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現代社会は様々な有害物質で溢れています。しかし、その中でも糖質は毒性が強く摂取する量も半端ではありません。
その為、癌、膠原病、動脈硬化...等、多くの疾患に糖質が関わっています。
従って、糖質制限を実践する事によって、殆どの慢性疾患が改善していきます。
私のように虚弱体質が改善し、10代20代の頃と比べて30代の今が1番元気...という事も普通に起きます。これは特殊なケースではありません。
基本的に糖質制限は、「動物食性」の人間に合っているので、(糖質制限ができない疾患がある人を除いては、)身体に負担が少なく簡単に健康になる食事法なのです。これは自分の体験だけでなく、多くの方の相談を受けてきて感じることです。
しかし、これまでの一般的な食事とかけ離れているので、急な変化に身体がついていかず、体調不良になる人も少なくありません。これも相談を受けて感じています。
例えば、糖質制限を実践していて、だるい、冷える、筋力が低下する、肌が荒れる、浮腫む、食欲がない、生理不順...といった不調になる方がいます。この場合、原因は複数考えられます。
- アスリート並に速筋を使いすぎているのに糖質を制限している
- タンパク質はたくさん食べるが脂質の摂取量が少ない
- 「低T3症候群」になっている
それぞれの理由を簡単に説明します。
アスリート並に「速筋」を使いすぎている人は、糖質を厳しく制限すると体力が低下します。
筋肉の「速筋」は、糖質をエネルギー源としています。
その為、瞬発力系の運動、つまり、筋トレや重労働をアスリート並にしている人は多少の糖質が必要です。このような人は、糖質を厳しく制限するとフラフラになったり、筋力、筋肉量の低下につながります。
次は、糖質制限で脂質を必要量摂取せずに、カロリー不足になって体調不良になるケースについてです。
糖質制限でよくある間違いの1つです。
私も過去にやらかしたのですが、これはただのエネルギー不足です。...といっても、場合によっては命の危険があります。
以下の記事では、「タンパク質はたくさん食べるが脂質の摂取が少ない」...事による失敗の原因と対策を紹介しました。
疲れてフラフラになる...糖質制限のつもりがカロリー制限に!危険なATP不足とは
これは原因が単純です。エネルギー源の脂質を摂取する事で解決するので比較的簡単でした。
本記事では、糖質制限を実践して、脂質をしっかり摂っていても、体が「エネルギー不足」と勘違いして、省エネモードになるケースを取り上げます。
この状態を「低T3症候群」とか「LowT3症候群」と言います。
「T3」とは、活性型の「甲状腺ホルモン」の事です。
様々な不快な症状が表れますが、病気というよりは生体反応です。
先に説明した「糖質と脂質を制限するケース」と以下のような違いがあります。
- 糖質と脂質の両方を制限する・・・単純にエネルギー源の摂取が足りない
- 糖質制限を起因とする低T3症候群・・・エネルギー源は摂取しているが、何故か体が省エネモードになっている
糖質制限によって「低T3症候群」にならない人もいます。私もなりませんでした。
では何故、糖質制限の実践によって体が省エネモードになるのか、また、「低T3症候群」とはどんな状態なのか、どんな人がなるのかについて説明します。
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低T3症候群とは
「低T3症候群」をシンプルに説明すると、エネルギー不足の時に、体が省エネモードになっている状態です。
どんな時になるのかというと、「ダイエット」や「飢餓」...等によって栄養が不足している時です。
省エネモード...と言えば聞こえがいいですが、実際には、筋力がおちたり、冷えたり、だるくなったり、髪の毛が抜けたりするのでしんどいです。
しかもその症状は一見すると、内分泌疾患の「甲状腺機能低下症 こうじょうせんきのうていかしょう」と似ています。こちらは疾患なのでなると面倒です。
しかし、「低T3症候群」は、エネルギー不足という危機的状況を回避する為の体のシステムが働いているだけなので、病気ではありません。
何故なら、エネルギーが足りないのに、ガンガン活動していたら体に負担がかるからです。収入が減ったときに出費を抑えるのと似ています。
- 甲状腺機能低下症・・・病気
- 低T3症候群・・・・・・病気ではない
「低T3症候群」は、ダイエットや飢餓だけでなく、脂質やタンパク質を十分食べる糖質制限でもなる人がいます。
すると、糖質を食べていた時よりも体調が悪くなるので、「糖質制限は危険だ!」と勘違いされます。
次は、なりやすい人がどんなタイプなのかをお話します。
糖質制限で低T3症候群になりやすい人
糖質制限は、糖質の制限量によって体に与える影響が全く異なります。糖質は毒性が強いので、それを制限する量が多いほど、健康になります。
糖質の制限が緩いと効果は薄れますし、また、「摂取している糖質」の害を受けるのでリスクもあります。
【脂質+タンパク質】は良くて【糖質+脂質+タンパク質】が良くない理由
なので、糖質を極限まで抑える「厳しい糖質制限」が最も健康に良いわけですが、これをいきなり実践すると「低T3症候群」になる可能性があります。
以下がなりやすい人の特徴です。
- 脂質代謝が上手く働かない人
- 痩せた人、筋肉が少ない人
- ストレスや睡眠不足がある
- 鉄不足
私のようにいきなり1日10g以下の「厳しい糖質制限」をしてもならない人もいるので、必ずなるわけではありません。
次は何故、これらの特徴があると「低T3症候群」になりやすいのか説明します。少しエネルギーの話にお付き合い下さい。
低T3症候群になるメカニズム
エネルギー源は、糖質、脂質、タンパク質です。
このうちの「タンパク質」は、体の材料としての働きが主なので、燃料としてはあまり依存できません。
なので、基本的にエネルギーの材料は「糖質」か「脂質」になります。
で、バランスの良い食事のように、「糖質」を中心に食べている人は、主に「糖質」を代謝してエネルギー源にしています。
ラーメン、パスタ、カレー、焼肉とご飯...等、「糖質」を多く食べている人は、同時に「脂質」も食べていますが、糖質を食べている場合は脂質代謝は抑えられます。
これは、「糖質」によって上がった血糖値を下げるホルモンである「インスリン」の働きによるものです。
一方、「厳しい糖質制限」を実践すると「糖質」をほとんど摂取しません。なので、食事由来の「糖質」のエネルギーは使えません。
そのかわり、「糖質」によって脂質代謝は抑えられないので、「脂質」を上手く使うことができます。
この状態で「脂質」まで抑えると、エネルギー物質の「ATP」が涸渇して生きていけないので、糖質制限実践者は「脂質」を多目に摂取してエネルギー源にするわけです。
で、糖質を摂取していた人が、いきなり「厳しい糖質制限」にするとこういうことになります。
糖質中心の食事・・・エネルギー源は糖質
↓
厳しい糖質制限・・・エネルギー源は脂質
この切り替えによって問題が起きる人と、起きない人がいます。
私のようにいきなりの切り替えにも対応できる人は大丈夫なのですが、切り替えた後の脂質代謝機能が上手く働かない人は体調不良になります。
「糖質」を制限している状態で、摂取した「脂質」も上手く使えないので、エネルギーが絶たれた状態になるからです。
エネルギー源である「脂質」を摂取していているのに、何故か身体が飢餓状態になるのは、こういうメカニズムです。
次は「痩せた人」や「筋肉が少ない人」がこの状態になりやすい理由について説明します。
「糖質」も「脂質」も使えない場合、エネルギー源として利用できるのが筋肉...つまり「タンパク質」です。
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筋肉量があると低T3症候群になりにくい理由
「糖質」を制限して「脂質」を摂取しているのに、脂質代謝の働きが悪くてエネルギー不足の状態になる...
こんな時は、「タンパク質」が大活躍します。
「タンパク質」は「糖新生 とうしんせい」というシステムによって、糖質を作る事ができます。
「糖新生」の材料は、タンパク質、乳酸、グリセロール...等ですが、主に活躍する材料はタンパク質(の糖原性アミノ酸)です。
食事から摂取したタンパク質も「糖新生」の材料になりますが、それがなければ、身体の筋肉(タンパク質)を分解して、「アミノ酸」を使います。
ちなみに、アミノ酸は全部で20種類。そのうち、糖に変えることができる「糖原性(とうげんせい)アミノ酸」は全部で18種類です。
アスパラギンアスパラギン酸
アラニン
アルギニン
イソロイシン
グリシン
グルタミン
グルタミン酸
システイン
スレオニン(トレオニン)
セリン
チロシン
トリプトファン
バリン
ヒスチジン
フェニルアラニン
プロリン
メチオニン
筋肉量が多いと、「糖原性アミノ酸」の1つである「アラニン」の放出量が増えます。
「糖新生」に使えるアミノ酸はたくさんありますが、「アラニン」には以下のような特徴があります。
- ほとんど全てのたんぱく質に比較的多くみられる
- 血液や組織中の「遊離アミノ酸」として広く存在している
- アラニンからのグルコースの合成速度は、他のすべてのアミノ酸より優れている
筋肉量が多いと「アラニン」が増えるので、これによって十分エネルギーを生産できます。
一方、筋肉量の少ない人は、「糖新生」の材料が少ないので、この方法では十分なエネルギーが得られません。
すると、エネルギー代謝は以下のような状態になります。
- 糖質 → 制限
- 脂質 → 上手く使えない
- タンパク質 → 材料不足
・・・となり、どれからもエネルギーが得られないので飢餓状態になります。
その結果、省エネモードの低T3症候群になるというわけです。
筋肉量の少ない女性や、痩せた男性は要注意です。
対策ですが、筋肉量を増やす事と、その元になる「タンパク質」をしっかり摂取した方がよいでしょう。
また、カロリーが低いと改善が悪いそうなので、燃料の摂取は大事です。「脂質」は摂取した方が良いです。
- タンパク質をしっかり摂取する
- 筋肉量を増やす
- 脂質もしっかり摂取する
ただし、私の場合、痩せた女性でいきなり「厳しい糖質制限」をしましたが「低T3症候群」にはなりませんでした。なので、タンパク質と脂質を十分摂れていたのだと思います。
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糖質制限で低T3症候群にならにようにするには
「糖質」は制限、「脂質」は上手く使えない、筋肉量が少なくエネルギーがない...こうなると体は省エネモードです。
私が言うと説得力がないですが、「低T3症候群」は、今まで糖質をたくさん取っていた人がいきなりスイッチを切るように糖質を制限するとなりやすいです。
いきなり厳しく制限するのではなく、少しずつ減らしていくとなりにくいそうで、実際にこの方法で低T3症候群になった人が1人もいないという報告もあります。
『低糖質ダイエットは危険なのか?中年おやじドクターの実践検証結果報告 いきなりスーパー糖質制限すると全身倦怠感が・・・』より引用
Going Low-Carb too Fast May Trigger Thyroid Troubles and Hormone Imbalance
あまりにも急激な糖質制限は甲状腺トラブルとホルモンバランスの乱れを招く
Summary
要約
急激にダイエットを始めた人の中には全身倦怠感とか脱毛とか便秘とか、甲状腺機能低下症を思わせる副作用に悩まされる人がいます。
(カルピンチョ注: 甲状腺ホルモンは新陳代謝を亢進させるホルモンで、高いとエネルギー消費が活発になり、やせ気味で汗っかきで元気、低いとエネルギー消費が悪く、むくみ気味で冷え性でいつも疲れている感じになります)
この方たちでは、これらの症状は再び糖質摂取生活に戻ることで速やかに改善します。
私の患者さんからはこういう話を聞かなかったので不思議だったのですが、低糖質ダイエッターのサイトでのディスカッションを見てそういう人たちがいるのを確認しました。
このような症状が起こる理由は、こういう人では甲状腺ホルモンT4が末梢で不活性型のreverseT3に変わってしまうために、末梢レベルで甲状腺機能低下(Cellular Hypothyroidism)が引き起こされるからだと考えられます。
リバースT3は消耗性疾患、飢餓、冬眠前などの栄養不足の時に体の新陳代謝を下げてエネルギーロスの少ない冬眠モードに変えようとするホルモンです。
活性型甲状腺ホルモンであるT3の機能を阻害することで甲状腺ホルモンの作用を抑えます。
さらにこれの代謝物であるサイロナミンも末梢に溜まり、同じような作用を果たします、このために全身倦怠感でぐったりするのです。
http://edrv.endojournals.org/content/32/1/64.full.pdf
ところが、私(Dr.Cate)の患者さんには一人もそういう副作用で悩む方がいませんでした。
私は糖質制限指導をするときには一日一食、朝ご飯で糖質制限することから始めさせています。
これはシンプルにその方が取り組みやすいし、患者さんの抵抗感も少ないからという理由でしたが、これが功を奏したようです。
ここまでの対策をまとめます。
- タンパク質をしっかり摂取する
- 筋肉量を増やす
- 脂質もしっかり摂取する
- 糖質を一時的に摂取する(緩い糖質制限から慣らしていく)
低T3症候群は治るのか
筋肉量やカロリーの不足に気をつけ、「糖質」を段階的に減らしていけば「低T3症候群」にならない...ということなのでほぼ答えは出ているのですが、一応、ここに挙げた解決策でも上手くいかない場合、どうすればいいかを考えてみます。
注目したいのは、甲状腺ホルモンである「T4」、「T3」、そして「reverseT3」です。
引用した記事に書かれているように、省エネモードは厳密には、「T4」から「T3」ではなく、「rT3」に変換されてしまっている事が原因です。
- T4 → T3 ・・・正常
- T4 → rT3 ・・・低T3症候群
なので、「rT3」に変換されるようなことをしない事、また、「T4」から「T3」に上手く変換できるようにすればいいわけです。
その対策については次回お話します。
また、睡眠不足 ストレス 鉄不足が「低T3症候群」になりやすい理由についても説明します。
糖質制限による体調不良の原因、低T3症候群の対策について考えてみたへ続く
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