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- 分かりやすいシリーズ - 栄養 - 鉄
「必須ミネラル」は、全部で16種類あります。今回はこの中の鉄についてお話したいと思います。
ミネラルの種類は、約100種類です。
その中の「生きていく上で欠かせないミネラル」のことを必須ミネラルと呼びます。
ミネラルがないと生きていくことはできませんし、ミネラルは体の中で造り出すことが出来ないので、食事から摂る必要があります。
「ミネラルの役割」を簡単に説明すると、体の調整役です。
車で例えるとエンジンオイルのようなものです。
そのミネラルの中でも、「鉄」はかなり重要な役割を果たしています。
ただし、「この中で鉄が一番大事」という意味ではありません。
ミネラルは、お互い協力し合って働くので、「どれか一つだけ摂れば良い」というわけではないのです。
鉄が機能する為には他のミネラルの力も必要です。
従って、ミネラルはバランスよく摂る必要があります。
ここで、「バランス」という表現について誤解のないように言っておきます。
私は常に「バランスの良い食事」を否定しています。「人間は動物食性だから、偏った食事でも動物性食品が人間には合っている」と言っています。
では、何故私が「ミネラルのバランス」は重要視するのに、「食事の栄養のバランス」はないがしろにするのかと言うと、
食事(タンパク質15~18%・脂質20~25%・炭水化物50~60%)のバランスは、人間の体の設計図を無視したバランスだから否定しているのです。理に適っていないからです。
それに対し「ミネラルがチームワークで働いている」のは事実なので、このバランスは理に適ったものであり、無視するべきではないと考えます。
「バランス」という言い方よりも、「必要なものを必要なだけ摂り、不要なものは摂らない」という言い方が適しているかもしれません。
というわけで、本題である鉄の話をします。
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鉄の使い道
人間の体内にある鉄の量は、約3g~5gほどだそうです。
鉄は、体の中で色々な事に利用されます。
その働きを表す言葉は、調べるとこれだけ見つかります。
- 機能鉄
- 貯蔵鉄
- 組織鉄
- 運搬鉄(運送鉄)
- 血清鉄
5つか...と思ったのですが、実は人によって分類がバラバラです。
「鉄は、「機能鉄」と「貯蔵鉄」の2つに分けられる」と書いてあったり、
「鉄は、「機能鉄」と「貯蔵鉄」と「組織鉄」の3つに分けられる」と書いてあったり、
「運搬鉄」とか「血清鉄」という言葉もでてくる。
・・・これでは混乱します。
なので、誰のどんな説を読んでも対応できるように、それぞれの「言葉の概念」を整理してみました。
機能鉄について
「機能鉄 きのうてつ」とは、酸素を運ぶ、酸素を貯蔵する・・・等、機能的な使われ方をする鉄です。
体内の鉄の約70%が機能鉄になります。
そして機能鉄は、ほとんどが赤血球のヘモグロビンに含まれています。
そして、筋肉の中にある、ミオグロビンという色素タンパク質も鉄を含んでいるのですが、これも機能鉄に該当します。
赤血球の「ヘモグロビン」が酸素を運搬する係なら、筋肉の中にある「ミオグロビン」は、「ヘモグロビン」から酸素を受け取って、筋肉の中で酸素を貯蔵する係です。
- ヘモグロビン・・・酸素を運搬する
- ミオグロビン・・・酸素を貯蔵する
貯蔵鉄について
万が一機能鉄が不足した時に、補う役割があるのが「貯蔵鉄 ちょぞうてつ」です。
その名の通り、鉄のストックです。
貯蔵鉄には、フェリチンと、へモジデリンの2つのタイプがあります。
- フェリチン
- へモジデリン
そして、「鉄不足」かどうかの判断は、通常の血液検査で測る「赤血球」や「ヘモグロビン」の数値ではなく、「フェリチン」が足りているかどうかで判断します。
その理由を説明します。
赤血球に含まれている「ヘモグロビン」の鉄は、「体に酸素を運ぶ」という重要な任務があるので、鉄が不足した時も、優先的に鉄が回されるようになっています。
そういうシステムなので、例え、体全体で鉄が不足していても、ヘモグロビンの数値が足りていれば、一見、鉄があるように見えてしまいます。
いつでもお金が入っている財布(ヘモグロビン)をみても、その背景にある資産(貯蔵鉄)がどれだけあるかわからないのと一緒です。
財布にお金が入っていても、貯金がないなら「貧乏」ですね。
それと同じように、赤血球、ヘモグロビンは問題なくても、フェリチンが低いなら、立派な「鉄不足」です。
組織鉄について
「組織鉄 そしきてつ」とは、髪の毛、爪、皮膚などの組織に含まれている鉄です。
割合は少なく、5~10%ほどだそうです。
「貯蔵鉄」が底をついたら、次はこの「組織鉄」が減ることになります。
運搬鉄(運送鉄)と、血清鉄について
最後に「運搬鉄 うんぱんてつ(運送鉄 うんそうてつ)」と、「血清鉄 けっせいてつ」について分かる範囲でお話します。
整理していて一番微妙だったのが、この「運搬鉄(運送鉄)」です。検索してもほとんどヒットしなかったので、もしかしたら、この表現は一般的じゃないのかもしれません。
というわけなので、間違っていたと分かった時点で書き直します。
「トランスフェリン」と言う鉄を運搬するタンパク質があります。
このトランスフェリン(タンパク質)は、血しょうの中に含まれています。
「血しょう」とは、血液の液体部分です。
この液体の中には、「わずかな量のタンパク質」が色々と含まれています。
その中の一つが「トランスフェリン」です。
「トランスフェリン」の仕事は、鉄とくっついて、体内の各細胞に鉄を運搬することです。だから、これが「運搬鉄」のことかもしれません。
しかし、この「トランスフェリン」というタンパク質と、鉄がくっついたものを血清鉄と言います。
トランスフェリン + 鉄 =血清鉄
血清鉄は、「血清という液体に含まれている鉄」の事です。
で、この血清鉄が、赤血球に含まれている「ヘモグロビン」の原料になります(ヘモグロビンは機能鉄なので、ややこしいです)。
血清とは、血液を放置した時に上澄みとして残る黄色の液体の事です。「血清」と「血しょう」はそんなに違いません。
フィブリノゲン(凝固因子)が含まれているか、いないかの違いです。
「血しょう」からフィブリノゲンなどの凝固因子が除かれたものが「血清(凝固因子が入っていない清い血)」です。詳しくは以下をご覧下さい。
- 「血しょう」・・・凝固因子あり
- 「血清」・・・凝固因子なし
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「トランスフェリン」と「ヘモグロビン」の違い
鉄は、単体だと人体に有害です。
なので、常に「なんらかの鉄結合タンパク質」とセットになって存在しています。セットだと安全なのです。
で、「鉄を運搬するトランスフェリン」も「酸素を運搬するヘモグロビン」も、中に鉄を含んでいます。
そして、「トランスフェリン」と「ヘモグロビン」は、「血液の中に存在して、何かを運搬する」という点で似ています。
- トランスフェリンは、液体である「血しょう」の中に存在していて、鉄を運びます。
- ヘモグロビンは、血球である「赤血球」の中に存在していて、酸素と二酸化炭素を運びます。
各細胞に鉄を渡すのが仕事の「トランスフェリン」と違って、
「ヘモグロビン」は、「ヘモグロビンを包んでいる赤血球」が壊れるまで鉄を持ったままです。
鉄の役割・まとめ
以下の2つは、
- 運搬鉄 → 血清鉄のことかもしれない
- 血清鉄 → 血清鉄は貯蔵鉄の一つと見なされる
ということなので、曖昧です。
情報が確実な以下の3つを覚えておけば十分でしょう。
- 機能鉄
- 貯蔵鉄
- 組織鉄
体内の鉄で重要なのは、機能鉄です(その中の「ヘモグロビン」)。
何故なら、「ヘモグロビン」には、体の細胞に酸素を届けるという重要な任務があるからです。従って、体の中の鉄は、「機能鉄」の大半を占める「ヘモグロビン」に最優先で回されます。
そういう事情があるので、例え鉄が不足しても、とりあえず「ヘモグロビン」の鉄は確保しないといけません。
従って、優先順位の低いその他のところの鉄から枯渇していきます。
鉄が不足していく過程は以下です。
①貯蔵鉄が減る
↓
②血清鉄が減る
↓
③ヘモグロビンの原料の血清鉄がないのでヘモグロビンが造れない
③でフラフラになった頃には、体内の鉄はほとんどないという事です。
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