動物性食品等の「酸性食品」を食べても、「血液のpH」は変わりません。
変わるのは「尿のpH」です。
酸性食品とアルカリ性食品の定義と影響について分かりやすく説明してみた
酸性食品の動物性タンパク質によって骨粗鬆症になる説の真相と、含硫アミノ酸のメリット
「尿のpH」が酸性化すると、尿酸が排泄されにくくなって、血液中の「尿酸値」が上がります。
従って、それを起因とした疾患の対処法では、「酸性食品を控えて、アルカリ性食品を食べよう」と言われます。
そうなると、「動物性食品は避けたほうが良い」という判断になります。
しかし、「尿酸」が増える理由は、単純ではありませんでした。
以下の記事でもお話しましたが、様々な原因があったり、動物性食品を過剰摂取しても必ず尿酸値が上がるわけでもないので、納得のいかない事も多いです。
高尿酸血症の原因と問題について分かりやすく説明してみた
本記事は、この続編です。
前半はこれまでの話を簡潔にまとめ、後半は視点を変えて「尿酸のメリット」についてお話します。
肉が悪く言われるのは「含硫アミノ酸」と「プリン体」が原因
「動物性食品は良くない」とされる理由を整理します。
例えば、「痛風」を例にすると、2つの見方ができます。
「含硫アミノ酸がどれだけ含まれているか」という視点と、「プリン体(尿酸の元)がどれだけ含まれているか」という視点です。
- 肉に含まれる「含硫アミノ酸」を分解した時に発生する「硫酸イオン」で、尿が酸性化する
含硫アミノ酸
↓
硫酸イオン
↓
尿のpHが酸性化する
- 肉や魚の内臓類に多く含まれている「プリン体」は、体内で「尿酸」に代謝されて、尿や便として排泄される(食品由来のプリン体は腸で分解されて尿酸にならずに排泄されるという説もある)
「肉に含まれる含硫アミノ酸」によって尿が酸性化するのは、人間も動物も同じです。
一方、「プリン体」は、食べ物から摂取しなくても、生きていれば生じるので、それが分解されれば「尿酸」になります。しかし、多くの動物は、尿酸をさらに分解できるので溜まりません。一方、人間は「尿酸」までしか分解できなので、溜まりやすいです。
「含硫アミノ酸」が多いからといって、「プリン体」も多いとは限りません。
例えば、卵は「含硫アミノ酸」は多いですが、「プリン体」は少ないです。
『精神科医こてつ名誉院長のブログ 三石理論 タンパク質論』より引用
含硫アミノ酸は、とりわけ不足しがちなアミノ酸である。
人間の要求にこたえるだけの量の含硫アミノ酸をもつ食品は、卵と鶏肉だけである。
といっても、鶏肉は全くすれすれ、卵は50%程度の余剰をもっている。
「卵」の項では、私は強く卵をおしたつもりである。その根拠は、卵がありあまる含硫アミノ酸をもつことにあった。卵をおいてほかには、このような食品はないのである。
『帝京大学 帝京大学薬学部 臨床分析学研究室 高尿酸血症・痛風におけるバランスの良い食事』より引用
ただ、肉や魚はプリン体も中程度(100-200mg/100g)含むので、食べ過ぎないように1回の食事で80-100gを目安にしましょう。
肉や魚を食べ過ぎると血中の尿酸値が上がり、痛風になりやすいことが知られています。『昼食、夕食の例』を参考にして下さい。
卵や大豆製品はプリン体の少ない食品です。卵は1個が細胞1つにあたるため、プリン体はほぼゼロ。でもコレステロールが多いので2日に1個くらいにしましょう。
卵は、「酸性食品」なので「尿のpH」は酸性化しやすいけど、「プリン体」はほぼゼロなので「尿酸値」は増えにくいのです。
高尿酸血症になる条件
「尿酸」は過剰に作られたり、排泄がうまくいかないと蓄積して「高尿酸血症」になります。
「尿のpH」をアルカリ性に近づけると、「尿酸」は溶けやすくなるので、排泄されやすくなります。
また、肉食動物のように尿が酸性化していても、「尿酸」が分解されてほぼない状態であれば痛風にはなりません。
以上のような理由から、「高尿酸血症」は、尿が酸性に傾いた(溶けにくい)状態で、尿酸が溜まりやすい状態...という2つの条件が重なったら起きると考えてよいでしょう。
どちらか1つでは成り立ちにくいようです。
- 悪さをする「尿酸」が少々あったとしても、アルカリ性食品の摂取によって、尿のpHがアルカリ性に近づくと、溶けて排泄されるので安心
- 動物のように、尿のpHが酸性でも、悪さをする「尿酸」が少なければ安心
尿を酸性化させるのは「酸性食品」、尿酸値を上げるのは「プリン体の多い食品」ということになっていますが、残念ながら、肉や魚はどちらも該当します。
なので、良くないと判断されても仕方ありません。
しかし、この2つの条件が揃っているのは肉や魚だけではありません。
尿のpHを酸性化させたり、尿酸値を上げるのは、例えばこんなものです。
- 血液の尿酸値を上げる → プリン体の多い食品、乳酸、ケトン体
注目して欲しいのは「乳酸」です。
乳酸によって尿酸が増えるメカニズム
pH5程度の「乳酸」は、血液を酸性化させる...と何度も紹介しました。しかし、血液だけでなく、尿も酸性化させます。
「乳酸」は糖質を代謝しきれなかった時に発生する「燃えカス」で、溜めてはいけないものです。
理想は、「乳酸が発生する糖質」を控える事です。
しかし、動物性食品を避けると、植物性の食品の割合が多くなります。これらは糖質が多く含まれているので、糖質の摂取量が増えます。
糖質はエネルギーの材料になるのですが、ビタミンやミネラルが足りないと、上手く代謝できません。そうなると「乳酸」が発生しやすくなります。
次は、その「乳酸」が「尿酸」とどう関係しているのか説明します。
尿酸値が上がる理由をシンプルに言うとこうです。
「乳酸」には「腎臓からの尿酸の排泄を妨げる作用」があります。その結果、尿酸値が上ります。
『ガンの特効薬はミトコンドリア賦活剤 乳酸の蓄積で交感神経が高ぶりガン体質へ!』より引用
乳酸が溜まってくると、肝臓のコリ回路によって、グルコースに戻される。が、このシステムで処理しきれなかった乳酸はどうなるのかな、と。
処理しきれなかった乳酸は、血液中に溜まっていきます。そうなると、血液が酸性化していきます。
(アシドーシス)そして、アシドーシスを緩和すべく、尿中への乳酸の排泄をします。
この時、尿が乳酸で酸性化するため、尿酸の尿中への排泄が邪魔されます。そうすると、結果的に血液中の尿酸が増えていってしまいます。
尿酸自体に毒性があるわけではない。尿酸が結晶となるのが問題なのである。
酸化ストレスの増大によって、尿酸が増える理由ですが、尿酸というのは、ビタミンCなんかよりも強力な抗酸化物質なんですね。酸化ストレスが増えると、強力な抗酸化剤である尿酸で対抗するわけです。』
以下が「乳酸」によって「尿酸値」が高くなるメカニズムです。
糖質の代謝(嫌気性解糖)によって乳酸が発生
↓
乳酸の蓄積
↓
血液が酸性化
↓
アシドーシスを防ぐために乳酸を尿中へ排泄
↓
尿が乳酸によって酸性化する
↓
尿酸が溶けにくくなるので排泄されにくくなる
↓
血液中に尿酸が増える
重要なところをまとめます。
- 「乳酸」は血液だけでなく、尿も酸性化させる(尿酸が排泄されにくくなるので、結果的に、血液中の尿酸が増える)
- 酸化ストレス(乳酸が蓄積→人体は慢性的に酸化・糖化・炎症する)に対抗する為に、抗酸化剤である「尿酸」で対抗する
次は、後者の「酸化ストレス」について説明します。
抗酸化剤としての尿酸
「乳酸」は、酸化の原因になります。
『ガンの特効薬はミトコンドリア賦活剤 乳酸はpH5の酸化剤で電子を奪う物質』より引用
乳酸は、相手を酸化させる酸化剤です。
乳酸=酸化剤→相手を酸化させる物質→相手から電子(e-)を奪う物質だと連鎖的に分からないといけません。
酸化を改善させるには、抗酸化剤が必要です。
「尿酸」は抗酸化剤なので、「乳酸」が蓄積すれば必要になります。
これまで「尿酸」は、「ゴミ」や「燃えカス」で、溜まると悪さをする...といった視点で語ってきました。
しかし、「尿酸」は「ビタミンCより強力な抗酸化物質」でもあります。これはメリットなので、ただのゴミではありません。
多くの動物は「尿酸」を分解できる「ウリカーゼ」という酵素を持っていますが、人間と一部の霊長類はこの酵素を持っていません。
肉食をして尿のpHが酸性に傾いても、ウリカーゼがあれば「尿酸」は「アラントイン」という物質に分解されるので、溶けずに溜まる事もありません。
しかし、人間のように「尿酸」が分解できずに溜まる傾向があれば、疾患が発生するリスクがあります。
この部分だけを見ると、「ウリカーゼ」を持っていない事はデメリットです。
「人間の体は肉食には適さない。尿酸値が高くならないように、尿のpHが酸性に傾かないような食事をするべきだ」...といった、無難な方法を選ぶ人がでてくるのも無理はありません。
しかし、「尿酸」を「アラントイン」に分解できないのは意味がありそうです。
というのも、人間は抗酸化物質である「ビタミンC」を合成する事ができないからです。
その代替として、抗酸化物質である「尿酸」を分解せずに持っているのではないか...と考えられます。
抗酸化物質は体が酸化する(錆びる)のを防ぐ働きがあります。
多くの動物は「ビタミンC」が、人間は「尿酸」がこの役目をしているわけです。
「ビタミンC」と動物
ここで、「ビタミンC」を合成できる動物と、できない動物を紹介します。
『藤川徳美医師 facebook 2017年11月3日』より引用
6-7)、 ビタミンCおよび心臓血管疾患
Orthomolecular Medicine News Service(OMNS)、2010年6月22日
アラン・スペンサーとアンドリュー・W・ソウルのパーソナル・ビューポイント
Linus Paulingは動物界の研究により、ほとんどの動物が体内にビタミンCを生産する能力を持っていることを知っていました。
人間はビタミンCを生産できません。
さらに、平均して、哺乳動物は人間の体重に換算すると毎日5,400mgを作り、ストレスや病気のときにはより多く(しばしばかなりより多く)生産します。
これは典型的な現代食から得られる50mgの約100倍です。なぜ動物はビタミンCをあまりにも多く作るのですか、それは体内でどのような目的を果たしますか?
ビタミンCを作ることができないと分かっている少数の動物には、類人猿、モルモット、、およびいくつかの鳥が含まれ、これらの動物は通常、食物から多くのビタミンCを得るでしょう。
ビタミンCをモルモットから奪うと、すぐに心血管疾患(数週間以内に動脈にダメージを与える)が発症します。
同様に、遺伝子組み換えマウスの研究は、マウスがビタミンCを産生する遺伝子をスイッチオフすると、すぐに心臓病の徴候を示すことが示されている。
高いビタミンC食の再導入は、損傷を逆転させることができる。
動物界では心臓病はまれですが、食生活が野生の場合と同じようにビタミンCが豊富でない動物園の猿にとっては問題になってきています。
「ビタミンC」が生きていく上で必要な栄養素だということは分かったと思いますが、
何故、人間は「ビタミンC」を合成しないのか、代替として「尿酸」を使うのか...そんな疑問が湧いてくると思います。
ビタミンCを合成するより、尿酸を利用をする理由とは
「尿酸」を分解しないメリットがあるように、「ビタミンC」を合成しないメリットもあります。
実は「ビタミンC」を合成するのは大変だそうです。
『藤川徳美医師 facebook 2017年1月13日』より引用
人類は、ほかの動物とは比較にならないほどの知能をもっているでしょう。
極端にいえば、これはビタミンCをつくるのをやめたおかげなんです。
仮に、テニスでクタクタになったとき、自前でビタミンCをつくらなければならないとする。これはブドウ糖からつくらなければならないわけだが、まず手続きがややこしい。
タンパク質が必要になるし、何より膨大なエネルギー消費があります。
いわば、からだが総力をあげてビタミンCの生産にはげまなくてはならないことになります。
というのは、ビタミンCの要求量が、5グラムとか、10グラムとか、バカにならない量だからです。
総力をあげるということは、頭を使うことをやめるという意味なんです。
つまり、自前でビタミンCの生産をたえずやるような条件では、脳の発達はありえなかったということです。
サルがほかの動物よりかしこいのも、ビタミンCの生産をやめたことと無関係ではないのです。
「ビタミンC」は作るのが大変だから、基本的には体の外から補う。しかし、抗酸化作用がないと体が錆びるので、「尿酸」で対応する...
この説は信憑性があります。
ただし、注意点もあります。
「つくるのをやめた」とありますが、止めたのではなく、最初からそういう構造なのです。
人間は脳を発達させるために「ビタミンC」の合成能力を捨てたわけではなく、脳も最初から今と同じです。
進化論は仮説です。
能力は捨てることも、拡張することもできません。
人の食性を考える時、チンパンジーを参考にしてはいけない理由【前編】
昆虫学者のファーブル曰く、そんなことを世代交代しながらチンタラやっていたら、その前に死にます。
生きていく為に必要な能力は最初からないと生きられない...従って、生物の機能は最初から完璧なのです。
例えば、「ビタミンCを作るのを止めた、じゃあ、代わりに何か使えないかな」...等と能力を磨いていたら、ビタミンCの合成を止めた瞬間に、酸化によるダメージで生存が危うくなります。そうなると、まともに世代交代もできません。
「ビタミンCの合成能力がない事」と、「尿酸をビタミンCの代わりに抗酸化物質として利用する事」が、人間が生きていく為に必要なら、最初から同時に備わっていないと生存できないのです。
人間は、最初から今と同じ構造で、「ビタミンC」を合成できなくて、「尿酸」を抗酸化物質として使える状態である...と考えるのが現実的です。
ここまでをまとめます。
- 人間には「尿酸をアラントインに分解する能力」はない
ちなみに、「尿酸」の抗酸化力は、「ビタミンC」の約6倍だそうです。
『中村博整形外科医院 尿酸の持つ意味(ビタミンCとの関連から)』より引用
元来尿酸は非常に強い抗酸化力をもっており、その力はビタミンCの約6倍に相当する。
私たちは酸素を吸わないと生命を維持できないが100の酸素を吸えばそのうち2-3%は必ず活性酸素になる。
この活性酸素は生命維持に必要な側面もあるが過剰になるとDNAや細胞膜を傷つけはじめる。
そしてがんを含め病気の状態にはこの活性酸素が密接に関与している。そして究極にはDNA損傷を起こして「がん」の発症になるのだ。
だからなのか、人間の場合、「尿酸」は元々排泄しにくいシステムになっているようです。
『WebMaster's impressions ビタミンCと尿酸』より引用
尿酸は、ヒトの場合、尿酸酸化酵素が偽遺伝子化しているので、他の哺乳類よりも血清中の尿酸濃度が50倍以上高い。
しかし、何故、ヒトは尿酸酸化酵素も失活させて進化しただろう。それ考える時、尿酸の持つ生物学的効能?すなわち“抗酸化作用”を知っておく必要がある。
そうなのだ、ビタミンCという抗酸化作用を持った物質を生合成しない道を選んだ為に、もう一つの“抗酸化作用”をもった“尿酸”を利用せざるを得なかったと考えられるのである。事実、尿酸は腎臓で98%も“再吸収”される。
---勿体無くって、捨てられないよ---
とでも、言いたげである。
98%が再吸収されるということは、排泄されるのは2%ということです...。
「尿酸」の濃度が他の哺乳類の50倍でも不思議ではありません。
尿酸が排泄されにくいと体に悪い...云々の話はたくさんでてきますが、わずか2%の排泄について語られていたのでしょうか。
「尿酸」について俯瞰でみていくと、腑に落ちない事がたくさんでてきます。
ところで、「尿酸」は「ビタミンC」よりも抗酸化力があります。しかし、それでも、人間にも「ビタミンC」は必要なので、外から摂取しなければなりません。
尿酸があるのにビタミンCを摂取しなければいけない理由
「尿酸」が「ビタミンC」の代わりとして使えるのは、あくまで「抗酸化」という部分です。
全て「ビタミンC」と同じではないので、「ビタミンC」を摂取しなければ、抗酸化以外の働きができなくなります。
例えば、「ビタミンC」には、「組織間のコラーゲンを正常に保つ働き」があります。
コラーゲンが正常に作られないと、皮膚の構造や血管がもろくなり、出血しやすくなります。具体的にはこうなります。
『Ranking Share 【恐ろしや!】超悲惨な大航海時代の食事と雑学あれこれランキング!』より引用
俺の歯茎はすっかり腐ってしまった。真っ黒な腐った血が流れ出ている。
太ももは壊疽を起こしていて、俺はナイフでこの腐った肉を削り取って、どす黒い血を無理やり流しだす。
土気色になった歯茎もナイフで削り、腐った血をしぼり出す。俺は小便で口をゆすぎ、強くこする。
ものを噛めないので、飲み込むしかない。
毎日この病気で仲間が次々と死んでゆく。
包みや戸棚の裏でいつの間にか死んでいて、発見された時は目や指はネズミにかじり取られてなくなっている・・・・。
出典:不思議館〜海にまつわる恐ろしい話〜 大航海時代の恐ろしい話
これは有名な「壊血病 かいけつびょう」という病気で、3ヶ月~12ヶ月の長期・高度のビタミンC不足でなるようです。
その為、「尿酸」がたくさんあっても、「ビタミンC」を意識して摂るべきです。以下は必要量の目安になります。
『藤川徳美医師 facebook 2018年3月19日』より引用
モルモットとの比較から見たヒトのビタミンCの必要量
The Orthomolecular Treatment of Chronic Diseaseより
モルモットは、ヒト、サルと同じように体内でビタミンCを合成できないので、食事からCを摂取する必要がある。
モルモットは、通常10~15mg/kgのCが必要。
成長期、妊娠時、授乳時には必要量が増大し、15~25mg/kgのCが必要。
モルモットの体重は1kg。
つまり、60kgのヒトでは600~1500mgのCが必要。
実際は個体差が大きいため、1~3~10g。
レモン1個で20mgのC。
サプリメントで摂取しないと十分量のCは摂取出来ない。
特に、肉中心の糖質制限をしている人は、「ビタミンC」が不足しやすいです。従って、サプリメントで摂取した方が良いです。
...このように言うと、「ビタミンCが不足する糖質制限は体に悪いのではないか」と考える人がでてきます。
また、「何故、サプリメントじゃないとダメなんだ、栄養は食事からだろ」と言う人がでてきます。
この点について説明しておきます。
糖質制限のような動物性食品中心の食事は、「ビタミンC」が不足しやすいですが、摂取する事は可能です。
しかし、条件があります。以下の壊血病を回避する方法を読んで下さい。
『Ranking Share 【恐ろしや!】超悲惨な大航海時代の食事と雑学あれこれランキング!』より引用
めぼしい食物が無くなった遠洋航海の船乗りにとって「ネズミは非常なごちそう」であり、先を争って捕獲し、丸焼きにして食べたそうです。
遠洋航海の船には、ネズミ対策に猫が乗せられる事が多かったそうですが、食料不足などの場合は非常食(!!!酷い!)にもなり、それでネズミが増えてしまったのでしょう。。。
また、近くを這いずるゴキブリなどの虫も、普通に摘んでスープに混ぜて食べたそうです。。。
これは何故かと言えば、ネズミやゴキブリを積極的に食べると、この後5位でご紹介する悪魔の病気「壊血病」に何故かかかり難くなる事を経験上「船乗りたちが知っていたからだ」と言われています。
ネズミの新鮮な肉はビタミンB類が豊富であり、常に不足しているタンパク質を補給出来ますし、生のゴキブリからは僅かながら壊血病の特効薬であるビタミンCも補給できたらしく、経験豊富な船乗りは文字通り「なんでも食べて生き残った」わけですね。
「ビタミンC」と言えば、野菜や果物のイメージが強くて、動物性食品にはあまり含まれていないように感じられるかもしれませんが、そんなことはありません。
動物性食品は栄養的に「ビタミンC」が不足しているのではなく、加熱して食べる事が多いので、それによって熱に弱い「ビタミンC」が壊れてしまうだけなのです。
しかし、動物性の食品を生で食べれば「ビタミンC」を摂取できます。
刺し身でもOKです。
一方、世間で勧められているように、野菜や果物からも「ビタミンC」は摂取できますが、余計な糖質も多いので体にダメージを与えてしまいます。
やはり、サプリメントから「ビタミンC」を摂取するのがお金もかからず、糖質もないので、安心です。
私は「野菜ほぼ0の糖質制限」を初めて2年半は、「ビタミンC」のサプリを飲んでいませんでした。
たまに外食する時に、付け合せのサラダや果物を食べるくらいですが、回数は少ないです。
思い返すと、2年半の間に食べていた「ビタミンC」は、ほとんど刺し身からです。あと、ネギです...。
摂取量は少ないですが、この量でも、「3ヶ月~12ヶ月の長期・高度のビタミンC不足によってなる壊血病」にはなりませんでした。
ただ、「壊血病」にならないからといって「ビタミンC」が充分というわけではありません。
足りていなかった事は間違いないです。
何故なら、昨年「ビタミンC」のサプリメントを摂取し始めたら、肌が白くなったからです。
摂取する事で良い方に改善したということは、それまで足りていなかった...ということです。
高い尿酸値と寿命の関係
話が「ビタミンC」に脱線してしまったので、再び「尿酸」に戻します。
一説ですが、抗酸化力が強い事で、寿命にも影響があるようです。
『トコトンわかる 図解 生化学 / 著者:池田和正』より引用
尿酸が血液中で高いことは、寿命と関係ある?
尿酸で排出するということは、霊長類が痛風になる可能性を持たせるので、よくないように感じます。
しかし、血液中の尿酸が高く保たれていることが、霊長類を長寿にしている原因の1つだともいわれています。
例えば、心臓の血管が老化して詰ったりすると、いわゆる心筋梗塞になるし、脳の血管が老化して、破れたり詰ったりすると、脳内出血や脳梗塞などのときに致命的な病気を引き起こすからです。
これらの血管の老化を引き起こす原因となるものの1つとして活性酸素があります。
活性酸素は、細胞の膜に結合して、膜の柔軟性をなくして、細胞をもろく壊れやすいものに変えてしまいます。
血管も細胞で囲まれた筒なので、活性酸素によって血管の細胞がもろくなると血管が破壊されやすくなるのです。
血管の老化は、長い年月の間に活性酸素がその大きな要因となって、徐々に進むと考えられています。
血管の老化が進んで、血管がもろくなると、血管を取り巻く細胞が破壊されやすくなり、例えば重要な臓器である脳の中で、血管が破壊され出血すると、いわゆる脳内出血の状態となり、しばしば致命的な状態におちいるのです。
尿酸には、活性酸素を消去する作用があって、尿酸の濃度が高いヒトでは、活性酸素による血管の老化を遅くする作用があるとされているのです。
このことが、ヒトが動物の中で長寿となる一因であると考えられています。
また、活性酸素の発生は、がんとも関係があるとされています。
血液中の尿酸濃度の低いネズミは、その体のわりに寿命は2年と短く、死因はほとんどが体のどこかにがんができることなのです。
(153~154p)
生体は生きている以上、常に酸化との闘いです。
仮に「ビタミンC」の合成能力があってたくさん作れたとしても、「尿酸」がなければ、抗酸化の働きを「ビタミンC」ばかりに頼ることになります。
そのせいで、多くの「ビタミンC」を浪費するかもしれません。
「尿酸」レベルの抗酸化力を発揮するには、6倍の「ビタミンC」がいるわけですから...。
すると、合成によってたくさん「ビタミンC」を持っていたとしても、他の働きに利用する量が減るかもしれません。
「尿酸」は老廃物と言われるくらい、生きていたら必ず発生する物質です。本来捨てるものを利用する事で、「ビタミンC」の仕事を減らす...。
抗酸化という作業を「尿酸」に任せることで、「ビタミンC」を摂取した時に、抗酸化以外の用途にも十分利用できるのかもしれません。
考え方によっては、「自分で作ったビタミンCだけに頼って、尿酸はあてにできない」よりも、「ビタミンCは外注する必要があるけど、尿酸と両方を使う」方が合理的です。
タンパク質の大量摂取で尿酸値が上がる理由
...このような働きを知ると、「尿酸」に「老廃物」のレッテルを貼るのは間違っているような気がします。
「尿酸」は悪者ではない...という視点を加えるだけで、見方も対処も変わってきます。
例えば、年をとってコレステロールが上がるのは「血液を送りやすくする為」で、体に悪さをしようとして上がっているわけではありません。
だから、単純に「上がったからとにかく下げる」という発想で終わるのではなく、「何故そうなったのか」という状況をみる事が大事でした。
『100歳まで長生きできるコレステロール革命 / 著者 : 大櫛陽一』より引用
人間は、年をとれば、誰でも血圧が上がるのが普通なのです。
血圧の大きな役目のひとつは脳や末梢の細胞に新鮮な血液を送り届けることですが、年をとると、血管に柔軟性がなくなってだんだんその力が弱まってきます。
だから、加齢に伴い血圧を少しずつ上げて、脳や体に必要な新鮮な血液を送り続けているのです。
すなわち、高齢になるにしたがって少しずつ血圧が上昇してくるのは元気な証拠でもあるわけです。
(178p)より引用
「尿酸」も同じで、単純に上がったから下げればいい...的な考えで終わるのは適切だとは思えません。
『中村博整形外科医院 尿酸の持つ意味(ビタミンCとの関連から)』より引用
体細胞は60兆個あるのだが毎日数千億個はアポトーシスなどによって分解される。そしてその一部が体細胞の材料として利用され、一部が体外に排泄される。
よって「飢餓」などの状態では体細胞の分解が著しく促進して尿酸の上昇となる。
この点に尿酸のコントロールの秘密が隠されている。つまり体細胞の分解を促進することをできるだけ少なくすることが思いがけなく尿酸値を低下させることにつながる。
先ほど述べたように尿酸には強い抗酸化作用があり私たちの体を守っていることを考えれば、血中濃度が上がれば下げるといった短絡的なことでいいのかどうかを考えてみることが大切である。
体細胞の分解が促進している様な状況は脱水であるとか、過激な運動であるとか、お酒の飲みすぎであるなど体の中で「活性酸素」が大量に発生していると思われる。
だとすればこの時に生じる「尿酸」は決して悪者ではなく私たちの体をこの活性酸素から守っていると推測されるのだ。
数字ばかり追いかけていると、時に物事の本質を見失います。
起こった事の背景を考えるのが大事です。
ところで、私は以下の部分を読んで、「糖質制限によって尿酸値が上がる」という話を思い出しました。
>よって「飢餓」などの状態では体細胞の分解が著しく促進して尿酸の上昇となる。
個人差もあるようですが、しばらくすると、下がるようです。
『医師水野のブログ 尿酸値と糖質制限』より引用
まず、私自身の体験談から。
糖質制限を開始して、尿酸値、上がりました。
ずっと5台だった尿酸値が、半年で7まで上昇。
しかし、また半年で5台へ低下しています。
代謝に切り替わりとともに上昇、代謝が安定してくると下降してくるのだと考えています。
痛風発作も起きず、結果として5台へ戻ったので、全く支障はありませんでした。
また実際に尿酸値が12でも発作が起きない方もいれば、尿酸値7をきった6.8でも発作が起きる人もいます。
代謝の切り替わりとともに...という部分が曖昧で、
何故「尿酸値」が上昇したり下降したりするのか納得がいかなかったのですが、私なりに考えた事を書いておきます。
人間の体の大部分はタンパク質です。
生体は「アミノ酸」からタンパク質を作ったり壊したりしているわけですが、これを繰り返す事で「アミノ酸」が痛んできます。
「変形したアミノ酸」は、材料として適切ではないので破棄されるのですが、タンパク質不足だと、再利用されてしまいます。
これは大なり小なり誰の体でも起こっています。
しかし、人によって度合いが違います。新鮮なタンパク質を常に摂取していない人程、体の中古化が進むわけです。
日本人の食生活は穀物が主役なので、タンパク質が不足しやすいです。一説によると、欧米人の3分の1程度しか食べていません。
糖質制限といえば高タンパク質です。
高タンパク質食を始めると、新しいタンパク質で体を再生する為に、「中古アミノ酸で作られた古いタンパク質」の破壊が起きます。
糖質制限を始めてしばらくすると、「毒だし」と呼ばれる、湿疹等の不快な症状が起きる事があります。
私も経験しています。
糖質制限で一時的に体調が悪化。その後ブタクサのアレルギーが治った
これが破壊であり、高タンパク食の基本です。都市開発をする為に立ち退きをするようなものです。
これに耐えられなくて、元の糖質中心の生活に戻る人もいます。
当然、「中古アミノ酸」を使いまわした人程、破壊する規模は大きいので、長年タンパク質不足だった人は酷い破壊(毒出し)がくる可能性があります。
「飢餓を起因とする分解」が促進して尿酸値が上がるなら、「高タンパク質食を始めた事による破壊」もまた、尿酸値の上昇に繋がるのではないかと思うのです。
しばらくしたら「尿酸値」が下がるのは、毒出し(入れ替り)がひと段落して破壊が落ち着くからではないでしょうか。
でも細胞の入れ替るスピードは違うので、時間をかけて入れ替るところもあります。
で、食事の量の変化等で、再び「再生の前段階の破壊」が起きると尿酸値が上がる...。
あくまで仮説ですが、この可能性もあります。
読者さんへの回答
「動物性食品を中心に食べると体に良い」...という私の主張に対して、
肉は酸性食品と言われているが、どう解釈しているのかという質問を頂きました。
動物性食品に多く含まれている「含硫アミノ酸」は、分解されると酸性になるので、「食品に含まれているミネラル」で判断したら、「酸性食品」に該当します。
これによって、「尿のpH」が酸性に傾きます。
しかし、動物性食品等の酸性食品を食べていないからといって、「尿のpH」が酸性に傾かない...とは限りません。
アルカリ性食品に含まれている糖質の代謝によって「乳酸」が発生すれば、同じ結果になるからです。
尿酸値が上がる原因の元である「プリン体」は、食品であれば、肉や魚にも多く含まれています。
しかし、食品由来の「プリン体」はたった2割で、しかも、消化されて「尿酸」に変わる事なく排泄されるという説があります。
「痛風」に関しては、「腎臓の糖化」という視点が一般的になっていません。
「酸性食品の定義」にしろ、「尿酸値の上昇」にしろ、動物性食品を悪者にするには、腑に落ちない部分が多いので、表面だけを見て避けるのはもったいないです。
意見を聞かれたのですが、この件の結論を出す為にはもっと情報が必要だと考えています。
様々な説が錯綜しているので、1本の線に繋がらない状態です。
糖質制限をされている先輩方や、私の体験や結果から、体感的には「肉食は問題ない」と考えていますが、怖がっている人や納得がいかない人を説得させるには理論的に不十分です。
なので、今回は現時点で調べた事をまとめました。
今後何か分かり次第、追記していきます。