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電子伝達系(呼吸鎖)について分かりやすく説明してみた①複合体Ⅰ~Ⅱ
電子伝達系(呼吸鎖)について分かりやすく説明してみた①複合体Ⅰ~Ⅱ

 

「好気呼吸を行なう代謝」の最終段階の反応である「電子伝達系 でんしでんたつけい」の話になります。別名には、「呼吸鎖 こきゅうさ」や、今は教科書で使われなくなった「水素伝達系」があります。

 

 

「クエン酸回路」は、ミトコンドリアの「マトリックス」で反応が起きましたが、

 

 

「電子伝達系」の反応が行なわれる場所は、ミトコンドリアの「内膜」です。

 

 

「膜」は「リン脂質」という油成分でできています。

 

 

ミトコンドリアの外膜、内膜、膜間腔

 

 

「外膜」と「内膜」の間は、「膜間腔 まくかんくう」と言うのですが、ここも少し関係あります。

 

 

ちなみに、内膜のヒダ状のところは「クリステ」と言います。

 

 

では、内膜や膜間腔でどんなことが起こるのか・・・ですが、イメージとしてはこんな感じです。

 

 

 

①堤防で仕切った反対側(膜間腔)へ、ポンプで水を送る

 

 

②溜まった水が発電機のある通り道を通って元の場所(マトリックス)に向かって流れる

 

 

③発電機のタービンが回って発電する

 

 

 

②~③は「水力発電」と似ています。

 

 

そして、①では、特定の順番にそって電子が運ばれていくので、この反応のことを「電子伝達系」と呼ぶのです。

 

この「電子伝達系」では、馴染みのない物質がたくさん出てきます。なので、混乱することがないように、流れを説明する前に、物質の紹介をします。

 

 

 

 

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内膜に埋め込まれている複合体

 

 

まず、ミトコンドリアの内膜の構造についてお話します。

 

 

内膜には「タンパク質」が埋め込まれているのですが、それぞれⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ、Ⅴと番号がつけられています。

 

 

複合体Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ、Ⅴ

 

 

これらは「膜タンパク質」と言って、それぞれ以下のような名前がついています。

 

 

  • 複合体Ⅰ・・・NADH:ユビキノンレクターゼ複合体

 

  • 複合体Ⅱ・・・コハク酸デヒドロゲナーゼ複合体

 

  • 複合体Ⅲ・・・ユビキノール:シトクロムcレグターゼ複合体

 

  • 複合体Ⅳ・・・シトクロムcオキシターゼ複合体

 

  • 複合体Ⅴ・・・ATP合成酵素

 

 

 

複数のサブユニットからなる複雑な構造をしているので「複合体」と言われています。情報源によって「呼吸鎖複合体」とか、「酵素複合体」とか、「タンパク複合体」と表現されています。

 

 

このⅠ~Ⅳの「複合体」を、水素の持つ「電子(e-)」が移動していくわけです。

 

 

水素原子の陽子と電子

 

 

 

そして、一番最後の「複合体Ⅴ(ATP合成酵素)」は、分子サイズのモーターで、例えるなら水力発電のタービンです。ATPはこのモーターが回る時のエネルギーによって作られます。

 

そして、そのタービンを回すのが「水素イオン(H+)(陽子の事)」です。

 

 

「電子(e-)」と「水素イオン(H+)」という言葉がでてきたので、これについても簡単に説明します。

 

 

 

原子について

 

 

物質を分解していくと、「分子」になります。

 

その「分子」をさらに分解していくと、「原子」になります。

 

 

 

物質と分子と原子

 

 

水は分解していくと、「H2O」という「分子」になります。

 

水分子「H2O」を分解すると、水素(H)が2つ、酸素(O)が1つに分けられます。

 

その1つ1つが「原子」です。

 

以下が原子の構造です。「水素原子」と「ヘリウム」を例にします。

 

 

 

水素原子とヘリウム原子の構造

 

 

 

ここで、「電子(エレクトロン)」がでてきました。

 

原子の中心にあるのは、「陽子 (プロトン)」と「中性子 (ニュートロン)」です。そして、その周囲を衛星のように「電子」が回っているわけです。

 

 

ただし、「水素原子」は、「中性子」がない原子です。

 

 

「中性子」は電荷がゼロで、プラスでもマイナスでもない中性。

 

「陽子」はプラスで、「電子」がマイナスです。

 

 

日本人の感覚からすると、「陽」がプラスなら、マイナスは「陰」のはずですが、マイナスは「陰子」ではなく「電子」という名前がつけられています。先にマイナスの電子が発見されて、その後で「陽子」と「中性子」が発見されたから・・・という理由らしいですが、分かりにくいから名前を整備して欲しいですね。

 

 

ちなみに、「電子」の数と「陽子」の数は同じです。

 

 

  • 水素原子・・・電子1つ、陽子1つ

 

  • ヘリウム原子・・・電子2つ、陽子2つ

 

 

 

イオンとは

 

「原子」は電気的に中性です。

 

プラスの「陽子」と、マイナスの「電子」の数が同じだからです。

 

 

しかし、元々は電気的に中性でも、電子の数が変わって、マイナスかプラスの電荷をおびると、原子は「イオン」になります。

 

 

イオンには「陽イオン」と「陰イオン」があります。

 

 

 

陽イオン

 

 

 

陽イオン

 

 

元々は電気的に中性でも、何らかの原因で「電子(マイナス)」を失うとします。すると、「陽子(プラス)」の数が勝つので、原子は全体としてプラスの電気を帯びます。

 

これを「陽イオン」と言います。

 

 

「陽イオン」は、記号の右横に小さく「+」を書きます(※ちなみに、電子を2個失った場合は「2+」と書きます)

 

 

 

水素原子は、中性子がなく陽子(プロトン)が1つしかありません。従って、電子を失ってしまうと陽子だけになります。

 

その為「水素イオン(H+)」のことを「プロトン」と呼ぶことがあります。

 

 

 

陰イオン

 

 

「電子」は失うこともあれば、増えることもあります。

 

 

陰イオン

 

元々は電気的に中性でも、何らかの原因で「電子(マイナス)」を受け取るとします。すると、「電子(マイナス)」の数が勝つので、原子は全体としてマイナスの電気を帯びます。

 

これを「陰イオン」と言います。

 

 

「陰イオン」は、記号の右横に小さい「-」を書きます(※ちなみに、電子を2個受け取った場合は「2-」と書きます)

 

 

 

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「NADH」と「FADH2」

 

 

「電子伝達系」では、「酸化 さんか」と「還元 かんげん」という言葉が繰り返しでてくるので、意味を書いておきます。

 

 

酸化・・・水素を失う事、電子を失う事

 

還元・・・水素を得る事、電子を得る事

 

 

 

「解糖系」や「クエン酸回路」で生じた「NADH」や「FADH2」は、「電子伝達体」と言って、水素原子(の持つ電子)を預かって運ぶ働きがあります。

 

 

「NADH」と「FADH2」は還元型なので、水素(の持つ電子)を得た状態です。水素を得る前は、それぞれ、酸化型の「NAD+」、「FAD」でした。

 

 

NAD+とFADの酸化型と還元型

 

 

酸化型の「NAD+」は、2つの水素原子によって、還元型の「NADH(厳密には NADH + H+ のセット)」になり(分かりにくいので図にします)、

 

 

NAD+2H→NADH+H+

 

 

酸化型の「FAD」は、2つの水素原子によって、還元型の「FADH2」になります(※こちらは単純なので図にしません)

 

 

 

こうして「NADH」と「FADH2」の預かった水素は、「電子伝達系」でATPを合成する為に使われます。

 

 

電子伝達系では、「NADH」は「複合体Ⅰ」で、「FADH2」は「複合体Ⅱ」で利用されます。

 

 

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CoQとシトクロムC

 

 

「電子伝達系」では電子が「複合体」を移動していくわけですが、それ以外にも、電子の移動の「足場」となるものが存在します。

 

それが「CoQ」と、「シトクロムc」です。

 

 

CoQとシトクロムc

 

 

※ⅠとⅢの間には「Ⅱ」がありますが、分かりやすくする為にこの図では省略しました。

 

 

 

CoQ(ユビキノン)

 

 

「Q」と記したのは、「CoQ」です。「Co」は、「コエンザイム(補酵素)」と読みます。なので、「CoQ」は、「補酵素Q」です。

 

先ほど「内膜は油成分でできている」と言いましたが、「CoQ」は疎水性なので、膜の油の中を浮遊して動いています。

 

この「CoQ」は、「複合体Ⅰ → 複合体Ⅲ」「複合体Ⅱ → 複合体Ⅲ」と行き来し、電子を伝達します。

 

 

なお、「CoQ」には別名が多く、「補酵素Q」の他に、「コエンザイムQ10(キューテン)」、「ユビデカレノン」、「ビタミンQ」、「ユビキノン(UQ)」があります。

 

酸化型を「ユビキノン」、還元型を「ユビキノール」と言います。

 

なので、本記事では、「Q」を「ユビキノン」と言う事にします。

 

 

 

シトクロムC

 

 

「C」と記したのは、「シトクロムC(シトクロームC)」です。「Cyt c」等と表示されることもあります。

 

「シトクロムc」は、単独のタンパク質です。膜の中を泳いでいた「CoQ」と違って、水っぽい性質があり、内膜の膜間腔側に存在しています。

 

「シトクロームC」は、「複合体Ⅲ」から電子を受け取って、「複合体Ⅳ」に伝達します。

 

酸化型は「フェリシトクロムc」、還元型を「フェロシトクロムc」と言います。

 

 

なお、この他にも「シトクロム」という名前がついたものがいくつか出てくるので混乱しないようにして下さい。

 

 

一通り紹介が終わったので、ここから本題の「電子伝達系」についてお話します。

 

 

 

電子伝達系の流れ

 

 

まず、全体の流れを先に説明します。

 

 

「NADH」や「FADH2」が預かった水素(電子(e-)と水素イオン(H+))は、切り離されて、それぞれ別の使われ方をします。

 

 

「電子」の方は、膜に埋め込まれた複合体Ⅰ~Ⅳに向かってリレー(伝達)され、最後は水になります。

 

 

 

 

 

一方、「陽子(H+)」の方は、リレーで生じたエネルギーによってマトリックスから膜間腔へ移動します。

 

 

 

 

 

 

 

  • 電子(e-)   → Ⅰ~Ⅳを伝達

 

  • 陽子(H+) → 伝達する時のエネルギーで膜間腔へ

 

 

 

そして、膜間腔の「陽子(H+)」が、「複合体Ⅴ」を通ってマトリックスに移動する時のエネルギーで、ATPが合成されます。

 

 

 

 

 

 

シンプルに言うとこうなのですが、一つ一つを見ていくと細かくて面倒です。

 

 

まずは複合体Ⅰから説明します。

 

 

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①NADHデヒドロゲナーゼ複合体(複合体Ⅰ)とNADH

 

 

「複合体Ⅰ(NADHデヒドロゲナーゼ複合体)」を大雑把に図にするとこんな感じです。

 

 

複合体Ⅰ(NADHデヒドロゲナーゼ複合体)

 

 

この酵素の役割は、「NADH」を「NAD+」に還元し、「Q(ユビキノン)」を「QH2」に還元することです。そして、その時のエネルギーで「水素イオン(H+)」を膜間腔にくみ上げます。

 

流れはこうです。

 

 

「NADH」は、酵素である「複合体Ⅰ(NADHデヒドロゲナーゼ)」の中に入って、「FMN」に電子(e-)2つと、「H+」を渡します。

 

 

FMNの還元

 

 

「FMN(フラビンモノヌクレオチド)」とは、電子伝達系でNADHの電子を一番最初に受け取る「電子伝達体」です。ビタミンB2から合成される為、これが不足すると「FMN」も不足し、電子伝達系が上手く働かなくなります。

 

酸化型の「FMN」は、マトリックスから「H+」を1つとりこんで、還元型の「FMNH2」になります。

 

 

ここで注意です。実はこの過程にはいくつもの説があります。

 

 

例えば、「NADH」は複合体の中に入らずに、以下のように電子(e-)だけが複合体の中に入っていき、電子を「FMN」に渡す・・・とだけ説明しているものもあります。でも、この説だと、「じゃあどうやってH+を手に入れてFMNH2になるんだ」と言いたくなります。

 

 

FMNの還元

 

 

また、「NADHとH+が、「電子」と「H+」を2つずつFMNに渡す」という意見もありました。

 

 

情報源によって説明がバラバラで、私が説明したことも1つの説に過ぎません。私もどれが正解か分からないので、とりあえず辻褄が合うものを紹介していますが、信じていません。

 

 

従って、「電子が伝わっていく」という、どの情報にも共通している大まかな流れだけ頭に入れておいて下さい。

 

 

 

では話を先ほどの説に戻します。

 

 

電子を渡した「NADH」は、酸化型の「NAD+」となって、複合体Ⅰから出ます。

 

 

 

 

鉄硫黄クラスター

 

 

そして「FMNH2」は、電子(e-)を「Fe-S」に伝達します。

 

 

 

「Fe-S(鉄硫黄クラスター)」は、鉄と硫黄からなるクラスター(集合体)です。ここでは簡略化して描きましたが、「Fe-S」は7~8個存在していて、この間を電子が飛び移っていきます。

 

 

 

そして、電子は、「ユビキノン(Q)」にバトンタッチされます。ユビキノンは、電子2つを1つずつ受け取り、

 

 

 

ユビキノンの還元

 

 

 

さらに、マトリックスにある「H+」を2つ受け取って、「QH2」になります。分かりやすくするとこうです。

 

 

 

酸化型のユビキノンと還元型のユビキノール

 

 

 

そして、「QH2」は複合体Ⅰから離れて、複合体Ⅲに進みます。

 

 

さて、複合体Ⅰの中を電子が飛び移っていったわけですが、この時のエネルギーで、マトリックスにある「H+」が膜間腔にくみ上げられます。

 

 

 

プロトンポンプ

 

 

(NADH1分子の)2つの電子が移動すると、膜間腔に4つの「H+」が移動します。

 

 

「H+(プロトン)」をくみ上げるので、これを「プロトンポンプ」と言います。

 

 

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②コハク酸デヒドロゲナーゼ複合体(複合体Ⅱ)とFADH2

 

 

 

「NADH」は、「複合体Ⅰ」で電子を渡しました。

 

 

一方、「FADH2」は、「複合体Ⅱ」で電子を渡します。

 

 

複合体Ⅱは、「コハク酸デヒドロゲナーゼ複合体」という名前です。これは「クエン酸回路」でコハク酸をフマル酸へ変える時にでてきた酵素と同じものです。

 

クエン酸回路(TCA回路)について分かりやすく説明してみた

 

 

 

こちらの記事でも書きましたが、この酵素によって「コハク酸」が水素原子を2つ失って「フマル酸」になる時に、酸化型の「FAD」が、還元型の「FADH2」になりました。

 

 

今回の話は、その「FADH2」のその後です。

 

 

「複合体Ⅱ」も、人によって言う事が違うので曲者なのですが、とりあえず調べてポイントを整理した構造がこちらです。

 

 

 

複合体Ⅱ(コハク酸デヒドロゲナーゼ複合体)

 

 

このように、4つのサブユニットから構成されていて、AとBが親水性。CとDが疎水性です。「Sdh」というのは、「succinate dehydrogenase(コハク酸デヒドロゲナーゼ)」のことです。

 

 

詳しく見ると、「Sdh A」に「FAD」が結合していて、「Sdh B」には「Fe-S(鉄硫黄クラスター)」が含まれています。

 

 

CとDは小難しくてよく分からないのですが、この2つの間に「ヘム」が結合し、「Q(ユビキノン)」が還元されるようです。

 

 

しかし、4つのサブユニットに分けて説明されている情報がほとんどなく、たまに見つけても小難しい言い回しばかりで理解に苦しみます。なので、今分かる範囲で簡潔に説明します。

 

 

まず、「コハク酸 → フマル酸」の過程を思い出して下さい。

 

 

 

コハク酸とFAD

 

 

 

「コハク酸」は水素2つを失って、「フマル酸」になります。

 

 

 

フマル酸とFADH2

 

 

 

「FAD」は、水素によって「FADH2」に還元されます。

 

 

すると、すぐに「Fe-S(鉄硫黄クラスター)」に電子を渡します。と同時に「H+」をマトリックスへ戻します。

 

 

 

鉄硫黄クラスター

 

 

 

こうして「FADH2」は、「FAD」になります。

 

 

「Fe-S」は厳密には3種類あって、これらを電子が1つずつ移動します。そして、「ユビキノン(Q)」が受け取ります。

 

 

と同時に、マトリックスの「H+」を2つ取り込み、「ユビキノン(Q)」は、「ユビキノール(QH2)」になります。

 

 

 

ユビキノンの還元

 

 

「ユビキノール」は、「複合体Ⅲ」へ向かいます。

 

 

ところで、「複合体Ⅰ」は、電子が伝達するエネルギーによって「H+」を膜間腔に移動させる機能がありました。しかし、「複合体Ⅱ」にはその機能がありません。

 

 

そのため、電子伝達系の説明で「複合体Ⅱ」は省略される事が多いのです。

 

 

ちなみに、この流れを、4つのサブユニットに分けて説明している説ではこのような図になっています。

 

複合体Ⅱ(コハク酸デヒドロゲナーゼ複合体)

 

 

 

 

③ユビキノール:シトクロムcレクターゼ複合体(複合体Ⅲ)

 

 

「複合体Ⅰ」と「複合体Ⅱ」から離れた「ユビキノール」が行き着く先が「複合体Ⅲ」です。

 

 

ユビキノールと複合体Ⅲ

 

 

ただ、話が長くなるので、ここで一旦切ります。

 

 

次回、電子伝達系(呼吸鎖)について分かりやすく説明してみた②複合体Ⅲ~Ⅴで「複合体Ⅲ」以降を説明していきます。

 

 

 

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クエン酸回路(TCA回路)について分かりやすく説明してみた
クエン酸回路(TCA回路)について分かりやすく説明してみた

 

本記事では、「クエン酸回路」の流れを、「解糖系」でできた「ピルビン酸」から説明していきます。

 

 

以下の記事をまだお読みでない方は、先にこちらから読むことをオススメします。

 

解糖系について分かりやすく説明してみた

 

 

「解糖系」によって、1分子の「グルコース」から、2分子の「ピルビン酸」が生じました。

 

 

グルコースからピルビン酸

 

 

 

「クエン酸回路」は、ミトコンドリアのマトリックスで起きるので、ピルビン酸は「細胞質基質」から「マトリックス」に移動します。

 

 

ミトコンドリアは、2重の膜で覆われていて、膜は「リン脂質」という油成分でできています。

 

 

そして、「外膜」には、膜を貫通している「ポーリン」と呼ばれる、タンパク質でできた「低分子物質の通路」があります。この通路は分子量5000以下の親水性の分子を通すので、ピルビン酸のような小さな物質は自由に通過できます。

 

 

しかし、「内膜」には「ポーリン」はありません。

 

 

なので、ピルビン酸は、膜に埋め込まれている「ピルビン酸トランスロカーゼ」というタンパク質によって、マトリックスに運ばれます。

 

 

この時、「水素イオン(H+)」も運ばれます。

 

 

 

ピルビン酸輸送

 

 

 

マトリックスで「クエン酸回路」の反応が起きるのですが、

 

その為にはまず、「ピルビン酸」が「アセチルCoA」に変換される必要があります。

 

 

 

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【序章】ピルビン酸 → アセチルCoA

 

 

「CoA こえー」って何だ?・・・という人の為に、先に「CoA」について解説しておきます。

 

 

「CoA」の正式名称は、「コエンザイム A / 和名:補酵素A」です。

 

 

「補酵素 ほこうそ」というのは、「酵素ではないけど、酵素の反応に協力しているサポート役」です。そして、「CoA」の「A」は、最初に発見されたという意味です。

 

 

以下が「CoA」の構造になります。

 

 

CoA(コエンザイムA)

 

 

本記事で使用する絵ですが、通常は、炭素(C)、酸素(O)、水素(H)、窒素(N)、硫黄(S)、リン(P)と書くのですが、英語よりも日本語の方が親しみやすいので漢字にしました。

 

ただし、リン(カタカナだと見栄えがイマイチ)は英語にしました。

 

 

「CoA」は高エネルギーで、様々な基質と結合します。これがくっつくと活性化されるので、その後の反応が進みやすくなります。

 

 

 

「〇〇〇 CoA」・・・という物質は多く、クエン酸回路でも「アセチルCoA」の他に「スクニシルCoA」が登場します。「CoAがついた化合物」は、不安定でエネルギーを放出しやすい状態です。

 

 

 

それでは話を戻します。

 

 

「クエン酸回路」を進めるには、まず「ピルビン酸」を「アセチルCoA」に変えなければなりません。

 

 

この反応の酵素は、「ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体(脱水素酵素)」です。

 

 

名前は「脱水素(水素が外れる)」ですが、「脱炭酸(二酸化炭素が外れる)」「CoAによる活性化」の反応も起こす、巨大で複雑な酵素です。だから「複合体」なのです。

 

 

そして、以下が反応が起きる前のそれぞれの状態です。NADの説明は解糖系の記事でお話しました。

 

 

ピルビン酸と酸化型NADとCoA

 

 

反応後、「ピルビン酸」、「CoA」、「酸化型NAD」は、こうなります。

 

 

二酸化炭素と還元型NADHとアセチルCoA

 

 

それぞれがどのように変化したのか、順に説明します。

 

 

「ピルビン酸」からは、炭素が個と、酸素が個外れます。つまり、二酸化炭素(CO2)です。普段私たちが吐いているはここで生じるわけです。

 

 

二酸化炭素(CO2)が取れることを「脱炭酸反応」と言います。

 

 

しかし、今回のように酸化(水素を失う)と同時に脱炭酸する場合は「酸化的脱炭酸反応」と言います。

 

 

そして、残った「ピルビン酸」はこうなりました。

 

 

アセチル基

 

 

これを「アセチル基」と言います。

 

 

これが、先ほど説明した運搬役の「CoA」とくっついて、「アセチルCoA」になります。

 

 

「CoA」の一番左にあった「水素」が外れて、硫黄の横に「アセチル基」がくっつきます。

 

アセチルCoA

 

 

ちなみに、この「アセチルCoA」が省略される時、何故かこのように硫黄(S)を外に出して書きます。

 

 

アセチルCoA省略

 

 

 

そして、酸化型だった「NAD」は、水素を受け取って還元型の「NADH」になります。

 

 

「NAD」と「NADH」については省略していることもあるので、後ほど説明します。

 

「ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体」についても省略している部分があるので、後で補足します。

 

 

「アセチル基」は、炭素は「クエン酸回路」で二酸化炭素になり、水素はNADやFADに預けた後、「電子伝達系」を経て水分子になるので、化学的に分解されます。

 

 

それでは、「アセチルCoA」になったので、ここからは「クエン酸回路」のスタートです。

 

 

 

①アセチルCoA → クエン酸

 

 

ここまでの流れを俯瞰でみます。「クエン酸回路」はこのような順番で進みます。

 

 

クエン酸回路

 

 

「クエン酸」から始まるから「クエン酸回路」です。回路という名前の通り、一周して終わりではなく、何度もくるくると回ります。

 

 

まず、「アセチルCoA」は、「オキサロ酢酸」と出会います。ここで出合った「オキサロ酢酸」は、前のクエン酸回路の反応でできた化合物です。

 

 

以下が、「アセチルCoA」と、「オキサロ酢酸」、そして「水分子」です。

 

 

 

アセチルCoAとオキサロ酢酸と水分子

 

 

「クエン酸シンターゼ」という酵素が、これらを基質にして、「クエン酸」と「CoA」を合成します。

 

 

 

クエン酸とCoA

 

 

「アセチルCoA」は、「アセチル基」が外れたことで「CoA」に戻ります。

 

「CoA」は、基質と結合してここまで運んできましたが、あくまでサポート役で、「クエン酸回路」に組み込まれるわけではないので退場します。

 

「クエン酸」だけが次の反応へ進みます。

 

 

クエン酸

 

 

 

 

②クエン酸 → (Cis-アコニット酸) → イソクエン酸

 

 

「クエン酸」から1つの酵素で、2段階の反応が起きます。なので、中間の「Cis-アコニット酸」は省略されることがあります。

 

 

酵素の名前は、「アコニット酸ヒドラターゼ(アコニターゼ)」です。

 

まず、「クエン酸」から「水分子」が出て「Cis-アコニット酸」になります。

 

 

Cis-アコニット酸

 

 

そして、その水分子が加わって、配置が変わる事で「イソクエン酸」になります。

 

 

イソクエン酸と水分子

 

 

イソクエン酸は次の反応に進みます。

 

 

 

③イソクエン酸 → (オキサロコハク酸) → α-ケトグルタル酸

 

 

この反応も「イソクエン酸脱水素酵素(デヒドロゲナーゼ)」という1つの酵素によって、2段階の反応が起きます。なので中間の「オキサロコハク酸」は省略されることがあります。

 

この反応では「脱水素」と「脱炭酸」が起きます。

 

反応前の状態がこちらです。

 

イソクエン酸と酸化型NAD

 

 

酸化型の「NAD」は、「イソクエン酸」の水素を奪って、還元型の「NADH」になります。

 

すると、不安定な「オキサロコハク酸」になります。

 

オキサロコハク酸とNADH

 

 

「オキサロコハク酸」は脱炭酸され、「α-ケトグルタル酸」と「二酸化炭素」が生じます。

 

 

 

α-ケトグルタル酸と二酸化炭素

 

 

「αーグルタル酸」は、「2オキソグルタル酸」とも言います。

 

 

というわけで、「α-ケトグルタル酸」は次の反応に進みます。

 

 

 

④α-ケトグルタル酸 → スクニシルCoA

 

 

ここでは「ピルビン酸 → アセチルCoA」になった時と似たようなことが起きます。

 

以下が反応前の状態です。

 

 

α-ケトグルタル酸と酸化型NADとCoA

 

 

酵素「α-ケトグルタル酸(2-オキソグルタル酸)デヒドロゲナーゼ複合体」によって、「脱水素」と「脱炭酸」が起きます。

 

そして、高エネルギーな補酵素「CoA」がついて、「スクニシルCoA」となります。

 

 

スクニシルCoAと還元型のNADHと二酸化炭素

 

 

構造はこうなっています。

 

スクニシルCoA

 

 

これも長いので、以下のように省略されます。

 

スクニシルCoA省略

 

 

スクニシルCoAは次の反応に進みます。

 

 

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⑤スクニシルCoA → コハク酸

 

 

 

ここで、また新しい物質が出るので、反応の説明の前に先に紹介します。

 

名前は「GTP ジーティーピー」と言って、このような構造になっています。

 

 

GTP(グアノシン三リン酸)

 

 

「グアノシン・トリ・ホスフェート / 和名:グアノシンリン酸」と言い、リン酸基が3つ付いています。

 

 

名前も構造も「ATP」によく似ています。

 

「ATP」は、リン酸が3つくっついていて、リン酸が1つ外れる時にエネルギーが放出され、「ADP」になりますが、「GTP」も3つあるリン酸のうち1つが外れる時にエネルギーが放出されます。

 

こちらがエネルギーが放出された後の「GDP ジーディーピー」です。

 

 

GDP(グアノシン二リン酸)

 

「グアノシン・ジ・ホスフェート / 和名:グアノシンリン酸」と言い、リン酸基は2つです。

 

 

 

それでは話を戻します。

 

以下が反応前の状態です。

 

 

スクニシルCoAとGDPとリン酸

 

この反応で使われる酵素は「スクニシルCoAシンターゼ」です。

 

これによって、「スクニシルCoA」から「CoA」を外す時のエネルギーで、「GDP」と「リン酸」から「GTP」が合成されます。

 

出来上がった「GTP」は、高エネルギーの化合物です。

 

そして、「GTP」はリン酸が3つあるわけですが、このうちの1つを「ADP」に与えます。この時使われる酵素は「ヌクレオシド2リン酸キナーゼ」です。

 

 

GTPのリン酸をADPに

 

リン酸をあげたことで「GTP」は「GDP」になり、「ADP」は、リン酸3つの「ATP」になります。つまり、「ATP」が合成されたということです。

 

そして、「スクニシルCoA」は「コハク酸」になります。

 

コハク酸

 

 

「コハク酸」は次の反応に進みます。

 

 

 

⑥コハク酸 → フマル酸

 

 

ここで、また違う物質がでてきます。

 

「FAD エフエーディー」という補酵素です。構造は以下になります。

 

酸化型FAD

 

 

「フラビン・アデニン・ジヌクレオチド」と言い、「NAD」と同じで、水素(の持つ電子)の預かり役「電子伝達体」です。

 

 

酸化型の「NAD」は、水素を預かることで、還元型の「NADH」になりましたが、「FAD」も酸化型が水素を預かると、還元型の「FADH2」になります。

 

 

還元型FADH2

 

 

 

「FADH2」の「2」という数字については、最後に補足という形で説明します。

 

 

では、話を反応に戻します。

 

以下が反応前の「コハク酸」と酸化型の「FAD」です。

 

 

コハク酸と酸化型FAD

 

 

脱水素(酸化還元)酵素である「コハク酸デヒドロゲナーゼ複合体」によって、「コハク酸」は「FAD」に水素を渡します。

 

すると、「FAD」は還元型の「FADH2」になり、「コハク酸」は「フマル酸」になります。

 

 

 

フマル酸と還元型FADH2

 

 

こちらが構造になります。

 

 

フマル酸

 

 

 

「フマル酸」は次の反応に進みます。

 

なお、この反応で使われた酵素「コハク酸デヒドロゲナーゼ複合体」は、電子伝達系の「複合体Ⅱ(コハク酸デヒドロゲナーゼ複合体)」と同じものです。

 

 

 

 

⑦フマル酸 → リンゴ酸

 

 

この反応では、「フマル酸ヒドラターゼ(フマラーゼ)」という酵素が使われます。

 

「フマル酸」に水分子(H2O)が加わります。

 

 

フマル酸と水分子

 

 

すると、「リンゴ酸」になります。

 

 

リンゴ酸

 

 

「リンゴ酸」は次の反応に進みます。

 

 

 

⑧リンゴ酸 → オキサロ酢酸

 

 

「クエン酸回路」最後の反応です。

 

この反応で使われる酵素は「リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(脱水素酵素)」です。

 

以下が反応前の状態です。

 

リンゴ酸と酸化型NAD

 

 

「リンゴ酸」が酸化型の「NAD」に水素を預けると、「NAD」は「NADH」に、そして、「リンゴ酸」は「オキサロ酢酸」になりました。

 

 

オキサロ酢酸と還元型のNADH

 

 

以下が、「オキサロ酢酸」です。

 

 

オキサロ酢酸

 

 

これで「クエン酸回路」を一周したことになります。

こうしてできた「オキサロ酢酸」が、また次の「アセチルCoA」と反応するわけです。

 

 

 

ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体について補足

 

 

「ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体」は、「複合体」とついているように、3つの酵素(E1、E2、E3)が集まった複雑な構造をしています。以下が1~3の酵素の名前です。

 

 

 

  • E1・・・ピルビン酸デヒドロゲナーゼ

 

  • E2・・・ジヒドロリポイルトランスアセチラーゼ

 

  • E3・・・ジヒドロリポイルデヒドロゲナーゼ

 

 

 

そして、複数の補酵素が必要です。

 

 

アセチル基を受け取る「CoA」、水素原子を受け取る「NAD」の他にも、「FAD」、「チアミン2リン酸」、「α-リポ酸」が、酵素のサポートをします。

 

 

栄養の話になるのですが、

 

 

「CoA」の合成には、「ビタミンB5(パントテン酸」が、

 

 

「NAD」の合成には、「ビタミンB3(ナイアシン)」が、

 

 

「FAD」の合成には、「ビタミンB2(リボフラビン)」が、

 

 

「チアミン2リン酸(チアミンピロリン酸)」の合成には、「ビタミンB1(チアミン)」が、

 

 

 

それぞれ必要になってきます。

 

 

E1の「ピルビン酸デヒドロゲナーゼ」の補酵素「チアミン2リン酸」は、「ビタミンB1」の活性型です。

 

 

「ピルビン酸」→「アセチルCoA」に変える為に必要な補酵素は1つではありませんが、「ビタミンB1」が強調されるのは、複合体の中の最初の反応に必要だからでしょう。

 

でも、他の補酵素も必要です。

 

従って、この代謝を止めないためにも、ビタミンB群のサプリを飲むといいわけです。

 

例えばこれ。

 

 

ビタミンB群のサプリメント

 

 

B群が足りなくなるとどんな不具合が起きるのか、沢山のB群が必要な体質については以下の記事に書きました。

 

 

ベジタリアンや糖質を止められない人が、健康の為に摂っておきたい栄養素とは

 

癌細胞と癌家系について分かりやすく説明してみた

 

 

そして、「α-リポ酸」は、ビタミン様物質(ビタミンに似た有機化合物)です。

 

 

話がそれましたが、「ピルビン酸」を「アセチルCoA」に変えるには、厳密には3つの酵素と、5つの補酵素が必要ということになります。

 

 

具体的にどういう流れでそうなるのか調べたのですが、人によって説明が食い違っていたり、それ以前に、私でも理解できる文章で書かれたものが見つからなかったので、分かり次第書き加えたいと思います。

 

 

また、「④α-ケトグルタル酸 → スクニシルCoA」で働く酵素、「α-ケトグルタル酸(2-オキソグルタル酸)デヒドロゲナーゼ複合体」も、3つの酵素から構成される複合体で、やはり5つの補酵素が必要になります。

 

 

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NADとFADについて

 

 

電子伝達体の「NAD」と「FAD」についての補足になります。

 

 

ここまでは省略していたのですが、酸化型の「NAD」は、正確には「NAD」の右上に「+」と書きます。このプラスは、「プラスの電荷を帯びている」という意味です。

 

「NAD」の相手、「イソクエン酸」を例に説明します。

 

 

「イソクエン酸」は、水素が8ですが、このうちの2つが外れます。

 

 

 

イソクエン酸とNAD+

 

 

 

この外れた「水素原子」の構造はこのようになっています。

 

 

 

水素原子

 

 

プラスの電気を帯びた「陽子(プロトン)」の周囲を、マイナスの電気を帯びた「電子(エレクトロン)」が衛星のように回っています。

 

 

ちなみに、水素原子には「中性子」はありません。

 

 

「陽子」が1個と「電子」が1個のペア・・・これが「水素原子」です。

 

従って、「基質から水素が2個外れる」ということは、

 

 

電子2つと陽子2つ

 

 

プラスの「陽子」が2つ、マイナスの「電子」が2つ外れるということになります。

 

で、「NAD+」の方は、プラスの電気を帯びています。「窒素+」のところです。

 

 

NAD+

 

 

「NAD+」は、「電子(-)」つと、「陽子(+)」つを受け取ります。水素原子がくっついて、「窒素+」が「電子(-)」によって還元されます。

 

還元型に変わると、電気的に中性になります。

 

ですが、1つ「陽子(+)」が余ります。

 

 

NADH+H+

 

 

この「電子を失った水素」の事を「H+」、「水素イオン」、「プロトン」等と言います。

 

 

従って、「還元型のNADH」は、厳密には「NADH + H+」のセットということになります(※「H+」は遊離します)

 

 

調べていると、情報源によって、酸化型は「NAD」と書かれていたり、「NAD+」と書かれていたり、また還元型は、「NADH」と書かれていたり、「NADH2」と書かれていたり、統一感がありません。「+」の意味、「2」の意味も、説明が回りくどくて何が言いたいのか分かりにくいものがほとんどで、納得するのに時間がかかりました。一番分かりやすかったのは以下の本です。

 

 

『イラスト 基礎からわかる生化学―構造・酵素・代謝 / 著者:坂本 順司』より引用

 

ナイアシンは分子中でアミドの形で存在しており、このニコチンアミド環がまさに酸化還元のおこる場所である。

 

酸化型では正電気を帯びており、電子(e-)2つと水素イオン(H+)1つを受け取って還元型に変わると、電気的に中性となる。

 

(中略)

 

酸化還元反応でNADやNADPの相手となる有機酸などの基質は、多くの場合2つの水素原子、いいかえると2つの e- と2つの H+ を解離・結合する。したがって両者が反応すると H+ が1つ遊離(逆反応の場合は吸収)される

 

(167p~168p)

 

 

そして、「FAD」について説明します。

 

 

酸化型の「NAD+」は、「電子(-)」つと、「陽子(+)」つを受け取るのですが、

 

酸化型の「FAD」は、「電子(-)」つと、「陽子(+)」つを受け取ります。なので、「NAD」のように陽子は余りません。

 

 

「コハク酸」で説明します。

 

 

コハク酸とFAD

 

 

 

コハク酸の「水素原子」が2つ外れるので、「電子」2つ、「陽子」2つが外れるということになります。

 

 

一方、酸化型の「FAD」は、「電子」2つと、「陽子」2つを受け取るので、「水素原子が2つ結合した」ことになります。

 

 

FADH2

 

 

従って、「FADH2」となります。

 

 

フラビンもナイアシン誘導体と同様、2電子酸化還元をおこなう補酵素である。ただしNADやNADPとは違い、2つの e- と同時に H+ も2つ授受するので、H+ が遊離・吸収されることはない

 

(169p~170P)

 

 

 

クエン酸回路のおさらい

 

 

クエン酸回路によって生じたものをまとめます。

 

 

【序章】ピルビン酸 → アセチルCoA

 

二酸化炭素(CO2)

 

①アセチルCoA → クエン酸

 

 

②クエン酸 → (Cis-アコニット酸) → イソクエン酸

 

 

③イソクエン酸 → (オキサロコハク酸) → α-ケトグルタル酸

 

NADH

 

二酸化炭素(CO2)

 

 

④α-ケトグルタル酸 → スクニシルCoA

 

NADH

 

二酸化炭素(CO2)

 

⑤スクニシルCoA → コハク酸

 

ATP

 

⑥コハク酸 → フマル酸

 

FADH2

 

⑦フマル酸 → リンゴ酸

 

 

⑧リンゴ酸 → オキサロ酢酸

 

NADH

 

 

 

そして、本記事に使用した絵は、以下の動画を参考にしました。分かりやすいアニメーションなのでオススメです。

 

 

 

 

こちらも合わせて見て下さい。

 

 

 

 

次は「電子伝達系」についてお話します。

 

 

電子伝達系(呼吸鎖)について分かりやすく説明してみた①複合体Ⅰ~Ⅱへ続く

 

 

 

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解糖系について分かりやすく説明してみた
解糖系について分かりやすく説明してみた

 

以前、エネルギー代謝の「解糖系」、「クエン酸回路」、「電子伝達系」、それによって産生される「ATP」について記事にしたのですが、内容は全体に軽く触れる程度でした。

 

なので、「解糖系」、「クエン酸回路」、「電子伝達系」を小分けにして、以前より細かく説明していきます。本記事は、そのうちの「解糖系」について取り上げます

 

 

先に簡略化した以下の記事をお読みいただいた方が、今回の話がスムーズに理解できると思います。

 

ATP(アデノシン三リン酸)について分かりやすく説明してみた

 

 

エネルギー代謝について分かりやすく説明してみた

 

 

 

そして、この記事の説明に使っている絵ですが、

 

 

普通は原子を、C(炭素)、O(酸素)、H(水素)、N(窒素)・・・と、アルファベットで書くのですが、私は英語だとピンとこないので漢字にしました。ただし、カタカナだとしっくりこなかったので、リンだけは「P」にしました。

 

 

化学が得意な人には邪道な表記で申し訳ないのですが、大目に見ていただけると嬉しいです。

 

それでは本題に入ります。

 

 

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解糖系とは

 

「解糖系」とは、糖を分解する経路の事で、10段階の反応からなります。糖は「ブドウ糖(グルコース)」のことです。これまでは、

 

 

グルコース

(何段階か反応)

ピルビン酸

 

 

・・・と、かなり省略して説明していましたが、今回はこの間の説明になります。

 

 

「解糖系」で得られるのは、エネルギー物質「ATP」が2分子と、電子伝達体の「NADH」が2分子です。

 

 

 

ATP・・・2分子

 

NADH・・・2分子

 

 

そして、「グルコース」1分子から、「ピルビン酸」は2分子できます。

 

なので出発点は「グルコース」です。

 

 

①グルコース → グルコース6リン酸

 

以下がグルコースの構造です。

 

 

グルコース

 

 

まず、「グルコース」が、リン酸基を付けられる「リン酸化」という反応によって、「グルコース-6-リン酸」になります。

 

ただし、

 

解糖系の目的は「ATP」を得る為ですが、その為にはまず一番最初に「ATP」を1分子使います。

 

「ATP」を作る為に、「ATP」を使うわけです。世間ではこれを「投資」と言います。

 

そして、こちらがエネルギー物質「ATP」の構造です。

 

ATP(アデノシン三リン酸)

 

「アデノシン・トリ・ホスフェート / 和名:アデノシンリン酸」という名前の通り、リン酸基が3つ付いています。

 

 

「3があるなら他の数字もあるのか」と思われるでしょうが、当然あります。「トリ(3)」と、「ジ(2)」と、「モノ(1)」です。

 

 

 

リン酸1つ・・・AMP

 

リン酸2つ・・・ADP

 

リン酸3つ・・・ATP

 

 

今回登場するのは「ATP」と「ADP」です。前者が「エネルギーが蓄えられている状態」で、後者が「エネルギーを放出した状態」です。

 

以下の、「1と2の間」、「2と3の間」のところは、「高エネルギーリン酸結合」と言います。

 

 

ATPの高エネルギーリン酸結合

 

 

「ATP⇔ADP」の場合、3と2の間が結合する(ADPをATPに変換する)とエネルギーが蓄えられ、結合部分が外れる(ATPがADPに変換される)とエネルギーが放出される仕組みになっています。

 

生体はこのエネルギーを利用して生命活動を行なっているのです。

 

 

ATP(3) ⇔ ADP(2)

 

 

ちなみに、ATPに蓄えられたエネルギーの使用期限は短いので、合成されても、すぐに消費されます。そして再びエネルギーが蓄えられます。

 

 

それでは、話を「グルコース」に戻します。

 

「解糖系」では、まずこのATPの「リン酸基」が外れて、「グルコース」に付けられます。

 

グルコースとATP

 

 

すると、エネルギーを放出した「ATP」は、「ADP」となり、「グルコース」は「グルコース-6-リン酸」になります。

 

 

グルコース-6-リン酸

 

 

「グルコース」にはなかったリン酸がくっついています。

 

そして、この反応に使われる酵素は「ヘキソナーゼ」と言います。へきそ(hexo-)とは「6」のことで、六炭糖を指します。

 

「ヘキソナーゼ」のように、基質(元の物質)から何かを切り離して、それを別の基質にくっつける酵素のことを「転移酵素」と言います。

 

 

ただし、酸素と水素は別で、これらを転移させる酵素は「酸化還元酵素」と言います。

 

 

そして、「グルコース-6リン酸」は、次の反応へと進みます。

 

 

 

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②グルコース6リン酸 → フルクトース6リン酸

 

次に「異性化」という反応が起きます。「異性化反応」では、原子の種類や数は減ったり増えたりせずに、場所だけ変わります。

 

この反応で使われる酵素は、「グルコース-6-リン酸イソメラーゼ(異性化酵素)」です。

 

 

「グルコース-6-リン酸」は、「フルクトース-6-リン酸」に変化します。

 

 

フルクトース-6-リン酸

 

「グルコース-6-リン酸」も、C6 H13 O9 P。

 

「フルクトース-6-リン酸」も、C6 H13 O9 P なので、数は変わっていません。

 

「フルクトース-6-リン酸」は次の反応へ進みます。

 

 

 

③フルクトース6リン酸 → フルクトース1.6-ビスリン酸

 

 

次は再び「リン酸化」が起きます。つまり、投資をしなければいけないので、ここでもまたATPを使います。

 

フルクトース-6-リン酸とATP

 

 

この反応の酵素は、「ホスホフルクトキナーゼ」です。

 

これにより、「ATP」は「ADP」となり、「フルクトース-6-リン酸」は「フルクトース-1,6-ビスリン酸」になります。

 

 

フルクトース-1,6-ビスリン酸

 

 

リン酸を2つ手に入れました。

 

「フルクトース-1,6-ビスリン酸」は次の反応に進みます。

 

 

④フルクトース1.6-ビスリン酸 → ジヒドロキシアセトンリン酸 & グリセルアルデヒド三リン酸

 

これまで足したり入れ替えたりしてきましたが、次の反応は開裂です。これにより6炭糖が3炭糖に割れます。

 

この反応で使われるのは、水を加えることなく切断する「脱離酵素」で、「アルドラーゼ」と言います。大雑把ですが、だいたいこの辺りから真っ二つです。

 

 

フルクトース-1、6-ビスリン酸のアルドラーゼによる開裂

 

 

そうしてできたのがこちらの2つです。ただ割れただけでなく、配置も少し変わっています。

 

 

グリセルアルデヒド-3-リン酸とジヒドロキシアセトンリン酸

 

 

この2つは、原子の数や種類は同じですが、配置が違います。

 

「グリセルアルデヒド-3-リン酸」は次へ進むことができるのですが、「ジヒドロキシアセトンリン酸」はこの状態だと進めません。

 

 

なので、「ジヒドロキシアセトンリン酸」は、もう一度反応して「グリセルアルデヒド-3-リン酸」になります。

 

それが、次の反応です。

 

 

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⑤グリセルアルデヒド-3-リン酸 → ジヒドロキシアセトンリン酸

 

「ジヒドロキシアセトンリン酸」を「グリセルアルデヒド-3-リン酸」に変える酵素は、「トリオースリン酸イソメラーゼ」です。これによって異性化が起きます。

 

 

 

  • グルセルアルデヒド-3-リン酸

 

  • ジヒドロキシアセトンリン酸 → グリセルアルデヒド-3-リン酸

 

 

こうして、2つの「グリセルアルデヒド-3-リン酸」が生成されました。

 

 

2つのグリセルアルデヒド-3-リン酸

 

 

この反応によって2分子になってしまったので、これ以降は、グルコース1分子あたりの中間代謝物は2倍になります。

 

1分子だけ描きますが、後で計算する時に2倍にします。

 

というわけで「グリセルアルデヒド-3-リン酸」は、次の反応に進みます。

 

 

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⑥グリセルアルデヒド3リン酸 → 1.3-ビスホスホグリセリン酸

 

 

ここでは、新たな物質が登場するのでちょっとややこしくなります。その名は「NAD えぬえーでぃー」です。

 

 

酸化型NAD

 

 

正式名は、「ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド(NAD)」です。「脱水素酵素」の補酵素(サポート役)になります。

 

この「NAD」には、水素(のもつ電子)を預かる働きがあります。

 

 

このような化合物の事を「電子伝達体 でんしでんたつたい」と言います。

 

 

上のイラストは、「酸化型」といって水素を預かる前の状態です。

 

 

「酸化 さんか」とは、「電子を失う事」、「水素を失う事」です。

 

逆に、「電子を得る事」、「水素と化合する事」を「還元 かんげん」と言います。

 

 

そして、「酸化型」があるということは、「還元型」もあるということです。それが「NADH」です。

 

 

還元型NADH

 

 

「NADH」は還元型なので、水素(電子)を預かった状態です。どこかに水素がついていますので探してみて下さい。

 

 

実は「NAD → NADH」は、説明を省略している部分があります。詳しいことは「クエン酸回路」の記事でお話します。

 

 

それでは、話を「グリセルアルデヒド-3-リン酸」に戻します。

 

「グリセルアルデヒド-3-リン酸」を「1,3-ビスホスホグリセリン酸」にするには、「脱水素」と「リン酸化」という2つの反応が同時に起きます。

 

ここで使われる酵素は、「グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ」です。

 

 

「脱水素」を行なう酵素を「脱水素酵素」というのですが、英語だと「デヒドロゲナーゼ(de-hydrogen-ase)」です。

 

“hydrogen”は水素、“de”は外す、脱するという意味です。

 

 

そして、「リン酸化」も起きるので、パーツである「リン酸(Pi)」も必要です。

 

 

リン酸

 

 

流れは、

 

 

グリセルアルデヒド-3-リン酸とリン酸とNAD

 

 

「グリセルアルデヒド-3-リン酸」から水素が外れ、「NAD(酸化型)」に預けられます。

 

同時に、どこから表れたのか不明ですが、「リン酸」が「グリセルアルデヒド-3-リン酸」にくっつきます。

 

すると、「NAD」は「NADH(還元型)」となり、

 

 

1,3-ビスホスホグリセリン酸とNADH

 

 

「グリセルアルデヒド-3-リン酸」は「1,3-ビスホスホグリセリン酸」になります。

 

 

1,3-ビスホスホグリセリン酸

 

 

リン酸が2つになった「1.3-ビスホスホグリセリン酸」は次の反応に進みます。

 

 

 

⑦1.3-ビスホスホグリセリン酸 → 3ホスホグリセリン酸

 

ここでは「ホスホグリセリン酸キナーゼ」という転移酵素を使います。

 

「1.3-ビスホスホグリセリン酸」は、2つあるリン酸のうちの1つを「ADP」にあげます。

 

「ATP」の説明をした時に少しお話しましたが、こちらが「ADP」の構造になります。

 

ADP(アデノシン二リン酸)

 

「アデノシン・ジ・ホスフェート / 和名:アデノシンリン酸)」と読み、“Di(ジ)”というのは、数字の2です。

 

リン酸が2つあるということを表しています。

 

これに、更にリン酸が1つ加わると、「アデノシン・トリ・ホスフェート / 和名:アデノシンリン酸」、つまり「ATP」になるわけです。

 

もう一度言いますが、「ADP」から「ATP」になることで「高エネルギーリン酸結合」の部分にエネルギーが蓄えられます。

 

では話を戻します。

 

「ADP」は「1.3-ビスホスホグリセリン酸」からリン酸を1つもらいます。

 

1,3-ビスホスホグリセリン酸とADP

 

 

これで「ATP」が1つできました。

 

 

3-ホスホグリセリン酸とATP

 

一方、リン酸を譲った「1.3-ビスホスホグリセリン酸」は、「3-ホスホグリセリン酸」になりました。

 

 

3-ホスホグリセリン酸

 

 

「3-ホスホグリセリン酸」は次の反応に進みます。

 

 

⑧3ホスホグリセリン酸 → 2ホスホグリセリン酸

 

次は異性化です。原子の数や種類は変わらず、配置が変わります。

 

ここで使われる酵素は「ホスホグリセリン酸ムターゼ」です。それにより、「3-ホスホグリセリン酸」は「2-ホスホグリセリン酸」になります。

 

 

2-ホスホグリセリン酸

 

 

「2-ホスホグリセリン酸」は次の反応に進みます。

 

 

⑨2ホスホグリセリン酸 → ホスホエノールピルビン酸

 

この反応では、除去付加酵素の「エノラーゼ」が使われます。これによって「2-ホスホグリセリン酸」の脱水が起きます。

 

酸素1、水素2(つまり水分子)が脱離します。

 

その結果、「ホスホエノールピルビン酸」になります。

 

ホスホエノールピルビン酸と水分子

 

 

「ホスホエノールピルビン酸」は次の反応に進みます。

 

 

⑩ホスホエノールピルビン酸 → ピルビン酸

 

「ホスホエネールピルビン酸」にはリン酸がついています。これを「ADP」にあげて「ATP」を合成します。

 

使われるのは転移酵素の「ピルビン酸キナーゼ」です。

 

 

ホスホエノールピルビン酸とADP

 

 

「ADP」は、リン酸をもらって「ATP」になり、

 

 

ピルビン酸とATP

 

 

「ホスホエノールピルビン酸」は、リン酸を外したことで「ピルビン酸」になりました。

 

ピルビン酸

 

 

 

解糖系によって得られたもの

 

「解糖系」の流れを振り返ります。

 

2倍で計算しています。

 

1分子の「グルコース」から、10段階の反応を経て、2分子の「ピルビン酸」になり、

 

 

グルコースからピルビン酸

 

 

「グリセルアルデヒド3リン酸」から「1.3-ビスホスホグリセリン酸」になる反応で、水素(の持つ電子)を預かった「NADH」が2分子できました。

 

 

NADH2分子

 

 

この水素は、ミトコンドリアの内膜で起こる「電子伝達系」で使われます。

 

そして、目的の「ATP」は、「1.3-ビスホスホグリセリン酸 → 3ホスホグリセリン酸」の反応で分子、「ホスホエノールピルビン酸 → ピルビン酸」の反応で分子得られたので、合計分子ということになります。

 

 

しかし、最初に2分子投資しているので、それを引くと、「解糖系」で得られるATPは2分子ということになります。

 

 

ATP2分子

 

 

本記事の絵は、主に以下の動画を参考にしました。英語は分からないのですが、非常に丁寧に描かれていて感動しました。

 

動画の方が分かりやすいので、見る事をオススメします。

 

 

 

 

 

クエン酸回路(TCA回路)について分かりやすく説明してみたへ続く

 

 

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糖新生の仕組みについて分かりやすく説明してみた

栄養には、体内で「合成できるもの」と、「合成できないもの」があります。

 

そして、「体内で合成できないので、外から補わないといけない栄養素」のことを「必須〇〇〇」と呼びます。

 

必須脂肪酸がある「脂質」と、必須アミノ酸がある「タンパク質」は、常に食事で補う必要があります。

 

 

一方、「糖質」には必須糖質というのはありません。糖質は体内で合成することができるので、わざわざ食事から摂る必要はないのです。

 

 

糖質以外の物質から、糖質を合成する事を「糖新生 とうしんせい」と言います。

 

 

この「糖新生」が行なわれる場所は、主に「肝臓」、そして「腎臓」です。

 

 

本記事ではその合成が「どのように」行なわれているのか、シンプルに解説します。

 

 

 

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糖新生と解糖系

 

 

「糖新生」の流れを乱暴に言ってしまうと、エネルギー代謝の「解糖系」の逆行です。

 

 

分からない方の為に、「解糖系 かいとうけい」について簡単に説明します(※ご存じの方は飛ばして下さい)

 

 

「解糖系」とは、グルコース(ブドウ糖)を分解して、ATP(身体で使えるエネルギー)を産生する化学反応のことです。

 

 

ブドウ糖(グルコース)は、細胞の「細胞質基質 さいぼうしつきしつ」に到着します。

 

 

 

細胞質基質の解糖系

 

 

 

 

ここで以下のような反応が起き、エネルギー物質「ATP」が2個作られます。これが「解糖系」です。

 

 

 

 

グルコース

 

 

(何段階か反応)

 

 

ピルビン酸

 

 

 

以下の記事で細かく説明しています。

 

解糖系について分かりやすく説明してみた

 

 

で、「ピルビン酸」まで分解された後どうなるかというと、2パターンあります。

 

 

  • ミトコンドリアでの代謝をせず、「乳酸」を発生させる。

 

  • ミトコンドリアのマトリックスの中に入って「クエン酸回路」という反応が起き、次にミトコンドリアの内膜に進み「電子伝達系」という反応で、さらに多くの「ATP」を産生する。

 

 

その流れを図にするとこんな感じです。

 

 

嫌気的解糖と好気的解糖

 

 

 

右に進んだ場合、ミトコンドリアのマトリックス内の「クエン酸回路」では、このような順番で反応していきます。この部分は後で「糖新生」の説明でも登場するので、覚えておいて下さい。

 

 

 

クエン酸回路(TCA回路)

 

 

 

この「クエン酸回路」の後、ミトコンドリアの内膜で「電子伝達系」という反応が起きるのですが、本記事の趣旨からそれるので今回は説明しません。

 

 

ちなみに、ミトコンドリアの「マトリックス」と「内膜」の場所が以下になります。

 

 

 

解糖系とクエン酸回路と電子伝達系

 

 

 

それでは、「解糖系」と「クエン酸回路」の流れを頭に入れたうえで、本記事の本題である「糖新生」について説明していきます。

 

 

この説明は簡略化しているので、詳しくは以下の記事を参考にして下さい。

 

 

エネルギー代謝について分かりやすく説明してみた

 

 

また、エネルギー代謝で産生される「ATP」に関してはこちらをどうぞ。

 

 

ATP(アデノシン三リン酸)について分かりやすく説明してみた

 

 

 

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糖新生の流れ

 

 

さて、冒頭で、糖新生とは「解糖系」の逆行であると言ったので、もう一度エネルギー代謝の「解糖系」の部分に注目します。

 

 

便宜上、「解糖系」を以下のように簡単に説明することが多いのですが、実はこれ、かなり省略しています。

 

 

 

グルコース

 

 

(何段階か反応)

 

 

ピルビン酸

 

 

 

(何段階か反応)・・・の部分を省略せずに全部書くとこうなります。

 

 

 

グルコースからピルビン酸の代謝

 

 

 

※④から⑤の部分が分かりにくいので説明します。

 

 

「フルクトース-1.6-リン酸」は、「グリセルアルデヒド-3-リン酸」と、「ジヒドロキシアセトンリン酸」という2つの物質に変化します(※この変化に使われる酵素は「アルドラーゼ」です)。

 

 

このうち「ジヒドロキシアセトンリン酸」は、そのままの状態では次の反応に進めないので、「グリセルアルデヒド-3-リン酸」になります(※この変化に使われる酵素は「ホスホトリオースイソメラーゼ」です)。

 

 

こうして「グリセルアルデヒド-3-リン酸」は次の反応へ進みます。

 

 

「糖新生」は解糖系の逆行ではあるのですが、実は、この矢印の逆向きにそのまま進むことはできません

 

 

というのも、このようになっているからです。

 

 

 

糖新生の不可逆的な所

 

 

 

 

 

 

 

 

⑩のピルビン酸から、①のグルコースに向かって遡りたいところですが、上の図を見てもらったら分かるように、逆に進めない所が3ヶ所あります。

 

 

⑩から⑨の道、④から③の道、②から①の道です。

 

 

 

 

⑩~⑨:「ピルビン酸」  →  「ホスホエノールピルビン酸」

 

④~③:「フルクトース-1,6-ビスリン酸」  → 「フルクトース-6-リン酸」

 

②~①:「グルコース-6-リン酸」  →  「グルコース」

 

 

 

でも大丈夫です。

 

 

この3ヶ所は、「行き道とは別の方法」で進みます。

 

 

というわけで、次からは、目的地である「グルコース」になるまでの「糖新生」の基本的な流れについて解説します。

 

 

くどいですが、「糖新生」が行なわれるのは、肝臓(と腎臓)です。

 

 

 

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「ピルビン酸」からクエン酸回路を経由して「ホスホエノールピルビン酸」へ

 

 

まず、最初の⑩→⑨の反応です。

 

 

 

ピルビン酸からホスホエノールピルビン酸

 

 

 

進もうにも、いきなりこの状態ですから、⑨の「ホスホエノールピルビン酸」に行く為に、少々遠回りをします。

 

 

どうするのかというと、「クエン酸回路」を経由させるのです。

 

 

 

ピルビン酸とピルビン酸カルボキシラーゼ

 

 

 

図を解説すると、

 

 

1:「ピルビン酸」はまずミトコンドリアの中に入ります。

 

 

2:「ピルビン酸」は、「オキサロ酢酸」に変換されます。この変換の為に使われる酵素は「ピルビン酸カルボキシラーゼ」です。

 

 

3:次に「オキサロ酢酸」は「リンゴ酸」に変換されます。この変換の為に使われる酵素は「リンゴ酸デヒドロゲナーゼ」です。

 

 

4:「リンゴ酸」はミトコンドリアの外に出ます。

 

 

「オキサロ酢酸」は、ミトコンドリアの膜を通過する事ができませんが、「リンゴ酸」はミトコンドリアの膜を通過する事ができます。

 

 

 

オキサロ酢酸からホスホエノールピルビン酸

 

 

 

5:ミトコンドリアから脱出した「リンゴ酸」は、細胞質基質で、再び「オキサロ酢酸」に戻ります。この反応に使われる酵素も「リンゴ酸デヒドロゲナーゼ」です。

 

 

6:そして「オキサロ酢酸」は、⑨の「ホスホエノールピルビン酸」へと変換されます。この反応に使われる酵素は、「ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ」です。

 

 

この⑩→⑨の変化が一番ややこしいです。

 

以降の反応からはもう少しシンプルになります。

 

 

⑨→⑩の「解糖系」の時は、「ピルビン酸キナーゼ」という酵素で反応が進みます。

 

 

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ホスホエノールピルビン酸からグルコースまでの反応

 

 

もう2か所「一方通行」の所がありますが、それ以外のところは「解糖系」の逆向きに反応していきます。

 

 

「ホスホエノールピルビン酸」以降の流れを順番に解説していきます。

 

 

まずは、⑨→⑧の反応です。

 

 

⑨ホスホエノールピルビン酸 → ⑧2-ホスホグリセリン酸

 

 

⑧2-ホスホグリセリン酸

 

 

⑨ホスホエノールピルビン酸

 

 

⑨→⑧に変える酵素は、「エノラーゼ(別名:ホスホピルビン酸ヒドラターゼ)」です

 

 

⑧→⑨の「解糖系」の時の酵素も同じ「エノラーゼ」です

 

 

次は⑧→⑦の反応です。

 

 

 

⑧2-ホスホグリセリン酸 → ⑦3-ホスホグリセリン酸

 

 

⑦3-ホスホグリセリン酸

 

 

⑧2-ホスホグリセリン酸

 

 

 

⑧→⑦に変える酵素は、ホスホグリセリン酸ムターゼです。

 

 

⑦→⑧の「解糖系」の時の酵素も同じ「ホスホグリセリン酸ムターゼ」です。

 

 

次は⑦→⑥の反応です。

 

 

⑦3-ホスホグリセリン酸 → ⑥1,3-ビスホスホグリセリン酸

 

 

⑥1,3-ビスホスホグリセリン酸

 

 

⑦3-ホスホグリセリン酸

 

 

 

⑦→⑥に変える酵素は「ホスホグリセリン酸キナーゼ」です。

 

 

⑥→⑦の「解糖系」の時の酵素も同じ「ホスホグリセリン酸キナーゼ」です。

 

 

次は⑥→⑤の反応です。

 

 

⑥1,3-ビスホスホグリセリン酸 → ⑤グリセルアルデヒド-3-リン酸

 

 

 

 

 

 

⑥→⑤に変える酵素は「グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ」です。

 

 

⑤→⑥の「解糖系」の時の酵素も同じ「グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ」です。

 

 

「グリセルアルデヒド-3-リン酸」 → 「ジヒドロキシアセトンリン酸」の酵素は、「解糖系」の時と同じ「ホスホトリオースイソメラーゼ」です。

 

 

次は⑤→④の反応です。

 

 

 

⑤グリセルアルデヒド-3-リン酸、ジヒドロキシアセトンリン酸 → ④フルクトース-1,6-ビスリン酸

 

 

 

 

 

⑤→④に変える酵素は「アルドラーゼ」です。

 

 

④→⑤の「解糖系」の時の酵素も同じ「アルドラーゼ」です。

 

 

次は④→③です。

 

 

 

④フルクトース-1,6-ビスリン酸 → ③フルクトース-6-リン酸

 

 

④→③は、2つ目の「一方通行」地点です。

 

 

しかし、⑩→⑨の時のように複雑ではなく、いたってシンプルです。

 

ここでは、行き(解糖系)とは違う酵素を使うことによってクリアします。

 

 

 

③フルクトース-6-リン酸

 

 

④フルクトース-1,6-ビスリン酸

 

 

 

③→④の「解糖系」の時は、「ホスホフルクトキナーゼ」という酵素で反応が起きますが、

 

④→③の「糖新生」の時は、「フルクトース-1.6-ビスホスファターゼ」という酵素で反応が起きます。

 

 

 

次は③→②の反応です。ここは、「解糖系」と「糖新生」の酵素が同じです。

 

 

 

③フルクトース-6-リン酸 → ②グルコース-6-リン酸

 

 

②グルコース-6-リン酸

 

 

③フルクトース-6-リン酸

 

 

③→②に変える酵素は、「グルコース-6-リン酸イソメラーゼ」です。

 

 

③→②の「解糖系」の時の酵素も同じ「グルコース-6-リン酸イソメラーゼ」です。

 

 

②→①は、最後の「一方通行」地点です。

 

 

 

②グルコース-6-リン酸 → ①グルコース

 

 

こちらもシンプルで、先ほどと同じように行き(解糖系)とは違う酵素を使ってクリアします。

 

 

 

①グルコース

 

 

②グルコース-6-リン酸

 

 

 

①→②の「解糖系」の時は、「ヘキソナーゼ」という酵素で反応が起きますが、

 

②→①の「糖新生」の時は、「グルコース-6-ホスファターゼ」という酵素で反応が起きます。

 

 

ちなみに、「糖新生」が行なわれる「肝臓」と「腎臓」は、この「グルコース-6-ホスファターゼ」の活性が強いです。

 

 

 

 

 

これで⑩の「ピルビン酸」から、目的の①の「グルコース」まで辿り着けたことになります。

 

 

ここまでの流れが頭に入ったところで、次は「糖新生」に使われる材料が、それぞれどのようにして合成されていくのか、材料別にお話します。

 

 

 

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糖新生の材料

 

 

wikipediaによると、糖新生の材料は、

 

 

『Wikipedia 糖新生』より引用

 

 

糖新生(とうしんせい、gluconeogenesis)とは、飢餓状態に陥った動物が、グルカゴンの分泌をシグナルとして、ピルビン酸、乳酸、糖原性アミノ酸、プロピオン酸、グリセロールなどの糖質以外の物質から、グルコースを生産する手段・経路である。

 

 

ピルビン酸、乳酸、糖原性アミノ酸、プロピオン酸、グリセロールなど・・・とあるので、材料は他にもたくさんあるのかもしれません。

 

 

ただし、メインとなるのはタンパク質を分解した「アミノ酸」です。食事から得られる場合はそれを使い、足りない場合は筋肉を分解して取り出します。

 

 

体内に蓄えられた中性脂肪から得られる「グリセロール」、そして、嫌気的解糖で生じた「乳酸」も糖新生の材料として有名です。

 

 

ここでは、この3つについて解説していきます。

 

 

  • アミノ酸(のうち糖原性アミノ酸)

 

  • グリセロール

 

  • 乳酸

 

 

 

これらの材料は、いずれも、血液中に放出された後、肝臓に運ばれて「糖新生」が行なわれます。

 

 

 

まず、「糖原性アミノ酸」から解説していきます。

 

 

 

糖原性アミノ酸を材料にグルコースを合成する

 

 

アミノ酸は全部で20種類あります。

 

その中で「グルコース(糖質)を合成することができるアミノ酸」が18種類あります。

 

これを「糖原性(とうげんせい)アミノ酸 」と呼びます。

 

その名前がこちらです。

 

 

  • アスパラギン

 

  • アスパラギン酸

 

  • アラニン

 

  • アルギニン

 

  • イソロイシン

 

  • グリシン

 

  • グルタミン

 

  • グルタミン酸

 

  • システイン

 

  • スレオニン(トレオニン)

 

  • セリン

 

  • チロシン

 

  • トリプトファン

 

  • バリン

 

  • ヒスチジン

 

  • フェニルアラニン

 

  • プロリン

 

  • メチオニン

 

 

これに「リシン」、「ロイシン」を加えると全部で20種類になります。

 

 

血流に乗って肝臓に到着した「糖原性アミノ酸」は、「ピルビン酸」、「α – ケトグルタル酸」、「スクシニルCoA」、「フマル酸」、「オキサロ酢酸」のつのうちのどれかに変化します。

 

 

そして、それぞれの地点からグルコースに向かって進みます。

 

 

 

糖原性アミノ酸を材料にした糖新生の経路

 

 

 

  • トリプトファン、アラニン、スレオニン、グリシン、セリン、システインの場合は、「ピルビン酸」から先ほど説明した流れで反応が進みます。

 

 

  • アルギニン、プロリン、ヒスチジン、グルタミン、グルタミン酸の場合は、「クエン酸回路」の「α-ケトグルタル酸」に合流し、「リンゴ酸」まで進み、ミトコンドリアの外に出て続きの反応が進みます。

 

 

  • メチオニン、イソロイシン、スレオニン、バリンの場合は、「クエン酸回路」の「スクニシルCoA」に合流し、「リンゴ酸」まで進み、ミトコンドリアの外に出て続きの反応が進みます。

 

 

私が持っている本ではスレオニンは「スクニシルCoA」に合流するとなっていますが、Wikipediaでは「ピルビン酸」となっています。

 

『Wikipedia 糖原性アミノ酸』

 

 

  • フェニルアラニン、チロシンの場合は、「クエン酸回路」の「フマル酸」に合流し、「リンゴ酸」まで進み、ミトコンドリアの外に出て続きの反応が進みます。

 

 

  • アスパラギン酸とアスパラギンの場合は、「クエン酸回路」の「オキサロ酢酸」になるので、「リンゴ酸」に進み、ミトコンドリアの外に出て続きの反応が進みます。

 

 

次は「グリセロール」について解説します。

 

 

 

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グリセロールを材料にグルコースを合成する

 

 

中性脂肪を分解すると、「脂肪酸」と「グリセロール」が生成されます。

 

このうち「糖新生」の材料にできるのは「グリセロール」です。「脂肪酸」は糖新生を行なう為のエネルギー源にはなりますが、糖新生の材料にはなりません。

 

 

 

 

 

 

さて、材料の「グリセロール(別名:グリセリン)」ですが、以下のような流れでグルコースが合成されます。

 

 

 

グリセロールを材料にした糖新生の経路

 

 

肝臓に運ばれた「グリセロール」は、まず「グリセロール-3-リン酸」に変化します。この変化に必要な酵素の名前は「グリセロールキナーゼ」です。

 

そして、「グリセロール-3-リン酸」から「ジヒドロキシアセトンリン酸」に変化した後は、最初に説明した流れでグルコースへと変わっていきます。

 

 

次は「乳酸」です。

 

 

 

 

 

 

乳酸を材料にグルコースを合成する

 

 

「乳酸」とは、「ピルビン酸」から生じた物質です。

 

 

 

「乳酸」は処理できる量であれば問題ないのですが、pH5程度の酸性物質なので、蓄積すると体質が酸性に傾くので、癌等の原因になります。

 

 

余命わずかの末期癌患者が退院できたのは病院での栄養療法のおかげだった!

 

 

「乳酸」は血液にのって肝臓に運ばれた後、「ピルビン酸」に変換されます。この変換に使われるのは「乳酸脱水素酵素」です。

 

 

 

「ピルビン酸」から先は同じ流れです。

 

 

 

乳酸を材料にした糖新生の経路

 

 

 

糖新生に使われるATP

 

脂肪酸のところで少しお話しましたが、糖新生を行なうためには、材料だけではなくエネルギーも必要です。

 

グルコース1分子を合成するために必要な「ATP(エネルギー物質)」の量は、どの地点からスタートするかによって変わってきます。

 

 

ピルビン酸から・・・6分子のATP

 

クエン酸回路から・・・4分子のATP

 

グリセロールから・・・2分子のATP

 

 

 

糖質制限をしているのに血糖値が高いのは、糖新生が原因かもしれませんへ続く

 

 

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