- 投稿 2016/10/17
- 分かりやすいシリーズ - 調査
いきなりですが、糖化反応が起きた結果、体に起こる症状をいくつか挙げておきます。
どんな人でも、どれか一つぐらい当てはまるのではないでしょうか。
- 糖質は食べられるが肉や脂質が受け付けず、消化が悪い
- 骨や歯、爪が弱い
- 髪が痛んでいる
- 菌やウイルスへの抵抗力が弱い
- 怪我が治りにくい
- 関節が鳴りやすい
- 肌の劣化
- 痩せていても締りがない
- セルライトがある
- 痔
- アレルギー
- 歯槽膿漏
- 胃下垂
ここに書いたのは、糖化によって起こる症状のほんの一部です。
わかりにくいでしょうが、害を受けてなさそうに見えて、害を受けているのです。
今回ピックアップしたのは、どれも重篤な症状でないものばかりです。でも、あえてこれらを紹介したのは理由があります。
爪が弱くても、肌が劣化しても明日死ぬわけではありません。怪我が治りにくくても、アレルギーがあっても、ちょっとしんどいだけで、なんとか頑張れます。
むしろ、これらは病気のうちに入らないのではないでしょうか。
ですが、ハッキリ言ってこれらは「糖化」であり、「老化」です。
糖化すると、細胞が変性するので劣化します。
上に記したものは、症状も、起こる場所も全て違うものです。しかし、これら一つ一つを俯瞰で見ると、細胞レベルで体が弱っていることが感じ取れませんか。
細胞の劣化ですから、正常な時に比べて、水分が抜けてカスカスしたり、売れた果物のようにブヨブヨしたり、締りが無く垂れ下がったり・・・といった特徴があります。
私も、上に書いた症状のいくつかがありました。
自身の体験から、「体が弱いと、大病をしなくても、満遍なくあっちもこっちも弱い」という事を何度も書いてきました。
細胞レベルで弱るのですから当然です。どこにガタがきてもおかしくありません。
糖質制限をダイエットだと勘違いしている人達が知らない糖質の健康被害
今回はこの「糖化反応」のメカニズムについてお話します。
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糖化反応とは細胞の変化
人間の体を構成している成分で一番多いのは水ですね。その次に多いのがタンパク質です。
タンパク質は、細胞の主成分です。
筋肉、皮膚、髪の毛、内臓、骨の一部も、タンパク質でできています。
糖化とは、これら体のタンパク質と、「余った糖」が結びついて変性することです。
つまり、細胞の劣化です。
当然、余った糖が多ければ多い程、糖化は酷くなります。そして、一見自然な「老化」に見えるので、糖質が原因であることに気付く人は少ないです。
『老けたくなければファーストフードを食べるな 老化物質AGEの正体 著者:山岸昌一』より引用
人の体が老化するのには必ず原因があります。
年をとったら、皮膚がたるんだり、血管がボロボロになったり、視力が衰えたりするのですが、それは自然にそうなるのではなく、体の中で組織が何らかの変化を起こしたからです。
(16p)
一見老化にもみえる「糖化反応」ですが、食品化学の分野では、「メイラード反応」と呼ばれています。
発見はこちらの方が先です。
糖化反応 = メイラード反応
「メイラード反応」を知ることで、糖化した状態のイメージを具体的に掴むことができます。
メイラード反応とは
糖質とタンパク質の反応は、最初は「食品に起こる反応」として発見されました。
一九一二年、フランスの化学者ルイ・カミーユ・メイラードという人が、糖とタンパク質を加熱すると、褐色あるいは黄色い物質ができることを発見しました。
こうした「褐色反応」は発見者の名前をとって「メイラード反応」と呼ばれるようになりました。
(中略)
「メイラード反応」はこうして発見されてから七〇年間は、ずっと食べ物との関わりで研究され議論されてきたのです。
(17p~19p)
揚げ物とか、こんがり焼いたお肉とか、食欲をそそるあの色です。
食品を販売したり、調理をする人も、料理の演出の為にそのような色を加えようとします。
例えば、以下のようなものです。
メイラード反応が関与するものには次のような現象が挙げられる。
・肉を焼くと褐変
・玉ねぎを炒めると褐変
・デミグラスソース(ブラウンソース)の褐変
・コーヒー豆の焙煎
・黒ビールやチョコレートの色素形成
・味噌、醤油の色素形成
・熟成に伴う酒粕の色素形成
・パン(トースト)やご飯の「お焦げ」の形成
「美味しさの条件」と言っても過言ではないです。
このように「舌の為」には絶賛される「メイラード反応」ですが、体の中で起こるとなると話は別です。
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体内で起こるメイラード反応(糖化反応)
ここからは「糖化反応」をより具体的に分かってもらうため、血液の「ヘモグロビン」を例に、糖化の流れを説明していきます。
食品で起こる「メイラード反応」が発見されたのは、1912年です。
その後、血液を専門にしている医師によって、「人間の体の中でも同じ事が起こっているのでは」という推測がされました。それが、1969年のことです。
その医師の名は「サムエル・ラーバー」といって、「ヘモグロビン」の研究をしていました。
ここで、分からない方の為に、「ヘモグロビン」について説明します。
血液は、液体部分の「血しょう」と、血球である「白血球」「血小板」「赤血球」に分けられます。
「ヘモグロビン」は、酸素を運ぶ役割がある「赤血球」の中にあります。
「サムエル・ラーバー」は、ヘモグロビンの研究をしていて以下のような発見をしました。
ところが一九六九年になって、「メイラード反応」は食品だけでなく、人間の体の中でも起きているのではないか、という画期的な推測がされるようになりました。
そのきっかけになったのは、サムエル・ラーバーというイランからニューヨークにあるアルバート・アインシュタイン医科大学に留学してきたお医者さんの発見でした。
ラーバー先生は血液を専門としていて、ヘモグロビンの研究をされていました。
ヘモグロビンとは赤血球の中にあるタンパク質の一種です。
ご存じの方も多いと思いますが、ヘモグロビンは酸素とくっつきやすく、肺から体の各組織に酸素を運搬する働きをしています。ヘモグロビンが足りないと、脳に酸素が十分届かなくなって、貧血状態を起こします。
ラーバー先生はヘモグロビンの形や構造の違いによって、酸素の運搬機能に差が生まれるのではないかと考えました。
そして来る日も来る日もヘモグロビンの性質と機能を追いかけていたのですが、あるとき、糖尿病の患者さんのヘモグロビンを調べていたら、とても変な性質をもつヘモグロビンを発見したのです。
実はこの奇妙なヘモグロビンは、老化物質AGEに変化する一歩手前の「ヘモグロビンA1c」(HbA1c/ヘモグロビン・エーワンシーという表記もある)という中間物質でした。でも、当時のラーバー先生はそんなことは知るよしもありませんでした。
ただ、糖尿病の患者さんの血液には奇妙な性質のヘモグロビンがたくさんあって、ふつうの人の血液にもあることはあるが、糖尿病の患者さんではこれが二~三倍と多く存在することがわかった。
きっと、このへんてこりんな性質のヘモグロビンが糖尿病の患者さんに悪さをして、何か病気を起こしているに違いない、あるいは、このタイプのヘモグロビンが想起に糖尿病を診断する手がかりとなるかもしれない、という論文を一九六九年に発表したわけです。
(20p~21p)
ここで、「ヘモグロビンA1c」と、「AGE」という言葉がでてきたので整理します。
ヘモグロビンA1c
「ヘモグロビンA1c」は、通常の「ヘモグロビン」とは性質が違います。
どう違うかというと、「ヘモグロビン」にブドウ糖が結びついています。
ヘモグロビン + ブドウ糖 = ヘモグロビンA1c
AGE / AGEs
「AGE」は、老化物質です。
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ヘモグロビンA1cとは
糖尿病の人が検査の時に気にするのが「血糖値」と、「ヘモグロビンA1c」です。
まず、「血糖」と、「ヘモグロビンA1c」の意味を整理します。
- 「血糖 けっとう」とは、血液の中のブドウ糖の濃度のことです。
- 「ヘモグロビンA1c エーワンシー」とは、「血液中のヘモグロビンに、ブドウ糖が結びついた物質」です。糖化蛋白質で「糖化ヘモグロビン」と呼ばれたりもします。
ヘモグロビンはタンパク質ですから、血液の中に余分のブドウ糖があると、どんどん結合していきます。
当然、高血糖の状態が長く続くと、「ヘモグロビンA1c」は増えていきます。
血糖値とヘモグロビンA1cの値の違い
続いて、血液検査で分かる、「血糖値」と「ヘモグロビンA1c値」の違いについてお話します。
- 「血糖値」を計ると「血液検査をした時」の血液中のブドウ糖の値がわかります。
- 「ヘモグロビンA1c値」は、「ヘモグロビンのどれくらいの割合が糖と結合しているかを示す検査値」です。この値で、過去1ヶ月~2ヶ月の血糖の状態がわかります。
要するに、「血糖値」よりも、正確な血糖状態を知ることができるのが「ヘモグロビンA1c値」なのです。
ふだん不摂生をしあげて、検査の前だけ血糖値が上がらないように食事制限をするという小賢しい真似をする人がいますが、無駄なあがきです。
一時的に血糖値を良くしても、「ヘモグロビンA1c」を見れば食の習慣は筒抜けです。
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ブドウ糖は必要だけど多すぎるとダメ
血糖値は上がりすぎてもダメですが、低すぎてもダメです。
生命を維持するには、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が一定以上必要です。
糖尿病の人はふつうの人より血液中にたくさんのブドウ糖(血糖)をもっています。そのためブドウ糖とヘモグロビンが結びついて変質した「ヘモグロビンA1c」が多く見られます。
しかし、ふつうの人の血液中にも「ヘモグロビンA1c」がゼロではありません。
なぜなら人間はだれでも血液中にブドウ糖(グルコース)をもち、一〇〇ミリグラム/デシリットル前後の血糖値が存在するからです。
血液中のブドウ糖は、グルコースとして、とりわけ脳と、各種臓器や筋肉に運ばれ、エネルギー源として使われます。
脳は臓器としては、全体重の約二%(一・二~一・五キロ)しかありませんが、安静時でのグルコース消費量は一八%、とおそろしく「食いしん坊」なのです。
頭の活動には、このエネルギー源が必須で、グルコースが不足すると脳は活動を停止してしまいます。だから人は何をさしおいても脳にグルコースを送ろうとします。
またグルコースは、心臓で11%、肝臓で20%、筋肉では安静時でも20%を消費します。
言ってみればグルコースはエネルギーのコインのようなものですから、「糖化は人間が生きていく上で避けることのできない現象」だと言えます。
ただし、「ヘモグロビンA1c」の割合は、ふつうの人では糖尿病の人に比べると少なく、四・五~五・五%程度です。
(26p~27p)
これを読んで、
「グルコース(ブドウ糖)が不足すると脳は活動を停止する? やっぱり糖質は食べた方がいいんじゃないか」
と思われた方もいると思うので、少し説明をします。
確かに一定のブドウ糖は必要ですが、わざわざ食事から摂る必要はありません。その理由はいくつかあります。
まず、世間一般で信じられているように、脳はグルコース(ブドウ糖)だけをエネルギーとしているわけではありません。
脳は、ブドウ糖が不足してくると、脂肪酸を分解してできたケトン体という物質をエネルギー源として使います。しかも、脳は「ケトン体」の方が好きなのです。
ちなみに、胎児や新生児は「ケトン体」を利用してエネルギーを生み出しています。
エネルギー源を「ブドウ糖」に依存しているのは「赤血球」と「グリア細胞」です。
だから人間の体には、グルコース(ブドウ糖)は必要なのですが、食事から摂る必要はありません。
人間は、自分の体の中でグルコース(ブドウ糖)を作り出すことができるからです。
これを「糖新生 とうしんせい」と呼びます。
必要な糖質量は「糖新生」の働きで十分まかなえます。
「必要だけど、食べる必要がない」とはそういう意味です。自分で作れば事足りるのに、それ以上の量を余分に食べようとしているのが現代人です。
それに気付かず「糖質は必要だから」と食べ続けたら、糖が有り余って、体内のタンパク質がどんどん糖と反応して、劣化していきます。
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ヘモグロビンA1cは何故増えるのか
「ヘモグロビンにブドウ糖が結びついたものがヘモグロビンA1c」なので、糖質の摂取が増えると、糖化したヘモグロビンが増えることになります。
そして、それには、熱も関係しています。
ラーバー先生自身も研究しているうちに、「ヘモグロビンA1c」は正常なヘモグロビンに糖がたんこぶのようにくっついて変質した「糖化物質」だということがわかってきました。
ここで疑問が生まれました。
なぜ「ヘモグロビンA1c」ができたのか?なぜヘモグロビンに糖がくっつき、へんてこりんなものに変化したのか?
ここからが医学と化学のブレークスルーでした。
長く食品化学の領域で糖とタンパク質の化学反応として研究されてきたあの「メイラード反応」と、人間の体の中で起こっている生化学反応とが初めて結びついたのです。
「メイラード反応」とは、食品を構成する糖とタンパク質が加熱によって変質する化学反応のことでした。
人間の体の中にも、ブドウ糖という糖と体内組織を主につくっているタンパク質が多数存在しています。
すなわち、それらが三七度の体温で常時、長い時間をかけて温められているわけです。糖とタンパク質が温められるとどうなるか?
あたかもフライパンの上でじっくり調理されているかのように、人間の体内の組織に焼き目や焦げ目のような反応があらわれてもおかしくないではありませんか。
(22p~23p)
体内の組織が糖漬けになれば「タンパク質+糖+熱」で糖化クッキングの完成です。
ここでは「ヘモグロビン」を例にしていますが、もちろん、「それ以外の組織」でも同じことが起きます。
最初にお話した通り、筋肉、皮膚、髪の毛、内臓、骨の一部も、タンパク質でできていることを忘れてはいけません。
タンパク質は、細胞の主成分ですから、「加熱で糖がタンパク質とくっついて性質が変わるメイラード反応」は、体のどこで起こってもおかしくはないと肝に銘じるべきです。
糖質を多く食べる人は、この反応で、皮膚が弱り、髪が弱り、内臓が弱り、劣化していきます。
ちなみに、「三七度の体温で常時、長い時間をかけて温められる」とありますが、この理屈だと「低体温の人」はメイラード反応が鈍いことになります。
低体温の人が肌が白いのはこの為かもしれません。
逆にヨーロッパ系の人が肌の劣化が早いのは、日焼けをするからとか色々言われていますが、彼らの体温が日本人に比べると1度くらい高いので、その分メイラード反応が活発になるのかもしれませんね。
まあ、これは私の勝手な憶測ですが。
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糖尿病が怖いわけ
実は「ヘモグロビンA1c」はさらに反応が進むと、「AGE」と言う老化物質に変身します。
ヘモグロビンA1c
↓
悪化
↓
AGE
つまり「ヘモグロビンA1c」は、老化物質の一歩手前です。
これがたくさんあったら体にいいわけない、というのはお分かりいただけるかと思います。
しかし、糖尿病の患者さんの血液の中には、この「ヘモグロビンA1c」が普通の人より多くあるわけですから、「AGE」になるリスク、つまり、病気のリスクが高くなります。
糖尿病の患者さんに共通する特徴的な症状とは何かというと、まさしく「老化」なのです。
糖尿病の患者さんはふつうの人より皮膚がもろく、しみやしわになりやすい。
骨がボロボロになったり、歯周病や白内障や認知症になるのも格段に早いし、血管ももろいので、心筋梗塞や脳梗塞になるリスクが三倍も高くなります。
(24p)
糖尿病について詳しく知らない人も、「糖尿病は合併症が恐い」という事は知っているのではないでしょうか。
誰でも一度ぐらい、糖尿病の人が足を切ったとか、目が見えなくなったとか、恐ろしい話を聞いた事があると思います。
何故、糖尿病が合併症を引き起こしやすいのか、昔、私はイメージが掴めなかったのですが、この糖化の概念を知ることで、よく理解することができました。
AGEとは
「ヘモグロビンA1c」は、「老化物質に変身する一歩手前の物質」でした。
それが酷くなると、「AGE」という老化物質に変化するわけですが、これは非常に毒性が強いのです。
次はこの「AGE」がどんなものかについてお話します。
AGE(終末糖化産物)について分かりやすく説明してみたへ続く
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