寒い冬にTシャツ1枚、キャミソール...こんな外国人観光客を見た事がないでしょうか?
一方、彼らは、日本人は寒がりだと思っているそうです。
あれは感覚がおかしい、日本の天候がわからず服を持ってくるのを忘れた...とも受けとれますが、それだけではないようです。
海外の人...といっても人種は様々ですが、特に欧米の人は日本人より体温が1度高いそうです。
「たった1度」...と思われるかもしれません。
でもそれは言い換えると、「体温が1度上がるくらい代謝が良い」ということです。
具体的に言えば「ATPの合成が活発」、つまり、エネルギーを上手く作り出せているということです。
私の勝手な基準ですが、「ユニクロのヒートテック」で効果を感じるか、感じないかで、本物の寒がりかどうかを見わけています。
寒がりじゃない人は「あったかい、これ一枚あればいい」と言いますし、寒がりは「そんなに変わらない」と言います。
同じ商品なのに(今はバリエーションが増えていますが)、この違いです。
また、寒がりの人は、他の防寒着でも同じように「着ても変わらない」と言います。
私はこの違いを、「本人自身が発熱しているかどうか」だと思っています。
例えば、「熱いお茶」を魔法瓶に入れると、お茶は熱いままです。保温力は抜群です。
しかし、いくら保温力が高くても、入れるお茶が最初からぬるければ、当然そのお茶はぬるいままです。
保温力があるからといって、ぬるいお茶が暖かくなる事はありません。
自身が発熱していなければどうしようもないのです。
これが、魔法瓶や、防寒着の限界だと思っています。
だから、発熱能力が乏しい人は、ホッカイロや、コタツや、ストーブなどで、熱を加えてやらないと寒いのです。
以前の私もまったくこのタイプでした。
自らの体で熱を生み出すことができるかどうか...これが「寒がり」か「寒がりじゃない」人の違いです。
現在、私は体質を変え、発熱することができるようになったので、寒がりではなくなりました。
その経験から寒がりになる根本的な理由と、どうやったら寒がりを克服できるのかについてお話します。
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30代前半まで着ても着ても寒かった
本題に入る前に、まず私がどんな体質だったのかについてお話します。
以前の私は、「バランスの良い」食事をしていたのですが、食べても太れず、痩せていました。また、体を鍛えても筋肉はつきませんでした。
常に疲れていて、病気や怪我をすると回復力も弱く、そして人よりも寒がりでした。
いわゆる虚弱体質です。
しかし、今はこの体質は改善しています。
気温が低い時は、保温できる上着を着るだけで、中は薄着でも自分の体温でかなり暖かくなります。昔はこの状態だととても寒かったです。
たいていの人は「暑い時は脱げば涼しいが、寒い時は着れば暖かいから問題ない」と言うのですが、寒がりだった当時の私には理解できない理屈でした。
何枚も重ねて着てみるのですが、世間で言われているように暖かくはならず、やはり寒いわけです。
私が子供の頃は、冬は今より寒かったです。
着ても着ても寒い状態なので、学生の頃は制服のブレザーの下に5~6枚は重ね着をしていました。痩せていたので着膨れはしませんでしたが、それだけ着ても寒かったです。
体育の授業は最悪で、とにかく着替えるのが遅かったです。
私より細い子も、私に引けをとらないくらい重ね着をしていて、「いつも最後だね」と言っては、一緒に運動場に出て行ったものです。
その時は「寒いのは、痩せているからだろう」くらいに思っていましたし、周りからも「ご飯をちゃんと食べないから(もちろん食べていました)寒いんだ」とか言われていたので、「痩せている事」自体が寒い原因だと思っていました。
体形と体感温度、体温は関係ない
ところが、世の中には、私やその子のように「痩せていて寒がりな人」と、「痩せているのに寒がりではない人」がいます。
その反対に、「太っていても寒がりの人」もいます。
それが不思議で、「細さ」と「寒さ」は、実はあまり関係ないんじゃないか・・・と思うようになりました。
そう確信したのは、外国人の寒さに対する強さを知ったからです。
「海外から友人を日本に連れて来たところ、真冬にもかかわらず「日本は暖かい」といって防寒着を脱いでTシャツ1枚になったので驚いた」...という話を友人に聞かされました。
また、「ヨーロッパ系の血が混ざっている子供に、冬の寒い日に布団をかけてやったら、
熱がって布団をよけるから、寒さに対する感覚が私達とは違うと思った」・・・という話も聞きました。
私はヨーロッパには行った事はないですし、直接交流がないので、その現場を目撃していないのですが、とにかく海外によく行く人や、外国人と交流のある人から、この手のエピソードはよく聞きます。
私は痩せていて寒がりなので、「痩せていても寒さを感じない人」の体質には興味がありました。
痩せていても、寒がりを克服できるかもしれない...と思った私は、色々試したのですが、失敗もしました。
まずは効果がなかった方法からお話します。
失敗1:寒がりは根性で改善できるものではない
細くても寒がりではない人がいるのを知ったことで、私にもできるかもしれないと思いました。
私は寒がりを克服する為にどうすればいいのか調べました。その結果、以下のような事が分かりました。
- 昔の日本人は寒さに強かった
- 寒いからといって、過保護に暖かくしていたら、それに慣れてしまって、寒さに弱くなる
- 以前テレビで、ロシアの女性が子供をわざと一時的に外に出して、「寒さに慣れさせるようにしている」と語っていた
- 寒い地域で3~4ヶ月過ごせば、寒さに対して強くなる
...ほとんど「根性系」です。
こんな話を見聞きすると、「寒さは根性で克服出来るだろう」とか、「極寒の地で鍛えていれば丈夫になるだろう」と思うようになります。
ヨーロッパの人は体温が1度高いという事を知ったのはこの時です。
ちなみに、地球儀でヨーロッパを見ると、日本よりも北にあります。
それを知って、「寒い状態で我慢すれば、鍛えられて体温が上がって、寒がりじゃなくなるはず」・・・と思いました。
私はそれまでの重ね着習慣を改め、2013年の冬から防寒着以外は服は2~3枚にする事にしました。
私も「真冬にTシャツ一枚」をやってみたいと思ったわけです。
しばらくすると、今の冬はそんなに寒くないからなのか、薄着に徐々に慣れていきました。鼻水は出ますが結構耐えられるものです。
でも、期間が短いからなのか、寒さが足りないからなのか分かりませんが、根性で寒さに耐えても、「体が自然に変化して体温が上がる」という事はありませんでした。
この体験から言えることは、薄着をする事で寒さに慣れてはきますが、それはただのやせ我慢で、ヨーロッパの人達のように「寒くないから着ていない」...といった無理をしていない自然な感覚とは全然違います。
結論:やせ我慢で体質は変わらない
しかも私の場合、この頃から体温が1度上がるどころか、下がりました。
体温を定期的に測る週間はないので、いつ頃からそうなったのかは分かりませんが、35℃代になっていたのです。
その原因は、同じ時期に実践していた「1日1食」や「断食」だと思います。
失敗2:やってはいけない代謝を悪くする1日1食と断食(ファスティング)
薄着生活を始めた頃は、「一日一食」と、合間で「定期的な断食」を行なっていました。
何故そんなことをしたのかというと、一応、健康の為、代謝をよくする為です。
当時はこの手の本が本屋にいっぱい置いてあって、私も読んで影響されたのです。
しかし、この習慣は、始めた当初は体が軽くなる感じがして良かったのですが、長引くにつれ、だんだんと元気がなくなっていきました。
めったに体温を測ることがないので、しばらく気が付かなかったのですが、ある時体温を測ってみると、それまで36度あった体温が、35度台に下がっていました。
私は虚弱体質でしたが、それでも35度台にはなったことはありません。従って、それを見た時は我が目を疑いました。
「癌患者の体温は35度台」...という話を思い出し、ヤバイと思いました。
それだけではありません。
体温だけでなく、代謝も落ちましたし、食が少なくなったのに太ももにセルライトがつきました。
「おかしいな...」と異変には気付いたのですが、その時は何故そうなったのか原因が分かりませんでした。
...というのも、健康的だと言われている、「一日一食」や「断食」を実践していたからです。
当時は、断食の理屈、「病の原因は食べすぎで、食べる量を減らせば、病気のリスクが減り、寿命も延びる」という情報に浸かっていたので、
まさか体温や代謝の低下の原因が、「一日一食」や「断食」にあるとは夢にも思いませんでした。
そんなもん信じるなんてどれだけアホなんだ...と思われるかもしれません。
しかしですね、「カロリーを減らすと老化が防げるし健康になる」...という説を、
「食べたいだけ食べたサル」と、ほぼ同じ年齢の「腹七分のサル」の比較写真を根拠に展開されると、納得してしまいます。
「腹七分目の若々しいサルの姿が何よりの証拠だ」と...。
その写真にやられた人は少なくないと思います。
今なら、断食で若々しくなるのは、断食によって糖質の摂取が減った事によるからで、カロリーを減らしたからではない...という事が分かっています。
また、今であれば、理論を実践して結果が伴わないのであれば、その説を徹底的に疑います。しかし、当時はそうではありませんでした。
なので、体温を上げたくて薄着生活を初めたのに体温が下がった時は、「その時期にやっていた食事」を疑わず、「寒さに根性で耐えたり、薄着をしたせいで、体温が下がったのかな」...等と、バカな事を思っていました。
でも、今なら分かっています。
体温が下がった本当の原因は、「一日一食」や「断食」によるエネルギー不足です。これによって体温が下がり、体が寒くなります。
結論:1日1食や断食は代謝が低下する
発熱能力を上げるどころか、健康を損ねる方法なので失敗でした。
失敗3:生姜や唐辛子といった体を暖める食品が無力なわけ
食事は色々工夫しましたが、効果がないものがほとんどでした。
一般的に、「体を暖める食材」と言えば、生姜や唐辛子等を思い浮かべるのではないでしょうか。
私も「バランスのいい野菜中心の食生活」をしている時は、「体を暖める食材」といえば、生姜や唐辛子等だと思っていました。
しかし、言われているほど効果はありません。
生姜とニンニクは、私のお気に入りの野菜で、料理に欠かすことの出来ない食材だったので、食べない日はありませんでしたが、それでも「これで体温が上がった」と感じた事はないからです。
あえて言うなら、食べた後で、刺激物への反応として、汗がでたり、温かくなる...という程度でしょうか。
生の生姜をかじると、一時的に汗がでるほど暑くなるので、寒さ対策に利用したことはあります。
しかしそれは、根本的に体が暖かくなっているわけではありません。どちらかというと「生姜の刺激に反応して暖かくなる」という表現が正しいです。
後で説明しますが、「体の芯からずっと発熱を促してくれる脂質やタンパク質」とは、「暖まる」のレベルも意味も違います。
さらに言えば、私は香辛料が好きなので生姜に限らず、チリや、ペッパーを始めとするスパイスも好きで頻繁に使っていましたが、脂質やタンパク質を食べた時程の暖め効果を感じたことはありません。
結論:体を暖める食品は根本的な改善には繋がらない
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寒がり、低体温はATP不足が原因だった
ここからは、寒がりや低体温を改善する為の説明に入ります。
これを読むと、私がそれまで試した事が体質改善に役に立たなかった理由も分かると思います。
寒さに耐えられる体質になろうと、根性、1日1食、断食、体を暖める食品...をしてきましたが、全て失敗でした。
寒がりが治らなかったのは、どれも「ATP」不足の改善に繋がらない対策ばかりだったからです。
「ATP」は、生体が生きていく為に必要なエネルギー物質です。
ちなみに、このような構造をしています。
この「ATP」が足りなくなる原因は、「質的な栄養失調」です。
「質的な栄養失調」とは、カロリーは足りているけど質の悪い栄養状態の事を指します。具体的にはこうです。
- 糖質過多
- タンパク質不足
- 脂質不足
- ビタミン不足
- 脂質不足
で、欧米人と現代の日本人で決定的に違うのは食生活です。彼らに足りていて、日本人に足りない栄養素の代表が以下の3つです。
タンパク質 ・ 脂質 ・ 鉄(ミネラル)
これらは、体温を上げる為に非常に重要な働きをする物質です。日本人はそれが不足しやすいのですから、体温が低くなって当たり前です。
メカニズムについては後で説明するので、まずは、これらが不足する理由について説明します。
日本人の食生活を一言で言うと、「ご飯」を中心に「ご飯に合うように調味料をたっぷり使ったおかず」を食べるスタイルです。
日本のこの食事スタイルだと、「糖質」でお腹がいっぱいになるので、肉、魚、卵...といった「タンパク質」や「脂質」があまり入らなくなります。
特に食の細い方にこの傾向があります。また、高齢になるとほとんどの方がこうなります。
なので、かなり糖質過多です。
ただし、現代は日本ほどではなくても、世界のどの国も糖質を過剰摂取しています。従って、ここでは、「タンパク質」や「脂質」や「鉄」の不足の問題を重視します。
で、「タンパク質」、「脂質」が多く含まれているのは肉です。
一説によると、欧米では肉を日本の3倍食べるそうです。
また、モンゴル人は、日本人と同じモンゴロイド系ですが、寒さに強いです。それも、肉食が関係しているようです。
『ドルノド偏 モンゴル通信No.4 もうマフラーしているの?』より引用
モンゴルに来る前に、敬和生から「モンゴルの 人って肉食だから、体温高いらしいよ!」と聞いたことを思い出しました。
毎日、肉を欠かすことのな いモンゴル人。「もっと肉を食べないとモンゴルの冬は越せないよ。」という先生たち。「私の家は冬 になる前に、ベランダに牛3頭分と馬1頭分の肉を買っておいて、それで一冬越すんだよ。」という校長先生。
肉食文化が体温を上げるのかは定かでありませんが、モンゴルの人が寒さに強いのは確かです。
食の欧米化...等と言われていますが、日本人の肉の消費量、言い換えると、タンパク質と脂質の摂取量は少ないのです。
日本人は魚を多く食べますが、頭、骨、内臓...と、捨てるところが多すぎます。また、魚というのは、さんまにしろ、鯛にしろ、ヒラメにしろ1人で2匹も3匹も食べません。
従って、これだけで「タンパク質」や「脂質」を必要量稼ぐのは難しいです。
そして鉄の摂取が少ないことも問題です。
現代は鍋も包丁も鉄製の物が減りました。なので、食品から摂取する鉄が頼りになります。
鉄には動物性の「ヘム鉄」と、植物性の「非ヘム鉄」があります。吸収率がいいのは前者です。
ヘム鉄が多く含まれている肉、卵、赤身の魚...これらを毎回ガッツリ食べていれば安心です(生理がない人の場合)。
しかし、植物性の「ヘム鉄」を摂る場合は、相当な量を食べなければ必要量が足りません。例えば、ホウレン草であれば、バケツ4杯...とか、そういうレベルです。
何故そんなに?と、思うかもしれませんが、現代の野菜は土壌の問題や度重なる品種改良によってビタミンやミネラルが減っているので、そういう事も関係しています。
栄養が激減した野菜や果物、日本食品標準成分表の昔と現代の数値を比較してみた
動物性の食品も、野菜も量を食べるのは無理...となると、残りは別の方法から摂取するしかありません。
この部分で日本と海外では大きな差があります。
欧米では、小麦の中に鉄が入れられています。また中国では醤油の中に鉄が入れられているそうです。
このような国策により、鉄不足になりにくい環境となっています。
一方で日本はというと、残念ながら、海外から日本へ輸入される小麦には鉄は入っていないそうです。醤油に鉄を入れているという話も聞いた事がありません。
お隣、韓国もお米を食べる文化ですが、日本と違って、肉をよく食べます。ポイントはビタミン・ミネラルが豊富な内臓料理が充実している事でしょうか。「タンパク質」、「脂質」、そして、「鉄」が不足しにくい食文化だといえます。
他の国とは対照的に、日本では鉄不足は放置されています。
これで1番被害を受けるのは誰だと思いますか?
生理のある女性です。
毎月「鉄」と「タンパク質」を失うので、深刻な鉄タンパク質不足になります。
以上のような環境から、日本人は「タンパク質不足」、「脂質不足」、生理がある女性の場合は「鉄不足」になっています。
あと、他の国以上に「糖質過多」であることも付け加えておきます。
次は、これらの栄養状態が体の熱とどう関係しているのかについてお話します。
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栄養
寒いのは発熱能力がないからです。
細胞は、以下を燃料にエネルギー物質「ATP」を作っています。
- 糖質
- 脂質
- タンパク質
「タンパク質」は、飢餓の時や、糖質や脂質が入って来ない時にエネルギー源として使えますが、どちらかというと、メインは体の材料です。
従って、基本的なエネルギーは「糖質」か「脂質」ということになります。
これらを燃料にして、何段階も化学反応し、その結果「ATP」ができるというわけです。
その「ATP」を使って、体は例えば以下のような活動をします。
- 筋肉を動かす
- 細胞が分裂する
- 体を構成する物質の合成をする
- 体温を維持する
そして、「糖質」と「脂質」では、得られる「ATP」の量が違います。
(糖質の場合)
無酸素での作り方だと、1分子のブドウ糖から、「ATP」は2分子作られる
有酸素での作り方だと、1分子のブドウ糖から、「ATP」は38分子作られる
(脂質の場合)
1分子のパルミチン酸(飽和脂肪酸)だと、「ATP」は129分子作られる
簡単に説明します。
糖質(ブドウ糖)の反応は、「無酸素」と「有酸素」の2パターンあります。
「無酸素」での代謝では、得られる「ATP」が少ないです。
「有酸素」での代謝は、細胞の発電所と言われる「ミトコンドリア」で行なわれます。
「糖質」もミトコンドリアで代謝すれば、そこそこのATPを得る事ができますが、「脂質」には劣ります。
つまり、脂質が少ないと、少ない「ATP」しか得ることができません。
かといって、糖質を摂取しながら脂質も摂取すればいいか...というとそうでもありません。何故なら、糖質を摂取すると、脂質の代謝は抑えられるからです。
これが、「糖質過多」と「脂質不足」が良くない理由です。
「ATP」が減り、結果、熱の少ない体になるからです。
では次は、タンパク質不足の問題について見ていきます。
タンパク質とDIT(食事誘発性耐熱産生)反応
タンパク質は、脂質や糖質に比べて、代謝過程が複雑です。
その為、熱が多く発生します。
『アスリートのための最新栄養学(上)~三大栄養素編 著者:山本義徳』より引用
またDIT反応により、タンパク質摂取による消費カロリーがむしろ増加する可能性もあります。
DITは「食事誘発性耐熱産生」のことで、食物を摂取すると、それを消化したりエネルギー化したりするときにカロリーが消費され、熱が発生する代謝のことを指します。
この反応は体温をキープするために使われるのですが、糖質によるDITは約5%、脂質によるDITは約4%なのに対し、タンパク質によるDITは30%と、非常に高くなります。
糖質や脂質に比べると、消化吸収およびその後の代謝過程において、タンパク質は非常に複雑なため、このように高いDITが発生するのです。
タンパク質のDITはずばぬけていますね。
従って、タンパク質不足もまた、低体温に影響するということです。
次はミネラルの「鉄」について説明します。
鉄
まず、「ATP」の作られる場所について説明します。
先ほど、糖質の反応は2つのパターンがあるとお話しました。「無酸素」と「有酸素」です。
この二つは、反応の場所が違います。
有酸素での反応は「ミトコンドリア」の中で行なわれますが、無酸素での反応は「細胞質基質 さいぼうしつきしつ」で行なわれます。
作られる「ATP]、は圧倒的にミトコンドリアが多いので、「発電所」に例えられます。
一方、「細胞質基質」は作られる「ATP」が少ないので、「焚き木」に例えられます。
ちなみに「細胞質基質」での反応の事を「解糖系 かいとうけい」、または「嫌気性解糖 けんきせいかいとう」と言うのですが、これは糖質だけの反応です。
細胞質基質 → 解糖系/嫌気性解糖(焚き木)
一方、「ミトコンドリア」での反応は、大きく分けると「クエン酸回路 → 電子伝達系」の2段階の反応があります。
ミトコンドリアでの反応には酸素が必要です。その為、「好気性解糖 こうきせいかいとう」と言います。
糖質だけでなく、脂質もミトコンドリアで代謝します。
ミトコンドリア → クエン酸回路→電子伝達系/好気性解糖(発電所)
最も多くの「ATP」が作られるのは、後半の反応である「電子伝達系」です。
で、問題にしている「鉄」ですが、「電子伝達系」で非常に重要な働きをしているので、これが不足すると、電子伝達系の機能低下を起こします。
すると、代謝が嫌気性解糖に傾きます。
細胞質基質での代謝(嫌気性解糖)=焚き木 ですから、少ない「ATP」しか得られません。
『藤川徳美医師 facebook 2016年2月2日』より引用
鉄タンパク不足=嫌気性解糖主体=ATP不足=低体温。
”寒い時期には靴下を2枚履かないと足が冷えて眠れない”。
”夏のエアコンの効いたオフィスでは寒くて震え上がる”。
”頑固な便秘がある”。
”暑くても汗がかけない”、などと訴えられる女性は非常に多い。
代謝酵素、消化酵素は37℃で最も活性が高くなるようにできています。
低体温となると消化酵素活性も低下して栄養の消化も悪くなるはずです。
腸蠕動も低下するため栄養の吸収も悪いはずです。
つまり、食べても食べても栄養が足らないという負のスパイラルに陥りやすい。
発電所が上手く働かない状態なので、次に挙げる人は鉄不足には注意して下さい。
出産後に寒がりになった女性と糖質ばかり食べる男性
産後、急に寒がりになる女性がいます。
この原因は鉄不足が考えられます。
何故「産後」なのかというと、女性は1回の妊娠・出産で「フェリチン(貯蔵鉄)」を50失うからです。
子供に鉄を与えるので、出産後は鉄不足になります。
フェリチンは50以下だと不足、100が理想です。
ちなみに、日本では、生理がある女性のほとんどが50以下です。そんな人が妊娠・出産をすると、鉄が涸渇します。
それによって生じるのが「産後うつ」です。
また、生まれてくる子供も鉄不足により「発達障害」や「不正咬合」のリスクがあります。
発達障害を遺伝として片づけない。母親の鉄不足が子供の脳に与える影響とは
子供の歯並びが悪くなる真の原因。骨格的な不正咬合の予防は母親にかかっている
骨格が原因の鼻詰まりは子供の時の成長で決まる。口呼吸が招く脳への悪影響
何故、現代人の顔は細いのか?子供の骨格が正常に成長する為に必要な条件とは
...というわけで、産後寒がりになった女性は、「フェリチン」を測る方が良いです。かなり減っていると思われます。
もちろん、妊娠中、妊娠前の女性で冷えがある人も鉄不足の可能性があるので、「フェリチン」を測った方が良いです。
鉄不足に関する対策は、以下の記事をお読み下さい。
鉄の過剰摂取は危険という考えを改めます。鉄サプリを半年間飲んでみて思う事
一方、閉経後の女性や、男性は、鉄不足になることは、あまりありません。
ですが、糖質ばかり食べて動物性食品をほとんど摂取しない生活(一人暮らし)をしたり、何かの疾患によって継続的に出血がある人は、鉄不足になるケースがあります。
また、男性は女性より鉄不足にはなりにくいですが、なった場合は女性より深刻な事態になるので注意が必要です。
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血流障害
ここまでの内容をまとめます。
- タンパク質が不足・・・熱量が少ない
- 脂質が不足・・・・・・燃料が不足
- 鉄が不足・・・・・・・燃料の代謝機能低下
「痩せていても寒がりではない人」と、「痩せていて寒がりな人」は、体形は同じでも、細胞、エネルギーレベルで考えるとかなり差があります。
欧米人の体温が日本人より1度高いのは、遺伝もあるかもしれませんが、それよりも、このような栄養状態の違いが大きいです。
何故なら、この問題を解決したことで寒くなくなった...というメールをよく頂くからです。
そして、私が試した、根性、1日1食、断食、体を暖める食材ですが、これらの対策は失敗して当たり前です。
「根性」で欠けた栄養を満たす事はできませんし、「1日1食」や「断食」は栄養不足からエネルギー不足になります。また、「体を暖める食材」はエネルギー代謝の反応にはあまり関係ないので、体質を根本的に改善させる対策にはなりません。
ここまでは、「エネルギー不足」の問題点についてみてきました。
次は補足として、「体の組織の不具合が体温に影響する」...というお話をします。
体の組織の不具合も、もちろん栄養が大いに影響しています。
その組織とは、「血液」と「血管」です。
まずは「血液」についてです。
血液がドロドロになることによる血流障害
昔私が寒がっていると、「血液をサラサラにすれば、血流が良くなって暖かくなるよ」...とよく言われました。
また、「血液をサラサラにするには、野菜をしっかり食べて、肉を控えて~」...的な事も言われました。
よくある発想です。
しかし、これが間違いの元です。
昔の私の食事は、一日一食でも、そうじゃない時でも、内容は野菜中心で肉は少なめでした。タンパク質も、豆類や魚から摂る事が多かったです。その上、不足しがちな「ミネラル」も健康食品から補っていました。
世間一般で言われている健康的な食事でした。
血液はサラサラ、血流も良いはずですが、何故か寒いのです。
後で分かった事ですが、血液をドロドロにするのは肉ではなく、野菜や穀物に含まれている糖質でした。
そのメカニズムはこうです。
糖質を含む食材を食べると、ブドウ糖に分解されて血液中に流れます。
このブドウ糖が満ちていると、血液は粘つきます。これが血流障害の元です。
「肉を減らす食事」は、「野菜や穀物中心の食事」になるので、それらにたくさん含まれている糖質によって高血糖になり、血液はドロドロになります。
通常は血液中の余ったブドウ糖は、「インスリン」というホルモンが中性脂肪に変換して事なきをえます。
しかし、私のようにこの能力が弱いと、ブドウ糖が血液中に余った状態のままになります。
太らないですが、血糖値が下がらないので体には悪いです。
当時は糖質をかなり摂取していたので、血液がドロドロだったと思います。
高血糖を防ぐには、糖質制限が有効です。
血管の損傷による血流障害
高血糖は、全身の血管を傷つけます。
また、余った糖質は、「毛細血管を形成するタンパク質」と反応し細胞を変性させます。分かりやすく言うと、毛細血管が糖で破壊されます。
こうなると、「血液の流れるルート」が破壊されるわけですから、血流以前の問題です。
血管が無ければ、血液は通りようがありません。血流は悪いので、体は暖まりません。
ちなみに、毛細血管の量は年齢と共に減っていくそうです。
『Dragon Peace 60歳までに毛細血管は4割も減る ②』より引用
2008年に発表されたベルギーのリエージュ大学病院の研究によれば、65歳以上の人の毛細血管の数は、30歳以下の人よりも、なんと40%も減少していることが明らかになりました。
全血管の99%を占める毛細血管が、半分近くまで減ってしまうのですから、これは大変なことです。
ではなぜ、このようなことが起こるのでしょうか?
毛細血管は非常にもろく弱いため、血流が滞ったり詰まったりすればすぐに壊死(部分的に死ぬこと)してしまいます。
また、過度の運動や日光浴(紫外線の浴びすぎ)ストレスなどの影響で体内に活性酸素(攻撃力の強い酸素)が増えれば、毛細血管が炎症を起こし、消滅することもあるのです。
こうして毛細血管が減少すれば、血液循環が著しく滞り、全身の細胞が衰えて老化が急速に進んでしまいます。
全身の老化を食い止めるためには、毛細血管の減少を防ぎ、減った毛細血管を増やしてもとの状態に戻す必要があります。
体温を上げる為に血流が大事なら、毛細血管を減らさないようにし、減った毛細血管を復活させる必要があります。
血管の破壊を改善させるには、糖質を制限する事が有効です。
解決策
「エネルギー不足」も「血液・血管の問題」も栄養によって改善できます。
改善が早いのは前者です。後者は傷んだ細胞が入れ替るのに時間が必要です。
私は栄養療法によって、寒がり、低体温を克服しました。
また、寒さに強くなったからといって、暑さに弱くなったわけでもありません。夏は夏で全く夏バテしませんし、動き回っても疲れません。
体質が変わると丈夫になるので、特定の環境だけに強くなるのではなく、満遍なく抵抗力がつきます。
具体的にどんな方法をしたかというとこちらです。
- 1日10g以下の糖質制限(2015年春~)
- サプリメントの摂取(2017年1月~、3ヶ月に1種類増やす)
人体を傷つける糖質を限りなく減らし、高エネルギーである脂質と、体の修復に必要なタンパク質をしっかり摂取する。代謝に必要な、ビタミン・ミネラルを補う。
...たったこれだけです。
私は糖質制限を始めるまで、人生の大半が、脂質とタンパク質不足の状態でした。だから、「発熱に必要な栄養素」が欠落していたといえます。
私だけでなく、「バランスの良い食事」をしているほとんどの日本人が「脂質」と「タンパク質不足」です。
そして、体のタンパク質を変性させる「糖質」をたっぷり食べています。
中には「糖質制限はキツイ」という方もおられます。
そういう方は糖質の害を受ける分、効果は下がりますが、サプリを使うだけでも代謝機能はかなり改善します。
実際に、糖質制限ができない方でも体温が上がったという報告をいただいています。
特に、鉄とタンパク質が不足していた方がこれらを補うと劇的に改善します。
ここで大事なのが、「寒がり」とか「低体温」というのは結果であり、栄養失調、ATP不足が元だということです。
質的な栄養失調ATP不足から派生した症状が、ある人にとってはたまたま寒がりで低体温だっただけです。
人によって遺伝的な弱点は違うので、ある人は質的な栄養失調ATP不足によって慢性疾患になったりするわけです。
もちろん、症状を複数抱えている人もいます。
症状の大きい小さいはありますが、不健康には変わりありません。
なので、枝葉である「寒がり」とか「低体温」ではなく、
本質である栄養失調、ATP不足を治し体質を変えていく事で結果的に「寒がり」や「低体温」を治すことになります。
根本的に改善するので、それ以外の不快症状が消えることもあります。
例えば、疲れにくくなったとか、花粉症が消えた...とかですね。これは私が経験したことでもあり、当ブログの読者さんからも多数報告を頂いております。
「寒がり」や「低体温」の改善は、体質を改善した後からついてくるものです、一見難しそうに思われるかもしれませんが、理に適っているので簡単です。
生姜や唐辛子などよりよっぽど効果的です。
代謝に必要な栄養素は他にもあります
今回は体温に大きく影響する、「タンパク質」、「脂質」、ミネラルの「鉄」の重要性について語りましたが、これだけ摂っていればいいわけではありません。
解糖系、クエン酸回路、電子伝達系の反応について簡単に説明しましたが、かなり省略しています。
実は、これらの代謝には、その他のビタミンやミネラルも必要です。
そのどれが欠けても代謝は滞るので、何の栄養素が足りないのかをしっかりと観察し、必要なだけ補っていく必要があります。
それぞれの栄養素について一つ一つ語っていくと長くなるので、以下の記事を参考にして下さい。
ベジタリアンや糖質を止められない人が、健康の為に摂っておきたい栄養素とは
その他の原因
本記事で挙げた事以外で、低体温になっているとしたら、「甲状腺機能低下症」や「低T3症候群」になっている可能性もあります。
これらは代謝が低下するような症状がでるので、冷えるだけでなく、だるさや、抜け毛、生理不順になります。
甲状腺ホルモンの働きと、甲状腺機能低下症とLowT3症候群の違いについて分かりやすく説明してみた
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