「コレステロールが高い」と言われたら、多くの人は以下のように連想するのではないでしょうか。

 

 

コレステロールが高い → 動脈硬化 → 心筋梗塞や脳梗塞 → 死

 

 

そして、「脂質=悪」というイメージもあるので、その反動で、野菜や果物などの植物性の食品を「ヘルシー」と言って有難がる・・・

 

まだまだそんな人は多いですね。

 

脂質はとても大切な栄養素なのですが、この間違った思い込みのせいで、脂質を控える人が後を経ちません。

 

一度定着した常識は、なかなか覆らないものです。

 

 

本記事では、その元となった「コレステロール元凶説」の信憑性についてお話します。

 

 

本題に入る前に、簡単にコレステロールの説明をします。

 

 

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体内の脂質

 

 

人体を構成している物質を多い順に言うと、水分が59%、タンパク質が18%、脂質が17%、無機塩類が5%、その他(炭水化物や核酸)が1%です(※情報源によって微妙にパーセンテージが違ったりするので、だいたいこんなもんだと思って下さい)。

 

 

脂質は3番目に多いですね。

 

そして、脂質は4種類あります。

 

 

 

 

  • 脂肪酸

 

  • 中性脂肪

 

  • リン脂質

 

  • コレステロール

 

 

 

この4種類を「役割」で分けると以下のようになります。

 

 

 

  • 脂肪酸、中性脂肪・・・エネルギー源

 

  • リン脂質、コレステロール・・・体の構成要素、材料

 

 

 

脂質の特徴

 

 

脂質の役割を具体的に説明します。

 

 

エネルギー源としての脂質

 

 

「脂肪酸 しぼうさん」・・・すぐ使えるエネルギー源

「中性脂肪 ちゅうせいしぼう」・・・貯蔵して待機しているエネルギー源

 

 

 

脂肪酸とグリセロールが結びつくと、「中性脂肪」になります。

こうして脂肪細胞の中に蓄えておいて、必要に応じて、また「脂肪酸」に戻ってエネルギーとして使われる・・・というわけです。

 

 

 

 

体の材料としての脂

 

 

「リン脂質」・・・細胞膜の主成分

 

「コレステロール」・・・細胞膜を構成する成分の一つ、ホルモンや胆汁やビタミンDの原料

 

 

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コレステロールとは

 

 

コレステロールは血液中に単体では存在していません。

 

 

コレステロールは、中性脂肪とセットになって、その周囲を「アポタンパク」という名前のタンパク質が囲っています。

 

 

この加工された全体を「リポタンパク」と呼びます。

 

 

そして、「リポタンパク」のことを一般的に「コレステロール」と言ったりするわけです。

 

 

↓英語でも「リポプロテイン・コレステロール」と言います。

 

 

(高比重リポタンパク / 英語:High Density Lipoprotein cholesterol)→ 善玉コレステロール

 

 

(低比重・リポタンパク /英語:Low-Density Lipoprotein cholesterol)→ 悪玉コレステロール

 

 

 

リポタンパクの構造

 

 

リポタンパク = 一般的に言うコレステロール

 

 

・・・ですが、ここでは何故コレステロールは「リポタンパク」に加工されているのか、どんな構造をしているのかについて説明します。

 

 

「主成分が水」である血液の中に、「脂」であるコレステロールは溶けません。

 

 

その為、脂質は、水と相性が良いタンパク質(アポタンパク)と結合することによって水溶性になります。

 

「リポタンパク」という複合体粒子に加工された状態で血液に溶けているというわけです。

 

 

「リポタンパク(一般的に言うコレステロール)」の基本構造は、

 

「アポタンパク」、「トリアシルグリセロール(中性脂肪)」、「リン脂質」、「エステル型コレステロール」、「遊離コレステロール」からなっています。

 

 

 

 

(疎水性)である「エステル型のコレステロール」は、「リポタンパク」の内部に。

(親水性)である「遊離型のコレステロール」は、「リポタンパク」の表面にあります。

 

 

 

ちなみに、

  • 脂肪酸と結合している(疎水性)→ エステル型コレステロール(約70%)

 

  • 脂肪酸と結合していない(比較的親水性)→ 遊離型コレステロール(約30%)

 

 

 

 

リポタンパクの種類

 

 

「リポタンパク」がどんなものか頭に入ったところで、次は「リポタンパク」の種類について説明をします。

 

 

「水に溶けない物質」を「水に溶けやすい物質」で覆っている構造の「リポタンパク」ですが、

 

脂質の比率密度合成される場所によって、以下のように分けられています。

 

 

 

  • (カイロミクロン(キロミクロン)/ 英語:chylomicron)

 

  • (超低比重リポタンパク / 英語:Very-Low-Density Lipoprotein cholesterol)

 

  • (中間比重リポタンパク / 英語:Iintermediate Density Lipoprotein cholesterol)

 

  • (高比重リポタンパク / 英語:High Density Lipoprotein cholesterol)→ 善玉コレステロール

 

  • (低比重・リポタンパク /英語:Low-Density Lipoprotein cholesterol)→ 悪玉コレステロール

 

 

 

 

比重が大きいほど、「アポタンパク質」の割合が高く、「脂質」の割合が低いそうです。

 

 

ここでようやく、有名な「善玉コレステロール」と、「悪玉コレステロール」がでてきました。

 

 

次は、動脈硬化と結び付けられる「悪玉コレステロール」について説明します。

 

 

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善玉コレステロールと悪玉コレステロールの違い

 

 

先程言ったように、「善玉」も「悪玉」も、どちらも脂質の比率や密度の違いはありますが、同じ「リポタンパク」です。

 

ですが、役割はちょっと違います。「悪玉コレステロール」が宅配屋なら、「善玉コレステロール」は回収屋です。

 

 

コレステロールは血流に乗って全身の組織へ届けられます。

 

しかし、生体は常に「新しい組織」と「古い組織」が入れ替っているので、古いコレステロールの回収もしなければなりません。

 

前者の役割を「悪玉」が、後者の役割を「善玉」が担当しているというわけです。

 

 

 

  • 悪玉・・・宅配屋(新鮮なコレステロールを配達)

 

  • 善玉・・・回収屋(古いコレステロールを回収)

 

 

コレステロールは生命を維持するうえで欠かせません。

 

それを必要な場所へ運ぶ「LDLコレステロール」が悪玉ということになっているのです。

 

 

 

LDLが悪玉になった経緯

 

 

体に必要なコレステロールを届ける「LDL」が、何故か悪玉と呼ばれています。

 

 

いい仕事をしてるのにです。

 

 

ここでは、「LDLコレステロール」が悪者にされてしまった根拠を紹介します。

 

 

『100歳まで長生きできるコレステロール革命 / 著者:大櫛陽一』より引用

 

 

LDLは「火事の現場に駆けつけた消防車」だった!

 

では、なぜLDLコレステロールが「悪玉」にされてしまったのか、その理由をお話しましょう。

 

ひと言で言えば、「動脈硬化の犯人」にされてしまったからです。

 

アメリカの死亡原因のトップは心筋梗塞なのですが、この病気は心臓の血管の動脈硬化によって引き起こされると考えられていました。

 

そこで動脈硬化を起こした血管を調べたところ、血管内にLDLコレステロールが見つかりました(※ただし、最近の研究で、わずか1%にすぎないことがわかっています)。それにより、誰もが「LDLコレステロールこそ、動脈硬化の犯人だ」と思い込んでしまったのです。

 

そして、「あいつこそが悪さを働くコレステロールだったんだ」という話になって、「心筋梗塞を防ぐには、悪玉であるLDLコレステロールを減らすほうがいい」という方向へ流れていってしまったわけです。

 

ところが、近年の研究で「別の真犯人」の存在が判明したのです。

 

その真犯人が「血管の炎症」。

 

動脈硬化を起こす本当の原因は血管の炎症であり、LDLコレステロールは、その炎症を修復する目的で細胞膜の材料を届けに集まっていたにすぎないということがわかったのです(Libby P:Scientific American,May,29-37,2002)。

 

かいつまんで説明しましょう。

 

血管に炎症が発生すると、すかさずLDLコレステロールが駆けつけて、血管壁の傷ついた部分を修復します。これで済めば問題はないのですが、炎症が持続的に起こっていると、修復が繰り返されて、その部分がカサブタのように盛り上がってきます。

 

これが「プラーク」と呼ばれる塊。

 

この塊が大きくなると、心筋梗塞や脳梗塞の危険がグッと高まるのです。すなわち、プラークそのものが血液の流れを塞いだり、プラークが破裂して血液が凝固してしまったり、破裂した内容物が流れていって細い血管で詰ったりというもろもろの緊急事態が起こることになるわけです(※もっとも、最近はプラークと動脈硬化の因果関係はもちろん、動脈硬化と心筋梗塞の因果関係をも疑問視する研究が出てきて、心筋梗塞の新の原因は血液凝固と考えられるようになりました)。

 

とにかく、この動脈硬化のプロセスにおいて、LDLコレステロールは、別に悪さを働いているわけでも何でもなく、「細胞膜の修復」という自分の役割を忠実に果たしているだけです。

 

たとえば、火事の現場に消防車が集まってきた場面を思い浮かべてみてください。火事が血管の炎症だとすれば、それを消しにやってきた消防車がLDLコレステロールです。言ってみれば、せっかく火を消しに駆けつけてきたというのに、「たくさん集まっているから火事の原因だ」と勘違いされ、濡れぎぬを着せられてしまったことになります。

 

ちなみに、「本当の火事の原因=血管の炎症」がどうして起こるのかというと、いまのところ、喫煙、トランス脂肪酸、高血糖、極度の肥満(BMI35kg/㎡以上)、ストレス、老化などが要因として挙げられています。こうした要因から起こる血管の炎症がなければ、プラークはできないし、心筋梗塞や脳梗塞にもならないことになります。

 

すなわち、心筋梗塞や脳梗塞の真の原因は血管の炎症であって、コレステロールは、基本的に無関係なのです。

 

むしろ、血管の炎症があるときに、無理にLDLコレステロールを下げてしまうと、細胞膜修復などの体の修復機能が働かなくなってしまうことになります。

 

LDLコレステロールが、これまでいかに「無実の罪」を着せられてきたか、みなさんおわかりいただけましたでしょうか。

 

(21~25p)

 

 

動脈硬化の原因は「炎症」だとハッキリと述べられています。

 

 

流れを簡略化するとこういうことですね。

 

 

 

①「何か」が原因で炎症が起こる

②血管が傷つく

③修復する為にLDLコレステロールが集まる

 

 

 

①~②の過程を無視して③だけを見て「コレステロールが悪い」と判断していたのです。

 

 

 

 

 

 

炎症の原因

 

 

「血管の炎症」の原因は、喫煙、トランス脂肪酸、高血糖、極度の肥満、ストレス、老化・・・と挙げられていましたが、この中でも一番影響が大きいのは高血糖です。

 

 

「喫煙」は嗜好品なので、満遍なく多くの人の原因になるとは考えにくいです。

 

「極度の肥満」も、多くの人に当てはまりません。

 

「ストレス」「老化」はかなり曖昧で、なんとでも言えます。

 

 

これらに比べると、「高血糖」はほとんどの人に当てはまります。ご飯を中心とした糖質過多の食事を好む日本人は、1日3回「高血糖」になります。従って、糖質が原因で血管に炎症が起こっていることになります。

 

 

「トランス脂肪酸」も確かに悪いですが、摂取量は「糖質」ほどではありません。

 

 

「炎症の仕組み」と、「糖質が炎症を起こす理由」については、以下の記事で述べています。

炎症と自己免疫疾患について分かりやすく説明してみた

 

 

 

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悪者にされた理由は偶然か

 

傷ついた血管を修復していたら、コレステロールは動脈硬化の犯人にされたわけですが、

 

これだけではありません。

 

この話は、いかにも勘違いで間違った・・・みたいな話の展開になっていますが、調べてみると、世の中にはわざとコレステロールを悪者にしようとしているとしか思えないような話がいくつもあります。

 

有名なのは「アンセル・キーズ博士の説」と、「アニスコフのウサギの実験」です。

 

 

アンセル・キーズ博士の説

 

 

まずは「アンセル・キーズ博士の説」からです。

 

以下の動画の2:00以降で述べられています。

 

 

 

 

要約するとこういうことです。

 

アンセル・キーズ博士は、6カ国のデータを使って、「脂肪を摂った量と、心疾患の関係」を調べました。

 

そのデータから得られた結論は、脂質を摂ると心臓病が増えるというものでした。

 

「コレステロール元凶説」の裏づけになったデータですが、これがとんでもないインチキでした。

 

実は博士は、6カ国ではなく22カ国のデータを持っていたのです。

 

22カ国のデータを見ると、心臓病の発生は脂質の摂取量に関係なくランダムに起きているので、真相は「脂質の摂取量と心臓病の関係は全くなかった」のです。

 

 

しかし、脂質の摂取量が低くて、心臓病が少なかった「日本」、脂質の摂取量が多くて、心臓病が多かった「イタリア」や、「カナダ」等、都合のいい6カ国だけを抽出して論文をまとめていたのです。

 

 

 

その論文が大手の雑誌やメディアに取り上げられて定説が作られたのですが、

 

 

「脂質をたくさん食べるけど、心臓病が少なかった国」や、「脂質の摂取量は低いけど心臓病は多い国」を排除して説を作り上げただけですから、手口としては極めて幼稚ですよね。

 

 

これを読む限り、アンセル・キーズ博士が単独でやっている事ではないことがわかります。

 

 

『日本人よコレステロールを恐れるな / 著者:長谷川元治』より引用

 

②コレステロールの研究は公的な研究費の助成を受けやすい。

 

大学の研究室や医学研究所は国から研究費の助成を受けています。どこにいくら研究費を援助するかを決定するのは担当官庁の役人たちですが、彼らもやはり「コレステロール元凶説」は疑うべくもない定説であると考えています。

 

つまり「虚血性心疾患を減らすためにコレステロールの研究をする」というのは役人に理解されやすく、受け入れやすいテーマなため、研究費をとりやすいのです。極端に言えば「コレステロールが悪い」と言いつづけていれば、研究者はお金に困らないですむわけです。

 

ちなみに現在のアメリカでは「コレステロール」「タバコ」「公害」のいずれかをテーマに選ぶと研究費をとりやすく、また世に出やすい、つまり、学会やマスコミに認められやすいといわれています。

 

(40p~41P)

 

しかし、騙す方も騙す方なら、信じる方も信じる方です。

 

私はこのような話を読むたびに、ナチスドイツの宣伝大臣だったゲッべルスの「確かめない奴は必ず騙せる」という言葉を思い出します。

 

 

 

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アニスコフのウサギの実験

 

胡散臭い話はまだまだあります。アンセル・キーズ博士よりも前、

 

ロシアのアニスコフ(Anitschkow)という医学者が、1931年に、「動脈硬化とコレステロールが関係している」という報告をしました。

 

こちらは有名ですね。

 

ウサギにコレステロールを多く含む餌を食べさせたら、コレステロールが沈着して動脈硬化が起こった・・・というあの話です。

 

この実験は、「ウサギの体で起こったことは、人間には当てはまらない」として、現在では間違いだった事が知られています。

 

何故、人間に当てはまらないかというと、人間は「動物食性動物」であり、ウサギは「植物食性動物」だからです。

 

これも、ちょっとした間違いだった・・・かのように言われていますが、以下を読むと、偶然間違えたというのは無理があります。

 

人間の場合、小腸で吸収されるコレステロールは一定量以下。

 

食生活とコレステロールについて考えるとき、重要かつ興味深い問題があります。

 

それは、食べ物を通じて口からとったコレステロールと血液中のコレステロールはイコールなのかという問題です。

 

言いかえると、コレステロールを多く摂取すると血中コレステロール値も高くなるのか、ということです。

 

世間では「コレステロールの多い食品を食べると、コレステロール値が上がる」ということは疑いのない事実のように考えられており、高脂血症の人はもちろん、そうでなくても中高年になったら肉や卵などコレステロールの多い食品は控えるようにと言われていますが、これは医学的にほんとうに正しいことなのでしょうか。

 

結論から言うと、こうした“常識”に反して、実はほどんどの人の場合、食事でコレステロールをたくさん摂取したからといって、すぐに血中コレステロール値が上昇するということはありません。

 

あるいは、上昇したとしても生体として必要な値までにとどまり、それ以上、無制限に上昇することはないのです。

 

これは、動物学的に見て、人間が基本的に「肉食動物」であるということと大きく関係しています。

 

ご存じのように、哺乳動物は「草食動物」と「肉食動物」に大別されます。その違いを簡単にいえば、一方は草を常食とし、他方は肉を常食としているということになるでしょう。

 

セルロースなどの食物繊維を消化する酵素を持っているのが草食動物、持っていないのが肉食動物という分け方もあります。

 

草食動物はウサギ、ヒツジ、ウシ、ゾウなどで、肉食動物はライオン、トラ、ヒョウ、イヌなどであるということはみなさんも知っているでしょう。

 

ウサギに1日1gのコレステロールを与えると、血中コレステロール値が正常の50mg/㎗から急上昇して、500~1500mg/㎗もの超高脂血症になります。

 

ところが、ふつうのイヌ、ネズミなどにいくらコレステロールを与えても高脂血症は発生しません。同様にライオン、トラ、ヒョウにも発生しないでしょう。

 

私は他の記事で、人間は「動物食性動物」であることを述べていますが、その根拠は「消化器官の構造」です。

 

「人間が肉食か草食かは、歯を見れば分かる」という説は正しいのか

 

遺伝子の99%が同じでも、人間とチンパンジーの消化器官の構造は違う

 

 

なので、ここでも、内臓の構造の違いに注目して下さい。

 

まず、動物食性動物の内臓についてです。

 

 

コレステロールを与えて高脂血症を発生する動物と発生しない動物とはどこがどう違うのでしょうか。

 

そのキーポイントは小腸にあります。

 

ウサギにコレステロールを含んだエサを与えると、そのまま小腸に到達し、小腸の粘膜から無差別に吸収されてしまうのです。与えられたコレステロール分だけほぼ100%吸収され、そのまま血液中に放出されて、血液濃度が正常の10倍、20倍、30倍になって超高脂血症が起きてくるわけです。

 

一方、ライオンなど肉食動物はいくらコレステロールを大量に与えても、1回の食餌、1日の食餌量から小腸が吸収するコレステロール量は決まっています。必要な分だけ吸収して、それ以外は便から体外に排出されるので、血中のコレステロールも上昇しません。

 

つまり、肉食動物の場合、小腸におけるコレステロール(脂肪)に対する“バリア”の機能が高いのに対し、草食動物の場合はその機能が低い、もしくはほとんどないのです。

 

私は究極的には、この小腸の取捨選択機能こそが草食動物と肉食動物とを区別する最も重要なポイントだと考えています。

 

人間は肉も魚も野菜も穀類もなんでも食べるため、俗に「雑食動物」などと言われます。しかし、動物学的にいうと、小腸の機能から見て、基本的に肉食動物なのです。

 

個人差はありますが、人間の場合、小腸で吸収されるコレステロールは一定量以下で、100%吸収されるなどということはありません

 

実際、人体実験でバターを毎日1/4ポンド(約113g)、コレステロール量にして毎日20gを与えても高脂血症は発生しなかったという報告もあります。つまり人間の場合もライオンと同様に小腸におけるコレステロールに対する“バリア”の機能が高く、コレステロールを必要な分だけ吸収して、それ以外は便から体外に排出してしまうわけです。

 

また、人間を含む肉食動物では、小腸でコレステロールを多少多めに吸収しても、不要な分は肝臓で分解されてしまうことがわかっています。

 

このことからも、食事でコレステロールをたくさん摂取したからといって、即、血中コレステロール値が上昇するとは考えられません。

 

余談になりますが、以前、私が10ヶ月間つまり約300日の間に脂肪の多いリブロース・ステーキを200回食べたという経験があります。そんなことをしたのは、ステーキが大好物だということもありますが、自分の体を使って、実験してみたかったというのが理由です。その結果、やはり血中コレステロール値が上昇することはありませんでした。

 

(84p~88p)

 

 

 

続いて、植物食性動物「ウサギ」の内臓です。

 

 

一方、草食動物であるウサギもやはり体内でコレステロールを合成しているのですが、人間とは合成している場所が違います。

 

どこで合成していると思いますか?

 

実は驚いたことに盲腸で、なのです。

 

人間の場合は、盲腸は専門的には「遺残器官 いざんきかん」といい、今ではあってもなくてもよい存在ですが、ウサギの盲腸は消化・分解・合成・吸収・便形成まですべて一貫して行なってしまうスーパー器官です。

 

そのため、大きさもウサギの体に比しては大きく、体積もあり、形もまるでカタツムリのような複雑な構造をしています(図11―下)。

 

 

もっとも興味深いのは、口から食べた草や木の芽、皮など、草食動物独自の食物をコレステロールなどの脂肪につくりかえる機能を持っていることです。

 

図11―下はウサギの盲腸の断面図です。

 

小腸の末端は盲腸につながっていますが、断面の内側をよく見ると、らせん状に溝が刻まれており、中心部に向かっています。

 

この内側溝を回転しながら、消化された食べ物が通過するうちに分解・合成・吸収が行なわれます。

 

草や木の芽や皮が盲腸のまん中に行き着くまでに脂肪やタンパク質や糖に変わってしまうのですから不思議というしかありません。

 

さらに驚いたことに、らせんのまん中を今度は便の材料になる残り物が消化・分解された食べ物と逆行して盲腸の入口まで戻り始めるのです。

 

その戻り道で、あのウサギ特有の球形の便が形づくられ、盲腸の出口から分かれて大腸に行き、排便が行なわれます。

 

もちろん、人間の盲腸にはこうした機能はありません。

 

逆に人間やライオン、トラ、ヒョウ、イヌなどの肝臓は、小腸から吸収された栄養分をさらに分解・解毒・合成するなど、いわば化学工場の役目を持っていますが、ウサギの肝臓はそうした作用を持ち合わせていません。

 

ちなみに草食動物であり、反芻動物であるウシの場合は四つある胃袋のうち「第4胃袋」でコレステロールの合成を行なっています。ウシの場合も肝臓でコレステロールを合成しない点はウサギとまったく同様です。

 

このような脂肪をはじめとする栄養代謝のメカニズムから見ても、人間のルーツはまぎれもなく肉食動物だといえるでしょう。

 

第一章の冒頭で、1913年のアニスコフによる実験を皮切りに、ウサギにコレステロールを経口投与して動脈硬化をつくる実験は今でも行なわれており、「コレステロール元凶説」の根拠の一つとなっているということを述べました。

 

しかし、ここまで見てきたように、草食動物と肉食動物では小腸の機能や脂肪代謝の仕組みがあまりに違いすぎます。

 

まぎれもない草食動物であるウサギにコレステロールを食べさせた実験の結果を肉食動物である人間にそのまま適用するのは、まったくナンセンスであるということをあらためて強調しておきたいと思います。

 

(88p~91p)

 

 

 

植物食性動物であるウサギに起こった実験結果を、動物食性動物である人間に当てはめようとするのは無理があります。

 

動物の選択を間違っただけでなく、実験の方法もかなり酷いです。

 

 

 

まず指摘したいのは、これらの一連の実験でウサギに投与されるコレステロールは途方もなく大量だということです。

 

アニスコフの実験でウサギに投与されるコレステロールの量を人間に換算すると、どのくらいになると思いますか?

 

なんと1日に鶏卵ならば40個、牛ロースなら18kgも食べなければならない計算になるのです。こんな食生活が現実的に不可能なことは言うまでもありません。

 

こうした極端な実験の結果を根拠に、コレステロールが動脈硬化を引き起こす元凶であるとするのはあまりに乱暴です。

 

 

なんとしても、コレステロールを悪者にしたいという執念が感じられます。

 

 

医学者が、なんの理由もなく「ウサギにコレステロールを食べさせたらどうなるか」・・・と思い立って、バカみたいに大量の餌をたべさせら動脈硬化になった。コレステロールは悪いんだ・・・

 

と、なったとでもいうのでしょうか。

 

メチャクチャなストーリーです。

 

結果が分かっていたから、あえてウサギを選んだのではないでしょうか。

 

しかも、人間とウサギでは、動脈硬化のタイプまで違うようです。

 

 

さらに重要なのは、コレステロールを大量に与えたときにウサギの動脈に発生するアテロームと、人間の動脈硬化のアテロームでは見た目も構造もまったく違うということです。

 

ウサギのアテロームは、コレステロールをそのまま動脈壁の上に投げ捨てたような感じです。動脈壁の表面にコレステロールがそのままベタベタとくっついており、医学用語で言うところの“沈着”という表現がまさにあてはまります。

 

一方、人間の動脈硬化のアテロームは、表面がタンパク線維でできた模様のものでおおわれていて、その中にコレステロールがたまっているという形です。作ってから何日もたったまんじゅうのように、カチカチの皮の中にあんこ(コレステロール)が入入っている状態と言えばわかりやすいでしょうか。

 

ウサギの動脈硬化の発生は血中コレステロールの濃度に正比例します。つまりウサギを高脂血症にすると必ずといってよいくらい動脈に病変が発生し、コレステロールの沈着が認められ、しかも血中コレステロール値が高くなるほど、その程度はひどくなります。これは大動脈に限らず、頚動脈、脳動脈、冠動脈も同様です。

 

一方、人間はコレステロール値が高いからといって動脈硬化を起こすとは限らず、コレステロールが低くても動脈硬化を起こす例がたくさんあることは、これまで繰り返し述べたとおりです。

 

血中コレステロール濃度が高いほど、動脈にアテロームがより多く多く発生するというような相関関係は認められません。

 

第2章で、草食動物であるウサギと肉食動物である人間では、小腸におけるコレステロールに対する“バリア機能”が違うということを述べました。

 

ウサギの場合は摂取したコレステロールを小腸の粘膜からほぼ100%吸収してしまうが、人間の場合は必要な分だけ吸収して、それ以外は排出してしまうということでした。

 

実は、ウサギと人間とでは小腸だけでなく、動脈におけるコレステロールに対するバリア機能も大きく違うのです。もうお気づきのかたもいるかもしれませんが、このバリア機能に関係してるのが、私たちが発見した動脈壁のタンパク膜です。

 

ウサギの動脈壁にもタンパク膜は存在します。そもそも私たちがこのタンパク膜を発見したのもウサギを使った実験からでした。

 

しかし、もともと草食動物であるウサギのタンパク膜にはコレステロールの侵入を防ぐバリア機能がないか、あってもきわめて弱いのです。いわば素通しの状態なので、血中にコレステロールがふえたらふえただけ、どんどんコレステロールが動脈壁に沈着してアテロームが形成されます。

 

一方、人間の場合、前途したように血中コレステロール濃度が高くても、タンパク膜が正常である限りはコレステロールが動脈壁にくっついたり侵入したりすることは基本的にはありません。

 

これは小腸のバリア機能と同様に、人間がもともと肉食動物であることに由来していると考えられます。

 

以上をまとめますと、まずコレステロールの投与でウサギに発生する動脈硬化と、人間の動脈硬化ではアテロームの構造が違い、まったくタイプが異なります。

 

しかも、動脈のコレステロールに対するバリア機能もウサギと人間とでは大きな差があります。

 

ひと言でいって、人間の動脈硬化を研究するモデル動物としてウサギは適さない部分が多いのです。ウサギと人間との種の違いをきちんと認識したうえで実験を行い、その結果を分析するのならよいのですが、「ウサギを高脂血症にしたら、これこれこういう現象が起こった」ということをそのまま人間にあてはめるのは間違っています。

 

コレステロール添加食をウサギに与えて動脈硬化をつくる実験は今でも盛んに行なわれており、「コレステロール元凶説」を支える根拠の一つとされているわけですが、基本的なところで大きな誤りをおかしていると言わざるをえません。

 

(163p~167p)

 

 

アニスコフの後にアンセル・キーズ博士が説を発表するわけですが、医学者がすげ変わっても、切り口が変わっても、結果的にやっている事は同じです。

 

 

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高血圧と似ている話

 

 

以前、高血圧について調べると「歳をとって血圧が上がるのは正常」だということが分かりました。

 

血圧が高いほど健康で長生きできる!原因を根本的に間違えている高血圧の食事や治療

 

実は、コレステロールも同じなのです。

 

 

『100歳まで長生きできるコレステロール革命 著者/大櫛陽一』より引用

 

 

みなさんのなかには、「年をとるとともに、健康診断のコレステロール値が上がってきて、とうとう薬を勧められるようになった」という方もいらしゃるのではないでしょうか。

 

ただ、こういう場合も安易に医師の言葉に従ってはいけないと、私は思っています。なぜなら、加齢とともにコレステロール値が上がってきたのは「異常」ではなく、「正常反応」だと考えているからです。

 

何度も申し上げるように、コレステロールは60兆個の細胞の細胞膜となるのをはじめ、私たちの体の材料として欠かせない物質です。

 

ただ、年齢を重ねていれば、そうした細胞の新陳代謝にも衰えが出てくるでしょうし、免疫力も下がってくるでしょう。だから、こうした老化を補うため、コレステロールが増産されているのです。

 

体の細胞膜を強くし、免疫力を高めることによって、体を防衛してくれているのです。

 

すなわち、年齢とともにコレステロールが増えてくるのは、体にとって自然であり、必要な変化。数値が上がってきているのは、体を老化から守るためだったというわけです。

 

いかがでしょう。そのように考えれば、加齢とともに高くなってきたコレステロール値を薬で下げるという行為が、いかに愚かであるか、おわかりいただけるのではないでしょうか。

 

(55p~58p)

 

 

「老化によって血圧が上がる理由」は、年齢とともに血液を送り続ける力が弱まってくるので、全身に新鮮な血液を送り続ける為に、血圧を少しずつ上げなければならないからでした。つまり、歳を取って血圧が上がるのは元気な証拠でした。

 

そして、この記事に書いてあるように「コレステロール」もまた、歳とともに高くなるのが自然という事です。

 

 

>加齢とともにコレステロール値が上がってきたのは「異常」ではなく、「正常反応」だと考えているからです。

 

 

しかし、「血圧」にしろ、「コレステロール」にしろ、体を守る為に備わった正常な機能を「悪」と決めつけて、薬で無理矢理下げようとしたり、食生活を改めさせたりするわけです。

 

食生活を改善させるのは悪いことではありません。

 

問題はその方向性です。

 

 

 

インチキな知識を元に努力をしても結果は出ない

 

 

「本態性高血圧(高血圧の90%)」の原因は、「塩」になすりつけられていますが、調べてみると「糖質」が原因でした。

 

そして、「コレステロール」は動脈硬化と結び付けられ、その原因を「欧米化した食事」、「ストレス」、「タバコ」等になすりつけられていますが、最も大きな原因と思われるのは「糖質」です。

 

 

高血圧も動脈硬化も、原因が別のものになっているので、本当に気をつけなければならない「糖質」への対応が甘く、関係ない努力をするはめになります。

 

 

本当の原因を知るためには、「嘘の原因」を排除する必要があります。

 

高血圧と糖質の関係については以下の記事でお話しましたので、

 

血圧と、本態性高血圧の原因について分かりやすく説明してみた

 

 

動脈硬化にコレステロールがどこまで関係しているのか、そして、「糖質」がどう影響を与えているのかについては以下の記事でお話します。

 

動脈硬化は悪玉コレステロールではなく、動脈壁の劣化が原因だった

 

動脈硬化を改善・予防する方法を分かりやすく説明してみた

 

 

 

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