に結合していることが予想される。

 

このような脈絡をたどることが許されるならば、過酸化脂質ないしリポフスチンの分解を助けるビタミンE1に、動脈壁や腎臓に沈着したカルシウムを追放する作用があって当然、という論理になるだろう。

 

 

 

 

ここまでコレステロール対策をお話してきましたが、もう一度、食生活の注意をしておきます。

 

 

 

 

 

コレステロール抜きでも動脈硬化はでき上がる

 

 

サプリメントで栄養を補助することも大事ですが、私は食事の内容も大事だと考えています。

 

そこで、「日本人が食べている食事内容は、血管にどういう影響を与えるのか」を知るために、ウサギの話を紹介します。

 

 

冒頭でお話した「アテローム(動脈に蓄積した固まり)」ですが、人間に出来るものと、ウサギにできるものは少し違います。

 

 

 

  • ウサギのアテローム・・・動脈壁の表面にそのままベタベタとコレステロールがくっついている形状

 

  • 人間のアテローム・・・表面がタンパク線維でできた模様、中にコレステロールが溜まっている形状

 

 

以上のことを踏まえたうえでお読み下さい。

 

 

『日本人よコレステロールを恐れるな / 著者:長谷川元治』より引用

 

ウサギに人間そっくりの動脈硬化をつくる。

 

コレステロール添加食でウサギに発生する動脈硬化と、人間の動脈硬化はアテロームの構造が違い、まったくタイプが違うということはすでに述べたとおりですが、私たちはウサギに人間とまったく同じタイプの動脈硬化をつくることにも成功しています。

 

しかも、コレステロールをほとんど与えることなしに動脈硬化をつくることができたのです。

 

今から25年ほど前、私たちは東北山間の農村で土地を借り、実験用ウサギの研究をしていたことがあります。

 

そのときに付近の農家から買い求めたウサギ200羽のPWVを測定してみたところ、初めから値が高く、すでに動脈硬化を起こしているように思えました。

 

そこでウサギを解剖してみると皮下脂肪だらけ内臓脂肪だらけの状態で、しかも予想どおり動脈にはすでに病変が起きていたのです。一羽だけでなく、この地域のウサギすべてがこういう状態でしたから、ことは重大です。

 

さっそく付近の農家を訪問して、いろいろ調べてみたところ、ある事実がわかりました。

 

どこのウサギもエサには草などは与えず、家族が食べ残したごはん、カップラーメン、タクワンのシッポなどを与えていたのです。そのうえ1日に摂取する量が“飽食”といってもよいほど大量かつ高カロリーで、しかも高塩分でした。

 

 

私たちはこのときの体験をヒントに、ウサギに動脈硬化をつくるためのコレステロール添加食ではない“動脈硬化食”を考案しました。

 

これは簡単に言うと、高熱処理をして吸収をたいへんよくしたαデンプン(ちなみに熱処理しないものはβデンプンという)に多量の塩分を加えたものです。

 

糖質がほとんどで、タンパク質はわずかしか含まず、コレステロールもほぼゼロです。はからずも、ごはんに漬け物、みそ汁、少量の塩魚といった昔の日本人の食事に似たものになりました。

 

このようなエサはウサギの食欲を非常に増進するようで、人間に換算すると約500キロカロリーにも相当するほどの量を1日に食べるようになります。

 

こうして、高αデンプン、高塩分、高カロリーのエサを与えつづけていると、自然にウサギの血中コレステロール値や、中性脂肪値、血糖値が上昇してきます。

 

この場合のコレステロールや中性脂肪は明らかに体内(ウサギの場合は盲腸)で合成されたものです。

 

そのような状態のウサギに今度は血圧を上昇させる作用のある物質を注射して、高血圧症も起こします。

 

これによって、ウサギに高血圧、高脂血症、糖尿病という三つの代表的な成人病がそろったことになるわけです。

 

 

ウサギのPWVを定期的に測定すると、刻々と値が大きくなって、動脈硬化が進んでいくことがわかりました。そして5ヶ月後に解剖し、大動脈や頚動脈、冠動脈、脳動脈などの組織を観察したところ、コレステロール添加食を与えたときにできるものとはまったく似ても似つかない、人間そっくりの動脈硬化がウサギにでき上がっていたのです。

 

この実験の意義はいくつかありますが、まず私たち専門家にとっては、人間そっくりの動脈硬化をウサギに人工的につくれるようになったため、動脈硬化の研究をよりくわしく正確に行なえるようになったという点があげられるでしょう。

 

先にも述べたようにコレステロール添加食を与えてつくった動脈硬化では人間とはあまりに違いすぎ、人間の動脈硬化を研究するのには適さないからです。

 

そして、いちばん重要なことは、コレステロール抜きでも動脈硬化は立派に(?)でき上がるということが実験的に証明された点です。

 

たとえコレステロールの摂取量が極端に少なくて、血中コレステロール値がそれほど高くなくても動脈硬化は発生するのです。
この実験結果もまた「コレステロール元凶説」に対する強力な反証となるでしょう。

 

(167p~170p)

 

 

やはり、動脈硬化で最も注目しなければならないのは「コレステロール」ではなく「糖質」だと言えそうです。

 

 

 

動脈硬化についてもう少し細かい説明を読みたい方

 

 

現在、私が考えている動脈硬化の改善・予防法をまとめると以下のようになります。

 

 

  • 血管が傷つく原因である糖質を減らす

 

  • 組織の修復に必要なタンパク質をしっかり摂る

 

  • LDLコレステロール予防に、ナイアシン、ビタミンE、ビタミンC等を利用する

 

 

このような結論になったわけですが、その根拠は以下の記事に書いています。

 

 

科学のインチキはコレステロールが教えてくれる

 

動脈硬化は悪玉コレステロールではなく、動脈壁の劣化が原因だった

 

 

この2つは、過去に動脈硬化とコレステロールについて書いた記事だったのですが、情報を追加しようと追記、修正、重複する部分を削除していたら、ほぼ原形をとどめない記事になりました。

 

 

完全リニューアルなのですが、かなり長くなったので、要点をかいつまんで書いたのが本記事になります。こちらは時間のない方向けに書いたので、根拠等が不十分です。詳しい説明を知って納得したい方は、2つの記事を読んで下さい。

 

 

 

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