人間の食性は何か?
・・・と聞かれたら、あなたは何と答えますか?
人によって考えは様々だと思います。例えば...
- 「人間は雑食動物だ」→ バランスが大事だと思っている人に多い意見
- 「人間は草食動物だ」 → ベジタリアンに多い意見
- 「人間は肉食動物だ」→ 糖質制限実践者に多い意見
この中でも、「人間は雑食」という説を支持する人の数は圧倒的です。あとの2つは少数派ですね。
何を根拠に、その考えに至ったのか...を考えてみると、「雑食」を支持する人の考えは単純です。
何故なら、人間の食べ物は、文化や習慣によって様々です。地域によって違いますが、色んな食品を食べ続けてきた歴史もあります。
本来の「食性」がどうであれ、人間は「雑食生活をしてきた」という事実があります。
従って、結果論ではありますが、多くの人は漠然と「人間は雑食だろう」という考えに行き着きます。
また、「バランスの良い食事をするのが良い」という思想が、「人間は雑食である」という考えを後押ししています。いや、もしかしたらその逆で、「人間は雑食である」という前提があるからこそ、「バランスの良い食事をするのが良い」という考えが生まれたのかもしれません。
私も以前は、多くの方と同じように「人間は、色んなものを食べるから雑食だ」と思っていました。そして、「バランスの良い食事こそが、人間を健康にする」と思っていたので、そのような食事を心がけていました。
ですが、「草食」と考えていた時期もありますし、今では「肉食」という考えになりました。
つまり、「雑食」、「草食」、「肉食」、全て考えた事があります。
全く異なる意見なのに、よくコロコロと変わったなと思います。
でも、ただ、適当に考えを変えたわけではありません。そう納得してしまった根拠があったのです。
最初は多くの人が考えるように、人間は「雑食だ」と思っていました。
その次にベジタリアンの意見に触れて、「人間は、本来は植物食性(草食)動物だ」という考えになりました。
何故納得してしまったのかというと、その根拠が、「人間の歯の形」だったからです。
「雑食だ」という説は、どちらかというと「文化や習慣や歴史」を根拠にしています。ですが、「植物食性(草食)だ」という説は、「“歯”という人間の体」に注目しているので、説得力があり新鮮でした。だから、
「人間の歯と「植物食性(草食)動物」の歯はそっくりだ。だから人間は植物性の食品を食べるのが良い」
・・・という話を聞いた時、「なるほどな!」と思ってしまったのです。
もっとも、これは昔の話なので、現在は「人間は植物食性(草食)動物だ」とは思っていません。
色々調べた結果、また体験から、草食であるという根拠に穴が見つかり、その説が間違いだったという事に気が付いたからです。
こうして、先ほども述べたように、今は、「人間は動物食性(肉食)動物だ」という結論に到達しました。
そこで、当時、理に適っていると思った、「人間が肉食か草食かは、歯を見れば分かる」という説を改めて振り返って、どこが辻褄が合わないのかを説明したいと思います。
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人間の歯の特徴
当たり前ですが、「植物食性(草食)動物」と、「動物食性(肉食)動物」の歯の形は全く違います。
歯は形によって、以下のように分けられます。
- 臼歯(きゅうし)→穀物をすりつぶす
- 犬歯(けんし)→ 肉を噛み切る
- 門歯(もんし)→ 野菜・果物を噛み切る
で、それぞれの動物の歯の特徴が以下になります。
「植物食性(草食)動物」の歯
「門歯」は食物を噛み切りやすい形で、「臼歯」はそれをすりつぶしやすいよう、平になっています。
「動物食性(肉食)動物」の歯
肉を引き裂いたりするのに適しています。「犬歯」が発達しているのはもちろんですが、それだけでなく、全体的にどの歯も尖っていてギザギザしています。
人間の歯
人間の場合はというと、以下のようになっています。
本数は上下合わせた数です。
「歯の形や数が、その動物が何を食べるべきかを示している」ということだったので、その理屈に当てはめて考えてみます。
人間の場合、肉を噛み切る為の「犬歯」が貧弱です。肉を食べる時でさえ意識してこの歯を使うことはありません。
噛み切る時は、「犬歯」よりも、「門歯」の方が役にたちます。
そして、穀物をすりつぶす為の「臼歯」が発達しています
役に立っている割合を数字で表したら、「犬歯」1に対して「臼歯」と「門歯」は9くらいではないでしょうか。
そして、臼歯担当である「穀物」と、門歯担当である「野菜・果物」は、共に植物性食品です。
「臼歯」と「門歯」をメインに使っている人間の歯は、どう考えても、「植物食性動物」の歯にそっくりです。肉を食べるのに適した歯ではありませんね。
以上のことから、ベジタリアンが主張するように、「人間は植物食性(草食)だ」という考えは、間違いではなさそうに聞こえます。
あるいは、お飾り程度で「犬歯」が生えているので、一応、肉も食べられるということで、「人間は雑食」と言う事もできます。
どちらにせよ、歯を見る限り、人間は「動物食性(肉食)動物」ではありません。
(追記)猫の歯
人間の歯と比較する為に、「動物食性(肉食)動物」である猫の歯を見てみましょう。非常によくできています。
『子猫のへや 猫の歯・舌。味覚』より引用
永久歯の各部名称、及び主な役割は下図です。
合計30本ある永久歯の中でも、上下合わせて4本ある犬歯(けんし, canine tooth)は獲物を捕らえるときに役立ちます。この歯は横幅が広く平らであるため、ちょうど「くさび」としての機能を果たします。
この「くさび」を獲物の首筋にグサリと刺し込むと、うまい具合に脊髄(せきずい)に当たり、効率的に切断することができるのです。脊髄とは、背骨の中を通っている神経線維の束で、これを切断された動物は即死してしまいます。
なお犬歯の根元には特殊なセンサーがあり、獲物の脊髄を正確に噛み切れるよう、歯の方向を微調整していると言われています。
また犬歯の表面にある小さな溝は「血溝」(blood groove)と呼ばれるもので、獲物から流れ出た血が歯に付着しないよう、効率的に流す下水溝のようなものだと考えられています。
ただし猫のものは、ライオンのキバで見られるほど明瞭ではありません。
門歯(もんし)は切歯(せっし)とも呼ばれ、上下とも6本ずつあります。この歯の裏にはヤコブソン器官の入り口があり、フレーメンによって大きく開き、フェロモンを取り込みやすくします。またグルーミングの際は櫛(くし)のような働きをします。
一般的に「奥歯」と呼ばれている臼歯(きゅうし)は、「前臼歯」と「後臼歯」に分かれています。しかしこれらは、私たちの奥歯のように上の歯と下の歯の面がピッタリとかみ合いません。
猫の臼歯は先端がとがっており、なおかつ上下の歯が前後で微妙にずれた構造になっているため、ちょうどハサミのような役割を果たします。これは、猫が肉を噛みちぎることに特化した構造の歯を発達させた結果でしょう。
また上顎の「後臼歯」はほとんどお情け程度にしかついておらず、見分けることすら困難です。
このように、同じ「臼歯」でも、猫の「臼歯」は人間の「臼歯」とは違います。トゲトゲです。
それにしても、肉を食べるために非常に良く出来た構造です。
これを読むと、同じペットでありながら、猫が犬のように大きく品種改良されない理由が分かったような気がします。猫はあのサイズだから、人間と共存できるのです。もし、大型犬くらいのサイズだったら危険です。
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歯と食性は関係あるのか
猫に限らず「動物食性(草食)動物」の場合、全ての歯が肉を噛み砕く為に適していると言っても過言ではありません。
(↑ 獲物を仕留める武器のような歯)
これぞ、肉食の歯ですね。
こんな歯をしている人はいません。
人間の歯は、誰がどう見ても「動物食性(肉食)動物」の様ではありません。植物性の食品に合った構造です。
これだから、歯の形を根拠に、「人間は動物食性(肉食)ではない」と言われれば、説得力があります。この強力な説を覆すのは一見厳しそうです。
かつての私は、あまりに的を得ていたこの意見にコロッとやられて、ここで思考停止してしまったのです。
でも、今思えば、この時は明らかに考えが足りませんでした。
- 人間は、ベジタリアンが主張するように、本当に「植物食性(草食)動物」なのか?
- 人間は動物性食品を食べるべきではないのか?
・・・その答えを出すために、次は、ベジタリアンが想定していなかった盲点についてお話します。
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人間の歯が鋭くない本当の理由
私は現在、スーパー糖質制限をしているので、ほぼ「動物食性」の生活をしています。でも、いきなりそうなったのではなく、以下のような流れを辿りました。
①バランスの良い食事
↓
②緩い糖質制限(失敗)
↓
③バランスの良い食事
↓
④ベジタリアン・ローフード、1日1食、断食等
↓
⑤スーパー糖質制限(成功)
見てもらったら分かると思いますが、私は糖質制限を2回しています。
過去に1回失敗して、その後糖質制限を再開するまで、数年間は別の食事をしていました。
最初の糖質制限で失敗し体調を崩したため、数年間は「糖質制限否定派」でした。
「動物性食品は体に悪い」と思っていたので、ベジタリアンやローフード寄りの食事に走りました。
にも関わらず、そこから、「再び糖質制限をやろう」と決心したのは理由があります。
年月が経ったことで、糖質制限の情報が増え、そのおかげで過去の失敗の原因が特定できたからです。ハッキリ言って、失敗したのは私のやり方が悪かったのです。
それを気をつければ上手くいくと確信しました。でないと、もう一度やろうとは思いません。
この時、情報を仕入れて「大丈夫だ」と確信し、再び糖質制限を実践することに決めたわけですが、不安が全くなかったわけではありません。
糖質制限を始める直前は「ベジタリアン寄りの考え」に影響を受けていた為、「人間の食性を、歯の形から分析した説」がどうしても引っ掛かるのです。
歯の形に合った食事をするのが正解なら、「人間は植物食性(草食)だから、肉を食べるに適していない」ということになります。
この考えがある限り、糖質制限とはケンカになります。
「人間は「植物食性(草食)動物」なのに、動物性食品ばかり摂る糖質制限をして大丈夫か?」
・・・と思うわけです。
どんなに糖質制限の正当性を述べられても、どんなに人間は「動物食性(肉食)動物」だと言われても、この歯の説がある限り、「人間は肉を食べるべきではない」ような気がするのです。
肉を食べるに相応しくない歯であることは厳然たる事実なわけですから。
一度失敗して体調を崩した経験があるので、慎重だったのは言うまでもありません。
ですが、もっと調べたところ、腑に落ちる答えはあっさり見つかりました。
人間が動物食性(肉食)でありながら、鋭い歯をしていないのには、他の動物とは違う、人間ならではの理由があったのです。
その理由を要約するとこういう事です。
「人間は、他の動物の食べ残した肉や骨を、横取りして食べることで、タンパク質や脂質を摂取していた。だから鋭い牙は無くても、動物性の食品を手に入れることができた。動物の骨や骨髄もすり潰して食べていた。」
なんと、人間の「臼歯」が発達しているのは、植物をすり潰す為ではなく、骨や骨髄をすり潰す為だったのです。これは盲点でした。
確かにこの理屈であれば、動物を襲う必要がないので、牙や爪も必要ありません。人間の「犬歯」が発達していなくても辻褄が合います。
動物を仕留める鋭い牙がなくても、鋭い爪がなくても、人間であれば、動物を食べる事は可能です。それは、現代の私達にも言えることです。
そして、私は「もう1つ別の理由」があるのではと考えています。
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牙がない人間が肉を得る事ができたもう1つの理由
ここまでの内容をまとめます。昔の人間は、以下の方法で動物性食品を食べていたそうです。
- 他の動物の食べ残しを食べる
- 骨や骨髄をすりつぶす
だから、人間の歯は「植物食性動物」系でありながら、動物性食品を問題なく食べられる...というわけです。
さらに、これにもう1つ、私の持論ですが、以下のような可能性もあるので、付け加えておきます。
- 人間は他の動物と違うので、昔から道具を使って動物を狩り、調理して食べやすいサイズに切って食べていた。よって歯が他の動物食性動物の様に尖っている必要はない。
・・・こんなことを言うと、「昔の人間がそんなに頭が良いわけないじゃないか、初期の人類は道具は使えないよ」と思うかもしれません。
もし、そう考えるのであれば、それは「進化論」を信じすぎです。
「進化論」は仮説です。
進化があることを証明する、「中間種」の化石も見つかっていないのです。
従って、私は進化論を疑っているので、「進化がない」ということも視野に入れて仮説を立てています。
「人間は、チンパンジーと同じ祖先から進化した。昔はサルのように知能が低く道具も使えなかった」という発想に縛られる必要はありません。
進化がないのであれば、人間は最初から今の人間と同じだった可能性もあるのです。そして、人間の武器は今も昔も「頭脳」です。
昆虫学者のファーブルは、「生き物は、「生きるために必要な能力」を、最初から完璧に備えていないと生きられない」事を、自身の研究から知っていたので、進化論(進化して途中から能力を獲得する)を否定しました。
この考えに当てはめると、人間が生きてこられたということは、「人間にとって生きるために必要な機能(つまり頭脳)」が最初から備わっていたということです。つまり、人間は昔も今のように知能があり、道具も使えたということです。
もし、知能がないと、人間は弱いので、自然界で生き残ることは難しいです。
(原始人の五感や体力が現代人より優れていたとしても)体に元から武器が備わっていない人間の体の造りでは、他の動物と闘うのは不利です。ですが、武器を使えば、動物を狩ることも可能です。堂々と肉を食べられます。他の動物の食べ残しをあてにする必要はないのです。
「肉を引き裂く歯じゃないから、動物を狩れない。だから肉食ができないだろう」という発想は、「昔の人間がバカで、他の獲物を捕らえることも、 調理することもできない。」という進化論を前提にした考えに基づくものです。
しかし、進化はなく、「人間は当時から、知恵を使って獲物を捕獲したり、調理することが出来ていた」と仮定すれば、肉食は可能であり、鋭い歯は必要ありません。あっても邪魔なだけです。
以上のような理由から、歯の形だけを見て、昔の人間が食べていたものを分析し、食性を判断するのは、信憑性に欠けると思いました。
そして、さらに見逃してはいけないポイントがあります。
「歯の形」は食性を分析するにあたって大事な要素です。しかし、食べた後の過程も同じように重要ではないでしょうか。歯だけに気を取られて、消化器官の存在を忘れてはいけないのです。
それに、引きちぎったり噛み砕いたりは、道具で代用が可能ですが、消化器官の代わりはできません。
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口にいれた後、消化、排泄までを含めて「食性」です
「家に帰るまでが遠足だから、帰り道も気をつけて帰りましょう」
・・・これは、遠足の時に教師に言われた言葉です。
「遠足は目的地に着いて終わりじゃないよ」ということですが、食事も同じで、「食べ物を飲み込んだら終了」ではありません。その後があります。
食性を語るには、飲み込む → 消化 → 栄養を取り込む → 排泄・・・ここまでの全体の流れをみなければなりません。歯の形だけで結論を出すのではなく、その後に続く臓器の存在を考慮する必要があります。
そして、食べるという行為において重要なのは、食材を砕く歯の構造ではなく、食材を受けとめる消化器官の構造ではないでしょうか。
何故なら、食べ物を食べただけでは、栄養を取り込んだことにはならないからです。
食べたものを分解・吸収して、体内で栄養が利用されてこそ、生き物は正常に活動できるわけです。食べ物を砕いて、体の中に入れても、それを上手く活用できなければ意味がありません。
ディスクを、規格の合わないプレーヤーに、一応入れる事はできます。しかし、正常に再生できないのであれば、それは「見れた」事にはなりません。
人間が「植物食性動物」なら、植物性の食品の消化に長けていることになりますが、残念ながら人間の消化器官は、植物性の食品の消化には適していないのです。
従って、人間が植物性の食品を食べると、様々な不具合が起きてしまいます。
一応、比較の為に言っておきますが、「植物食性動物」には、特殊な消化のシステムが備わっています。例えば、牛は「植物食性(草食)動物」ですが、胃が4つあります。ゴリラも体の中に「発酵タンク」を持っています。
コアラやパンダは、排泄物を取り込む事によって植物を消化します。
『アレルギーの9割は腸で治る! クスリに頼らない免疫力のつくり方 / 著者:藤田紘一郎』より引用
動物の赤ちゃんはなぜ母親の便をなめるのか
コアラの赤ちゃんは、生まれるとすぐ土をなめたり、お母さんの便をなめたりします。
これは、土のなかやお母さんの便のなかにある細菌類をお腹に入れないと、コアラの餌であるユーカリという毒のある葉を無毒化できないからです。
コアラの赤ちゃんは、生まれながらにしてユーカリの葉を無毒化する酵素をもっているわけではありません。だから本能的に、土をなめたりお母さんの便をなめて、自分の腸内細菌を増やそうとするのです。
パンダの赤ちゃんも同じです。
パンダの体には餌の堅い笹の葉を消化する酵素がないために、生まれるとすぐに土をなめたり、お母さんの便をなめて細菌をお腹に入れます。
腸内細菌が笹の葉を消化してくれるからです。
また、ウサギは下痢をすると、元気なときの自分の便を食べます。私も幼い頃は、飼っているウサギを見て「便なんか食べて、汚い」と思ったものです。
でも、その行為には「腸を元気に保っている細菌を腸のなかに取り入れて、腸内環境を整える」という目的があったのです。
つまり、元気な動物の便に含まれる腸内細菌は、ある意味で「腸内環境を整える薬」と考えることができます。
人間も同じです。
でも誤解しないでください。「便をなめなさい」と言いたいのではありません。
「自分の便を汚いからと無視しないで、毎日ちゃんと見てください」、「腸内細菌には重要な意味があるのだから、むやみに悪者扱いしないでください」と、伝えたいのです。
(54~55p)
人間はこういうことはしませんね...。
「歯を見たら食性がわかる」と主張している人達の惜しい点は、歯の構造にだけ注目して、「消化の構造」まで視野に入れて分析していない事です。
そして、「草食動物のような歯」を持つ人間の消化器官は「動物食性(草食)」向けに作られています。
その証拠に、人間は動物性の食品だけを食べれば、すぐに消化してしまうのです。植物性の食品の消化は時間がかかります。
消化に良い食品の嘘。慢性的に胃がもたれる人は糖質の過食を疑え!
総合的に考えると、私は「歯の形が植物食性(草食)動物に似ているから、人間は本来、植物食性(草食)動物だ」という説は、誤りだと思っています。
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