- 投稿 2018/07/28
- 分かりやすいシリーズ - 食事
「植物性の食品」に対して健康的なイメージを持たれている方は多いです。
しかし、穀物や野菜や果物には、体にダメージを与える糖質が多く含まれています。
その上、人体を構成しているタンパク質の質や量も、動物性食品に比べて劣ります。
従って、このブログでは「植物性の食品を控えて、動物性の食品を摂取する方が健康的だ」...と、主張してきました。
これは常識に反する意見なので、「動物性食品は血液を酸性化させる」とか、「肉は血液をドロドロにするのではないか」といった心配をされる方がでてきます。
よく、肉食は血液を酸性化させるとか、血液がドロドロになるとネットでは書かれています。これに関してはどうお考えでしょうか。
血液が酸性化するのは、乳酸が蓄積するからで、でもそれは糖を取るほうが乳酸が蓄積して酸性化しやすいと思うし、血液がドロドロになるのは血中コレステロールが多くなるからで、でも摂取したコレステロールは血中コレステロール値とは関係ないって聞きますし・・・
こう考えると肉食は問題ないと感じるのですが、肉は酸性食品とも言われますよね。
ここら辺はどう解釈しておられるのでしょうか。よろしくお願いします。
このての質問はかなり多いです。
私も糖質制限をするまでは「バランスの良い食事」をしていましたし、食べる割合としては野菜の量が非常に多かったです。「肉を食べたら、野菜は倍食べた方が良い」...と大真面目に思っていました。
それは、「肉は酸性食品で、野菜のほとんどはアルカリ性食品だ」という考えが影響していたからでもあります。
なので、同じ心配をする人の気持ちはよく分かります。
本記事では、「食品」と「体のpH」の関係について細かくみていきます。
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食品と体のpHは定義が違う
「食品の性質」が、そのまま「体の性質」に影響を与えるのかどうか
...という話をする前に、先に理解しておくべき事があります。
健康や栄養の話題では、「酸性」、「アルカリ性」...といった単語が頻繁に登場します。
しかし、「体の酸性、アルカリ性」という定義と、「食品の酸性・アルカリ性」という定義は違います。
この2つは、以下の様に判断基準が違うので間違えないようにして下さい。
体・・・・酸性・アルカリ性(pHで判断する)
食品・・・酸性・アルカリ性(pHで判断しない)
前者は「pH」で判断しますが、後者は「食品そのもののpH」で判断しているわけではありません(これについては後で説明します)。
で、このうちよく聞くのが「体が酸性化する」という言葉です。
まずは、分かりやすいこちらの説明からします。
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体のpHは均一ではない
体が酸性かアルカリ性か...の判断は、単純に「pH」で判断します。
この点に関してはシンプルなのですが、注意も必要です。
「〇〇によって体が酸性化する~」...という話はいたるところでされています。しかし、この主張は2通りあります。
- 酸性食品を食べると血液が酸性化する
- 酸性食品を食べると尿が酸性化する
「血液」か「尿」かの違いです。この2つは違いますし、同じように扱うと混乱するので気をつけて下さい。
体のpHは全て同じではありません。以下の図を見て下さい。数字が低いと「酸性」、高いと「アルカリ性」です。
『水素と電子の生命 / 著者:生体物理医学者 山野井昇(138p)』より引用
体液の働きによって、「正常なpH」が違います。
過去に癌についての記事中で、「乳酸」によって酸性化するとヤバイ...と書いたのですが、それは血液のpHの事です。
【注意】癌の本質を理解していないと症状が悪化する治療法を選択します
そして、以下が「血液のpH」と「健康状態」です。ちなみに、本の図に記載されている「血液のpH」は、7.36~7.44になっていました。
- pH 7.35 ~ pH 7.45 ・・・正常
- pH 7.3 以下 ・・・ミトコンドリアの機能低下
- pH 7.1 以下 ・・・死の危険
このように、人間が生きていく為には「血液のpH」を、狭い範囲の中で維持する必要があります。
ですが、血液と、尿のpHは別です。
今後、「酸性に傾く」というセリフが出た時は、どこの体液について話しているのかに注目するようにして下さい。
よく「体を酸性に傾ける」と表現されていますが、部位によってpHが違うのに「体のどの部分か」がハッキリ書かれていない文章は多いからです。
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「血液が酸性化する」と「尿が酸性化する」の違い
では次に、よくある「酸性食品によって血液が酸性化する」という意見と、「酸性食品によって尿が酸性化する」という意見の特徴を書いておきます。
肉(酸性食品)を食べると血液が酸性化すると主張しているケース
- 断食、ヨガ、玄米菜食、陰陽論を支持している
- 玄米菜食で生じるであろう大量の乳酸による血液の酸性化には触れない
ちなみに、彼らは「肉食によって血液がドロドロになる」と語る事が多いです。これは質問をされた読者さんも気にされていたので、ちょっとここで回答しておきます。
「血液ドロドロ」の主な原因は高血糖です。
糖質の多い穀物、野菜、果物の摂取によって起こります。肉は直接は血糖値を上げません。
『横ちゃんのきまま日記 血糖値の上昇が免疫力の低下を招く』より引用
萩原 敦さんのFBより転載
~血糖値の上昇が免疫力の低下を招く~
(血糖値の数値から客観的な免疫力評価の数値を探る)
英語圏の文献で、我々の免疫力の客観的な評価をする場合に、lymphocytic index(リンパ球指数)とかphagocytic index(食細胞指数)なる指標を用い、血糖値の上昇値と関連付けて、記述されていることをよく見かける。
この「食細胞指数」や「リンパ球指数」という言葉自体、我が国ではあまり一般的ではないようです。
(中略)
たとえば、
「血糖値が120を超えると食細胞指数的な免疫力の評価をすると、約75%の免疫力がダウンする。」
この説は、ライナス・ポーリング博士が、はじめて世に知らしめた説だそうです。
ポーリング博士も研究に値する人物です。後日、改めて、彼についての言及もします。
つい先ごろ、比嘉さんという方のFBで、高血糖の赤血球を映像にして投稿されていましたが、その内容は、ひじょうに素晴らしいもので、血糖値が上昇すると、赤血球同士がくっついて、「連携を組み」、血管の中で、あろうことか、「血流をせき止め」、「血流を立ち往生」させることを示していました。
となると、免疫力の要である「白血球(食細胞やリンパ球他)」も「赤血球の通せん坊」にあい、免疫力を発揮できなくなる云々と述べていました。
この血糖値120と言う数値が、血流を悪化させる「赤血球通せん坊」作戦が、効果を発揮し、顕著になる数値(ボーダーライン)なんだろうと思います。
そして、「血液がドロドロになる」という定義がこちらに分かりやすく書かれています。
『テラヘルツ健康有効波が見つかった!! / 共著:久保田享、荒木賢治』より引用
まず、「サラサラ」や「ドロドロ」とは血液の状態を表している言葉であり、血液をイメージしやすいように作られた表現です。
テレビや雑誌などのメディアによって、分かりやすい印象を与える言葉として使われたのが始まりです。
血液が「サラサラ」とは、赤血球の変形能力が高い状態、すなわち正常な赤血球の状態のときのことを指します。
血液が毛細血管の中に、状態を変形させながら血管の中をスルスルと流れることを意味しています。
また、血液が「ドロドロ」とは、赤血球の変形能力の低下やその他の原因などにより、毛細血管に血液がスムーズに流れない状態(ルロー状態)を意味します。
血液がドロドロになると血流が悪くなり、細胞内に酸素不足や栄養不足などが生じて、次のようなさまざまな症状が起きてきます。
・疲れやすい、疲れがとれない
・足のむくみがとれない
・肩こり、腰痛がひどい
・手足の冷えが酷い
・寝付きが悪く、よく眠れない
・生理痛がひどい
・肌あれが続いている
・抜け毛が多い
・目の充血、クマができやすい
(89~91p)
ここで、「肉食が血液をドロドロにする」可能性についてもお話しておきます。
赤血球の変形機能が正常だと「サラサラ」、機能が低下すると「ドロドロ」です。
この赤血球の変形機能が低下する原因に「マグネシウム不足」があります。
肉を食べると、その代謝にマグネシウムが必要です。
その為、肉を過剰摂取するとマグネシウムが不足します。糖質制限をしている人で、こむらがえりが起きたり、便秘になる事があるのはこの為です。
マグネシウムが不足する事によって、赤血球の変形能が低下して、血液がドロドロになる事ならあると思います。
また、赤血球には集まる傾向があります。
マグネシウムが不足すると、この傾向が高まって、より集まりやすくなるのです。こうなると血小板が血栓を作りやすくなります。
- 赤血球の変形能の低下
- 赤血球の凝集能の亢進
で、マグネシウムは骨に多く含まれています。
骨を食べずに肉だけを食べれば、マグネシウム不足で血液がドロドロになる...というなら間違いではありません。
しかし、本来であれば動物性食品だけでも摂取できるので、「肉が悪い、動物性食品が悪い」というのは適切ではありません。骨を食べる習慣がない事が問題なので、「動物性食品の全体を食べない事によるマグネシウム不足が悪い」と言うべきです。
一応言っておくと、マグネシウムは、「過剰な糖分の摂取」、「食品添加物の摂取」、「重金属曝露」によっても不足します。
つまり、肉を制限していなくても誰がなってもおかしくありません。
酸性食品で酸性化するのは尿のpHと主張しているケース
- 高尿酸血症、痛風等の対策
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酸性食品とアルカリ性食品の定義と歴史
ここまでは、「体のpH」についてと、「pHは同じではないので、どこの場所の性質について述べているのか把握するべき」だと説明してきました。
ここからは「食品の酸性・アルカリ性」の定義について説明します。
冒頭でも言いましたが、「体の酸性・アルカリ性」と「食品の酸性・アルカリ性」は判断基準が違うので気をつけて下さい。
食品の性質が、酸性かアルカリ性かは、「食品そのもののpH」ではなくて「含まれているミネラル」で判断しています。
『痛風治療ガイド アルカリ性食品って一体何?積極的に摂るべき理由とは?』より引用
アルカリ性や酸性と聞くと、学校で習ったpH(ペーハー)を連想します。
しかし、アルカリ性食品か酸性食品かの判定は食品そのもののpHではなく、食品に含まれる「ミネラル」が酸性かアルカリ性かで判断します。
つまり、リンや硫黄を含む食品は「酸性」、ナトリウムやカリウム、カルシウム、マグネシウムを含む食品は「アルカリ性」となります。
よく「酸性食品の摂り過ぎで血液が酸性になるからよくない」などと聞きますが、それは間違った情報です。
酸性食品やアルカリ性食品を食べたからといって血液のpHがどちらかに傾く事はありません。
しかし、尿は食べる食事内容によってpHが変化します。
尿が酸性に傾くほど尿酸が排泄しにくくなりますので、高尿酸血症の人はアルカリ性食品を積極的に摂る必要があります。
「酸性食品」がpHを酸性に傾けるのは、血液ではなく尿だと書かれています。
× 酸性食品は血液のpHを酸性に傾ける
〇 酸性食品は尿のpHを酸性に傾ける
その「酸性食品」の判断はこうです。
例えば、梅干を「リトマス試験紙」で調べると赤くなるので、科学的には「酸性」です。
しかし、梅干を燃焼させると、残ったミネラルはアルカリ性を示すので、栄養的には「アルカリ性」になってしまいます。
判断基準が違うのなら呼び方をなんとかしろと言いたくなります。実に紛らわしいです。
あえて混乱するような名称や定義のままにしたり、曖昧にしてイメージで語られる事が多いので、インチキ臭いです。
そして、以下が「体内に入ると酸性を示すミネラル」と「体内に入るとアルカリ性を示すミネラル」です。
ちなみに、測定方法はこうです。
測定は、食品を燃やした灰を水中に入れて溶出成分を含む水溶液を調製し、その水溶液のpHを計測する。
「食品そのもののpH」ではなく、「燃やした灰を溶かした水溶液のpH」を測るのです。
この方法で食品を測定するとこうなります。
アルカリ性食品
野菜(ほうれん草、ゴボウ、サツマイモ、ニンジン、里芋、キュウリなど)、果物(メロンなど)、海藻(ひじき、ワカメ、昆布等)、キノコ、大豆製品、梅干し、牛乳などナトリウム・カルシウム・カリウム・マグネシウムを含む食品
酸性食品
肉類(豚肉、牛肉、鶏肉など)、魚類、卵、砂糖、穀類(米、酢、小麦等)など
硫黄やリンを多く含む食品
さらに以下のように記述されています。
2010年時の管理栄養士の国家試験を目標とした教科書である『新しい臨床栄養学』の5版では、主に動物性食品を酸性食品に、主に植物性食品をアルカリ性食品に分類している。
肉を悪者にしたい人達が大喜びしそうな分類ですね。
ですが、矛盾もあります。
「砂糖」は乳酸を発生させるから酸性食品の扱いになっています。
女子栄養大学出版部の『酸とアルカリ』では、砂糖は体内で酸性の乳酸を作るという根拠によって酸性食品に分類している。
「乳酸が血液を酸性に傾ける」ということを知っているからこそ、「砂糖」を酸性食品のカテゴリーに入れているのです。
しかし、だとしたら全体的におかしな話になります。
ブドウ糖(糖質)を分解する時に、代謝しきれずに生じた燃えカスが「乳酸」です。
「アルカリ性食品」に属しているサツマイモ、ニンジン、里芋も高糖質なので、代謝し切れなければ、乳酸を発生させる食品です。
ちなみに、それぞれの糖質量です。
- サツマイモの糖質・・・100gあたり29.7g
- ニンジンの糖質・・・100gあたり6.5g
- 里芋の糖質・・・100gあたり11g
- ご飯の糖質・・・茶碗一杯(約150g)あたり55g
ご飯ほどではないですが、根菜類は糖質が多いです。
それなのに何故、「乳酸=砂糖だけ」みたいな扱いなのでしょうか。
乳酸が発生するのは砂糖だけではありません。穀物も、野菜も、高糖質なので、同じ理由で血液を酸性化させる食品です。
この半端な判断基準も胡散臭いです。
そして、「食品の酸性・アルカリ性」の定義の出処がこちらです。
スイスの生理学者、グスタフ・フォン・ブンゲ(ドイツ語版)による、肉を食べると含硫アミノ酸が硫酸に変化し、体組織を酸性にするのでアルカリ性のミネラルを摂取する必要があると主張し、日本でも酸性・アルカリ性の議論が行われるようになった。
日本では、1990年代には主張を裏付ける実験を引用しないまま、分類は無意味だという主張が重んじられた。
高橋久仁子、左巻健男は、無意味だという説を一般書にて大衆に示してきた。
一方2007年に世界保健機関(WHO)は、タンパク質中の含硫アミノ酸、メチオニン、システインの酸が骨のカルシウムを流出させるため骨の健康に影響を与えるため、カリウムを含む野菜や果物のアルカリ化の効果が少ないときカルシウムを損失させるため骨密度を低下させると報告したし、2010年の日本の管理栄養士の国家試験のテキストはこの分類を掲載している。
医学的な研究は、骨や、高齢者の筋肉量の保存に関わり、尿路結石、痛風との関係を示してきた。
肉に多く含まれている「メチオニン」、「システイン」の酸について書かれています。これがあるから、肉は食品としては「酸性食品」に属することになります。
ここで語られている「酸」とは、アミノ酸を分解した後の性質、つまり、「食品の栄養的」には酸性ということだと思います。
ちなみに、「持っている電荷」によってアミノ酸を分類する時は、以下の3つに分けられます。
- 中性アミノ酸
- 酸性アミノ酸
- 塩基性アミノ酸
この分類の方法では、分解する前だからなのか、「メチオニン」や「システイン」は「中性アミノ酸」になっています。
ここで、肉を食べたら酸性食品になるとする根拠の部分を要約しておきます。
肉に多く含まれている含硫アミノ酸を摂取する
↓
硫酸に代謝される
↓
体組織を酸性化させる
次は、問題になっている「含硫アミノ酸」に焦点を当てます。
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肉に多く含まれている含硫アミノ酸とは
「タンパク質」はアミノ酸が繋がってできています。そのアミノ酸は20種類です。
で、「含硫(がんりゅう)アミノ酸」とは、「構造の中に硫黄原子があるアミノ酸」の事です。
だから、含む・硫黄・アミノ酸と書きます。
例えば、メチオニン、システイン、ホモシステイン等があります。
このうち、「メチオニン、システインなどの酸」が骨のカルシウムを流出させる...という事だそうです。
『医療法人 弘鳳会 専門医のコラム 牛乳と骨粗鬆症③』より引用
牛乳は骨粗鬆症をかえって助長!
タンパク質を構成するアミノ酸の中に、メチオニン・システインなどの含硫アミノ酸があり、動物性タンパク質は植物性タンパク質に比べてこれらの含硫アミノ酸を多く含みます。
含硫アミノ酸は分解されて最終的に硫酸イオンとなり、体液の酸・塩基平衡を酸性側に傾けるのです。
酸性になった体液をアルカリで中和して酸・塩基平衡を保たなければならず、中和に用いられるアルカリ源はカルシウムです。
体内のカルシウムの99%は骨に存在します。中和にはもっぱら骨のカルシウムが使われることになります。
実際、動物性であれ植物性であれ、タンパク質の摂取量が増えると尿中に排泄されるカルシウムが増えることは、1970年代に行われた代謝実験で報告されています。
こちらは「体液」が酸性化すると書いてあります。どの体液でしょうか。
一方、以下では「尿」が酸性化すると書いてあります。
『コンディショニングのスポーツ栄養学 著者: 樋口満』より引用
動物性たんぱく質(肉、魚など)には含硫アミノ酸(メチオニンやシステイン)が多く含まれている。
動物性たんぱく質を大量に摂取すると、アミノ酸の分解により、尿中のリン酸塩、硫酸塩が増加し、尿が酸性化する。
そのため、カルシウム再吸収が抑制され、尿中カルシウムが増加し、尿路結石や骨粗鬆症などのリスクも高まる。
骨のカルシウムを溶かすのは、体を血液の酸性化から守る為で、体の防衛システムの一種です。
最後は血液が酸性化する事について書かれています。ということは、「尿」と「血液」の両方を酸性化するのでしょうか...。
ハッキリしませんね。
血液が酸性化する事によるカルシウムの変化
酸性化するのがどちらなのか曖昧なのですが、
とりあえず、血液が酸性化して、それを中和する流れを説明します。
血液が酸性化する
↓
骨からカルシウム(アルカリ性)を溶かして(脱灰)血液に送り込む
↓
血液を中和する
↓
カルシウムは再び骨に戻る(再石灰化)
「脱灰 = 再石灰化」であれば問題ありません。
しかし、度が過ぎると不具合が起きます。
ずっと酸性だと、「脱灰 > 再石灰化」状態になります。
すると、大量のカルシウムが血液に留まり慢性化します。そうなると、骨のカルシウムは減りますし、さらには溶けたカルシウムが血管に付着して「動脈硬化」の原因になります。
そして、それ以外にも様々な慢性疾患の原因になります。酸性化するのは良くありません。
ただし、この理屈は、あくまでpHを7.35 ~ 7.45に保たなければならない「血液」が酸性化した場合の話です。
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どこを酸性化するのかが曖昧
「含硫アミノ酸」を分解してできた「硫酸」は、血液によって運ばれる物質の一つなのですが、それで血液が酸性化する...という部分の具体的な説明はみつかりません。
「硫酸」について書かれている事は、例えば以下です。
『よくわかる生理学の基本としくみ / 著者:札幌医科大学 医学部教授 當瀬規嗣』より引用
ゴミは水に溶かして
細胞が出す代表的な代謝産物には、酸素の消費の結果出てくる二酸化炭素のほか、タンパク質やアミノ酸を分解することで生じる尿素や硫酸など、それに、DNAやATPなどに使われる核酸を分解して生じる尿酸などがあります。
これらの物質は、細胞から血液に出されてきます。
したがって、ゴミは、血液によって体中から回収されているわけです。
血液は、なんと、ゴミ収集車の役わりをしているのです。
血液は、あくまで収集をしているだけなので、どこかに捨てなければなりません。
一つのゴミ処理場は、肺です。ここで二酸化炭素がだされることを、第3章でお話しました。しかし、他の物質は、気体にならないので、肺からは出ません。
気体にならないゴミを除去するのが、腎臓の役わりです。つまり腎臓は、血液専用の浄化装置だということです。
(101~102p)
「細胞の代謝産物」がゴミ扱いである事と、その行方が説明されています。
「硫酸」が血液によって回収されることは確かですが、それによって血液が酸性化する...といった記述は見当たりません。
結果的に尿として排泄するから、血液のpHが影響を受けないのかもしれません。
『Wikipedia 尿』より引用
尿は血液中の不要物や有害物、新陳代謝の老廃物などを体外へ捨てるために腎臓で濾過されて生産される。
このため、身体状態を反映して水素イオン指数 (pH) や成分が変化することが知られており、内科の診断では主要な検査対象となる。
血液やリンパ液、組織液、細胞液などのpHは、ホメオスタシス(恒常性維持機能)によって通常pH7.4±0.05に維持されている。
一方、尿は体液ではないため、pHはある程度の範囲で変動する。
体内からミネラルを補充したり、尿に余分なミネラルを排出することで血液や体内のpHが保たれているので、骨や尿は摂取する食品の影響を受ける。
尿はpH4.4~8.0の範囲で変化する。
尿は体液ではない...ということは、酸性化するのが「体液」と記述されている場合は、「血液」の事だと受け取るべきなのでしょうか?
以下は、食べ物のpHは、血液には影響しないと書かれています。
『緑の中の小さな家 (Pure Food Pure Body) 『肉を食べたら、体が酸性になる』 のうそ』より引用
食べ物のPHは尿のPHには影響するが、血液のPHには影響しないのです。
血液のPHを一定に保っているということは、人間の体にとって非常に大切なことなのです。
もし、血中PH バランスが、正常値から外れてしまったら、あなたの細胞は動きを止めてしまい、すぐに死に向かってしまうのです。それゆえ、体はいくつものメカニズムを駆使して、体のPHバランスを制御しているのです。このことは、酸塩基恒常性と呼ばれています。
こういうわけで、幸運にも、私たちが食べる食べ物で、血液のPHバランスを変えるなんてことができるわけないのです。つまりは、食べ物は、血液のPHを変えることができない、以上!って感じですね。
でも、食べものは尿のPHを変えることができます。
それは、逆に、血液のPHを一定に保つために、体の制御システムが働き、尿から、余計な酸性物質を出しているからなのですね。
大きなステーキを食べて、数時間後には、体は、酸性物質を体のシステムないから排除するために、いつもより多くの酸性物質を尿から出しているであろうと考えられます。
言われていることとしては、尿のPHというものは、体全体的なPHバランスや、健康度を図るのには、ほとんど、指標にならないということです。
尿のPHというのは、食べ物だけではなくて、非常にたくさんの要因で変化するものなのです。
ここまでをまとめます。
- 「食品の性質」によって酸性化するのは、「血液」ではなく「尿」
- 「血液のpH」は、「食品の性質」によって左右されず、恒常性維持機能でコントロールされている
- 「含硫アミノ酸」を代謝した時に発生する「硫酸」は体液を酸性化させるが、それがどこか曖昧
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含硫アミノ酸に関する情報は少ない
「肉を食べると酸性化する」...という話は、
「どこが酸性化するのか」という事と、「含硫アミノ酸」がポイントだと思います。
しかしながら、もっと具体的に書かれている情報が今のところ見つかりません。
ネットで検索すると、同じような事を書いている記事がいくつか見つかったのですが、「情報量」や「曖昧さ」や「話の流れ」が似ているので、元ネタが同じ可能性があります。
「どこが酸性化するのか」の説明は、紹介したように、情報源によってバラバラです。
また「含硫アミノ酸」と、分解して生じた酸についての情報はもっと少ないです。
Wikipediaにも、「含硫アミノ酸」についての記述はほとんどありません。なので、それを分解した成分の性質について探すのはもっと難しいです。
今のところ、私が持っている生化学の本、図書館で借りた本を探してみても、「含硫アミノ酸の分解」について詳しく書かれていませんでした。
もっと難しい本や英語の情報なら書いてあるのかもしれませんが...。
私としては、もう少し具体的な事が知りたいです。
ただし、無駄に複雑な文章はインチキを誤魔化している可能性が高いので、「新聞が読める人であれば誰でも理解できる文章」で書いてある事が条件です。
「含硫アミノ酸は良くない」と主張している人達は、この状況で、一体どうやって元の情報を得たのか謎です。
多くの人が、軽々しく「肉は酸性食品だから食べ過ぎないようにしよう」と言っているので、もっと簡単に手に入る情報だと思っていました。
また、疑問もあります。
何故、20種類あるアミノ酸のうち、「含硫アミノ酸」を分解して生じた酸だけが強調されているのでしょうか?
アミノ酸は「含硫アミノ酸」だけではありません。
当然、肉を食べたら「含硫アミノ酸」以外のアミノ酸も食べる事になります。
「他のアミノ酸」が分解された後の性質はどうなるのかが気になります。
仮に「他のアミノ酸」が分解された時に、酸性ではなくアルカリ性だったら、「含硫アミノ酸」で生じる酸を中和できる事になります。
憶測ですが、「含硫アミノ酸」を分解して生じた酸だけが強調されるという事は、それ以外のアミノ酸を分解しても、そのような性質がないのかもしれません。
私はよく分からないものは無理に結論を出さない事にしています。
詳しい情報がなかなか手に入らないので、結論は先延ばしになりそうです。
「含硫アミノ酸」のデメリットについては、分かり次第書き加えていきます。
ただし、これで終わりではありません。
「動物性食品」の大量摂取に不安があったり、「高タンパク質」に抵抗がある人は多いので、現時点で分かる範囲で、この食生活が安全なのかどうかを、別の視点から考えてみます。
酸性食品の動物性タンパク質によって骨粗鬆症になる説の真相と、含硫アミノ酸のメリットへ続く
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